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2020年の日本その3 ―日本を揺るがすコロナ禍

2020/06/08

英文メディアで読む 第85回
2020年の日本その3
― 日本を揺るがすコロナ禍 ―
 






 
前田 高昭 : 金融 翻訳 ジャーナリスト
       バベル翻訳大学院プロフェッサー
 
 
 
 前号までに、新型コロナウイルスの感染拡大がアジア地域や広く世界に及ぼす影響についてみてきた。コロナ禍は当然、日本の政治、経済、社会にも甚大な影響を与え、社会のありように変化をもたらしている。今回は、そうした影響や変化に関するメディアの報道や論調を観察する。なお要約を注1に掲載。

2四半期連続のマイナス成長で不況入り:本誌3月号の「2020年の日本」その2で、日本経済は不況入り寸前の状態にあるとメディアが警告したとお伝えしたが、5月に入りそうした事態に突入した。5月17日付ニューヨーク・タイムズは「Japan Falls Into Recession, and Worse Lies Ahead(不況入りする日本、前途はさらに悪化)」と題する記事で、コロナウイルスが内外で経済に打撃を与えるなか、日本経済も今年第1四半期に年率3.4パーセントのマイナスと2四半期連続のマイナス成長を記録、15年以来となる不況に公式に陥ったと述べる。

消費増税とコロナ・ショックが経済の重荷:記事によれば、日本に続いて独、仏など他の主要経済も不況入りする見込みで、回復の道のりは長く困難であり日本経済の前途も険しく、バンクオブアメリカ・メリルリンチ日本の主任エコノミストは、日本経済は昨年10月の消費増税の影響で消費支出(Consumer spending)が落ち込むという最悪の状態でコロナ・ショックを迎えており、4-6月の第2四半期には極めて困難な問題が起き、3四半期連続のマイナス成長となろうと予想している。経済弱体化の要因として、消費増税の他に本州を襲った台風、米中貿易戦争によるグローバルな需要低迷と日本の輸出減少、緊急事態宣言による外出自粛に伴う消費の大幅落ち込みなども挙げる。

弱い需要が需要を押し下げる悪循環:記事はさらに失業問題に触れ、日本の労働市場はタイトで、解雇を困難にしている硬直的な雇用慣行もあり、失業(Job losses)は抑制されるだろうが、上述のバンクオブアメリカ・メリルリンチ日本のエコノミストは、雇用の維持は内需(domestic demand)の回復だけでは保証されないと語っていると報じる。同氏は、需要の回復が弱いと人々は慎重になり、それが需要をさらに押し下げる悪循環メカニズム(adverse feedback loop)が生まれ、これを避けるには家計と企業をもっと支援する必要があり、政府がさらに動く必要があると主張している。

巨額の不良債権損失を見込むメガバンク:では、こうした経済の動きは金融機関の業態に、どのような影響を及ぼしているのか。5月16日付フィナンシャル・タイムズは「Japan’s megabanks estimate a collective ¥1.1tn in credit costs(日本のメガバンク、合計1兆1000万ドルの信用コストを見込む)」と題する記事で、三菱UFJ、みずほ、三井住友の3行はコロナウイルスによる甚大な被害を予想して、現在の会計年度で1.1兆ドルの不良債権処理費用(credit costs)を見積もっていると伝える。また今回のメガバンク3行による発表は、財務報告の画期的な変更を反映していると述べ、日本の脆弱な(rickety)その他の金融機関に対して頭の痛い前例を示すことになると指摘する。

引当金の計上基準も見直し:記事は、上記3行はこれまで貸倒引当金を前期の信用コストを基にして算出してきたが、これを初めて前向きな評価(forward-looking assessment)を基にするように見直し、コロナウイルス被害による不良債権と倒産の急増という要因を財務面で織り込んだと評し、こうした評価手法の変更は、金融庁が昨年12月、前向きな方法による融資内容の分析を勧奨して圧力をかけたことに従ったものだが、80行に達する地銀は依然として従来の方法に従っていると指摘する。

