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コロナウイルス禍の現状  ― 東西で深まる影響の明暗と分断

2020/11/07

英文メディアで読む 第90回
 
コロナウイルス禍の現状
―東西で深まる影響の明暗と分断
 






 
前田 高昭 : 金融 翻訳 ジャーナリスト
       バベル翻訳大学院プロフェッサー
 
 

 今回は第2波、3波と世界を襲っているコロナウイルス禍の現状を観察する。主要メディアは、その影響の明暗が東西で分かれ、米欧とアジア諸国、特に東アジアとの分断が深まり、世界を分裂させていると次のように伝える。なお要約を末尾の(注)に掲載。

生活を正常化するアジア:10月20日付ウォール・ストリート・ジャーナルは「Covid-19’s Global Divide: As West Reels, Asia Keeps Virus at Bay(コロナウイルス、東西の分断:西は再流行、東は封じ込め)」と題する記事で、コロナウイルスが米欧で再び猛威をふるっているが、アジアでは普段の生活に戻っていると伝え、9月の新規感染者は中日韓、シンガポール、香港合算で1日当たり1000人を下回っているが、米国1国で同5万6000人に達し、また今春、都市閉鎖(lockdowns)で感染拡大の防止に成功した欧州も、第2波に襲われ、このところ1日平均の感染者数は8万8000人と以前より増加していると報じる。

パンデミック疲労を募らせる米欧:記事はさらに次のように論じる。世界は事実上分裂(split)している。早い段階で流行封じ込めに迅速に動いたアジア諸国は、ウイルスとの戦いを持続しているが、米国と欧州はパンデミック疲労を募らせ、対面距離(social distancing)をとる姿勢に緩みが出て、これが再発(resurgence)抑制の努力を複雑にしている。感染者が増加するにつれて、西側政府は検査不足に苦しみ、接触者追跡も効果を発揮しなくなっている。西側諸国の多くは、生活を正常に戻す望みを専らワクチンに託している。

アジアがウイルス抑制に成功した諸要因:他方、アジアは概ね全国的なロックダウンなしに、ウイルスを抑制できた。政府は積極的な接触者追跡に努め、感染者を隔離するための検疫プログラムや厳格な国際旅行規制を実施した。文化の違い、首尾一貫したメッセージ、そしてサーズ(重症急性呼吸器症候群。Severe acute respiratory syndrome)やマーズ(中東呼吸器症候群。Middle East respiratory syndrome)に基づく経験によって、マスクの着用や、いくつかの国では立ち入った(intrusive)政府の介入などの習慣がアジアでは西側より幅広く受け入れられたのである。インペリアル・カレッジ・ロンドンと同じく英国のYouGov社による最近の世論調査によれば、東アジアでは毎日の感染は低水準にあるが、米欧よりもマスクを着用し、手を消毒する度合いが依然として高いという。感染に対する警戒心はアジアの人々の方が高く、先月、ウイルス感染を恐れていると回答した者が韓国では80パーセント、米国では58パーセント、スペインでは45パーセントだった。 

厳しい隔離規則を守るアジア:アジア全域で厳しい隔離規則(Stringent quarantine rules)が大きな違いを生み出した。米国や欧州のように自宅隔離するのではなく、ウイルスキャリアは、軽度または症状がなくても、通常、政府が運営する施設に収容されている。ベトナム、香港、シンガポールなどの国では、濃厚接触者(close contacts)も隔離施設にとどまらなければならない。欧米諸国では、隔離規則の遵守は徹底していない。英国ではウイルス発症者と同居者は、14日間在宅を勧奨されている。しかし先月発表されたキングス・カレッジ・ロンドンの調査によると、これらの規則に対する国民の遵守は不十分で、参加者の約4分の3が過去24時間に外出したと述べている。感染の増加にもかかわらず、多くの西側諸国は社会生活の制限に疲れ果て、ウイルスに感染する危険を冒して家族や友人に会うと考え始めている。

渡航制限も厳しいアジア:アジア諸国はまた厳しい渡航制限を設けている。訪問者は通常、到着時に検査を受ける必要がある。香港、韓国、ニュージーランドなどでは、2週間の政府監視の隔離が必要とされている。世界観光機関(the World Tourism Organization)の報告によると、アジア太平洋地域では、国や地域の6割が外国人観光客を完全に閉め出したままである。

