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新型コロナウイルスの世界的大流行 その2 ―世界の政治、経済に与える影響について

2020/05/07

英文メディアで読む 第84回
新型コロナウイルスの世界的大流行 その2
― 世界の政治、経済に与える影響について ―
 






 
前田 高昭 : 金融 翻訳 ジャーナリスト
       バベル翻訳大学院プロフェッサー
 
 
 前号で、日本を含むアジア地域におけるコロナウイルス流行の現状と対応を観察した。今回は、その世界に与える影響を政治、経済の観点から取り上げる。要約については後述の注1「まとめ」を参照。まず4月14日付タイム誌は、「We Can't Let the Virus Infect Democracy(コロナウイルスに感染させるわけにいかない民主主義)」と題する記事で、次のように論じる。

民主主義の死という別の危機:全世界で指導者たちが権力を強化している。今回のパンデミックが、それを要求しているからである。国を挙げて(whole-of-nation)の共同体制の中心に強力な指導者がいるのだ。しかし注意しなければならないのは、グローバルな危機対策が、別の危機を引き起こすことだ。つまり、我々が承知している民主主義が死んでしまうことである。新型コロナウイルス感染症(COVID-19。世界保健機関の命名した略称)に対処するために、インド、ブラジル、ヨルダン、タイなどの諸国で報道や言論の自由を制限している。イスラエル、韓国、米国は、市民の行動を追跡するために人権を犠牲にして市民生活に介入し、監視している。こうした苛烈な(draconian)施策によって、政治システムの頂点にいる指導者は途方もない力を得ているのだ。しかも指導者は、その存在価値と判断についてほとんど何の責任を負っていない。

体制固めと反政府勢力抑圧に権力を振るう政治指導者:次いで記事は、そうした政治指導者として、任期なしの支配者となったハンガリーのオルバン首相やルーマニア、チリ、ボリビア、イスラエルの指導者を挙げ、彼らは新型コロナウイルスの名の下に無制限の権力を振るい、その体制固めと反政府勢力の抑え込みに利用していると指摘する。さらにフィリピンのドウテルテ大統領の名を挙げ、国土の大半を封鎖し、公共輸送機関を制限して、また自宅隔離(home quarantine)や検問所(checkpoints)、夜間外出禁止令(curfews)を主張するが、ウイルスのことや困窮者に対する経済支援についてはほとんど語らないと批判する。

フィリピンの伝統を逆手にとって権力を拡大する大統領:またドウテルテ大統領は、共同体が協力して問題解決に当たるというフィリピンの伝統に従ってバヤニハン(Bayanihan)と名づけられた法案に署名したが、これは非常時権限拡大法案(expanded emergency–powers law)だと指摘、その後、議会は緊急に会議を招集し、大統領の要請に従ってパンデミック対策のためという理由で筋の通った計画のないまま54億ドルもの資金を同大統領に付与したと批判する。さらに上院は、同大統領の要請に従って、社会メディアに虚偽情報(false information)を流した者を処罰する法案を承認したが、これは報道の自由の締め付けを狙った施策の一つだと指摘する。

クーデターの機会を手に入れた世界の独裁者:3月31日付ロサンゼルス・タイムズ記事「‘Coronavirus coup’?(コロナウイルスはクーデターか)」は、コロナウイルスの感染が拡大するなか、世界中の独裁者が、クーデターを起こす機会を手に入れたと警告する。記事は、民主国家も緊急事態宣言や突然の都市封鎖、国民監視の強化などの手段に訴えているが、アナリストは専制国家(autocrats)では、コロナ流行が大胆な権力奪取(power grabs)の口実になっていると述べていると報じる。

司法や立法機関の監視の目を逃れる権力者:記事は、ハンガリーのオルバン首相が新たに無期限で広範な権限を授与された例を挙げ、こうした現象は民主主義が弱い国で加速しているとのフリ-ダムハウスの米専門家の見方や、ブラジル、フィリピン、チリなどでもこうした兆候がみられるとのアナリストのコメント伝える。さらに記事は次のような警告を発する。ここは原文を読んで翻訳してみよう。

Another warning sign, according to analysts, is when newly imposed government measures are specifically engineered to resist oversight by courts or lawmakers, or appear to have little direct connection to actual efforts to halt the spread of infection.

