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【連載】JTA News & Topics  第151回

2020/10/07

JTA  News & Topics 」  第151回 

今回は、2020年5月22日に実施した「英字新聞を徹底的に読み解く!(7)」セミナー(主催:バベルユニバーシティ/後援:一般社団法人日本翻訳協会)受講者のウォーカー美穂子さん及びチェン静さんよりセミナーレポートを投稿してくださいましたので掲載いたします。

情報提供:一般社団法人 日本翻訳協会 (Japan Translation Association 略してJTA) 

http://www.jta-net.or.jp/ 


 
    「英字新聞を徹底的に読み解く!(7)」セミナー
 
◆英字新聞を読む
    ― China’s Industrial Reboot Runs Into the Global Coronavirus Shock ―◆






●レポーター:ウォーカー美穂子
2016年7月に法律翻訳家を目指してバベル大学院に入学したウォーカー美穂子と申します。去年、出産のため一年間休学し、今年の2月から勉学に復帰しました。オーストラリアに住んでいます。翻訳歴約15年で、特定分野のスペシャリストになるために法務翻訳の勉強を始めました。

セミナーレポート
 江國真美先生によるこのセミナーはとても分かりやすかったですが、私にとっては、内容がとても難しかったです。英字新聞中の文章を読み、解読し、日本語に訳出するためのセミナーでしたが、日本語の新聞をあまり読んだことがない方は、訳出するための言葉や文章がなかなか頭に浮かばないと思います。しかも、訳出方法が分からないために辞書に頼って翻訳しても、新聞を普段から読んでいない場合、不自然な日本語になるでしょう。そのため、日本語の新聞をあまり読まない私にとっては、とても難しく感じました。英語の文章がわりと単純であっても、日本語版は、普段使わない言葉と漢字ばかりで、全く検討も付きませんでした。

 単純な例として、訳出文中に「習近平」という言葉が登場しましたが、その意味が分からなくて調べたら、中国の大統領Xi Jinping(シーチンピン)を日本語で「習近平」(しゅうきんぺい)と書くことを知りました。何故、特に人物の名前になると、英語表記と日本語表記がこんなに違うのでしょう。ところが、同セミナーを受講した他の方達は、余裕で翻訳文を仕上げてスラスラ読んでいたので、流石バベル大学院の生徒達と思いました。しかも、みなさんが訳出した日本語の文章中に江國先生がエラーを見付けると、翻訳された方がそのエラーについてケラケラ笑っている様子でした。どんな理由で何がおかしいのかも分からなかった私としては、ジャーナリズムの翻訳が完全に無理であることが分かりました。でも、日本語の新聞を普段から読んでいて日本語の文章が上手い方にとっては、とても面白い分野であり、このセミナーを受講することを強く勧めます。バベル大学院のコースは、全て私にとってとても分かりやすくて勉強がしやすいですし、バベルの勉強をすることが毎日の楽しみですが、今回のセミナーの様な講義も追加で受けることにより知識が広がり、他の生徒の方達の翻訳文も読むことができて、その文章の良さや文章中のエラーから学ぶものもありますし、翻訳業界のプロであり経験豊かな先生の説明を直接聞くことも、とても良い経験になると思います。刺激になるのではないでしょうか。

 さて、私は、法務翻訳を専攻していまして、法律関係もとても難しいのですが、法律の文章はある程度定まっています。とは言っても、初めての法律翻訳コースとして日英契約書翻訳レベル1を受講したときは、日本語の契約書を読むために1ページにつき30分以上かかるくらいでした。初めは本当に難しかったです。しかし、文章の形式が身についていくと共に、徐々にスラスラと翻訳できるようになっていきました(まだまだですが)。ところが、今回のセミナーの課題であったジャーナリズムの記事の場合、文章形式は定まっていませんし、テーマも無限にあると思うので、法務翻訳の倍以上に難しいのではないかと感じました。10年程前、サイマルの「同時通訳者育成コース」のトライアルを受けましたが、同時通訳者である講師の女性が一番初めに説明したことは、彼女が日本語と英語の新聞を毎日3部ずつ読んでいるということと、スピーチの同時通訳をする場合、演説をする方がスピーチの初めに世界各国のニュースや現在の話題を取り上げて、それについてまず数分間話してから本題に入ることが多いため、全てのニュースを把握しておくことが必須であるということでした。トライアル講義の初めにそれを聞いた時点で「私には無理だ」と思い、ジャーナリズムの同時通訳者になることは、キッパリと諦めましたが、ジャーナリズムの分野の翻訳・通訳をする方、目指す方向けの本格的なセミナーだと思います。英字新聞を読み解くセミナーの受講、是非、お勧めします。