日本の中核的産業も直撃したパンデミック:ただしパンデミックは都市封鎖によって日本の中核的産業(industrial core)にも打撃を与えたと述べ、サプライチェーンのエンドユーザーとなるトヨタやソニー、パナソニックなどを挙げ、これら各社はビジネス・モデルの再編に着手しているため、サプライチェーンが需要に対して余剰となるかもしれないと報じる。記事は最後に、長年続く超低金利のために銀行は企業の業態分析力が衰えてきているなか、コロナ危機によって優良企業も突然、問題企業となって元本支払いができなくなる事態に遭遇した、とのアナリストのコメントを伝える。

行動制限への対応に苦慮する企業:次に、パンデミックが働く人々へ及ぼした影響についてみていこう。5月9日付エコノミスト誌は、「The presenteeism premium Japanese offices struggle to adapt to social distancing(不要不急な出勤の保険料、社会的距離拡大戦略との調整に苦慮する日本企業)」と題する記事で、多くの日本企業が物理的出社を重視していると指摘、その非効率を批判して次のように述べる。

頑迷なアナログ国家でもある日本:中国の後漢時代、光武帝の頃に日本に伝わったとされる印鑑(ハンコ)が日本では未だに広く使われ、日本企業は、こうした時代錯誤的な職場文化(workplace culture)を近代化するために苦闘している。日本はハイテク国家として評価されているものの、頑迷なアナログ国家でもある。パンデミックが襲ってきた時に、日本企業でデジタル契約(digitised contracts)を使用していたのは僅か40パーセントで、遠隔勤務(remote working)が可能な態勢にあったのは30パーセントのみだった。ファックスが至る所にあり、多くの県で医師はコロナウイルスの検査結果をファックスで保健所に送っている。

直接対話による商談や意思決定が大原則:また日本企業が通常、専ら対面的意思疎通に頼っていることがパンデミックによって明らかになった。顧客やビジネス提携先(business partners)とは、直接会って話すのが必須(de rigueur)とされている。日本型の共同的意思決定(collective decision-making)では、人々が一室に集まって決める。サラリーマンとオフィスレディーは、長い1日をオフィスで過ごして会社と同僚たちに対する献身を示し、その後は夜遅くまで酒盛りをして仲間意識を盛り立てる。

パンデミックは変革を促す外圧:こう論じた記事は、ただし日本では外圧が大きな変革をもたらすことが多かったと指摘し、今回のパンデミックも日本企業にとって外圧になるとの日本のシンクタンクの専門家の意見や、企業収益には逆風だが、企業文化には追い風になる、という財界筋の見解を伝える。

変革は大企業と中小企業に差異:そのうえで記事は、これまでのところ日本企業の変革状況は心許なく、むらがあると評する。例えば、大企業はフレクシブル勤務へ迅速に移行し、コンピュータシステムの整備なども進め易い環境にあり、ハードやソフト・ウエアへの投資も手元キャッシュで賄ってきたが、中小企業は、そうした余裕がないと指摘する。さらに日本企業の変革は長続きせず、一度、行動規制が緩和されると、管理者は部下に対して職場に戻るよう要求するかもしれないと疑問を呈する。

「日本モデル」で感染を終わらせたと宣言する安倍首相:こうした状況のなか、日本は緊急事態宣言を段階的に解除していく。これについて5月29日付ニューヨーク・タイムズ記事は、コロナに打ち勝つには検査が重要なはずだが、日本は違う考え方をしていると報じる。記事は、日本は他の主要国と比べて死亡率(mortality rates)は低かったが、検査率(testing rate)が低いままで緊急事態(a state of emergency)を終了したと報じ、安倍首相は今週、日本らしい方法で対策を進め、ほぼ完璧に感染の波を終わらせられたと宣言し、この「日本モデル」( “Japan model”)がパンデミックから抜け出す道を示した、と語ったが、日本が成果を上げた原因は何であるのか、そこから他国が教訓を得られるのか否かは不明確だと主張する。また日本は死者数を過小に計算しているとの批判があるとし、次の感染の波が、日本政府の自賛的宣言を損なう可能性があると警告する者もいると報じ、死者数自体も北東アジアでは最悪だと指摘する。 

