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第10回 PC-Transer 翻訳スタジオV20 試用レポート

2013/02/10


 
第10回 PC-Transer 翻訳スタジオV20 試用レポート
 
小室 誠一  翻訳システムテクノロジスト
(バベル翻訳大学院eトランステクノロジー研究所)
 
  

今回は少し趣を変えて、最新の翻訳支援ソフトの試用レポートをお届けします。と言っても、取り上げるソフトはこのWEBマガジンに何度も登場しているPC-Transer 翻訳スタジオです。
PC-Transerは、毎年バージョンアップを行っていますが、昨年(2012年)12月21日にはバージョン20が発売されました。
「バージョン20」というのを見ただけでも、このソフトがいかに長期間ユーザーに支持されて進化してきたかが分かります。
 
まず、過去の記事をお読みください。
 
総合的翻訳支援ソフト「PC-Transer 翻訳スタジオ2011」
http://e-trans.d2.r-cms.jp/blog_detail/&blog_id=8&id=36
 
PC-Transerの主な機能を一通り説明していますので、これを読めばPC-Transer が単なる翻訳ソフトではなく、強力な翻訳メモリを備えた、総合的翻訳支援ソフトであることがお分かりになるかと思います。
 
<試用レポート>「PC-Transer 翻訳スタジオ V19」
http://e-trans.d2.r-cms.jp/blog_detail/&blog_id=8&id=46
 
このバージョンで目立った新機能は、翻訳メモリ機能の向上と、英文ワードカウント機能です。
 
■PC-Transer 翻訳スタジオV20の新機能
 
今回のバージョンアップで特筆すべきことは、オフィスドキュメント翻訳機能の「Office Open XML 翻訳」でしょう。
この他にも、総辞書語数が777.9万語になったり(プロフェッショナル版)、メール翻訳ツールの「メール翻訳パッド」が追加されたりしていますが、何といっても「Office Open XML 翻訳」が目玉です。
 
クロスランゲージ社のホームページに書かれた宣伝文句を見てみましょう。

オフィスドキュメントの原文を直接翻訳エディタに読み込み、翻訳エディタの高度な編集機能を使って翻訳文を編集、オフィスドキュメント形式で直接保存できます。オフィスソフトでのレイアウト作業が軽減でき、翻訳作業の効率を大幅に向上させる、画期的な機能です。

「DOCX / XLSX / PPTX ファイルのダイレクト編集機能を搭載」ということなので、Word 、Excel、Power Pointの2007と2010のファイルに対応しているようです。
 
これまでにも、オフィス・アドイン翻訳機能がありましたが、それとはどのように違っているのでしょうか。
 
アドイン翻訳機能は、要するにWordなどの画面を開いておいて文字をコピーして翻訳エンジンで翻訳した訳文をもとの位置に上書き貼り付けするということです。それに比べて、「Office Open XML 翻訳」はファイルを翻訳エディタに直接読み込んで、レイアウトを保持しながら翻訳して元の形式で訳文を出力します。
使い慣れた翻訳エディタで、いつものように訳文を自由に修正できるので、より柔軟に作業ができるというわけです。
 

■「Office Open XML 翻訳」を試す
 
それでは、Word2007のファイルを使って、「Office Open XML 翻訳」の機能を試してみましょう。
 
Wordの原稿に、ボールド、イタリック、アンダーライン、ハイパーリンクなどを適当に加えて、実験用ファイルを作成します(図1)。
 
(図1)
 
これをPC-Transer 翻訳スタジオV20の翻訳エディタに読み込みます。
 
この時、ファイルの種類を「Wordファイル(*.docx)」にします(図2)。
 
(図2)
 
文書の最初に「—プロパティ--」という行が入る以外は通常と変わりません。
「翻訳」ボタンをクリックして翻訳します(図3)。
 
(図3)
 
本来は、ここで翻訳エディタの編集機能や翻訳メモリ機能、自動辞書引き機能を駆使して、訳文を仕上げますが、今回は、レイアウトのテストなので、訳文には手を加えずに保存します。
 
保存の際にも、忘れずにファイルの種類を「Wordファイル(*.docx)」にします(図4)。
 
(図4)
 

それでは、訳文ファイルを開いてみましょう(図5)。
 
(図5)
 
画像のテキストが日本語のままなのは当然ですが、適切な位置に収まっています。
タイトル部分も反映されています。
 
ただ、よく見ると、文字列の一部分に原文のレイアウトが反映されていないようです。 

(図6)
 
図6のように、原文にはボールとアンダーラインが設定されていますが、訳文には反映されていません(図7)。
 

(図7)
 
図8では、ボールド、ハイパーリンク、赤文字、青文字が設定されています。
 
(図8)
 
訳文では、ボールド、ハイパーリンク、青文字は保持されているものの、赤文字は反映されていません(図9)。
 
(図9)
 
残りの部分を見てみましょう。原文では黄色と緑色のマーカー、罫線が設定されています(図10)。
 
(図10)
 
訳文では、マーカーは消えていますが、罫線は復元されています。
 
(図11)
 
この結果から言えるのは、段落レベルのレイアウトは復元されているものの、文中の一部分のレイアウトがなくなっているということです。
 
一般的な翻訳支援ツールでは、レイアウト情報をタグとして原文に表示します(図12)。 

(図12)
 
上図は翻訳メモリソフトのOmegaTに原文のWordファイルを読み込んだものですが、以下のようなタグが付いています。
 
<t0/>翻訳スタジオ<t1/>
<t0/>バベル翻訳大学院<t1/>
<t0/>バージョン20<t1/>
<t0/>翻訳メモリ機能<t1/>
 
これらのタグを消さないように翻訳すればレイアウトは再現されます。ただ、日本語と英語のように構文の大きく異なる言語間の翻訳では、語順の変更が付き物です。しかし、タグを伴って語句を移動するのは結構面倒な作業で、翻訳に集中するのが難しくなります。さらに、うっかりタグを消したりすると、訳文ファイルが壊れて開かなることさえあります。
 
PC-Transerでは、部分的な文字列のレイアウトの保持は放棄してしまったようです。
翻訳ソフトの訳文は、最終的に原文と訳文を突き合わせてチェックする必要があるので、その際に、文字列のレイアウトを付加していけばよい、という考えなのでしょうか。
 
一見、不十分な機能に思えますが、実は、翻訳案件によっては、こちらのほうがずっと使い勝手が良いこともあります。

今回は、バージョンアップされた機能のほんの一部分だけしかレポートできませんでしたが、次回は、テキスト処理のツールとしての使い方を紹介したいと思います。
 

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