大きくする 標準 小さくする

米軍撤退後のアフガニスタン情勢 ―アフガンは再び「帝国の墓場」となるか

2021/09/07

英文メディアで読む 第100回
 
米軍撤退後のアフガニスタン情勢
―アフガンは再び「帝国の墓場」となるか―
 






 
前田 高昭 : 金融 翻訳 ジャーナリスト
       バベル翻訳大学院プロフェッサー
 
 
  バイデン米大統領は8月30日、米軍がアフガニスタンから撤退したと発表した。撤退は、トランプ前大統領が2020年2月にイスラム主義組織、タリバンと21年5月までにアフガンより撤退することで合意したことに基づく。米軍の撤収開始に伴いタリバンは瞬く間に首都、カブールを攻略し、アフガニスタンは大混乱に陥った。これに伴い混乱の責任をバイデン政権に問う声と共に、米国の世界的威信と信認が大きく揺らぎ、アフガニスタンはかつて大英帝国や旧ソ連が介入と失敗を繰り返して勢力減退の契機となり、「帝国の墓場」といわれた歴史が再現されたとの見方も浮上する。以下に、そうしたメディアの論調を観察する。まず撤収の決断を支持する論調からみていく。(要約は後注を参照)

アフガン撤収の公約を守ったバイデン大統領:米西海岸における民主党系のリベラル派メディアとされるロサンゼルス・タイムズは、「The latest tragedy in Kabul(カブールにおける直近の悲劇)」と題する8月26日付社説で、26日にカブール空港周辺で起きたイスラム国(Islamic State)の自爆テロに触れ、この事件はバイデン政権の責任ではないと指摘したうえで、アフガン撤兵を決めたバイデン大統領の決定を支持すると明言する。その理由として、トランプ前大統領が2020年2月にタリバン(the Taliban)との直接交渉により21年5月までにアフガンより撤退(withdrawal)することについて合意し、その時期がバイデン政権下で今年8月末と決定されたと指摘、元々バイデン大統領はオバマ政権で副大統領を務めていた際、アフガン戦争の主目的であるアルカイダからのテロリスト排除という目的を達成したとしてアフガンへのさらなる介入に反対していたと述べ、戦争を開始したジョージ・W・ブッシュから4代目となる現政権で決着を付け5代目に引き継がないと宣言し、その公約を守ったのだと強調する。

正当な目標も数千人の軍隊駐留では達成できない:社説はさらに、米国民の大多数はアフガニスタンから撤退したいと思っていると述べ、事態が泥沼化して、戦争の任務と目的が明確にできなくなった場合には、目標の達成はほとんど見込まれなくなるとし、アフガン戦争は遙か以前にでそうした時点に到達していたと指摘する。その目標である対ゲリラ活動作戦(counterinsurgency)、国造り(nation-building)、女性の権利の向上などはすべて正当であるが、数千人の軍隊を敵対的な領土に留める程度の「永遠の戦争」によっては達成されないと主張する。

悲劇そのもののアフガン戦争の結末:東海岸における同じく民主党系のメディア、ニューヨーク・タイムズは「The Tragedy of Afghanistan(アフガニスタンの悲劇)」と題する8月15日付社説で、タリバンが首都、カブールを瞬く間に再制覇(reconquest)したことは、過去20年間にわたってアフガニスタンに実力のある治安部隊と世俗的な(secular)政府を確立するために驚異的な資金と血を注ぎ込んだ努力を考えると、悲劇そのものだと評する。それはまた、公民権、女性の権限向上(empowerment)、宗教的寛容というルールを世界に確立させるうえで米国が「不可欠な国家」であるという夢が、まさに夢に終わったことが悲劇的だと付け加え、さらに次のように論じる。

情け容赦のない敵の手に委ねられ少女と女性:米国にとって、これまでの最長となるこの戦争は、2兆ドル以上の戦費と少なくとも2448人の米兵の命が失われた後、何が永続的に達成されたのかという意義が見えにくくなった。状況は以前にも増して悲劇的となった。米軍と協力して夢を買い入れたアフガニスタン国民の多く、特に平等というルールを抱きしめた少女と女性が情け容赦のない(ruthless)敵の手に間違いなく委ねられてしまったからだ。戦争を終結させバイデン政権(The Biden administration)は正しかった。とはいえ、このような混乱のなかで終わらせるべきではなかった。より良いアフガニスタンを期待して多くの犠牲を払ったすべての人々に対する配慮(forethought)が余りにも足りなかったのだ。彼らは8月15日、アシュラフ・ガニ大統領を含むアフガニスタン政府の指導者らが空港に向かうなか、タリバンがカブールに押し寄せて、突然、死の危険にさらされたのである。

米国は危険に身をさらした人々の救済に全力を尽くすべし:悲惨な挫折から重要な教訓を引き出そうとしても、そうした努力は、アフガニスタン陥落への非難や他人の不幸を喜ぶ醜い気持ち、そして嘘などに引きずり込まれてしまっている。カブール陥落から数時間も経たないうちに、互いを傷つけ合う戦いが始まっていたのだ。アフガニスタン政府の崩壊のスピードは衝撃的だったが、結果は驚くべきこととして受け止められるべきではない。また、この災難はバイデン大統領にだけ突き付けるべきものではなく、撤退計画(withdrawal plans)で悪かったことを正すのは現政権の課題なのだ。米国は、軍事面での物流超大国であり、より良い未来のためにすべてを危険にさらした人々を救うために全力を尽くす(move heaven and earth)べきだ。 

