- トップ
- 【連載】BRM NEWS
- 柳美里『東京上野公園口』英訳版が出版
柳美里『東京上野公園口』英訳版が出版
2019/07/08
柳美里『東京上野公園口』英訳版が出版
情報提供 : Books and Rights Marketplace
2019.06.09 柳美里『東京上野公園口』英訳版が出版
今年3月、芥川賞作家の柳美里さんの小説『東京上野公園口』の英語版が、Tilted Axis Pressより出版されました。翻訳したのは、アメリカのケンタッキー州出身の翻訳家モーガン・ジャイルズさんです。出版に当たって、今年2月にイギリスで開かれたイベント「Japan Now」で、柳さんとジャイルズさんとの対談が実現しました。
『東京上野公園口』は2014年に発表された小説で、柳さんによれば、その12年前に上野公園でホームレスの男性に出会ったことが、この小説を書くきっかけだったそうです。物語は福島県出身の和という名の男の人生を描いたものです。和は、今年4月に退位された明仁天皇と同じ年に生まれましたが、明仁天皇とは対照的な人生を送ります。1964年に開催された東京オリンピックの前年、和は、工事現場で働くために東京にやってきます。その後、何度か福島に帰りますが、息子を亡くし、妻にも先立たれて、最後には上野公園に戻ってきてホームレスとなります。柳美里さんの小説といえば、自身の心境や人生を描いた私小説が有名でしたが、この小説は柳さんにとって新境地を開いた小説といってよいでしょう。
翻訳者のジャイルズさんにとって難しかったのは福島の方言だったそうです。また、それ以上に翻訳を難しくしていたのは、会話の中で過去と未来が錯綜していて、さらにそれを情緒的な言葉で表現されていたことでした。翻訳に当たって柳さんはジャイルズさんに非常に協力的で、ジャイルズさんの様々な質問に答えてくれたとのことです。翻訳が終わるころ、柳さんはジャイルズさんを福島に招いており、これも翻訳に大きな助けになったと、ジャイルズさんはインタビューで答えています。
柳さんは神奈川県の自宅を引き払った後、現在は、福島県相馬市に住んでいます。2011年の震災と原発事故の後、人が住まなくなった土地ですが、柳さんは2015年にこの地に移住しています。その後、柳さんは自宅を改装して、ブックカフェ「フルハウス」をオープンしました。今ではここが地元の人たちとの重要な交流の場となっています。
https://scroll.in/article/917580/why-is-everyone-suddenly-reading-this-japanese-novel-the-translator-tries-to-explain
https://bit.ly/2IzEZIG
https://www.sankei.com/life/news/140430/lif1404300024-n1.html
https://motion-gallery.net/projects/fullhouse-bookcafe
2019.06.09 Japan's Akutagawa Award Winner Yu Miri's Book to be Translated

Yu Miri's "Tokyo Ueno Station," winner of the prestigious Akutagawa Award, has been translated into English and published from Tilted Axis Press. It was translated by Morgan Giles from Kentucky, USA. The two had an opportunity to meet in the UK in February, at an event called "Japan Now."
"Tokyo Ueno Station" came out in 2014. According to the author Yu, the novel is a study of poverty, how places accumulate memory and become part of what we call the past. In 2006, Yu began meeting the homeless in Ueno. She listened to their stories and learned about their lives before they came to live in the park.
One such man is Kazu, the main character of the novel, who looks back on his hardscrabble life. Born in Fukushima in 1933, the same year as the Emperor of Japan, he leaves his wife and children in search of employment, first in Tokyo, where he works in construction for the 1964 Olympics, then in Sendai. After the death of his son and wife in the 1980s, Kazu spirals into despair and homelessness. In a tent village in Ueno Park, he meets other laborers who once helped Japan’s postwar boom, spending their lives building highways, hospitals, and schools.
