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【連載】JTA News & Topics  第146回

2020/07/22

JTA  News & Topics 」  第146回 

今回は、2019年12月13日に実施した「英字新聞を徹底的に読み解く!(6)」セミナー(主催:バベルユニバーシティ/後援:一般社団法人日本翻訳協会)受講者の蟹江里衣さん及びチエン静さんよりセミナーレポートを投稿してくださいましたので掲載いたします。

情報提供:一般社団法人 日本翻訳協会 (Japan Translation Association 略してJTA) 

http://www.jta-net.or.jp/ 

   
         
「英字新聞を徹底的に読み解く!(6)」セミナー
                                        
    ◆英字新聞を読む
      ― The U.S.-China Trade War Is Ruining Christmas for Toymakers ―◆






●レポーター :蟹江里衣

バベル翻訳専門職大学院USA在学(法律翻訳専攻)。2013年に国内メーカーに入社し海外営業部門で勤務。夫の海外赴任の帯同を機に2019年12月退職予定。

セミナーレポート
2019年12月13日、江國先生の「英字新聞を徹底的に読み解く!」第6回セミナーが開催されました。私は今回が初受講です。ZOOMでオンライン受講しました。セミナーの流れ、感じたこと、学んだことをお伝えします。今まで受講されたことはないが興味を持たれている方、受講を迷われて「セミナーの雰囲気を覗いてみたい」と思われている方に、少しでもお役に立てればと思います。

(1)セミナーの流れ
①セミナー前(事前課題提出)
ブルームバーグのWEB記事が配布され、指定期限の12月9日までにワード文書で翻訳を作成し、メールで事務局に提出しました。米中貿易戦争に関する記事でした。セミナー前日、資料がメール送付されてきました。資料を開くと、原文と7名の受講予定者の訳文が段落ごとに並列され、比較できるようになっていました。なお、受講者の名前は匿名でA、Bなどと記載されており、セミナー中もAさん、Bさんと呼ばれます。自分の名前が出るのは恥ずかしい、という方も安心です。

②セミナー中(課題をベースに添削・ポイント解説)
受講者の大多数がZOOMでのオンライン受講でした。一般的にセミナーには情報の流れが一方向の講義型と双方向の対話型がありますが、本セミナーは対話型です。セミナー中は江國先生のパソコン画面が全受講者に共有されました。画面には、前日配布された資料の訳文に先生が印をつけ、ポイントを追記した内容が映されました。進行は段落ごとで、Aさんから順番に自分の訳文を音読し、その後先生からの講評が入りました。この講評では、受講者の間で訳出が難しかったところを絞って解説されます。「なぜこのように訳したのですか」と先生から訊かれることもありました。スピーディーに進みましたが、原文の量が多かったこともあり、最後の数段落だけは終わりませんでした。

③セミナー後(講師解説資料配布)
セミナー中に受講生に共有されていた、江國先生のポイント記載付きの資料がメール送付されました。紹介されたサイトのリンクも付いてきますので、復習やその後の翻訳にも役立ちます。全訳は付いてきません。

(2)感じたこと
・受講時間は2時間ですが、あっという間に終わった、という印象でした。
・先生は明るくはきはきされた方で、良い点も改善すべき点も明確におっしゃいます。自分の訳文に対して指摘を頂けたので、改善すべき点は非常に骨身に沁み、「ここはOK、よくまとまっています」と言って頂けた部分は自信に繋がりました。セミナー中も始終、明るく、ぱりっとした空気が流れていました。
・他の受講生から良い刺激を受けました。翻訳の勉強は基本一人ですので、他の方が一緒に受講されていることは励みになりましたし、「こんなにうまい訳出があったか。負けてはいられない」という気持ちにもなりました。