経済の実績も向上するアジア:アジアの諸政府は、早い段階で実施された監視戦術のおかげで、感染が広がるのを防いだ。韓国では、監視機関がスマートフォンのデータ、クレジットカードの記録、監視カメラ(CCTV)映像をふるいにかけて、感染者の接触経路を追跡しており、ここ数週間、感染経路の80パーセントが韓国の保健当局によって追跡されている。しかしこうした措置はプライバシー侵害に対する批判を引き起こし、西側では導入されていない。例えば、ヨーロッパの一部で導入された自主追跡アプリは、広範に使用されるに至らなかった。アジア全域で、職場や学校に戻る人々の間で感染が多発している。しかし厳格なロックダウンを課すのではなく、多くのアジア諸国は対面距離のガイドラインを強化し、感染が増加したときに検査を拡大した。アジアではこうしたパンデミックの対応の成功によって、経済の実績も向上した。国際通貨基金(IMF)は、中国経済が2020年に世界の主要経済国の中で唯一、1.9パーセントのプラス成長を遂げると予測している。米経済は4.3パーセントのマイナス成長、ユーロ圏もマイナス8.3パーセントと予想されている。

コロナ経済の勝者、アジアは世界経済を救えるか:10月11日付フィナンシャル・タイムズも「East-west divide: winners and losers in the Covid economy(東西の分断、コロナ経済の勝者と敗者)」と題する記事の冒頭で、コロナから回復した中国には自信が生まれていると語る中国在勤イタリア人実業家の見方を紹介し、コロナウイルスへの対応が、結果として鮮明な違い(sharp divergences)を生み出すと述べ、中国、台湾その他のアジア太平洋地域の諸国が今年、目標に向かって経済を発展させているのに対して、コロナが風土病(endemic)と化している国々では、経済は極端な縮小に向かっていると指摘する。そのうえで、東アジアは歴史的に欧州と北米を顧客として依存してきたが、その発展を残りの世界経済全体に対して需要を供給する地域として変貌できるかと問題提起し、次のように論じる。

コロナ再発を許す欧州と抑えるアジア:欧州経済は第3四半期に堅調な復活を果たしたが、コロナウイルス感染が大陸全体で再び増加するにつれて、勢いを失い始めている。欧州の首都は、3月に課された全国的な都市封鎖の再導入を嫌っているものの、宿泊やレジャー施設、旅行の制限に注力している。これに対し台湾、韓国、中国に加えてニュージーランドやベトナムなどのアジア太平洋地域の国々は、コロナウイルスを抑制し、その後、再発に備えて厳しい統制を維持した。欧州が夏休みを楽しんでいた間、アジアは引き続き世界旅行を慎んでいたのだ。

台湾、韓国、中国の現状:台湾は早期に国境を閉鎖し、多くのクラスター予備軍を根絶するために、組織的な接触者追跡、検疫、対面距離を活用した。韓国では旅行禁止は遅かったが、大量検査と接触者追跡によって新規感染者を1日当たり100人以下に抑えている。両国ともロックダウンを望まなかったのである。中国も武漢でのコロナウイルスの当初の流行をゼロに抑え込み、新しい症例を果敢に排除し続けている。北京では夏の間に症例が発生し、このため厳格なロックダウンや市外移動規制、大量検査などが導入された。コロナ発生国で、世界で最も人口の多い中国では現在、1日当たり一握りの感染者が出ているに過ぎない。

消費材の製造拠点へ移行するアジア:コロナウイルスへの懸念は、欧州や米国に加えて日本の国内需要(home demand)にも影響を与えているが、アジアは消費資材の製造拠点へ移行することで、こうした打撃を回避し、さらに医療用品の代替供給者として恩恵を受けている。ドイツとイタリア北部の経済もまた、そうした開発を享受している。マスクや防護服などの医療用品に対する旺盛な国際的需要や、個人のコンピュータシステムを連想させる在宅勤務の必要性(working-from-home requirements)は、アジアのサプライチェーンを経由して波及している。欧州と北米が従業員に有給で帰休させるなか、製造品に対する需要を満たすのは、ビジネスに前向きなアジア経済になりそうだ。

