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【連載】JTA News & Topics  第145回

2020/07/07

JTA  News & Topics 」  第145回 

今回は、2019年11月26日に実施した「翻訳者のための、読みやすい文を作るテクニック」セミナー(主催:バベルユニバーシティ/後援:一般社団法人日本翻訳協会)受講者のチエン静さん及び太田朱美さんよりセミナーレポートを投稿してくださいましたので掲載いたします。

情報提供:一般社団法人 日本翻訳協会 (Japan Translation Association 略してJTA) 

http://www.jta-net.or.jp/ 

   
       
翻訳者のための、読みやすい文を作るテクニック」セミナー
  ~~AIに負けない! 今こそ必要な、人にしかできない良い文章の作り方




●レポーター :チエン静
バベル翻訳専門職大学院USA・法律翻訳専攻 2019年1月より在学中。幼少期はアメリカに滞在。東京で法律事務所秘書、メーカーの営業をしていた。2017年、結婚を機にホノルルに移住。

【セミナー内容】
日時:2019年11月29日(金)15時~17時(日本時間)
講師:眞野 玲子 先生

■(ア)    先生の紹介
 野球雑誌の編集記者・在宅ライターの経験があり、ライター歴は28年。子供の作文指導の教室も開催している。

(イ)    文章のスタイルとジャンル
 クライアントに好まれる文章を書くには、①納得してもらい、②感動を与えるような文章にすること。文章には個性が出る。先方の求めているものと自分のスタイルを分析する力が必要。

 ジャンルにより書き方が異なる。詩歌は文学的、新聞記事は事実的。解説記事は事実を分かりやすく説明する。論文は事実を元に分析・推察を行い、意見を述べるものである。このような区別ができず、求めているスタイルを説明できない人もいるので、ライターが区別できていることは重要。

 文章を提出した後、条件が追加され、差戻しや修正の連絡が入ることが多い。仕事が無駄にならないように、クライアントに方針をよく確認すること。急ぎの仕事や手直しの場合は追加料金を提示する等工夫する。

(ウ)    要約力
 字数の関係上、要約する場面が出てくるが、日本で要約力について理解している人は少ない。最初から最後までかいつまむのではなく、筆者が一番伝えたいことは何か、焦点を絞って説明すること。

(エ)    結局何が言いたいか

A→Aに関連して、B→Bに関連して、C
と文章の内容が変化するものがよく見られるが、何が言いたいか伝わりにくい。

Aとはこういうものだ→Aに関する具体的な事例・知識→だからAです
と焦点をAに絞って結論から書くといい。

 マーケティング等では、題名や書き出し部分で「これからこのような話をしますよ」というのを伝えないと、最後まで読んでもらえない。また、最後の3行で上手にまとめるため、要約力が必要。

(オ)    話し言葉と書き言葉
 「~けど、」「(文頭)あと、…」「(文頭)なので、…」等の話し言葉を書いてしまわないように。
 但し、絵本作家や子供の場合、話し言葉を取り入れることが認められるケースもある。
例:「あのね」「しちゃった」「だって~なんだもん」
「だって」を「しかし」にすると、子供らしさが失われ、堅苦しくなる。

(カ)    添削しよう
例文:「私は今日、ずっと行きたかった美術館に行くことができたのでとても嬉しいです。行ってみると、なんと、さらに私の大好きな作家の展示品が多く出ていたので本当に嬉しかったです。最後は、美味しいコーヒーも飲めて嬉しかったです。ゆっくりと好きな絵画を楽しむことができたし、最高でした。」

改善ポイント:
●    「行く」「うれしい」という重複した言葉は言い換える。
    より具体的に。どのような美術館で、どの作家の何の絵画なのか、どこでコーヒーを飲んだか、どのように「最高」と感じたか?
    「ゆっくりと」は「楽しむ」に係る。遠くにある修飾語は、近づける。
    「嬉しい」→「わくわく」「ドキドキ」とオノマトペでニュアンスを伝える。

改善後:「私は今日、ずっと前からテレビで見て知っていた森林に囲まれて景色が素敵な美術館にやっと行くことができたので、久しぶりにドキドキしました。友達と車で1時間かけて到着すると、なんと、さらに私の大好きな作家であるモネの展示品が多く出ていたので驚くとともに運命を感じてしまいました。最後は、美術館に併設されているお洒落なカフェで美味しいコーヒーも飲むことができました。私が好きな絵画である睡蓮をゆっくりと楽しむことができたし、心からリラックスできた最高の一日でした。」