腐敗、汚職、無能が横行するアフガン政権内部:ワシントン・ポスト紙に掲載されたアフガニスタン文書と、米議会が創設したアフガニスタン復興特別監察官室が行った「教訓」を特定するための機密プロジェクトは、米国とその同盟国が本格的な軍隊に育成しようとしているアフガニスタン軍の腐敗、無能、動機の欠如、その他の欠陥について壊滅的な状況を伝えている。ある海軍当局者は、アフガニスタン国民は警察をアフガニスタンで「最も嫌われている機関」と見なしていると語った。他の当局者は、兵士や将校による組織的な略奪について語り、また2001年以降6万人が殺害されたというアフガニスタンの犠牲者についての一つの推定があるが、あまりに途方もない数字なので政府は秘密にしたと報じている。汚職も余りに横行していたので、多くのアフガニスタン人は、政府とタリバンでは、どちらがより大きな悪なのかと問い始めていたのだ。

歴代大統領にも責任がある戦争の顛末:さらに歴代の米大統領の責任についても、ジョージ・W・ブッシュはアフガン戦争を始めておいて情勢が少しも安定しないうちにイラクに力点を移してしまい、バラク・オバマは撤兵を求めながら増兵し、ドナルド・トランプはタリバンと昨年5月までに完全に撤退するとの和平協定に署名したと批判する。ただし、この戦争に米大統領として最終的に終止符を打つ決断を下したバイデン氏については、批判を覚悟した勇気と知恵が必要とされる決断だったと述べる一方で、トランプ前大統領が2020年にタリバンと結んだ和平協定について、タリバンを軍事的に強い立場のおいたと批判しているのは、やや不誠実だと指摘する。

アフガンは再び「帝国の墓地」となったか:上記のように論じた記事は、この大敗(debacle)の責任は国防総省と米議会が分担するに値すると述べ、アフガニスタンの将来を余りにも屡々バラ色に報告したことについても勿論、責任があると指摘する。しかし、米国や同盟国が別な行動を取れたこと、あるいは取るべきだったこと、そして「帝国の墓地」(graveyard of empires)としてのアフガニスタンに関する使い古された決まり文句が再び検証されたかどうかということは、政治家、評論家、歴史家を今後何年も費やして議論すべきだと主張する。

容易でない米国の信頼性の回復:上記のようなバイデン政権の決定を支持もしくは擁護する論調に対して、これを批判する厳しい見方もある。独立系のブルームバーグは8月20日付社説「Can the U.S. Recover From the Afghanistan Debacle ?(米国はアフガニスタンでの大敗から復調できるか)」で、不手際な撤退(mismanaged exit)は友好国を傷つけ、ライバルやテログループを勇気づけており、その影響は永続的だと述べ、信用回復は容易ではないと次のように論じる。米国のアフガニスタン撤退に関するバイデン米大統領の弁明は、配慮に欠け(callous)、利己的(self-serving)で、説得力がなく、とりわけ、まことに当を得ていない。問題はもはや米軍が留まるべきだったかどうかではない。米国がこのひどく無様な撤退によって受けた被害を最小限に抑える方策である。米国の信頼性は壊滅的な打撃を受け、この大失敗からの回復には、長く骨の折れる努力が必要だ。

バイデン大統領は失敗を認め、米国と同盟国の人々を避難させるべし:まず真実を語ることから始めなければならない。これまでのところ、大統領はこの不幸な出来事(misadventure)を失敗として認めようとしていない。バイデン大統領は正直であるべきであり、安易に自身の弁護に走ってはならない。次に米国とその同盟国の人々を確実に避難させるべきだ。米国は、米国ビザの資格を持つアフガン人がカブール空港に安全に辿り着き、空港から飛び立つまで航空機を飛ばし続ける必要がある。これには、米軍に直接勤務したアフガン人だけでなく、第三国からのビザを正式に申請することになっている米国を拠点とするメディアや援助組織に所属するアフガン人も含まれるべきだ。

米国は難民危機の回避のための世界的取り組みを主導すべし:米国はまた、広範な難民危機(refugee crisis)を回避するために世界的な取り組みを推進すべきだ。すでに数百万人のアフガニスタン難民を収容しているイランやパキスタンなどの近隣諸国は、さらなる難民に対しては国境を閉ざしている。欧州の政府は、庇護希望者(asylum-seekers)が西側に入国することに警告を発している。米国は率先して模範を示し、入国について公平なシェアを約束する必要がある。さらに国内にとどまり人道危機に直面しているアフガン人にも支援の手を差し伸べるべきだ。また以前、南ベトナム人とキューバ人のために確立されたのと同様の新しい人道的パロール・プログラムが必要だ。そうすれば、庇護希望者と他の弱者のアフガニスタン人をグアムまたは米国本土に直接送る対応が可能となる。