ワクチンが必要で世界を支える需要創出の可否も不明なアジア:上記のように報じた記事は最後に、アジアが世界経済の救世主になり得るか、という命題には大きな問題点が2つ残ると指摘し、次のように疑問符をつける。第1に、アジアの成功は、コロナウイルスの効率的なワクチンを発見することにかかっている。ワクチンが実現しなければ、アジアの人々もウイルスに感染し易いままであり、ウイルス抑制の一時的な成功は、それを維持するために国境規制を永続させることになりかねない。第2に、過去と来年の世界的な回復を維持するための需要を、アジアから期待できるかどうかが不確かなのである。アジアでは、国内経済(home economies)は何とか前進しているが、観光業の封鎖の影響を受けており、またその製品は国際的な需要に依存しているからだ。

 また10月8日付エコノミスト誌は、「Winners and losers(勝者と敗者)」と題する社説で、パンデミックは世界経済を分裂させているが、長期的影響はもっと広範囲(far-reaching)なものとなろうと予測し、勝者と敗者という視点から中国と米欧のコロナへの対応を比較する。

経済規模の格差を拡大させるコロナ禍:まずコロナ禍の経済規模への影響について、経済協力開発機構(OECD)の予測によると、米経済は来年末までに2019年と同じ規模に落ち込むとみられているが、中国の経済は10パーセント拡大するとされ、これに対し欧州経済は依然としてパンデミック前の生産量で低迷し、これが数年間続き、人口動態の圧迫に苦しんでいる日本も同じ運命を共有するだろうと報じる。こうした傾向は大経済圏の間に限らず、今年第2四半期の世界50カ国の成長率は少なくとも40年間で最も広範な分布を示すだろう、とのスイスの大手銀行、UBSの見方を伝える。

格差を生む3大要因:次いで記事は、こうした事態の主要要因として3つ挙げる。第1に、最も重要な問題としてコロナウイルスの蔓延(spread of the disease)を挙げ、欧州はコストの高い第2の波と戦っており、おそらく米国もまもなくそうした事態に見舞われるだろうが、中国では蔓延が終わっていると指摘する。第2に、経済の既存構造(pre-existing structure)を挙げ、 対面での接触(face-to-face contact)に依存するサービス部門のビジネスを運営するよりも、対面距離を保って工場を運営する方がはるかに簡単だと述べ、中国経済は後者の製造業が他の主要国よりも大きなシェアを占めていると指摘する。第3に、政策対応を挙げ、これは1部には経済規模によるところがあるとしつつ、米国は国内総生産の12パーセントに相当する財政支出と短期金利の1.5ポイントの引き下げを含む金融緩和策など、欧州よりも大規模な刺激策を導入したと述べる。

パンデミックによる構造的変化と創造的破壊への対応も重要:同時に政策には、パンデミックが引き起こしている構造的変化と創造的破壊に対する政府の対応も含まれていると述べる。欧州はその面で遅れをとっており、しかも対応には、経済を調整ではなく硬直化させるリスクがあると指摘する。EU内5大経済国では、労働力の5パーセントがレイオフの代わりに従業員の就労時間を短縮させる有給の短時間労働(short-time work)制度内に止まり、仕事や時間の復活を待っているが、雇用は二度と戻ってこないかもしれないのである。英国ではその割合は2倍高い。また大陸全体で、破産規則の停止、銀行による暗黙の支払い猶予(forbearance)、そして国家による裁量的支援の洪水によって、破綻して然るべきゾンビ企業を延命させる危険を冒している。

中国の経済体制に潜む欠陥を暴露したコロナ禍:記事は最後に、中国、米欧に対して次のような警告を発する。中国では、コロナ禍が経済体制(economic apparatus)に潜む長期的な欠陥を露呈させた。中国には社会的安全網と言える制度が存在せず、このため家計所得のてこ入れは不可能で、企業やインフラ投資に景気対策を集中せざるを得ないことになった。そして長期的には、残酷なロックダウンを可能にした監視と国家統制のシステムは、幅広い意思決定(diffuse decision-making)と人々やアイデアの自由な動きを妨げる可能性がある。しかし、これらは技術革新の持続や生活水準向上のために必要なのだ。