※具体的に書くべきだが、5W1Hを意識しすぎると文が長くなる。5W1Hを全部入れようとしないこと。
※読点の付け方:音読したとき息継ぎする部分を目安に、読点を付けるといい。

(キ)    心情表現
 驚いたことを表現する場合、「突然『ドン』という音が鳴り響いた」と音を入れると臨場感があり、登場人物が驚いていることが分かる。

 天候等の情景描写を利用して心情を表現する方法もある。
「雨が上がって虹が出た」「空が真っ青に晴れ上がっている」
→清々しさ、前向きな気持ち

「夕暮れの土手をとぼとぼと歩く」「ホームレスを見ながらため息をつく」
→不安、憂鬱な気持ち

(ク)    背景知識・経験
 キャッシュレス等の最新技術に詳しい人もいれば、SNSを使わない人もいる。何かを伝えたいときの共通言語が少なくなっており、社会が多様化している。技術革新のスピードが速いので、ライターは、新たなものに興味を持ち、学ばなければならない。

 歴史、スポーツ、子育て等、分野によって書きやすさが異なる。自分の強みが何か把握すること。背景知識・経験の有無により文章の深みが違ってくる。
以上


レポーター :太田朱美
バベル翻訳専門職大学院USA修了生。
ミシガン在住、日系自動車部品製造会社にて常駐通訳・翻訳者として勤務する傍ら、フリーランスの医療通訳・映像翻訳(GTSソフト使用)として従事。駆け出し翻訳家、自己向上・改善を目指して奮闘中。

「翻訳者のための、読みやすい文を作るテクニック」セミナー: 受講レポート 
 喜ばれる翻訳文書とは何でしょうか。スピードだけを求めるなら、AIにお任せすればいい。しかし、文書とは生きた言葉による情報伝達なのではないでしょうか。今こそ必要な、人にしかできない良い文章の作り方について、講師の眞野玲子先生にご教示頂きました。本レポートでは、読みやすく分かりやすい文章とは何か、そして、翻訳者として目指す姿についてまとめました。
  
読みやすく分かりやすい文章とは何か? 
 それは、「納得」や「感動」を読み手に与えられる文章です。一つの物事についてしっかり説明する文章は、読み手に混乱を与えることなく情報を伝達します。その理由は、その書き手が各文章の機能を把握してシームレスな流れを保ちながら文章化しているからです。その他良い文章とは、話し言葉と書き言葉を統一して表現されています。さらに、長すぎる文であれば短く切り、不足内容について必要に応じて足されています。

 上記に長い文を切るとありますが、読みやすい文章とは何文字くらいなのでしょうか? データの観点から分析したリサーチ情報を見つけたので、プラスαとしてここでシェアさせて頂きます。「読む」行為は、いわゆる短期記憶と認知の合わせ技です。これがうまく噛み合うのは、個人差はあるものの大体60文字までだそうです(60文字ルール)。基本的に、1文中の句読点が3個を超えると読みやすさに黄信号が灯るようです。(引用:
https://data.wingarc.com/easy-reading-16542)眞野先生も、句点は、1~2回が妥当で、音読するときの「息継ぎ」を意識して付けるとよいとのアドバイスでした。

 そして、感情を伝える場合は、オノマトペ(擬音語・擬態語)を使用します。憂鬱、不安、歓喜といった言葉で「気持ち」を伝えることは滅多にありません。日本人は、オノマトペを自然と使用しいています。読解力をつけるには、様子や情景で心理を読み取ることが重要です。ここで講師のおススメ本として、Jリサーチ出版より出ている「日本語会話オノマトペ基本表現180」を紹介して頂きました。表現力をさらに豊かにするにはもってこいの一冊だと思います。

 上記について意識しながら、演習問題に取り組みました。セミナーでは、改善後までの提示でしたが、さらに60文字ルールを応用して改善後の文章校正を試してみました。どうしたらさらに良い文ができるのか、皆さんも考えてみてください。

演習


翻訳者として目指す姿
 翻訳や文章を作る仕事は、自己満足が許されず、常に他者の評価と向き合う仕事です。読み手が嬉しい文章を提供して初めて評価を得ることができます。それを実現するためには、論理的思考力を養い、客観性、知識、好奇心、豊富な経験を持つことが必要なのです。書く力とは、つまり論理的思考力ですが、それだけでは不十分なのです。その文章を客観的に読める能力が必要となります。しかし、客観的に読んでいるつもりでも、自分に知識がないとその内容の正否判断ができません。インターネット普及に伴い、情報化社会もさらに継続して多様化しています。今、必要なのは好奇心を持ってリサーチする能力なのです。豊富な経験こそが書く力の源となり、その自信が説得力のある文章と化すのではないでしょうか。