アフガン撤退は欧州の同盟諸国にとって衝撃:共和党系のウォール・ストリート・ジャーナルは8月20日付社説「How Biden Broke NATO(日本版記事:【社説】米軍のアフガン撤退で同盟国に衝撃と怒り)」で、アフガン戦争は北大西洋条約機構(NATO)の作戦だったと述べ、そこでの失態の最も深刻な影響は、米国と同盟諸国、特に欧州の同盟諸国との関係が損なわれたことだと指摘する。NATO加盟国はこの戦争に1100人以上の血と何十億ドルもの資金を注ぎ込んだが、これはNATO創設の基盤である北大西洋条約の集団的自衛権規定(mutual self-defense clause)に基づく義務を各国が履行した結果だったと解説する。欧州の同盟諸国にとっては、4000万の人口を抱えるアフガンが崩壊し、大量の難民が欧州に押し寄せる事態を招いたり、テロ(terrorism)の新たな温床(breeding ground)となったりするのを防ぐのが重要な課題だったと付け加え、さらにバイデン大統領の失敗は、米国の「大人になった」リベラル陣営の国際派が、共和党のトランプ支持派の一部と同じくらい国際的役割に消極的な点について、赤裸々な証拠を示してしまったことにあると述べ、概略次のように論じる。

アフガン撤退に怒る独仏英らの指導者:同盟国は米国の撤退を望んでいなかったにもかかわらず、バイデン大統領はそれを実行した。撤退のまずいやり方(botched execution)のために、NATOは何千人もの自国民のほか、戦争で各国の取り組みを支援してきたアフガン人通訳を含む何千人もの人々を空路で緊急に救出しなければならない事態に陥った。欧州の指導者らが激怒するのも無理はない。ベン・ウォレス英国防相はインタビューで、トランプ、バイデン両氏とタリバンとの合意が「腐った取引」だと述べた。アフガン戦争に従軍した英下院外交委員会のトム・トゥゲンハート委員長は議会で、アフガン軍の臆病を撤退の理由にしたとして、バイデン氏を「恥ずべき人物」と指摘した。メルケル独首相は自らが所属する保守政党に対し、バイデン氏が「国内の政治的な理由で」撤退したとみていると述べた。同首相の後任候補であるキリスト教民主同盟(CDU)のアルミン・ラシェット党首はアフガン撤退が「NATO設立以降最大の失敗であり、われわれは重大な変化を目前にしている」と述べた。マクロン仏大統領は2019年、「NATOは脳死状態にある」と発言して強い反発を受けたが、トランプ氏が大統領でいようがいまいが、米国は同盟国として信頼性が薄れている、と警告した。

米国とバイデン大統領の信頼性に疑問符が付いたアフガン撤退:他の同盟諸国も気づいている。台湾の蔡英文総統は今週、米国のアフガン撤退を受け「台湾の唯一の選択肢は、より強くなって団結し、自主防衛の意識を高めることだ」と述べた。これは示唆に富む発言(telling remark)だ。バイデン大統領が、アフガニスタン撤退の理由の一つに、東アジアへの安全保障資源の配分強化を挙げていたからだ。しかし結果として、バイデン氏による混乱だらけのほとんど無頓着(callous)とも言える撤退で、米国の信頼性に疑問符が付いてしまった。バイデン氏は外交問題に詳しいと主張しているが、それほど外交問題を分かっている大統領なら、自分が行った恥ずべき(disgraceful)アフガン撤退が米国の同盟関係や国際的評価に与えた打撃の深さを理解できるはずだ。バイデン大統領はもはや、これまでのように信頼されることはないだろう。 
 
米国の世界における地位を変化させたアフガン危機:8月18日付ワシントン・ポストは「Afghanistan’s crisis underscores the U.S.’s shifting place in the world(米国の世界における地位の変化を明示するアフガン危機)」と題する記事で、1956年のスエズ運河危機以来の外交政策上の惨事であり、1975年の恥ずべきサイゴン陥落(ignominious fall of Saigon.)を思い出させるなどの専門家の論評を紹介しつつ、しかしバイデンにとって、アフガニスタンにおける米国の「信頼性」の問題は最優先事項ではないようだと評し、バイデン大統領は、「すべてが自分にとって同じように重要であるならば、何も重要でないことになる。脅威が最も大きい場所に焦点を当てるべきだ、と語っていると伝える。

敗北を受け入れたバイデン大統領:記事はそのうえで、バイデン大統領は、もっと過激なことをした、つまり、敗北(defeat)を受け入れたのだとの、カーネギー国際平和基金(the Carnegie Endowment for International Peace)のシニアフェロー、スティブンヴェルトライムのコメントを紹介する。同氏は「敗北を受け入れることによってのみ、アフガニスタンはタリバンなき未来という約束を信じて裏切られた女性や少女を含め、貴重な失われた命と資源を悼むことができ、また米国の指導者は撤退を強く支持する米国民と同列に立って何十年もの不信感を修復できる」と付け加えたと述べる。記事はさらに、確かに米同盟国の失望や米政府専門家の不信感にもかかわらず、ホワイトハウスは好景気から取り残された国民の姿勢を頼りにしているようだと述べ、新しい世論調査によると、米国民の10人に6人が、アフガン戦争は戦う価値がないと考えており、多くの国民が国外よりも国内過激派(extremist)の脅威を懸念していることが分かったと報じる。