問題含みの欧州の産業政策と米国の政治制度:欧州では、危機前に仏独が世界的大企業を生む産業政策を推進しており、欧州がコロナ危機を政府と既存ビジネスとのなれ合い的関係を促進するさらなる口実とみるならば、欧州の長期的凋落の趨勢が加速するだろう。米国についても、疑問符がある。経済政策はこの1年間、概ね正しく均衡を保ったが、アメリカの弱点は、共和、民主両党が妥協を拒否する有害で分裂した政治だ。今週、トランプ大統領は景気刺激策の更新に関する協議を断ち切ったようで、経済は財政の崖(fiscal cliff)から落ちる可能性が出てきた。これによりハイテク主導の経済に安全網を再設計するか、財政赤字を持続可能な軌道に乗せるかなどの重要改革は全く不可能となった。コロナウイルスは新しい経済的現実を押し付けており、どの国も適応を求められているが、特にアメリカは気の遠くなるような(daunting)課題に直面しており、政治をリセットする必要がある。

 上述のような大経済圏の動きとは別に、メディアはコロナとの戦いで勝者と位置づけられた東アジアのなかで、東南アジアがコロナ禍によって未熟な政治構造を露呈したと批判する。10月24日付エコノミスト誌記事「The pandemic has exposed South-East Asia’s poor governance(東南アジアの脆弱な統治を暴露したパンデミック)」は、コロナウイルスが独裁者や私腹を肥やす政治家の欠陥(failings)を明るみに出したと指摘する。

抗議活動を弾圧するタイ政府:記事は、圧政を続けるタイ政府の対陣や王室改革を要求する抗議活動に言及し、未だ学校に通う若者が中心となってプラユット首相の辞任、憲法改正、専制君主の改革を求めてデモを展開しているが、政府は国家非常事態(state of emergency)を宣言し、集会(gatherings)を禁止、参加者を逮捕していると批判する。また政府はコロナ対策では成功し、感染者は3709人で死者は59人に止まっているが、経済は今年8パーセントのマイナス成長となり、50万人以上の大卒者の多くが未だ職を得ていないと報じる。

貧困層が増加する東アジア太平洋地域:記事はさらに、世銀がコロナウイルスは投資や人的資源、生産性を損ない、包括的な成長、または、あまねく広がる成長(inclusive growth)に永続的な打撃を与えると警告していると伝える。その結果、東アジア太平洋地域全域にわたって貧困層が3800万人増え、その大半が東南アジアにおいて発生し、最大の被害者はインドネシアとフィリピンの若者だと述べる。

過去の政治変革が中途半端だった東南アジア:そのうえで、東南アジアは1997-98年のアジア通貨危機によって大きな経済的被害を受け、それが地域における統治の悲惨な欠陥(dire shortcomings)を暴露したために、特に若者たちから政治変革を求める声が上がり、タイやインドネシアで民主化運動(democratic movement)が盛り上がったと述べる。しかし今回のコロナウイルスは経済に与える影響がもっと遙かに深刻で、そうした過去の変革がいかに中途半端(fitful)であったかを露呈させただと指摘し、フン・セン首相の下で独裁政治が続くカンボジア、クロニズムや投票の買収が横行するマレーシア、汚職が蔓延しウイルス対策に支障をきたしたインドネシア、同じくドゥテルテ大統領の下でコロナ対策が失敗しているフィリピンなどの例を挙げる。

若者だけでは動かしがたい既存勢力:記事は最後に、東南アジア全域で、選挙は権力を定着させるか、利権の場となっていると述べ、若者たちが立ち上がっても、既存勢力とは対抗できないだろうと次のように論じる。フィリピンの下院議員の中には3年の任期で富を3倍にする者もいる。タイだけでなく、カンボジア、マレーシア、フィリピン、インドネシアでも、労働者の権利や環境を損なう新しい法律に対して街頭抗議活動が行われており、勇敢な若者たちが古いやり方に反対の声を上げている。この中の何人かの前途有為な若者は、未熟な怒りを抱いて抗しがたい力となっている。しかし東南アジアの私腹を肥やす政治家、私利私欲で動く(self-serving)官僚、そして独裁者の不動の塊よりも強力であり得るだろうか。残念ながら、それは別の問題なのだ。