 最後にAIが普及する中、今こそ人に出来ることについて考えましょう。倫理観、道徳心、忖度、空気を読む、筆者の伝えたいことをくみ取る、要約する、日本文化ならではの特性を考慮する、外国の文化との違いや流行を感じるなど、AIでは不可能なことができるのです。私たちの仕事は、もっともっと価値が高まるべきなのではないでしょうか。

以上

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●●セミナーのご案内●●

*バベル吉祥寺キャンパス及びZOOM(オンライン)で受講できます。                           
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 ☆ 「私の翻訳人生-ライフスタイルに合わせた働き方」セミナー ☆
 
         ― 翻訳者としてキャリアを積むためのヒント ― 
    
在宅で翻訳の仕事をしていると、さまざまな要因で働き方を変えざるを得なくなることがあります。
突然訪れる想定外の出来事をどのように乗り越えていくか、そのために日頃から準備しておくべきことや、翻訳の仕事を長く続けるために心がけていることなど、翻訳者としてキャリアを積むためのヒントを公開します。

<セミナー目次>
1.新コロナ禍で証明された在宅翻訳者の強み
2.ライフスタイルに合わせて翻訳キャリアを設計する
3.最悪の事態を想定する
4.ストレス要因を排除する
5. 翻訳業を長く続けるためのヒント

●講師:ハクセヴェルひろ子
 ・日本の大学卒業後、商社と外資系金融機関に勤務
 ・1992年トルコに移住
 ・1999年Proz.com に登録
 ・2005年バベル翻訳大学院にて翻訳修士号を取得
 ・2008年Proz.com Certified PRO認定会員
 ・現在トルコに在住し、実務翻訳に従事する傍ら、
   翻訳評価、翻訳ビジネスの発展向上をめざし活動中
 ・バベル翻訳専門職大学院教育カウンセラー
 
・実施日:    2020年8月7日(金) 15時~16時30分(日本時間)
・申込締切 :2020年8月4日(火)(日本時間)

◆セミナーの詳細・お申込みはこちらまで↓

http://www.jta-net.or.jp/seminar_200807.html

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●●翻訳試験のご案内●●

*試験は全てインターネット受験ですからご自宅での受験となります。

 



1.第22回 翻訳プロジェクト・マネージャー資格上級試験
実施日:2020年7月11日(土)10:00~11:30(日本時間)
締切り:2020年7月7日(火)(日本時間)
詳細・お申込は、当協会ホームページから 

http://www.jta-net.or.jp/about_pro_exam_tpm_2.html


2.「出版翻訳能力検定試験」
実施日:2020年7月11日(土)10:00~13:00(日本時間)
締切り:2020年7月7日(火)(日本時間)
1) 第27回 ヤングアダルト・児童書翻訳能力検定試験   
2) 第26回 エンターテインメント小説翻訳能力検定試験
詳細・お申込は、当協会ホームページから 

http://www.jta-net.or.jp/about_publication_exam.html


3.ビジネス翻訳能力検定試験
実施日:2020年7月11日(土)10:00~12:00(日本時間)
締切り:2020年7月7日(火)(日本時間)
1) 第38回 IR・金融翻訳能力検定試験(英日・日英)
2) 第42回 リーガル翻訳能力検定試験(英日・日英)
詳細・お申込は、当協会ホームページから
 
http://www.jta-net.or.jp/about_business_exam-2.html


4.第24回 フランス語翻訳能力検定試験 ノンフィクション分野
実施日:2020年7月11日(土)10:00~13:00(日本時間)
締切り:2020年7月7日(火)(日本時間)
詳細・お申込は、当協会ホームページから 

http://www.jta-net.or.jp/about_french_translation_exam.html


5.第24回 ドイツ語翻訳能力検定試験 ノンフィクション分野

実施日:2020年7月11日(土)10:00~13:00(日本時間)
締切り:2020年7月7日(火)(日本時間)
詳細・お申込は、当協会ホームページから 

http://www.jta-net.or.jp/about_german_translation_exam.html

 
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情報提供 : 一般社団法人 日本翻訳協会 (Japan Translation Association 略してJTA)
 
●一般社団法人 日本翻訳協会●
http://www.jta-net.or.jp/ 
・設立:1986年10月
・Mission:「翻訳に対する社会の認識を高めること及び翻訳に関する技術及び知識を増進することによって翻訳の水準を高めること並びに翻訳者を支援してその自立を促進することを通じて、世界の文化交流及び産業経済の発展に寄与することを目的とする。」
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