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メディカル翻訳マーケット - 小幡 美恵子

2013/07/25

「メディカル翻訳マーケット」


小幡 美恵子:バベル翻訳大学院 プロフェッサー



 円安、株価乱高下, アベノリスク、etc.・・・ 経済の動向は先が見えない状況のようですが、メディカル分野の翻訳マーケットは景気の波に左右されることが少なく、コンスタントな需要があるマーケットです。堅実で安定した、ズバリ、「できあがっているマーケット」と言ってもよいと思います。なかでも圧倒的にボリュームが大きく、確実に発生するのは製薬会社の新薬開発に関わる文書の翻訳。プロトコール、非臨床研究、臨床研究、そして承認申請へ、という流れの中で各段階のエキスパートが作成した専門性の高い文書です。
 
 

英訳が主流に!
 
 さて、最近は医薬品開発のグローバリゼイションの進展に伴って、日英翻訳が主流になりつつあるのが大きな特徴と言えるでしょう。それは、日米EU3極の新医薬品の承認審査資料に関連する規則のハーモナイゼイションを図るための国際会議(ICH)*が20年ほど前に発足し,おかげで今やデータの国際的な相互受け入れが急速に実現化してきたからです。 * ICH - International Conference on Harmonization of Technical Requirement for Registration of Pharmaceuticals for Human Use
 
 ひとつの医薬品を共同開発する際、日本で実施した非臨床及び臨床研究の結果を海外へ報告するための日英翻訳、また、日本で開発した医薬品を海外で販売する目的で作成する承認申請のための日英翻訳,等々。 日本発信型の情報、ひと昔前とは、まさに「大逆転」です。

 

とはいえ、日本語のこだわりを!
 
 また、規制当局から許可が下りたからこれで終わりというわけではなく、まだまだ続きます。市販後調査(Post-marketing surveillance)、すなわち副作用報告です。医師による症例報告が殆どで、ここでは日本語の表現能力が問われます。これも場合によっては膨大な量になることもあり、また副作用は予定外の発生ですので緊急性が高いため、かなりのスピードが要求されることもあります。
 
 ほかには、製薬会社の販促部や出版社からの依頼による文献、出版物なども多々あり、また科学ジャーナル誌の記事などを手がけることも時にはあります。
これらは当然、英日翻訳であり、対象となる読者も前述の場合と比べるとかなり多く、また読者層も広くなります。従って、日本語表現へのこだわりが重要となってくるでしょう。



ヒトが主役の ! 
 
 いずれにしても、その内容は医学、薬学、生物(遺伝子)、環境系や医療機器など多岐に渡りますが、実際にははっきり分けられるものではなく、互いに密接に関連しあっています。共通しているのは言うまでもなく、人間の身体に直接触れる内容であり、そのため全ての人にとって常に身近なテーマであるということがこの分野に「入りやすい」「はまりやすい」所以かもしれません。
 
 医学の進歩には人間の生命維持、健康維持という明確な目的があり、あくまで対象はモノではなくヒトであるという点で、特許やITなど他の分野とは大きく異なっているのではないでしょうか。このことがこの分野の最大の魅力と言えるでしょう。

 


<プロフィール>
小幡 美恵子
実務(医薬)翻訳家。東京理科大学薬学部卒。外資系企業医薬品研究開発部勤務を経て独立。翻訳会社Trials代表。新薬治験資料、科学ジャーナル記事などの翻訳を手がける。
バベルユニバーシテイにて、「メディカル翻訳講座」担当講師を務める。
 

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