結び:以上のようにメディアは、コロナ禍の影響が東西で明暗が分かれ、世界を勝者と敗者に分裂させていると指摘する。欧米で感染者数が再び増加するなか、東アジアでは感染が的確に押え込まれている状況では、当然の指摘である。その要因についての分析も適切と言えよう。特に米欧がパンデミック疲労を募らせ、対面距離姿勢に緩みが出ており、接触者追跡も効果を発揮しなくなっているとの指摘は、アジアを含む世界にとって、今後の一つの重要な警告として受け止める必要があろう。また積極的な接触者追跡、厳しい隔離規則や渡航制限の厳守などアジア諸国が感染拡大防止に成功したとされる諸要因は、引き続きアジア諸国のみならず西側を含む各国が順守していくべきだろう。

 他方、欧州経済が感染再拡大によって勢いを失っているなか、東アジア諸国は経済実績も向上してきているため、東アジアが世界経済の救世主となり得るかとの問題が提起された。これに対して、東アジア各国はその安全をワクチン開発に、またその製品を国際的需要にそれぞれ依存しているという2点から、否定的な結論が導かれている。確かに、アジアは世界経済に織り込まれ、経済的に世界各国と相互に強い依存関係にある。しかし、ここで特に重要なのは、中国経済の動向である。中国は感染を押え込み、経済の既存構造でも優位に立って急速に回復しており、世界経済の有力な牽引車の一つとなる期待が持てると言えよう。ただし中国については、社会的安全網の欠落や厳格な国家統制と監視システムが、コロナ禍によって暴露された経済体制の欠陥として指摘されており、長期的に注視していく必要があろう。
メディアはまた、世界50カ国の成長率も今年第2四半期に過去40年間で最も広範なバラツキを示す、との不気味な予想も伝える。さらにパンデミックは構造的変化と創造的破壊を引き起こしており、これに対する欧州の政策は、経済を硬直化させるリスクがあると警告し、米国についても共和、民主両党の妥協を拒否する有害で分裂した政治をリセットする必要があると指摘する。また世銀によれば、コロナウイルスは投資や人的資源、生産性、包括的成長に打撃を与え、東アジア太平洋地域において貧困層が3800万人増加し、最大の被害者はインドネシアとフィリピンの若者だと伝える。東南アジアでは、過去の変革が中途半端だったことがコロナ禍で露呈し、独裁者や私腹を肥やす政治家の欠陥が暴露されたと述べ、東南アジア全域で選挙が権力を定着させるか、利権の場となっていると指摘、若者らが立ち上がっても、既存勢力と対抗するのは難しいだろうと論じる。こうした予想や指摘、警告は、いずれも今後の世界経済に対する潜在的なリスク要因のひとつとして注視していく必要があろう。(2020年11月4日)

(注)要約:メディアはコロナ禍の現状について、東西で影響の明暗が分かれ、米欧と東アジアとの分断が深まり、世界は事実上分裂していると指摘する。米欧はパンデミック疲労を募らせ、対面距離姿勢に緩みが出て、接触者追跡も効果を発揮していないと報じる。他方、アジア諸国は全国的都市封鎖なしに、ウイルス抑制に成功したと述べ、要因として、積極的な接触者追跡、厳しい隔離プログラムと渡航規制、文化の違い、政府の首尾一貫した姿勢、サーズやマーズの経験によりマスク着用や政府の介入を西側より幅広く受け入れたことを挙げる。西側ではプライバシー侵害に対する批判があり、欧州の一部で導入された自主追跡アプリは、広範に使用されるに至らなかった。

 また厳しい隔離規則が米欧との大きな違いを生み出したとし、アジアでは米欧のように自宅隔離ではなく、陽性者は軽症や無症状でも政府運営施設に収容され、ベトナム、香港、シンガポールでは、濃厚接触者も隔離施設に収容を義務づけられている。だが欧米では、隔離規則の遵守は不徹底で、多くの西側諸国は生活制限に疲れ果て、感染リスクを冒しても家族や友人と会い始めたと伝える。渡航制限についてもアジアが厳しく、アジア太平洋地域では、国や地域の6割が外国人観光客を完全に閉め出したままである。