日本で死亡率が低い理由:そのうえで記事は、日本の死亡率が低い理由として、広範なマスク着用や手洗いの慣行、ハグや握手などの身体的接触の機会が少ないこと、社会的距離拡大戦略(social distancing)を国民に教え込み、国民がそれを遵守したこと、接触者を通じて小規模の感染を迅速に封じ込めることに集中したことなどを挙げる。またダイアモンド・プリンセス号事件から学んだ教訓として、船内での「3密」の存在を、「3C」(“Three C’s”.closed spaces with poor ventilation, crowded places and close contact)と表現して伝える。

未だ危険を脱していない日本:さらに記事は、公衆衛生の専門家や一部の政府関係者は、日本の経験から確固として結論を引き出すことに注意を促し、日本は未だ危険を脱した(in the clear)とはいえず、第2波や第3波がいつ襲ってくるかわからないと警告していると報じる。

企業が保有する現金が有利な資源:以上のようにコロナウイルスは日本の経済、金融に大きな打撃を与えているが、今回の危機は日本企業にとって次の飛躍に向けた好機となるとの見方も出てくる。5月15日付フィナンシャル・タイムズ論説記事は、日本企業が積み上げた現金が極めて有利な資源になると述べ、コロナウイルスは日本が経済や投資の観点で抱える課題に新たな光を当てたと指摘、概略次のように論じる。筆者は、主に上場投資信託(ETF)事業で米欧加および日本で投資顧問サービスを行う資産管理会社、ウィズダムツリー・インベストメンツ(WisdomTree Investments, Inc.)日本法人のCEO、ジェスパー・コル氏である。

日本は都市封鎖大不況での勝利者:日本は、国際通貨基金(IMF)がいう都市封鎖大不況(the Great Lockdown recession)での勝利者になろうとしている。日本の企業はこれまでになく現金を積み上げている。政府は実務的で団結しており、議会で3分の2の議席を保有している。また労働力の減少を否定的に考えているとすれば、再考すべきだ。25才から35才の人口が毎年、およそ25万人減少しているが、そのため日本では25才の若者は、世界の諸外国と比べて極めて優遇されている。米国では失業者が既に2000万人以上に増えているが、日本では、政府の最近の統計によれば、求人(job vacancies)が求職者を40パーセント上回っている。

史上最大の現金を擁して危機を迎え撃つ日本企業:日本の上場企業は史上最大の現金を貯め込んで今回の危機を迎えた。東京証券取引所(the Tokyo Stock Exchange)のデータを集計すると、昨年末の財務諸表上で彼らが保有する現金と短期有価証券の合算額は6.5兆ドルを若干上回る。この軍資金(war chest)は、日本の国内総生産(GDP)の130パーセント以上となり、米国の数字の3倍に達する。しかも日本では、現金が経済のほとんどの分野に行き渡って幅広い基盤となっているが、米国では一極集中で、テク系売り手寡占企業(tech oligopolies)が全体の3分の1を保有している。

株主に報いつつ積み上げた軍資金:日本企業はコロナウイルス前の古き良き時代には、株主の懐に入って然るべき現金を不当に積み上げていると非難されていた。上場企業の54パーセントが株主資本(shareholders’ equity)以上の現金を保有していた。最高経営責任者や最高財務責任者は株主活動家(activists)や株主資本主義(shareholder capitalism)の擁護者と戦いを交えてきたが、日本的妥協ともいうべき形で収拾が図られてきた。アベノミクスが2012年に始まると、企業の総分配性向(total payout ratio)(配当金と自社株買い(share buybacks)の合計額の対純益比率)は12年の約35パーセントから60パーセント余りに上昇し、現金残高も3.1兆ドルから倍増した。つまり、日本企業は現金の積み上げと株主への配慮の両分野で勝利していたのである。
 