中産階級のための外交と国内政策を考えるバイデン政権:次いで記事は、概略次のように論じる。そのためにバイデンと側近は、国内での国造りポピュリズムのともいうべき「中産階級のための外交政策」の考えを繰り返し訴えている。批判者はアフガニスタンの出来事を、人権と民主主義に関するバイデンの高尚なレトリックのための弔いの鐘(the death knell)として見るかもしれない。タリバンがアフガニスタンの女性と少女にとっての進歩を逆転させ始めている間、米国は傍観していたからである。しかし撤退の支持者は、米国が再び政策の焦点を、権威主義的な中国への対応と国内で深く二極化した社会(polarized society)の強化に当てることによって、リベラルな民主主義の大義に奉仕できるようになると反論するかもしれない。 

歴史の大分岐点となるかもしれないカブールのホラー:スタンフォード大学の政治理論学者フランシス・フクヤマは、エコノミスト誌のエッセイの中で、カブールの恐怖は「アメリカが世界から目をそむけるに伴い、世界史の大きな分岐点(juncture)を示すかもしれない」と示唆した。しかし実際には、「アメリカの時代の終わりははるかに早く来ていた」と続けている。アフガン戦争は、世界の舞台で米国の覇権に疑問の余地がなかった短い時期に遂行された。その時代はもう終わるかもしれないし、米国のリーダーシップは新しい問題に対応するために回帰している。フクヤマ氏は「アメリカの弱さと衰退の長期的な原因は、国際的というよりも国内にある」と書いている。「米国はなお長年にわたって大国であり続けるだろうが、それがどれほど影響力を持つのかは、外交政策ではなく、国内の問題を解決する能力にかかっている」

危険に身をさらした人々に注意を払うべきだったバイデン政権:こう論じた記事は、最後に次のように主張する。ここはやや長いが原文を読んで翻訳してみよう。        

It has long been clear that an American withdrawal, however or whenever conducted, would leave the Taliban poised to seize control of Afghanistan once again. The war needed to end. But the Biden administration could and should have taken more care to protect those who risked everything in pursuit of a different future, however illusory those dreams proved to be.

「しかし米国の撤退が、どのように、何時行われたとしても、タリバンが再びアフガニスタンの支配権を握ることになるのはずっと以前から明らかだった。戦争は終わる必要があった。しかしバイデン政権は、異なる未来を追求するためにすべてを危険にさらした人々を守るために、もっと注意を払うことができたはずであり、またそうすべきだった。そうした夢は今思えば、いかに儚いものであったにしても」

中国は米国よりうまく対応できるか:最後に中国の動きについてみていく。8月30日付米タイム誌は[China Sees Opportunity After America's Withdrawal From Afghanistan. But Can Beijing Do Any Better ?(米国撤退後のアフガニスタンを好機と捉える中国、米国よりうまく対応できるか)」と題する記事で、中国の国営(state-run)環球時報は「アフガニスタンでの災害は、米国とその同盟国によって引き起こされた」と伝え、 国営通信社の新華社は「米国がアフガニスタンに本当に残したものは、死、流血、そして途方もない人道的悲劇(humanitarian tragedy )だ」と報じたと述べる。

米国主導の侵攻に反対しなかった中国:しかし中国は2001年に米国主導の侵攻(U.S.-led invasion )に反対しなかった。実際、中国政府はアフガニスタンのタリバンを追放する国際的な努力を支援する国連安保理決議を支持し、当時の江沢民(Jiang Zemin)国家主席はアルカイダ(Al Qaeda)の過激派が国境を越えて平穏な新疆ウイグル自治区に侵入することを懸念していた。そしてタリバン崩壊後わずか数日後となる2001年12月、中国は外務省の代表団をカブールに送り、ハミド・カルザイ新大統領にお祝いのメッセージを届け、1か月後には江主席が同大統領を北京でもてなしている。

タリバンとの繋がりを維持する中国:しかし、中国国営メディアが現在のタリバンを01年に追放されたグループよりも穏健なグループとして伝えているため、このことは現在見過ごされている。共産党機関紙、人民日報は、タリバンの勝利を毛沢東の「人民戦争」戦術(“people’s war” tactic)によるためとして称賛している。そして実用主義者である中国政府は、カブールで誰が権力を握っていたかに関係なく、常にタリバンとのつながりを維持してきた。9.11事件が世界を驚かせる前の2000年に中国のパキスタン大使は、当時のタリバンの首長であるムラ・オマールと会談している。2015年、中国は新疆ウイグル自治区の首都ウルムチでタリバンとアフガニスタンの当局者間の交渉を主催し、4年後にはタリバンの代表団が北京を訪問している。