以上


●レポーター :チェン静
バベル翻訳専門職大学院USA、・法律翻訳専攻 2019年1月より在学中。幼少期はアメリカに滞在。東京で法律事務所秘書、メーカーの営業をしていた。2017年、結婚を機にホノルルに移住。

セミナーレポート

日時:2020年5月22日(金)15時から17時(日本時間)
講師:江國 真美 先生

 今回は、英字新聞を徹底的に読み解くシリーズの第7回。生徒は事前に課題の訳文を提出した。講義の前日、原文と各生徒の訳文が載った資料が配布された。講義は、各生徒が1文ずつ自分の訳文を読み上げ、先生が解説・添削する方法で進められた。
 Zoomという会議システムを利用して参加した。Zoomでは、先生のパソコンの資料を見ることができる。
 課題文の題名は“China’s Industrial Reboot Runs Into the Global Coronavirus Shock”。中国の製造業が再始動するも、世界がコロナショックに直面し、輸出先での景気の冷え込みが中国経済にも影響を与えているという内容の記事である。

A.    ジャーナリズムの特徴

  ●    見出しは短くし、体言止めにする。
   冗長な箇所は簡潔な表現に修正する。
(×「ごまかしていないか疑問視しており」→〇「改ざんを疑っており」)
   口語的な表現は避ける(×「データをごまかす」→〇「データを改ざん」、
  ×「どれだけ素早く再稼働できるか」→「どの程度迅速に回復するのか」)。

B.    日本語での省略

 英語と比べて、日本語は、理解できる部分は省略するという特徴がある。
 “What do you have in your bag?”「袋に何が入っているの?」
 “I have dumplings.”「餃子さ」
 “If you give me one, I’ll follow you.”「1つくれたら、ついていくよ」
このように、何を指しているか分かる場合、省略した方が自然な日本語になる。

C.    表記

  「記者ハンドブック」を参考にする。
 ×「ウィルス」→〇「ウイルス」
 ×「例え~だとしても」→〇「たとえ~だとしても」
 数字をアラビア数字にしたら、全部統一する。コンマは不要(例:7800万人)。
 中国語の社名は日本語の漢字で置き換え、漢字がなければカナ表記にするかルビを振る。
 Mark Ma等の人名は「マーク・マー」と片仮名で訳してOK。

D.    語順

 原文と同じ語順で訳せる場合、そのまま訳す。
. ..the big challenge is demand, not supply...
 ×「~が大きな課題である」→〇「大きな課題は~」

E.    修飾語

ようやく高く掲げた目標を脅かすことを懸念した指導者の働きかけで工場は操業を再開
 →「ようやく」と「再開」が離れすぎている。

 “factories that produce everything from smartphones to sneakers”
 ×「スマートフォンやスニーカーなど、あらゆる製品を生産する工場」
 →全部を一つの工場で生産しているという誤解を生む。

F.    何でも辞書通りに訳さない

 Endure quarantines:×隔離に耐える→〇隔離を強いられる
 ※「隔離」は他動詞。×「隔離する」→〇「隔離を強いられる」

 Industry:×産業→〇工業
 産業は、農業・工業を両方含む。この記事では工業のみを指している。

 Economist:×経済学者→〇エコノミスト
 経済学者は、通常、大学の研究者等を指す。
 この文章では、企業で働くエコノミストや経済評論家等を指している。

G.    何でも原文通りに訳さない

 英語特有の言い換えは日本語に存在しない。同じ言葉で統一しないと紛らわしい。
 Lunar New Year, January holiday→両方「春節」を指す。
 Chinese government, Beijing→両方「中国政府」を指す。

 It will take time to get that many people back on the job.
 Willに相当する日本語は存在しないので無理に「だろう」と訳されることが多いが、
 確実に起こることなので、断定・言い切り型にして問題ない。

H.    思い込みに注意

 Migrant workers(出稼ぎ労働者)
 主に田舎から都会へ出て働く労働者を指す。文中に外国人とは書かれていない。

 Half full
 It will take time to get that many migrant workers back on the job.
 Long-distance buses were allowed to travel only half full as part of an effort to prevent contagion.
 文脈から、half fullはバスの乗車率を意味している可能性が高いが、
 「距離を半分にする」という解釈もできなくはない。ジャーナリズムの場合、思い込まず、
 事実確認を行うことも重要。