配当性向を低下させない企業:こうみてくると、企業は軍資金を引き続き全ての利害関係者のために使うと考えられる。すなわち、顧客、従業員、銀行そして株主のためである。また、この資源はきわめて巨大であるために、次のような3つの別個な形(distinct ways)で成果を上げていくとみられる。第1に、配当金はそれほど削減されないとみられる。配当性向を低下させそうな日本企業は米国企業に比して少なく、既に日本の大企業は米企業よりも高い配当率を誇っている。トピックスとS&P500で日米企業の配当率を比較すると、前者は2.8パーセント、後者は1.9パーセントである。

盛り上がる合併買収:第2に、合併買収(mergers and acquisitions)が国内でブームになるとみられることだ。日本の産業界はひどく細分化されている(fragmented)。政府の調査に寄れば、各業界のトップ4社が平均15パーセント弱程度のシェアを占めているが、米国では38パーセント程度と集中化が進んでいる。特に食品、医薬品、エネルギーと金融や機械、機械部品の分野での統合に向けた大きな動きが注目される。また来月に予想される次の総合景気対策というボーナスもある。安倍首相のチームは、長年先送りされてきた産業再編成を加速させるために優遇税制すら導入するかもしれない。

ハイテク分野を除き海外買収案件と合弁事業も増加:第3に、海外での買収案件と新たな合弁事業が増加するだろう。ここでは自動車とその部品が主役を演じる。メガバンクや大手保険会社、そして多分、化学と基礎素材の企業についても同様である。不幸なことに、恐らくテクノロジー企業は、こうした努力をしないとみられる。ソフトバンクやソニー、任天堂は例外として、日本のハイテク大企業は依然として、グローバルな競争相手として再登場しようと地場でのリストラ努力にのめりこんでいるからだ。

記事は最後に次のように主張する。ここは原文を読んで翻訳してみよう。

All said, watch out for Japan Inc. Resilience and persistence during the so-called “lost decades” could very well pay off and provide high returns — not just for investors looking for yield, but also for those looking for catalysts to unlock future growth.

「要するに、日本企業には注意すべきだ。いわゆる「失われた数十年間」の間の回復力と粘り強さは十分に報われ、高いリターンをもたらし得るのだ。それは単に収益を求める投資家だけでなく、将来の成長を切り拓く触媒を求める者たちのためにもなるのだ」
  
避難先となる日本株:こうした見方をさらに進めたのが、5月28日付ウォール・ストリート・ジャーナル記事「Japan Offers an Investment Haven Whichever Way the Pandemic Goes(日本版記事:日本株が避難先に、コロナ危機どう転んでも)」である。記事は、日本企業が保有する巨額の現金が強みとなって日本株が買われるとの見方を提示する。パンデミックで打撃を受けた世界経済が想定以上に早い回復を遂げた場合、東証株価指数(TOPIX)のかなりの部分を構成する電気機器、情報・通信、輸送用機器の各セクターには追い風となると述べ、コロナ感染の第2波、第3波に見舞われる、もしくはアナリストの想定以上に経済への打撃が深刻なために回復が鈍い場合には、日本企業(corporate Japan)が持つ強みはいっそう明確になると主張、理由として、日本企業が大量に抱える現金(cash hoards)を挙げる。日銀のデータによると、国内企業(金融除く)が保有する現預金は昨年12月時点で約280兆円に上ると指摘する。

この時期、魅力的な日本株:日本企業が巨額の現金を抱えている状況は、平時では望ましくないかもしれないが、今の時期には非常に歓迎すべきものだと主張する。さらに日本株のバリュエーションも魅力的だと述べ、このところの上昇でやや割高になったが、その変化は米国株の足元にも及ばないとし、向こう1年の見通しに基づく日本株の株価収益率(price-to-earnings ratio)は、3月につけた底の11.1倍から現在では15.7倍になったが、米国株は13.5倍から22.9倍に跳ね上がっており、日本株の割安感は過去最高の水準にあると報じる。ただし銀行株は例外で、国内の超低金利(rock-bottom interest rates)を背景に、地銀は投資家の資本から隔絶されており、また国際情勢が一段と不透明な中で、銀行大手もかつての輝き(allure)を失ったと評する。