(3)学んだこと
今後のジャーナリズム翻訳で活かそうと思った2点について、以下に記しました。
①    「要は何を表現しているか」を考えて翻訳すること
ついつい原文にある単語を一語一句訳出してしまう、さらには英和辞書に書いてある日本語を書かないと不安になる、という悪い癖があることに気づきました。たとえば、原文にwillとあれば反射的に「~だろう」と書いてしまっていました。その結果、自然な日本語から離れた訳文になってしまいました。対策として、先生からは「英英辞典にあたることで、原文の中でその単語がどういう意味で使用されているかを理解できる」と教えて頂きました。さらに、日本語の語彙の意味もよく調べて使用しなければ、原文から離れた訳文ができてしまう、ということも痛感しました。

②    読者を意識した文章にすること
ジャーナリズム翻訳は、読者にどんどん読める文章である必要があり、勢いやリズムが大切であることを学びました。その対策として、訳文は簡潔でシンプルにすること、S(主語)とV(動詞)を近づけることを教えて頂きました。実際自分で訳文を音読してみると、読みづらい、歯切れの悪いところが多々ありました。今後は、自分の訳文を音読して確認する、また日本語のニュース記事を音読して良いリズムを吸収する、の2点も取り入れていこうと思います。

「学んだこと」について書いてみると、過去に読んだ翻訳についての本でも同じようなことが書かれていたのを思い出しました。技術を「知っている」と「できる」との間は大きく離れているということを体感する良い機会だったと思います。本セミナーは、自分の「できる」への距離を把握し、「できる」に近づく一歩を踏み出すのにぴったりだと思います。
                                                     以上



●レポーター :チエン静
バベル翻訳専門職大学院USA・法律翻訳専攻 2019年1月より在学中。幼少期はアメリカに滞在。東京で法律事務所秘書、メーカーの営業をしていた。2017年、結婚を機にホノルルに移住。

【セミナー内容】
日時:2019年12月13日(金)15時から17時(日本時間)
講師:江國 真美 先生

 今回は、英字新聞を徹底的に読み解くシリーズの第6回目。生徒は事前に課題の訳文を提出する。講義の前日、原文と各生徒の訳文が載った資料が配布された。講義は、各生徒が1文ずつ、自分の訳文を読み上げた後、先生が解説・添削するスタイルで進められた。
 私はZoomという会議システムを利用してホノルルから参加した。Zoomでは先生のパソコンの画面を見ることができる。画面上の資料を追いながら、手元の資料を読んでいった。
 課題文の題名は“The U.S.-China Trade War Is Ruining Christmas for Toymakers”。米中貿易戦争の関税率引き上げの影響を見越してアメリカの小売業者が在庫を積み上げた結果、クリスマス商戦で店頭に並ぶ新商品の種類が少なくなった。更に、海運業界も、輸出入の量が減り、痛手を受けているという内容の記事であった。

【学んだこと】
 今回最も衝撃を受けたのは、未来を表す助動詞”will”を自動的に「だろう」「でしょう」と訳さない方がいいという点だった。よく見ると、私は、どの文もそのように訳してしまっていた。Willはどちらかというと、ほぼ確実であると分かっている事項に対して使う単語であるため、「である」「です」と言い切ってしまった方がすっきりする。私が語尾を「でしょう」としたのは、高校英語で勉強したからだ。また、分かり切った事でさえも曖昧にする癖が日本人にあるからだ。日本のニュース番組で専門家がコメントする際も、「~というような」、「~と思います」、「~ではないでしょうか」という表現をやたらと耳にする。欧米では、そこまで頻繁に曖昧な表現をするだろうか。May, possibly等の、不確実さを表す単語がない限り、むやみに「だろう」「でしょう」と訳すのは危険である。

 また、同じ段落内でexpectを「予想する」と2回繰り返して訳してしまったが、こちらも「考える」程度の意味で捉えて大丈夫とのことだった。一字一句、全てを原文の通りに訳すと、日本語として不自然になる。読者は、原文に何が書いてあるか分からないのだから、原文にいかに忠実な言葉で訳そうと、そのことは読者に伝わらない。読者は、日本語を日本語として読むだけなのだ。あたりまえのことだが、翻訳作業に没頭していると、つい見失いそうになる。