I.    原文の細かいニュアンスを見落とさない

 Economists suspected that China fudges its statistics...The use of coal has been steadily ticking up...
 ×データ改ざんというネガティブな情報の後に、「順調に上昇」という表現を使うとポジティブに聞こえてしまう。
 →〇「着実に上昇」等、ニュートラルな言葉を選ぶこと。

 Buses were allowed to travel only half full...
 ×「許可された」はポジティブな表現なので不適切。

 Official numbers suggest the country is getting back to work, but even if they’re accurate...
 Is getting:徐々に~しつつある
 Even if:たとえ~だとしても
 Suggest:恐らく~、~のようだ、~の可能性がある
 ×「示唆する」はそれとなく教え示すこと。「示」は教えること、
  「唆」はその気になるように働きかけることなので、suggestの訳として不適切。
 例:部長がプロジェクトの実行を示唆した。

J.    注意すべき英単語

 Contain the virus: ウイルスを封じ込める
 Plants are coming back online: 工場が操業を再開している
 Cheap-and-cheerful: 安くて快適な

K.    注意すべき日本語

 上旬:1~10日、中旬:11~20日、下旬:21日~、月末:25日以降
 Contagion:「伝染」はコレラに使うが、コロナウイルスの場合は「感染」
 Factories have been dormant:×「未稼働」→〇「稼働停止」
 Migrant workers were left stranded by travel restrictions:
 ×「行き場を失う」は迷子のニュアンス→〇「足止めされる」が適切
以上


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*ZOOM(オンライン)で受講できます。                           
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 ・自動車会社、広告・出版会社に勤務
 ・社内翻訳者、チェッカーの下積みを経て独学で英日産業翻訳者
  になる
 ・2014年 米国シリコンバレーに渡米
 ・2016年 バベル翻訳大学院入学
 ・2020年 翻訳会社 JPリングイストを設立
 ・ウェブサイト:
https://www.jplinguist.com/

・実施日: 2020年10月16日(金) 15時~16時30分(日本時間)
・申込締切 :2020年10月13日(火)(日本時間)

◆セミナーの詳細・お申込みはこちらまで↓

http://www.jta-net.or.jp/seminar_2001016.html
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実施日:2020年10月17日(土)10:00~11:30(日本時間)
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http://www.jta-net.or.jp/about_pro_exam_tpm_2.html

2.「出版翻訳能力検定試験」
実施日:2020年10月17日(土)10:00~13:00(日本時間)
締切り:2020年10月13日(火)(日本時間)
1) 第28回 ヤングアダルト・児童書翻訳能力検定試験   
2) 第27回 エンターテインメント小説翻訳能力検定試験 
詳細・お申込は、当協会ホームページから 

http://www.jta-net.or.jp/about_publication_exam.html

3.ビジネス翻訳能力検定試験
実施日:2020年10月17日(土)10:00~12:00(日本時間)
締切り:2020年10月13日(火)(日本時間)
1) 第38回 医学・薬学翻訳能力検定試験(英日・日英)
2) 第38回 特許翻訳能力検定試験(英日・日英)
詳細・お申込は、当協会ホームページから 

http://www.jta-net.or.jp/about_business_exam-2.html

4.第25回 フランス語翻訳能力検定試験 ノンフィクション分野
実施日:2020年10月17日(土)10:00~13:00(日本時間)
締切り:2020年10月13日(火)(日本時間)
詳細・お申込は、当協会ホームページから 

http://www.jta-net.or.jp/about_french_translation_exam.html

5.第25回 ドイツ語翻訳能力検定試験 ノンフィクション分野
実施日:2020年10月17日(土)10:00~13:00(日本時間)
締切り:2020年10月13日(火)(日本時間)
詳細・お申込は、当協会ホームページから 

http://www.jta-net.or.jp/about_german_translation_exam.html


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情報提供 : 一般社団法人 日本翻訳協会 (Japan Translation Association 略してJTA)
 
●一般社団法人 日本翻訳協会●
http://www.jta-net.or.jp/ 
・設立:1986年10月
・Mission:「翻訳に対する社会の認識を高めること及び翻訳に関する技術及び知識を増進することによって翻訳の水準を高めること並びに翻訳者を支援してその自立を促進することを通じて、世界の文化交流及び産業経済の発展に寄与することを目的とする。」
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