 そのうえで、アジアは対応の成功によって経済実績も向上しており、東アジアは世界経済全体に対して需要を供給する地域となり得るかと問題提起し、それには問題点が2つあると指摘する。第1に、アジアの成功は効率的なワクチンの発見有無にかかっているとし、ワクチンがなければ、アジアはウイルスに感染し易いままであり、ウイルス抑制も一時的成功に終わり、国境規制などの永続化に迫られるだろうと主張する。第2に、アジアはその製品を国際的な需要に依存し、観光業封鎖の影響もあり、アジアが世界経済の回復を維持するための需要を創出できるかどうかは不確かだと指摘する。

 エコノミスト誌も、パンデミックは世界経済を勝者と敗者に分裂させているとし、来年末には米経済は2019年の規模に落ち込むが、中国経済は10パーセント拡大、欧州経済はパンデミック前の生産量で数年間低迷、人口動態の圧迫に苦しんでいる日本も同じ運命と報じる。世界50カ国の成長率も今年第2四半期に過去40年間で最も広範なバラツキを示す、とのUBSの予想を伝える。こうした格差を生む主要要因として3つ挙げる。第1にコロナウイルスの蔓延で、欧州は高コストの第2波と戦っており、米国もそうした事態に見舞われるだろうが、中国では蔓延が終わっていると指摘する。第2に経済の既存構造を挙げ、 対面接触に依存するサービス部門よりも、対面距離を保っての工場運営の方が容易であり、中国では後者のシェアが大きいと指摘する。第3に政策対応を挙げ、米国は国内総生産の12パーセントに相当する財政支出と短期金利の大幅引き下げなど、欧州よりも大規模な刺激策を導入したと述べる。

 パンデミックは構造的変化と創造的破壊を引き起こしており、その政策対応が重要だと述べ、欧州の対応は遅れているだけでなく、経済を調整ではなく硬直化させるリスクを孕んでいると指摘、要因として、有給の短時間労働制度、破産規則の停止、銀行による暗黙の支払い猶予、国による裁量的支援を挙げる。また危機前の仏独における世界的大企業を生むための産業政策に言及し、コロナ危機を政府と既存ビジネスとのなれ合い関係を促進する口実とするならば、欧州の長期的凋落が加速するだろうと警告する。

 中国についても、コロナ禍が経済体制に潜む長期的な欠陥を露呈させたと述べ、社会的安全網の欠落、それにより家計所得てこ入れ対策が不可能なこと、過酷なロックダウンを可能にした国家統制と監視システム、それによる幅広い意思決定と人やアイデアの自由な移動が妨害される可能性、などを挙げる。米国については、弱点は共和、民主両党の妥協を拒否する有害で分裂した政治にあるとし、財政の崖に直面する可能性と共にハイテク主導経済や財政赤字に関する重要改革が不可能となったと指摘、特に米国は政治をリセットする必要があると提言する。

 東南アジアについてエコノミスト誌は、コロナウイルスが独裁者や私腹を肥やす政治家の存在など統治上の欠陥を暴露したと指摘する。タイでは若者たちが圧政を続ける政府の対陣や王室改革を求めてデモを展開し、政府は国家非常事態を宣言して参加者を逮捕していると批判する。世銀によれば、コロナウイルスは投資や人的資源、生産性、包括的成長に打撃を与えており、東アジア太平洋地域において貧困層が3800万人増加し、最大の被害者はインドネシアとフィリピンの若者だと伝える。東南アジアはアジア通貨危機によって大きな打撃を受け、タイやインドネシアで民主化運動が盛り上がったが、そうした過去の変革が中途半端だったことが今回のコロナ禍で露呈したと指摘、カンボジア、マレーシア、インドネシア、フィリピンなどの現在の政情を挙げ、東南アジア全域で、選挙は権力を定着させるか、利権の場となっていると述べ、若者たちが立ち上がっても、既存勢力とは対抗できないだろうと断じる。        

                                

                              
前田 高昭
金融翻訳ジャーナリスト、社団法人 日本翻訳協会 会員、翻訳家。
訳書に『チャイナCEO』他。
『東アジアニュースレター』も配信中。

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