 前回同様、今回もOneLook Dictionaryという英英辞典のデータベースを使用した。今回は更に詳しく踏み込み、同じ単語を複数の辞書で調べて比較できる点についてご解説頂いた。OxfordとLearner’sを比較すると、Oxfordは単語の定義そのものが難しい言葉で説明してあった。一方、Learner’sは英語学習者向けというのもあり、写真付きで、分かりやすい言葉で説明してあった。

 社名をそのまま英語表記にするか、日本語・漢字表記にするかは新聞社によって異なり、正解はない。但し、「株式会社」、「有限公司」、”Inc.”, ”Corp.”, ”SA”は、通常は付けない。省略する場合、全部揃えた方がいい。

 ところどころ、意訳しようとし過ぎた箇所があった。例えば、significanceを「重要性」ではなく「優先度」と訳したが、原文との意味がかけ離れてしまった。また、hurt producers’ pricesは、生産者が価格を下げざるを得ない状況に追い込まれるという意味だが、「価格を下げる」→「利益が減る」と勝手に思い描き、そう訳してしまった。価格を下げることより、利益が減ると書いた方が、生産者にとって明らかにマイナスであることが分かる。しかし、pricesは利益ではなく価格なので、価格という単語をきちんと入れて訳さないと、意味が変わってしまう。更に、”President Trump delayed tariffs…”を「トランプ政権が追加関税をかけるタイミングを遅らせた…」と訳そうとしてしまった。その後、「トランプ米大統領が…」と訳を訂正した。日本の新聞記事であれば、通常、政策の実行・延期をするのは「政権」で、表明をするのは「首相」である。しかし、Presidentはそのまま「大統領」で意味が通じるし、あえて訳を変える必要はない。今回はトランプ大統領の記事だったが、Prime Ministerを訳す場合は、「首相」、「総理」、「総理大臣」のどの単語を選ぶべきだろうか。日本のprime ministerの場合、新聞記事(文字)では「首相」、テレビ(音声)では「総理」と表現するのが一般的だ。こうした細かい点に気付けるようにしたい。

【まとめ、今後の目標】
 単語を辞書の意味の通りに忠実に訳すべき箇所と、工夫が許される箇所があるので、訓練を積み、どの程度まで許されるものか分かるようになりたい。

【最後に】
 江國先生、有意義な講義をありがとうございました。次回も楽しみにしております。
                                以上 


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 ・2019年バベル翻訳専門職大学院USA修了。
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実施日:2020年8月1日(土)10:00~13:00(日本時間)
締切り:2020年7月28日(火)(日本時間)
1) 第29回 絵本翻訳能力検定試験   
2) 第26回 スピリチュアル翻訳能力検定試験
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実施日:2020年8月1日(土)10:00~12:00(日本時間)
締切り:2020年7月28日(火)(日本時間)
1) 第37回 医学・薬学翻訳能力検定試験(英日・日英)
2) 第37回 特許翻訳能力検定試験(英日・日英)
詳細・お申込は、当協会ホームページから 

http://www.jta-net.or.jp/about_business_exam-2.html


4.第25回 フランス語翻訳能力検定試験 フィクション分野
実施日:2020年9月12日(土)10:00~13:00(日本時間)
締切り:2020年9月8日(火)(日本時間)
詳細・お申込は、当協会ホームページから 

http://www.jta-net.or.jp/about_french_translation_exam.html


5.第25回 ドイツ語翻訳能力検定試験 フィクション分野

実施日:2020年9月12日(土)10:00~13:00(日本時間)
締切り:2020年9月8日(火)(日本時間)
詳細・お申込は、当協会ホームページから 

http://www.jta-net.or.jp/about_german_translation_exam.html

 
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情報提供 : 一般社団法人 日本翻訳協会 (Japan Translation Association 略してJTA)
 
●一般社団法人 日本翻訳協会●
http://www.jta-net.or.jp/ 
・設立:1986年10月
・Mission:「翻訳に対する社会の認識を高めること及び翻訳に関する技術及び知識を増進することによって翻訳の水準を高めること並びに翻訳者を支援してその自立を促進することを通じて、世界の文化交流及び産業経済の発展に寄与することを目的とする。」
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