パキスタン、アフガニスタン、イラン、イラクを含む勢力圏を考える中国:先月、タリバンによる制圧がいよいよ明白になるなか、中国の王毅(Wang Yi)外相は中国北東部の港湾都市、天津で9人の強力なタリバン代表団を迎えた。 そこで王外相は、武装勢力を「極めて重要な軍事的および政治的勢力」と呼んだ。西オーストラリア大学のイスラム国家社会センターのサミナ・ヤスミン所長は、中国はパキスタンを超えてアフガニスタン、イラン、イラクを含む勢力圏(zone of influence)を形成しようと考えていると述べる。ただし中国がアフガニスタンを再建できるとすれば、そのモデルは西側よりも優れたものでなければならないことが前提(supposition)になる。 

米国撤退による空白に介入する準備ができている中国:インドは2016年、グワダル(Gwadar。パキスタン南西部の港湾都市。中国新疆ウイグル自治区のカシュガルに至る中国・パキスタン経済回廊及びそれを含めた一帯一路構想の要衝として開発が進行中 )の戦略的ライバルと見なされていたイランのチャバハール港に対する5億ドルの投資案件に署名した。 それ以来、インド・イラン関係は米国からの圧力を受けて緊張しているが、中国政府は3月にイラン政府と25年間に4000億ドルを投資する契約を結んだ。 一部の戦略家は、中国はチャバハールを乗っ取り、アフガニスタンを通る回廊で中国と結びつけるうえで好位置につけたと考えている。「中国がパキスタンからアフガニスタンまで一帯一路を延長できれば(たとえば、ペシャワールからカブールへの高速道路で)、中東の市場にアクセスするために短距離の陸路が開かれることになろう」 とニューヨーク・タイムズの論説欄に元人民解放軍大佐の周保が書いている。周氏は「中国は絶好の機会を生かすために、米国の撤退によって生まれた空白に介入する準備ができている」と付け加えた。

アフガニスタンは中国にとっても「帝国の墓地」となる可能性:しかしアフガニスタンは、何のいわれもなく「帝国の墓地(graveyard of empires)」と呼ばれているわけではない。中国は、その「開発による平和」モデルで、チベットと新疆を全面的に鎮圧するのに完全に失敗している。中国の海外活動に関する記録はまだら模様だ。ミャンマー、ベネズエラ、スーダンなどでは多大な影響力を獲得しているが、他の諸国では争いによって絶え間なく力を無駄遣いしている。天津で王外相は、タリバンに対してテロリストグループ、特に新疆ウイグル自治区で攻撃を開始した東トルキスタンイスラム運動との間に「一線を画す」よう要求した。 しかしタリバン指導部がその7万人の戦闘員の間に政治的規律(political discipline)を維持できるかどうかは別問題である。同じことが、広大で隙間だらけ(porous)の領域を監視するタリバンの能力にも当てはまる。先週木曜日のカブール空港での自爆テロは、タリバンの支配が決して絶対的なものではないことを示している。自爆テロの加害者は、タリバンのチェックポイントをすり抜けたわけだが、それはよく解釈してもタリバンの失策であり、最悪の場合は共謀(collusion)を示唆している。

中国を「新帝国主義者」と攻撃するアルカイダ:上記のよう論じた記事はさらに、中国はパキスタンにおいてイスラム武装組織に襲われていると述べ、そうした組織としてパキスタン・タリバンを挙げ、次のように報じる。中国はパキスタンの州の主要な地元スポンサーであったため、中国のインフラストラクチャに対する攻撃は、主に分離主義者グループ(通常はグワダル港に拠点を置くバロチスタンから)によって行われていた。しかし、パキスタンのタリバンのような過激派イスラム主義者は中国を標的とする活動を強化している。これは広範なジハード主義運動の十字線上に中国が登場したことを示している。ウイグル人イスラム教徒の迫害(persecution)に怒りを募らせたアルカイダの信奉者(ideologues)は、中国を「新帝国主義者」として語り始めた。

結び:以上のようにメディアは、バイデン大統領のアフガン戦争終結の決断について賛成、批判、反対の論調を多角的に展開する。その論点を整理すると、

 第1に、戦争終結の決断は正しいという指摘の正しさは疑いないだろう。事実、米国民の大多数も撤退を望んでおり、また目標が正当でも数千人の軍隊駐留では達成できないという主張も、そのとおりである。何よりも、これ以上の悲劇を継続させるべきではないだろう。崩壊したアフガニスタン政府と軍、警察の腐敗振りや、歴代米大統領の失政も、終結の正当性を後押しするだろう。

 第2に、アフガニスタンの良き未来を期待して多くの犠牲を払った人々に対する配慮が余りにも足りなかったという指摘である。そうした人々を救うために全力を尽くすべきだとの主張は当然だが、問題は、いかに達成するかである。夢を求めて協力したアフガン国民の脱出支援だけでなく、女性や少女の窮状を、どのように救済するか、という問題は、引き続きバイデン政権として無視できない課題である。
  