「アナリストによれば、もう一つ警告すべき兆候がある。政府が新たな措置を執行する場合、それが裁判所や議員らの監視に抵抗するように特別に仕組まれていることであり、あるいは、感染拡大を防止するための実際の努力と直接的な関係がほとんどないようにみえることである」

 記事は、上述のように国家機関の監視を逃れようとする例として、汚職容疑などで危機的状況にある時にコロナウイルスが襲来したイスラエルのネタニエフ首相を挙げ、同首相は、コロナ抑え込みに早速動くと共に、裁判所を閉鎖して予定されていた裁判を延期させ、さらに政府に前例のない権限を与えて、野党が多数を占める議会の招集を妨害したと指摘する。
 
今が無法行為をする好機と考える支配者:4月23日付エコノミスト誌の「A pandemic of power grabs(パンデミックで権力奪取)」と題する社説は、こうした論調を一段と強く打ち出して、次のように論じる。
 全世界の関心はコロナウイルスに向けられている。この機会をとらえて、自らの権力を強化しようとする者が多い。中国が南シナ海において島嶼の支配を強化し、香港で著名な民主運動家を逮捕して香港基本法(Hong Kong’s Basic Law)を切り裂いたのは、偶然のように思えるが、そうではない。世界各地の支配者は、世界のほとんどが気付かない今が無法(outrageous)行為をする絶好の機会だと考えているのだ。

香港基本法に拘束されないと宣言した中国:香港は特に問題である。英国から返還されて以降、「1国2制度」(“one country, two systems”)の原則の下で、人々は言論、集会の自由を享受し、外国企業も香港は安全と考えてきた。香港が重要な金融中心地となったのは、そのおかげだった。香港基本法第22条は中国政府の香港自治への介入を禁止してきた。しかし中国政府の香港出先機関である中央政府駐香港連絡弁公室は4月17日、この条項に拘束されないと宣言し、香港の自由を削減する運動を開始しようとしていることを示唆したのである。

世界84カ国が政府に例外的特権を授与する緊急事態法を発動:こう報じた社説は、似たような現象が世界中にみられ、独裁者あるいは独裁者を気取る者は、コロナウイルス流行を前代未聞の機会として捉え、世界の84カ国が政府に例外的特権を授与する緊急事態法を発動していると伝える。そうした国々としてハンガリーの名を挙げ、富裕な先進国クラブであるEUの加盟国でありながら、オルバン首相は今や、トーゴやセルビア同様の独裁者になったと批判する。さらにコロナ感染拡大防止のための大規模集会(Large gatherings)の制限が、インド、ロシア、アフリカや南米諸国では抗議集会(mass protests)を禁止する名目となり、選挙日時の延期や前倒し実施が、ボリビアやギニアで野党を不利な状況に追いやり、都市封鎖(Lockdown)がアゼルバイジャンでは野党を孤立させる脅迫の手段となっていると報じる。

パンデミックを機に国民の犠牲において権力奪取する独裁者:また感染者の探知と接触者の追跡、隔離は、個人のプライバシーを侵害する可能性があるが、中国やロシアではハイテク・キットを使った全国民監視態勢を導入し、またカンボジアは無制限な監視を実施していると伝え、その他にもニセ情報の禁止が中東諸国などで政府批判の封じ込めに利用されており、タイの独裁的首相、プラユットは、今は自由より健康が優先すると語っていると報じる。また世銀によれば、貧困国向けの支援資金がオフショア租税回避地(offshore havens)への大量資金流出につながっていると述べ、最後に、無節操な独裁者は、このパンデミックを利用して、国民の犠牲において権力奪取を試みるのだと再度強調する。

マクロ経済的見通しでバラツキが拡大:次に経済への影響に関するメディアの論調を観察する。まず4月20日付フィナンシャル・タイムズ記事「Coronavirus creates biggest economic uncertainty in decades(コロナウイルス、経済にこの数十年間で最大の不確実性を生み出す)」をみていく。記事は冒頭で、コロナウイルス流行は経済に対する最終的影響に不確実性をもたらしたために、世界経済の成長見通しに関するアナリストの見解にかつてない相違(divergence)が生じていると指摘、バンク・オブ・アメリカ(BOA)のアナリストによれば、マクロ経済的見通しにおけるバラツキは、少なくとも1960年以降で最大となっていると伝える。
 
1930年代の大恐慌以来の最も深刻な不況:記事によれば、国際通貨基金(IMF)は先週、今年の世界経済の前年比成長率が昨年の2.9パーセント増からマイナス3パーセントに急低下するとの見通しを発表し、1月時点での3.3パーセント増の予想を大きく下方修正した。IMFは今回の危機を「大規模都市封鎖」(“Great Lockdown”)と呼び、多くのエコノミストの予想を超える長引く傷痕(economic scars)を経済に残すだろうと警告しており、そうなると1930年代の大恐慌以来の最も深刻な不況になろうと記事はコメントする。

