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翻訳マーケット(工業一般)について - 生原 功

2013/07/10

「翻訳マーケット(工業一般)について」


生原 功:産業翻訳者、MST(翻訳専門職修士)



 「翻訳マーケットはどうなる?」と尋ねられても仕事の獲得と受けた仕事の翻訳で精一杯の毎日を送っている者にとっては、「さっぱりわかりません」と答えざるを得ません。とは言うものの、今回のテーマについて、「寄稿」のご依頼に応えなければと、可能な範囲でまとめてみました。
 
 翻訳は現状英日翻訳専業ですが、医学、薬学、生物関連など(医療機器は例外)知識や興味のない分野以外は何でも受けるようにしています。ただし、一応翻訳原稿を事前に見せて頂き、翻訳に際して大きな障害がないことだけは確認しております。
 
 実際、建築関連の高度な内容であったり、IT関連の馴染みのない分野は、自分に対応能力がないことを説明して、お断りさせて頂いております。フリーランスになりたての頃は、内容に対する対応可否の判断の仕方や自分の翻訳スピードの把握が不十分で、無理な仕事をして大変な苦労の挙句、納品した翻訳会社からその後の発注が無くなるという経験を何度かしました。
 
翻訳内容の多様性を示すために、受けた仕事の概要を大雑把にグループ分けしてご紹介しますと
 
・環境保護型溶媒、水質浄化装置、太陽光発電、風力発電プロジェクトなど環境関連
・原子力ニュース、原子力発電所技術資料、原子力事故レポートなど原子力関連
・火災警報システム、エレベーター、下水処理システムなどの工事仕様書
・鉱山、ガス田等の開発プロジェクト資料
・光学機器、バッテリーなど各種製品カタログ
・特殊車両、成形機、各種計測機器、データセンタ用キャビネット、医療機器等各種取扱説明書
・UL規格、ISO規格、欧州規格、その他規格および関連資料
・広範囲にわたる化学物質、製品のMSDS(製品安全データシート)
・企業、大学などのニュースリリース
・科学論文
・メーカー経営、教育関連の資料
 
 どんな分野でも、対応できそうなものを受けるようにしている理由は、実務翻訳に従事するようになって3年程度であり、
いろいろ経験してみないとどんなものかさっぱりわからないこと企業の研究開発部に長年勤務、急速に変化する世の中に対応し、生き残るために実にさまざまな研究開発に携わったこと自分の能力や好みに合うような分野だけに対象を絞ったら仕事がなくなることなどが挙げられます。自分が仕事で手がけたことがあるような馴染みのある内容の翻訳の打診は数%もありません。
 
 以上のことからおわかり頂けると思いますが、工業一般の翻訳マーケットが「現状どうで、今後どうなるか」と尋ねられても正直なところさっぱりわかりませんと答えるしかありません。
個人的な経験にすぎないと思われること、ただなんとなく感じていることを箇条書きにしますと以下のようになります
 

医療機器の翻訳者が足りないのか、私のような物理化学系の翻訳者に発注している傾向があります。さすがに医学、薬学系の翻訳は専門知識を持っている人に回るようです。今後医療機器を含め、医療関連はマーケットが拡大すると言われているようです。
 
英訳はどうですかと打診されることが多いです。単価が高く、比較的まとまった和訳の仕事を頂ける翻訳会社のコーディネーターの方と雑談していて伺いましたが、その翻訳会社では和訳より英訳の仕事のほうが多いそうです。業界全体としては和訳のほうが英訳より多いようですが、英訳者は和訳者より人数がかなり少ないそうなので英訳の能力を付けることは安定した収入を得る点で大変有利と思われます。
 
・いわゆるリーマンショック後、「翻訳の仕事量が大雑把に1/3~1/2減少したが、2012年頃にリーマンショック以前の量に回復した」というような話も聞きますが、ベテラン翻訳者の方には当てはまるようですが、フリーランス経験の浅い人にはまだ仕事量の回復が十分ではないのではと思われます。但し実情も、見通しも、調査したわけでもなく明確ではありません。
 

環境関連専門あるいは環境関連の受注が多い翻訳会社もあり、今後マーケットが拡大していくという人もいます。私自身は最も興味ある分野なので、積極的に仕事を受けるようにしています。
 
 
 根拠を明確に示せない個人的な感想を長々書いてしまいましたが、ここで大手翻訳会社でありながら単価が高く(一般的に大手ほど単価が低いことは多くの翻訳者に認識されているようです)、仕事の手配の手際の良さ、コーディネーターの方の対応の良さで私が気に入っている翻訳会社のホームページに記載されている有望な翻訳マーケットを簡単にご紹介します。
 

有望な分野
産業基幹である機械・電気電子分野。マニュアル類の大量翻訳が多いので、圧倒的な最大需要が当分続くことは間違いない。その割に、翻訳者は少なく優秀な翻訳者は常に不足しており、優秀な翻訳者の収入は安定。次に有望なのはIT系翻訳。その後に続くのが医薬、環境…

 
上記は、表現を変え、内容を技術翻訳に限定して編集してあります。
 
結論としまして、今後も需要が多い(対応翻訳者数は考慮していません)工業分野の翻訳マーケットは、順番で言いますと
 

1.機械・電気電子分野、2.IT分野、3.医薬分野、4.環境関連
 
ということになるでしょうか。

 


<プロフィール>
生原 功
 大学で物理学を専攻した後、素材メーカーで7年余り、フィルム・精密機器メーカーで17年余り研究開発に従事。2009年にフリーランス翻訳者になるために早期退職、2010年、バベル翻訳大学院テクニカル・サイエンティフィック翻訳専攻修了(MST)。
現在工業一般のフリーランス英日翻訳者として、翻訳関連全般の技術向上と仕事獲得のために奮闘中。 

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