 第3に、メディアは不手際な撤退が友好国を傷つけ、ライバルやテログループを勇気づけており、その影響は永続的だと厳しく批判していることである。具体的には、アフガン戦争は北大西洋条約の集団的自衛権規定に基づく義務を欧州各国が履行したNATO作戦だったと述べ、台湾の蔡英文総統も米国のアフガン撤退を受け「台湾の唯一の選択肢は、より強く団結し、自主防衛の意識を高めることだ」と語ったと伝える。この発言は似たような立場にある日本としても、十分留意しておくべきだろう。さらにメディアは、公民権、女性の権限向上、宗教的寛容というルールを世界に確立させるうえで米国が「不可欠な国家」であるという夢が潰えさり、大人になったはずの米リベラル陣営国際派が、共和党のトランプ支持派と同じくらい国際的役割に消極的なことをさらけ出したと弾劾する。メディアは、修復策の一つとして、米国が難民危機の回避のための世界的取り組みを主導することなどを挙げているが、米国はアフガンや中央アジア地域の安定のために引き続き外交面で関与すべきであろう。

 第4に、同盟国の信頼を揺るがした米国の世紀がついに明解な形で終わりを告げたのではないか、との問題提起である。メディアは、アフガン危機は米国の世界における地位の変化を明示すると述べ、アフガン戦争は人権と民主主義に関するバイデン大統領の高尚なレトリックの弔鐘となるかもしれないとの見方を紹介する。そのうえで「帝国の墓地」としてのアフガニスタンに関する決まり文句が再び検証されたかどうかは、政治家、評論家、歴史家を今後何年も費やして議論すべきだと主張する。同時に注視すべきは、フランシス・フクヤマ氏の「アメリカの弱さと衰退の長期的な原因は、国際的というよりも国内にある。米国はなお長年にわたって大国であり続けるだろうが、それがどれほど影響力を持つのかは、外交政策ではなく、国内の問題を解決する能力にかかっている」とのコメントであろう。そのためにバイデン政権は、国内での国造りポピュリズムのともいうべき「中産階級のための外交政策」の考えを繰り返し訴えていると伝える。米国の衰退が、アフガン戦争とは別に、深く二極化した社会という国内要因にあると指摘している点に注目したい。

 最後に第5は、台頭する中国との関連である。メディアは、タリバンと常時つながりを維持してきてきた中国は、米国撤退後のアフガニスタンを好機として捉え、パキスタンを超えてアフガニスタン、イラン、イラクを含む勢力圏の形成を意図していると伝える。中国の真意をある程度捉えた報道と思われるが、中国としては、アフガンから撤退した米国が新たな軍事資源を対中戦略に注ぎ込む方針であることを考慮する必要があろう。またメディアは、中国が米国よりもうまく対応できるかと問題提起し、アフガニスタンは、何のいわれもなく「帝国の墓地」と呼ばれているわけではないと述べ、中国がアフガニスタンを再建するには、西側よりも優れたモデルを創出することが前提になると指摘する。的確な指摘といえよう。

 パキスタン・タリバンのような過激派イスラム主義者が中国を標的とする活動を強化し、また王毅外相がタリバンに対してテロリストグループ、特に新疆ウイグル自治区で攻撃を開始した東トルキスタンイスラム運動との間に「一線を画す」よう要求したと報じられている。さらにウイグル人イスラム教徒の迫害に怒りを募らせたアルカイダの信奉者は、中国を「新帝国主義者」として語り始めたという。こうした厳しい情勢のなか、中国としても、タリバン支配下のアフガンに対しては慎重に対応せざるを得ないだろう。米国撤退後のアフガニスタンは、もう一つの超大国、中国にとって好機であるかもしれないが、一歩間違えると、その「帝国の墓場」へと変貌する可能性を秘めている。

(注)要約:ロサンゼルス・タイムズは、バイデン大統領はオバマ政権で副大統領を務めていた際、アフガニスタンへのさらなる介入に反対していたと述べ、戦争を開始したジョージ・W・ブッシュから4代目となる現政権で決着を付け5代目に引き継がないと宣言し、その公約を守ったと強調する。さらに米国民の大多数はアフガニスタンから撤退したいと思っており、正当な目標も数千人の軍隊駐留では達成できないと主張する。

 ニューヨーク・タイムズは、戦争を終結させバイデン政権は正しかったが、より良いアフガニスタンを期待して多くの犠牲を払ったすべての人々に対する配慮が余りにも足りなかったと指摘、過去20年間にわたってアフガニスタンに実力のある治安部隊と世俗的な政府を確立するために2兆ドル以上の戦費と少なくとも2448人の米兵の命を注ぎ込んだ努力を考えると、悲劇そのものだと評する。また公民権、女性の権限向上、宗教的寛容というルールを世界に確立させるうえで米国が「不可欠な国家」であるという夢が、まさに夢に終わったことが悲劇的であり、米軍と協力して夢を買い入れたアフガン国民の多く、特に平等というルールを抱きしめた少女と女性が情け容赦のない敵の手に間違いなく委ねられてしまった状況は以前にも増して悲劇的となった。しかしこの災難はバイデン大統領にだけ突き付けるべきものではなく、撤退計画で悪かったことを正すのは現政権の課題だと述べ、米国は良き未来のためにすべてを危険にさらした人々を救うために全力を尽くすべきだと主張する。
 