仮借のない批判にさらされる安倍首相:最後に、日本のコロナ対策を推し進めてきた安倍政権に対する評価についてエコノミスト誌の記事から観察する。5月23日付同誌は「Unscathed but scathing Japan is not rallying around its prime minister(無傷なのに傷だらけの安倍首相 日本は首相の下に結集せず)」と題する記事で、日本はパンデミックを比較的うまく乗り切ったが、安倍首相は仮借のない批判にさらされていると報じる。記事は冒頭で、人口が1億2600万人の日本での新型コロナウイルス(covid-19)の死者数は784人と米ニューヨーク市における一日当たりのピーク時の死者数よりも少なく、5月14日には39県について緊急事態宣言が解除されるに至ったと報じる。

政府のコロナ対策を評価しない国民:しかし世論をみると、その支持率(approval ratings)が低下するという数少ない世界の指導者の一人となったと伝える。半数以上の国民が政府のコロナ対策を評価していない述べ、理由として検査の制約、医療従事者向け保護用品の不足、クルーズ船ダイアモンド・プリンセス号の感染対策の不手際(botched)、緊急事態宣言の躊躇を挙げ、国民の挫折感と不信を煽ったとし、強い指導者というイメージを演出してきた安倍首相は、コロナウイルス問題ではそうした指導者として振る舞っていないと指摘、空気が読めていない(out of touch)との関係者のコメントを伝える。

確固とした姿勢に欠ける政策運営:さらに景気刺激策(economic stimulus measures)でも不手際があった(ham-fisted)と述べ、連立相手(coalition partner)の公明党からの申し入れで、苦しい家庭(struggling households)にのみ30万円を支給する当初の計画を撤回し(backtracked)、全家庭へ10万円を支給する案に変更したことを挙げ、安倍政権は確固とした姿勢に欠け、混乱しているとのトロント大学リプシィ教授のコメントを伝える。

求心力を失う安倍首相:企業に対する融資などの支援策も、お役所仕事(red tape)に巻き込まれていると述べ、285社以上の企業が休業手当の助成金(subsidies to put employees on leave)を申請したが、実際に現金を受け取れたのは1.9パーセントに止まっていると報じる。さらに検察官定年延長法案についても触れ、コロナ禍(coronavirus calamity)の真っ只中では人命問題に集中すべきだ、との批判を受けていると述べ、安倍首相は日毎に求心力(centripetal force)を政府内でも与党内でも失っている、との「インサイドライン」編集長、歳川隆雄氏のコメントを伝える。    

結び:以上みてきたように、コロナ禍に揺れる日本についてのメディアの論調は、評価と批判が入り交じり、単純ではない。不況入りした日本経済は今後もマイナス成長を続け、金融機関には不良債権が重くのしかかると厳しい見方を示す。その一方で、現金を積み上げた日本企業の前途は明るいと評価、日本株は避難先として買いだと推奨する。ただし日本企業には時代錯誤的な職場文化が残り、ウイルス感染拡大防止に不可欠な社会的距離戦略の障害になっていると述べ、日本は頑迷なアナログ国家でもあると批判、パンデミックはこうした企業文化の変革を促す外圧になり得ると論じる。

 では、これまでの政府対応をどのように評価し、今後に何を期待すべきか。日本は今回の新型ウイルス襲撃に不意を打たれたというべきだろう。日本は、過去のサーズやマーズ、そしてインフルエンザ流行などの経験を、たとえば韓国や台湾、香港のように十分に生かしていなかったのだ。安倍首相は日本らしい方法で対策を進め、この「日本モデル」がパンデミックから抜け出す道を示したと主張するが、この日本モデルは場当たり的な対応の印象がぬぐえない。いわば窮余の一策だったというべきだろう。メデイアが日本モデルは不明確だと反論し、パンデミックから抜け出す道を示したという安倍首相の主張に納得しないのは、そのためである。 
 