異常な程度の対策に踏み込む米当局:その一方で政府と中央銀行は経済損失を減少させるために異常なまでの対策に踏み込んでいる。米議員は2兆ドルの景気対策を承認し、BOAによれば、平時では国内総生産(GDP)対比で最大となる公共支出の増加を最速で実現することになった。同行は、1929年と2008年の最大の教訓は、大規模かつ迅速な政策対応が不況入り回避に不可欠だということであり、目標となる施策は、けち臭い緊縮策(miserly austerity)ではダメで、無差別で大規模の寛大な政策だけが個人や企業の破産件数のカーブを平坦にできる、と報告書で述べている。記事は最後に、米国はこうした教訓から学んでいる、とのアナリストのコメントを伝える。

パンデミック経済危機の最前線に立つ銀行:上述のように今回の危機で個人や企業の破産件数が増加し、そのため金融機関の不良政権が急増して経営を圧迫することが懸念されている。次に今回の危機の金融機関に与える影響についてみていく。4月18日付エコノミスト誌は「Wall Street prepares for a wave of loan losses(融資損失の波に備えるウォール街)」と題する記事で、次のように報じる。
 パンデミックによる医療危機の最前線(the front-line)に立つのが医師や看護婦とすれば、経済の対応で最前線に立つのは銀行だ。株を投げ売りした投資家は資金を銀行に預金する。資金不足の企業は銀行から融資を受ける。レイオフされた労働者は住宅ローンの支払い(mortgage payments)を遅らせる。政府は銀行を介して資金を提供し企業を救済する。

急増する銀行融資と市場取引:それで銀行の今年第1四半期における収益動向をみれば、顧客がどのようにパンデミックに対処してきたか、が分かる。米銀の中で最大のJPモルガン・チェイス銀行は、3月のスーパーマーケットでのクレジットカード取引量が前年同月比で倍増したと述べ、BOAは小規模取引先(small-business customers)の6分の1が支払いを遅延したという。銀行の貸借対照表(balance-sheets)も膨らんでいる。これは企業に融資を実行し、新たな預金を受け入れたからだ。JPモルガン、BOA、シティ・グループ、ゴールドマン・サックス、ウエルズ・ファーゴの大手5行の3月末融資残高は、前年同月の残高3.8兆ドルから4兆ドルへ増大している。金融市場における奔流のような動きによって、取引量は史上最高水準に達した。その結果、市場取引の収益は前年同期比JPモルガンで32パーセント、同じくゴールドマン・サックスで28パーセントそれぞれ増加した。

銀行収益を圧迫する貸倒引当金の積み増し:しかし最悪の事態が訪れるのは、これからだ。市場取引の狂奔は長続きしそうもない。低金利は利息マージンを侵食し、しかも銀行は融資損失に備えて貸倒引当金(provisions for credit losses)を積み上げなければならず、それが収益の足を引っ張る。米銀大手4行は、第1四半期に101億ドルの純益(net earnings)を上げたが、前年同期の271億ドルより減少しており、問題は、このうち幾らを引当金に積み増さなければならないか、である。投資家らは、2008年の金融危機や連邦準備理事会(FRB)の年間ストレステストによる最悪シナリオを前提において積み増し必要額を想定している。そうなるとJPモルガンは第1四半期に既に69億ドルを積み上げているが、最終的に450億ドルまでの融資損失となる可能性がある。ただし銀行の幹部は、融資損失は増加するだろうが、GDPが40パーセント落ち込み、失業率が急上昇するなかでは、それが幾らになるかは分からない、と語っている。上記のように報じた記事は最後に、医療分野と同様、銀行も未知の領域に追い込まれているとコメントする。

最大の被害を受けた米国で経済活動再開の動き:こうした状況のなか、世界でコロナ被害が最も大きかった米国で、経済活動を再開させようとする動きが出てくる。4月18日付ブルームバーグは、同氏編集長のマーク・ゴングロフ氏の論説記事を発表、経済の再開を急ぐトランプ米大統領を、自動車での長旅でしびれを切らした子供に喩えて、同氏は明らかに都市封鎖を解除したくてうずうずしていると指摘する。昨日、各州が封鎖を解除する方法についての指針(guidelines)(注2)を示し、州知事らに利用を強要していると述べ、各界の専門家の見解を集約しつつ、次のように論じる。

勝利宣言は時期尚早:封鎖か封鎖をしないか、という疑問は、単純な二者択一の問題ではない。しびれを切らすと、最終的には、さらに人々が死亡し、経済をいっそう傷つけることになるのだ。パンデミックは峠を越したかもしれないが、イタリアやスペインのデータをみると、ようやく高い丘に辿り着き、そこから長いスロープを経てゆっくりと下ろうとしているようにみえる。勝利を宣言するのは余りに時期尚早だ。