 またアフガニスタンの軍部の腐敗、無能、動機の欠如、その他の欠陥や、警察が「最も嫌われている機関」と見なされていること、兵士や将校による組織的な略奪、2001年以降6万人殺害の情報、汚職の横行などを伝え、多くのアフガン人は、政府とタリバンでは、どちらがより大きな悪なのかと問い始めていると報じる。歴代の米大統領の責任についても、ジョージ・W・ブッシュはアフガン戦争を始めておいて情勢が少しも安定しないうちにイラクに力点を移してしまい、バラク・オバマは撤兵を求めながら増兵し、ドナルド・トランプはタリバンと昨年5月までに完全に撤退するとの和平協定に署名したと批判する。ただしバイデン氏については、批判を覚悟した勇気と知恵が必要とされる決断だったと評価する。

 そのうえで大敗の責任は、アフガニスタンの将来を余りにもバラ色に報告したことも含めて、国防総省と米議会が分担するに値すると述べる。しかし、米国や同盟国が別な行動を取れたこと、あるいは取るべきだったこと、そして「帝国の墓地」としてのアフガニスタンに関する使い古された決まり文句が再び検証されたかどうかは、政治家、評論家、歴史家を今後何年も費やして議論すべきだと主張する。

 ブルームバーグ社説はバイデン政権の対応を厳しく批判する。不手際な撤退は友好国を傷つけ、ライバルやテログループを勇気づけており、その影響は永続的だと述べ、問題は、米国がこのひどく無様な撤退によって受けた被害をいかに最小限に抑えるかだが、米国の信頼性は壊滅的な打撃を受け、この大失敗からの回復には、長く骨の折れる努力が必要だと警告する。まず真実を語ることから始めるべきだとし、次に米国とその同盟国の人々をアフガンから確実に避難させることだと述べ、軍に直接勤務したアフガン人と米国を拠点とするメディアや援助組織に所属するアフガン人の脱出を支援すべきだと主張する。さらに米国は難民危機の回避のための世界的取り組みを主導すべきだとし、米国は広範な難民危機を回避するために世界的な取り組みを推進すべきだと提言する。そのために以前、南ベトナム人とキューバ人のために確立されたのと同様の新しい人道的パロール・プログラムが必要だと提言する。

 ウォール・ストリート・ジャーナル社説は、アフガン戦争は北大西洋条約機構(NATO)の作戦だったと述べ、そこでの失態によって欧州の同盟諸国との関係が損なわれたと指摘、NATO加盟国がこの戦争に1100人以上の血と何十億ドルもの資金を注ぎ込んだのは北大西洋条約の集団的自衛権規定に基づく義務を各国が履行した結果だったと述べる。欧州諸国は、アフガン崩壊によって大量の難民が欧州に押し寄せる事態やテロの新たな温床となるのを防ぐのが重要な課題だったと述べ、バイデン大統領の失敗は、米国の「大人になった」リベラル陣営の国際派が、共和党のトランプ支持派の一部と同じくらい国際的役割に消極的な点について赤裸々な証拠を示してしまったことにあると指摘する。 

 不手際な撤退に欧州の指導者らが激怒するのも無理はないと述べ、ウォレス英国防相の、トランプ、バイデン両氏とタリバンとの合意は「腐った取引とのコメントや英下院外交委員会のトゥゲンハート委員長の、バイデン氏は「恥ずべき人物」との批判、独キリスト教民主同盟(CDU)のラシェット党首の「NATO設立以降最大の失敗」との発言、さらにマクロン仏大統領の、トランプ氏が大統領でいようがいまいが、米国は同盟国として信頼性が薄れている、との警告などを伝える。

 他の同盟諸国について、台湾の蔡英文総統が米国のアフガン撤退を受け「台湾の唯一の選択肢は、より強くなって団結し、自主防衛の意識を高めることだ」と述べたと伝え、これは示唆に富む発言)だと論評する。バイデン大統領が、アフガニスタン撤退の理由の一つに、東アジアへの安全保障資源の配分強化を挙げていたからだと述べる。バイデン氏による混乱だらけの無頓着とも言える撤退で、米国の信頼性に疑問符が付いたとし、バイデン大統領はもはや、これまでのように信頼されることはないだろうと指摘する。 

 ワシントン・ポスト記事は、アフガン危機は米国の世界における地位の変化を明示すると述べ、バイデンにとって、アフガニスタンにおける米国の「信頼性」の問題は最優先事項ではないようだと指摘する。そのうえで、バイデン大統領は、もっと過激なことをした、つまり、敗北を受け入れたのだとの専門家のコメントを紹介する。同氏は「敗北を受け入れることによってのみ貴重な失われた命と資源を悼むことができ、また米国の指導者は撤退を強く支持する米国民と同列に立って何十年もの不信感を修復できる」と付け加えたと報じる。さらに、ホワイトハウスは好景気から取り残された国民の姿勢を頼りにしているようだと述べ、世論調査によると、米国民の10人に6人が、アフガン戦争は戦う価値がないと考えており、多くの国民が国外よりも国内過激派(extremist)の脅威を懸念していることが分かったと報じる。