 では、日本は今後、何をなすべきか。メデイアが指摘するように、日本は未だ危険を脱していない。しかも十分な備えもできていない。従って問題は、見方を変えると、第2波、第3波が襲ってきた際に日本は、この「日本モデル」で対応できるのか、という問い掛けになる。政府は、コロナ対策に関連して、半数以上の国民が政府を評価していない、安倍首相は日毎に求心力を失っている、との指摘を噛みしめるべきだろう。特に、政府を評価しない理由として挙げられた検査の制約、医療従事者向け保護用品の不足、緊急事態宣言の躊躇などについての批判に耳を傾けるべきだ。日本企業については、この際、デジタル契約や遠隔勤務の不徹底、直接対話による商談や意思決定の慣行などを積極的に見直すべきだろう。一つの救いは、合併買収案件において今後、日本企業に活躍と発展が期待されることである。軍資金を活用して、国内では食品、医薬品、エネルギー、金融、機械、機械部品、海外では自動車関連の分野で推進していくことに期待したい。

(注1)要約:メディアはまず、日本経済が3月に終わった今年第1四半期で2期連続のマイナス成長を記録してテクニカルな不況に陥り、昨年の消費増税と今回のコロナ・ショックが重荷となって苦境は続くと予想する。しかも弱い需要がさらなる需要の低迷を招く悪循環が待ち受けており、政府による家計と企業の支援強化が必要だと主張する。コロナウイルスによる甚大な被害を予想して、メガバンク3行は不良債権処理費用について、これまでの後ろ向きの評価方法から将来を見据えた方法に変更、現会計年度で1.1兆ドルを見積もったと伝える。ただし80行に達する地銀は引き続き従来の方法に従っていると指摘、またパンデミックは、サプライチェーンのエンドユーザーとなるトヨタやソニー、パナソニックなどの日本の中核的産業にも打撃を与えたと伝える。

 他方、ウイルスの感染拡大防止に必要な社会的距離拡大戦略について、依然として物理的出社を重視する日本企業が多いと述べ、背景に時代錯誤的な職場文化があるとして印鑑の使用などを挙げ、日本は頑迷なアナログ国家でもあると批判する。その一方、パンデミックは変革を促す外圧になり得るとして、企業文化見直しの追い風になるとの見方を伝えるが、変革は大企業と中小企業に差異があり、しかも行動規制が緩和されると管理者は再び部下に出勤を求めるかもしれないと懸念を表明する。また安倍首相は緊急事態宣言の解除にあたり、日本らしい方法で対策を進め、この「日本モデル」がパンデミックから抜け出す道を示したと宣言したが、検査率は低いままで成果を上げた原因は不明確であり、他国が教訓を得られるか否かは不確かだと述べ、死者数の過小計算や次の感染の波によってこの自賛的宣言が損なわれる可能性があると指摘する。 

 メディアはまた、日本企業が積み上げた現金が軍資金となり、日本はIMFがいう都市封鎖大不況での勝利者になり得ると論じる。現金は、日本の国内総生産の130パーセント余に相当する6.5兆ドルと米国の数字の3倍に達する。現金は米国ではGAFAなどのテク系寡占企業が全体の3分の1を保有するが、日本では広く分散保有されており、しかもこの間、総分配性向が12年の約35パーセントから60パーセント余りへ上昇したと指摘、日本企業は今後も配当性向を低下させず、また現金を内外での合併買収に活用すると見込まれ、分野として国内で食品、医薬品、エネルギー、金融、機械、海外で自動車を挙げ、その関連で日本株が避難先として注目されるだろうと論じ、「失われた数十年間」からの回復力と粘り強さを発揮する日本企業に注目すべきだと主張する。

 ただし政府のコロナ対策については、半数以上の国民が評価していないと指摘する。理由として検査の制約などを挙げ、強い指導者というイメージを演出してきた安倍首相は、コロナウイルス問題では期待に応えていないと述べ、政府、与党内で求心力を失ってきていると伝え、日本は未だ危険を脱していないと警告する。




前田 高昭
金融翻訳ジャーナリスト、社団法人 日本翻訳協会 会員、翻訳家。
訳書に『チャイナCEO』他。
『東アジアニュースレター』も配信中。

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