検査の徹底が先決:経済を安全に再開する方策は、もっとずっと多くの検査(testing)を行うこと以外にない。サンフランシスコで毎日多数の検査を実施している専門家は、医療品に制約があり、とりわけ検体を採取するに必要な綿棒の不足を訴えている。また人々を職場に戻す最善の方策は効果的な治療であるが、これについて明るいニュースが昨日、伝えられた。ギリアド・サイエンシズ(Gilead Sciences)の抗ウイルス薬(antiviral drug)である。しかし治験が小規模であるなどの問題があり、奇跡の薬品と宣言するのは時期尚早である。

株価反騰は持続不可能:上記のように述べた記事は、次いで最近における株価急騰に触れ、経済再開の公約に飛びつく投資家の楽観主義はどうしようもない(out of control)と述べ、パンデミックの悪化の程度や事態が正常に服するまでに要する時間、企業収益への打撃などについて現在、何も分かっていないと指摘、こうした見通しなしでは株価の反騰(rally)は持続不可能だと警告する。

富める国は新興国と中所得国に1年間の債務支払い猶予を:さらに記事は、富める国は貧しい国を支援すべきだと主張する。それは道義的理由の他に感染症と不況との戦いを容易にするからだと述べ、現在、1930年代以来となるソブリン債務不履行の波が押し寄せており、富める国は新興国と中所得国に対して1年間の債務支払い猶予(moratorium)を認めるべきだと提言する。

社会と株主の双方に役立つ企業に期待:記事は最後に中国について、残念ながらアジアを泥沼から救い出す経済の牽引車(economic tractor)として頼れる状況にないと指摘する。ただし西側の企業の間に愛国や共同体意識の復活に向けた一筋の光がみえてきており、企業は顧客支援が最終的には自身のためになることを再発見し、それが株主への悪しき忠誠心(toxic fealty)を終わらせる希望が生まれてきたと述べる。危機に際して、環境、社会、統治を重視する企業の株価が同業他社を上回っており、企業は今後、社会と株主の双方に同時に役立てる存在になるかもしれないと期待を表明する。

結び:以上のようにメディアは、コロナ危機の政治に与える影響について、民主主義の死につながりかねないと悲鳴に近い懸念を示している。ハンガリーのようにEU加盟国の一角にも独裁化の動きがみられ、元々民主主義が弱い国や独裁主義的な国家では、特にこの動きが顕著である。アジアに限っても、中国は論外としても、フィリピン、タイ、ベトナム、インドなど危惧される国があり、コロナ危機終息後の動向を十分注視していく必要がある。

 世界経済についても、コロナ危機が30年代の大恐慌を上回る深刻な影響を与えることが懸念されている。少なくとも今年の世界経済の成長率はマイナスとなるのは避けられず、企業倒産に伴う不良債権の増加と、それによる銀行の業態悪化懸念は予断を許さない。そうした事態を回避するために、日米欧の政府、中銀による先取的で果敢な対応が求められている。またソブリン債務の不履行防止策も国際機関を巻き込み、主要国間で事前に論議しておくべき問題である。さらに一部の国にみられる経済活動再開の動きも、検査の徹底や治療薬、ワクチンの開発などの状況を睨みながら、慎重に進める必要がある。とはいえ、感染拡大がピークを過ぎつつあるのは事実とみられ、当面は世界経済を牽引する米中と日欧の動向を注視していきたい。

注1:まとめ:まずコロナウイルス危機の世界の政治に与える影響について、メディアはコロナ対策が民主主義の死という別の危機を生み出し、独裁者にとって権力強化のためのクーデターを起こす機会になっていると警告する。また支配者が新対策を執行する場合、司法や立法機関の監視から逃れるように仕組む兆候が見られると批判、また世界84カ国が政府に例外的特権を授与する緊急事態法を発動していると警鐘を鳴らし、無節操な独裁者がパンデミックを利用し国民の犠牲において権力奪取を試みていると強調する。

 こうした警告や批判に該当する事例として、インド、ブラジル、ヨルダン、タイなどでの報道や言論の自由の制限、イスラエル、韓国、米国での行動追跡のための市民生活への介入や監視を挙げ、政治指導者として、任期なしの支配者となったハンガリーのオルバン首相、汚職容疑の追求を逃れようとするイスラエルのネタニエフ首相、今は自由より健康が優先すると主張するタイのプラユット首相、そしてフィリピンのドウテルテ大統領を列挙、ドウテルテ大統領については、国土の大半を封鎖し、公共輸送機関の制限などを推進する一方、非常時権限拡大法案により巨額の資金を獲得し、報道の自由の締め付けを狙って虚偽情報へ罰金刑を課していると批判する。