 そのためにバイデンと側近は、国内での国造りポピュリズムのともいうべき「中産階級のための外交政策」の考えを繰り返し訴えている。批判者はアフガニスタンの出来事を、人権と民主主義に関するバイデンの高尚なレトリックのための弔いの鐘として見るかもしれない。タリバンがアフガニスタンの女性と少女にとっての進歩を逆転させ始めている間、米国は傍観していたからである。しかし撤退の支持者は、米国が再び政策の焦点を、権威主義的な中国への対応と国内で深く二極化した社会の強化に当てることによって、リベラルな民主主義の大義に奉仕できるようになると反論するかもしれない。 

 こう論じた記事は、カブールのホラーは歴史の大分岐点となるかもしれないと次のように伝える。スタンフォード大学政治理論学者フランシス・フクヤマは、カブールの恐怖は「アメリカが世界から目をそむけるに伴い、世界史の大きな分岐点となるかもしれない」と示唆し、実際には、「アメリカの時代の終わりははるかに早く来ていた」と続けている。フクヤマ氏は「アメリカの弱さと衰退の長期的な原因は、国際的というよりも国内にある。米国はなお長年にわたって大国であり続けるだろうが、それがどれほど影響力を持つのかは、外交政策ではなく、国内の問題を解決する能力にかかっている」。

 最後に中国の動きについてみていくと、米タイム誌は、米国撤退後のアフガニスタンを好機と捉える中国は、米国よりうまく対応できるかと問題提起する。中国は2001年に米国主導の侵攻に反対せず、アフガニスタンのタリバンを追放する国際的な努力を支援する国連安保理決議を支持したと指摘、当時の江沢民国家主席はアルカイダの過激派が国境を越えて新疆ウイグル自治区に侵入することを懸念していたと述べる。また中国政府は、カブールで誰が権力を握っていたかに関係なく、常にタリバンとのつながりを維持してきたと報じ、2000年に中国のパキスタン大使は、当時のタリバンの首長と会談、2015年には中国は新疆ウイグル自治区の首都ウルムチでタリバンとアフガニスタンの当局者間の交渉を主催し、先月、王毅外相は天津でタリバン代表団を迎え、王外相は、武装勢力を「極めて重要な軍事的および政治的勢力」と呼んだと伝える。

 さらに中国はパキスタンを超えてアフガニスタン、イラン、イラクを含む勢力圏を形成しようと考えているとの専門家の見方を報じる。中国政府は3月にイラン政府と25年間に4000億ドルを投資する契約を結んだが、一部の戦略家は、中国はイランの港湾都市の一つを乗っ取り、アフガニスタンを通る回廊で中国と結びつけるうえで好位置につけたと考えている。「中国がパキスタンからアフガニスタンまで一帯一路を延長できれば、中東の市場にアクセスするために短距離の陸路が開かれることになろう」 とニューヨーク・タイムズの論説欄に元人民解放軍大佐の周保が書いている。周氏は「中国は絶好の機会を生かすために、米国の撤退によって生まれた空白に介入する準備ができている」と付け加えた。

 こう報じた記事は、ただし中国がアフガニスタンを再建できるとすれば、そのモデルは西側よりも優れたものでなければならないことが前提になるとし、アフガニスタンは、何のいわれもなく「帝国の墓地」と呼ばれているわけではないと論評する。中国は、その「開発による平和」モデルで、チベットと新疆を全面的に鎮圧するのに完全に失敗しており、また海外活動に関する記録もまだら模様だと述べる。ミャンマー、ベネズエラ、スーダンなどでは多大な影響力を獲得しているが、他の諸国では争いによって絶え間なく力を無駄遣いしている。天津で王外相は、タリバンに対してテロリストグループ、特に新疆ウイグル自治区で攻撃を開始した東トルキスタンイスラム運動との間に「一線を画す」よう要求した。 

 しかしタリバン指導部がその7万人の戦闘員の間に政治的規律を維持できるかどうかは別問題である。同じことが、広大で隙間だらけの領域を監視するタリバンの能力にも当てはまる。先週木曜日のカブール空港での自爆テロは、タリバンの支配が決して絶対的なものではないことを示している。自爆テロの加害者は、タリバンのチェックポイントをすり抜けたわけだが、それはよく解釈してもタリバンの失策であり、最悪の場合は共謀を示唆していると指摘する。

 また中国はパキスタンにおいてイスラム武装組織に襲われていると述べ、パキスタンのタリバンの存在を挙げる。パキスタン・タリバンのような過激派イスラム主義者が中国を標的とする活動を強化しているのは、広範なジハード主義運動の十字線上に中国が登場したことを示していると述べ、ウイグル人イスラム教徒の迫害に怒りを募らせたアルカイダの信奉者は、中国を「新帝国主義者」として語り始めたと指摘する。    

 
                                                           
前田 高昭
金融翻訳ジャーナリスト、社団法人 日本翻訳協会 会員、翻訳家。
訳書に『チャイナCEO』他。
『東アジアニュースレター』も配信中。

編集部宛メールフォーム

お名前:必須

Eメールアドレス:必須

Eメールアドレス(確認用):必須
(確認の為、同じものをもう一度入力してください)

記事タイトル:必須


メッセージ:必須

ファイル添付:

記事一覧