“Translating the dialogue, much of which is in the Tohoku dialect, required a lot of work and help from friends,” says Giles in an interview. “The main challenge was that the novel drifts between present and past, blending the two with pieces of overheard conversations and poetic descriptions. It was hard to achieve this effect in English, which needs to be much more explicit than Japanese.”
Since the book was originally published, Yu sold her home outside of Tokyo and moved to Soma-city, Fukushima. It is one of those once-deserted towns after the Great East Japan Earthquake and the nuclear power plant disaster. After the relocation, she renovated the house to open a bookstore-cafe called "Full House," which has become a lively gathering place for the local residents.
https://scroll.in/article/917580/why-is-everyone-suddenly-reading-this-japanese-novel-the-translator-tries-to-explain
https://bit.ly/2IzEZIG
https://www.sankei.com/life/news/140430/lif1404300024-n1.html
https://motion-gallery.net/projects/fullhouse-bookcafe
« カズオ・イシグロの長女、ナオミさんの小説家デビューが決定 | 話者が20人のみの希少言語で作られたカナダ映画、イギリスで公開 »
【連載】BRM NEWS
- 「翻訳文学賞」としてのノーベル文学賞を支える人たち [2019/12/23]
- マルセル・プルーストの未発表作品、フランスで出版される [2019/12/07]
- 日本国内の外国人児童約2万人、不就学の可能性 [2019/12/07]
- 「白雪姫」のモデルとなった女性の墓石が発見される [2019/11/22]
- インドの裁判所、すべての訴訟記録を現地語に翻訳 [2019/11/22]
- ノーベル化学賞受賞者の愛読書、日本で売り切れ状態に [2019/11/07]
- 台風19号の避難勧告、浜松市が翻訳ミス [2019/11/07]
- ブロンテ姉妹の自費出版を支えた祖父の秘密 [2019/10/23]
- ミシェル・オバマの回顧録が、ついに日本でも発売 [2019/10/23]
- 翻訳の世界でも、ジェンダーギャップはいまだに健在 [2019/10/07]
- 東京オリンピックに向けて、通訳の準備は万全 [2019/10/07]
- オスカー・ワイルドゆかりの建築物、売りに出される [2019/09/24]
- アメリカで出版される翻訳本の半分はわずか9か国語から [2019/09/24]
- 村上春樹、世界デビューから30年 [2019/09/07]
- 香港ブックフェア、激しいデモの中、無事に開催 [2019/09/07]
- アンデルセンの名作『人魚姫』に隠された秘密 [2019/08/22]
- 日本で国際ブックフェアが開かれなくなった理由 [2019/08/22]
- フランツ・カフカの遺稿の所有権、イスラエル国立図書館へ [2019/08/07]
- アーサー・ウェイリーの『源氏物語』が、日本語に再翻訳 [2019/08/07]
- 日本で増える残念な「外国語案内」 [2019/07/22]
編集部宛投稿メール
記事 7日間のアクセスランキング
- 1:草の根の真心、一輪の花から始まった絆が世界を救う(36pv)
- 2:第13回 すんなり入れる特許翻訳 ― 特許出願の中間手続の翻訳(29pv)
- 3:「ドラえもん」の版権無料化と著作権収支の関係(24pv)
- 4:【新連載】 第1回 特許翻訳入門 ―すんなり入れる特許翻訳-普通の英語から簡単に特許の英訳ができるようになる(24pv)
- 5:第17回 すんなり入れる特許翻訳 ― メールやレターでよく使う表現(22pv)
- 6:第2回 すんなり入れる特許翻訳-普通の英語から簡単に特許の英訳ができるようになる(21pv)
- 7:第10回 鍵は好奇心と「贈与」にある(21pv)
- 8:日本語に秘められた真理を探究する ― ことは(光透波)への誘い ― 第12回 「光透波は新時代を開く絶対理法」(20pv)
- 9:第4回 ギフテッドのOE(過興奮性)①(19pv)
- 10:【連載】JTA News & Topics 第168回(17pv)