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『ICTスキルを鍛える』

2015/01/10

特集:2015年は IT Competenceを鍛えて、
    翻訳のグローバルマーケットへ!!     第3回


 
『ICTスキルを鍛える』

小室誠一 : バベル翻訳大学院(USA) IT COMPETENCE科目 専任インストラクター


すでに皆さんは翻訳のためのICTを鍛える必要性を十分に理解されていることと思います。
そして、PCの操作を学んだりインターネットの様々なサービスを積極的に取り入れて効率化を図ったりしていることでしょう。

筆者も長年、翻訳のためのICT、つまりeトランステクノロジーに取り組んできました。
HTMLを学ぶ講座、テキスト処理や翻訳ソフトの活用方法を学ぶ講座などを開発し、翻訳者のスキル向上支援を行ってまいりましたが、これらのスキルを効率よく身につけるには、実際にこのようなテクニックを駆使して翻訳生産を行っている「ローカライズ翻訳」を参考にするのが近道だと再認識しました。

つまり、生産フローの中でどのようにICTを強化していくかを考えないと、翻訳支援ツールの操作方法だけ名人になってもあまり役に立たないということです。

昨年、バベル翻訳大学院が卒業生と現役生を対象に、「ICTスキル&作業環境アンケート」を実施し、60弱の回答がありました。
その中で、ローカライズの業務を経験した人は約22パーセントでした。また、翻訳メモリソフト(CATツール)の利用者も同数でした。
この数字は、翻訳専門職大学院としては少ないような気がしますが、いかがでしょうか。

翻訳メモリソフトを使用していない理由として、「使うチャンスがなかった」「用途がよくわからない」「特に理由はない」という回答が目につきました。少なくとも、翻訳に携わるからには、正確な知識だけでも必要です。
また、「同じ文章・文節の繰り返しがほとんどない仕事内容なので役に立つと感じない、かえって面倒」という回答もありましたが、これはCATツールの機能のほんの一部分で判断されているように思われます。
そして、「翻訳メモリソフトを使用していない」人の約48パーセントが「トレーニングコースがあれば受けてみたい」と回答しています。

とは言っても、最初はCATツールの操作よりも、翻訳生産フローをしっかりと理解することが重要です。
そこで、ローカリゼーションを専門とする翻訳会社、TransLingo株式会社の協力を得て、実践的ノウハウを学ぶ講座「CATツール活用のための翻訳テクニック」が誕生しました。
「CATツール活用のための翻訳テクニック」では、大量・短納期に対応するために、複数の翻訳者でプロジェクトを組んで翻訳生産を行うフローを説明しています。
 

(画像をクリックすると拡大表示されます)
 
このフローを見ると、「翻訳者」「レビューア」「プルーフリーダー」が連携して業務を遂行する様子がわかります。
 
 翻訳者の業務
1. 翻訳
2. 原文と訳文を見比べて確認するレビュー
3. 日本語だけ読む校閲
4. ツールによる QA
 
 レビューアの業務
1. 原文と訳文を見比べて確認するレビュー
2. 日本語だけ読む校閲
3. ツールによるQA
 
 プルーフリーダーの業務
1. 日本語だけ読む校閲
2. ツールによるQA
 
ここで注目したいのは「翻訳者」の業務です。
翻訳者は「翻訳」だけではなく、「レビューア」と「プルーフリーダー」の業務も含まれているのです。
そして、翻訳者が見逃したエラーがあったとしても、レビューアとプルーフリーダーが掬い取ることにより、大量・短納期に加えて高品質を実現することができるのです。このようなフローを描くだけなら簡単ですが、TransLingo社は厳格に実践している数少ない翻訳会社の一つです。

さて、そうなると、効率よく翻訳するにはどうするか、原文と訳文を見比べて確認する良い方法はあるのか、日本語だけ読む校閲はどのようにすれば間違いを見逃さずに済むか、といった問題意識がむくむくと湧き上がってくることと思います。
ローカライズの世界では、長年このような問題に直面してきたので、すでに数多くの解決方法があります。あとは、謙虚に学習するだけです。

現代の翻訳専門職としては、たとえ知識だけであっても、ローカライズの生産フローとCATツールについてはしっかりと学んでおく必要があると言えるでしょう。

 

小室誠一 : バベル翻訳大学院(USA) IT COMPETENCE科目 専任インストラクター