 国としては、南シナ海で支配を強化し香港で民主運動家を弾圧する中国、大規模集会の制限を抗議集会の禁止に利用するインド、ロシア、アフリカや南米諸国、選挙日時の延期や前倒し実施で野党を追い詰めるボリビアやギニア、感染者の探知と接触者の追跡、隔離を名目にして全国民監視態勢を導入する中国とロシア、ニセ情報の禁止で政府批判を封じ込める中東諸国などを挙げ、貧困国への支援資金が租税回避地へ大量に流出していることも指摘する。

 世界経済への影響についてメディアは、この数十年間で最大となる不確実性を生み出し、そのためマクロ経済的見通しにかつてないバラツキが起きていると指摘、国際通貨基金(IMF)も今年の世界経済成長率を1月時点での前年比3.3パーセント増から同3パーセント減へと下方修正したと述べ、1930年代の大恐慌以来の最も深刻な不況に陥ると報じる。主要国政府と中央銀行は異常なまでの対策に踏み込んでいるとし、米国の2兆ドルの景気対策を挙げ、米当局は1929年と2008年の経験から大規模かつ迅速な政策対応が不況入り回避に不可欠だという教訓を学んでいると伝える。

 他方、経済危機の最前線に立つ銀行では、不良政権の急増が懸念されているが、米銀の例として、スーパーマーケットでのクレジットカード取引量の増加や小規模融資先の支払い遅延、企業向け融資と金融市場における取引増を報じる。しかし今後の問題として、低金利による利息マージンの侵食、融資損失に備える貸倒引当金の積み上げの収益への圧迫を挙げ、融資損失は、経済が急減速し、失業率が急上昇するなか、それが幾らになるかは不明であり、医療分野と同様、銀行も未知の領域に追い込まれていると指摘する。

 最大の被害を受けた米国で経済活動再開を急ぐ動きがあり、トランプ米大統領は各州が封鎖を解除する方法についての指針を発表したが、経済を安全に再開するには、検査の徹底以外にないと主張する。専門家は医療品の制約を訴え、新薬のニュースもあるが、奇跡の薬品と宣言するには時期尚早であり、また経済再開の公約に飛びつく株価の反騰は持続不可能だと警告する。さらに世界は現在、1930年代以来となるソブリン債務不履行の波に直面しており、富める国は新興国と中所得国を支援すべきだと主張、それは道義的理由の他に感染症と不況との戦いを容易にするからであり、1年間の債務支払い猶予を認めるべきだと提言する。中国はアジアを救出する経済の牽引車として期待できないが、西側企業に愛国や共同体意識の復活がみられ、社会と株主の双方に役立つ存在になるかもしれないと期待を表明する。

注2:4月16日付ロイター通信は概略次のように報じる。トランプ米大統領は16日、新型コロナウイルスの感染拡大で打撃を受けている米経済の再開に向けた指針を明らかにし、各州は状況に応じて3段階で封鎖措置の解除を進めるべきとの考えを示した。 指針は各州に対し、3段階の経済再開プロセスを開始するにあたり、新型コロナ感染者の「減少傾向」が14日間続く状況を目安にすることを提言している。

第1段階では、社会的距離に関する適切な措置が実用的でない場合、10人以上の集会は回避すべきで、不要不急の外出は最小限にし、在宅勤務が奨励されるほか、オフィスの共用エリアは閉鎖すべきとした。 学校の休校は継続すべきだが、映画館、レストラン、スタジアム、礼拝所などの大型施設は「物理的距離に関する厳格な措置」をもって再開することが可能とした。 病院は選択的な外科手術の再開が可能で、ジムも新たな措置を講じた上で再開が可能という。バーは閉鎖継続を提言した。 

第2段階については「(感染)再急増の兆候がない」州・地域に適用できるとし、社会的距離に関する措置が実用的でない場合、50人以上の集会を回避するよう提言。不要不急の外出や学校再開を認める。 

第3段階では職場の人員配置に関する制限を解除する。 
ホワイトハウス当局者は指針について、保守的だと述べ、大統領の新型コロナ対策チームの医療専門家らが合意した内容だと明らかにした。 
                                  


前田 高昭
金融翻訳ジャーナリスト、社団法人 日本翻訳協会 会員、翻訳家。
訳書に『チャイナCEO』他。
『東アジアニュースレター』も配信中。

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