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【翻訳者インタビュー・きたがわ しずえさん】『エセルとアーネスト~ふたりの物語』

2019/11/07

連載227回目の11月7日号では、絵本『エセルとアーネスト~ふたりの物語』の翻訳者、きたがわ しずえさんの翻訳者インタビューをご紹介いたします。お楽しみ下さい。





亡き夫に捧げる夫婦の物語

『スノーマン』『さむがりやのサンタ』やなどで知られる、イギリスの国民的作家レイモンド・ブリッグズ。バベルプレスでは、彼が両親をモデルに描いたグラフィックノベル『エセルとアーネスト ふたりの物語』を8月に刊行した。今回はその翻訳をした、きたがわしずえさんにお話を伺った。 
   
    

     



寝食を忘れてイギリス歴史調査

――翻訳作業、お疲れさまでした。この本を翻訳されたきっかけは何だったのですか。

当時の担当者から、翻訳候補の1冊として届きました。
市井のイギリス人夫婦の話で、1928年の2人の出会いから40年余り。第2次世界大戦という苛烈な出来事はあるものの、「とても普通で、愛があり、時にはユーモラス」な暮らしが描写されています。すべて手描きされている絵も素敵でした。
とても魅力を感じましたが、『3人の王子』(2018年10月発売)の翻訳を終え、ひと息ついたばかりということもあって、少し迷いました。そこで夫に相談したところ、協力するからと薦められて、取り組むことを決意しました。

――夫婦の物語の背景として「イギリスの歴史」が描かれています。実話ならではの難しさもあったのではないでしょうか。

各年代ごとの事件を調べ直しました。もともと歴史好きですから夢中になってしまい、寝食を忘れるほど翻訳にのめりこんでいきました。以前から原爆投下に関わったウィンストン・チャーチルに興味を持っていて、名言集や関連書を読んでいたことも役に立ちました。
イギリスという国には、美しさに魅せられて何度も訪れていたんです。その経験も、翻訳の手助けになったと思っています。


実際の事件や人物などが2人を通して描かれる 



どの年代にも懐かしい父と母
――きたがわさんの、この本のお薦めポイントを教えていただけますか。

生活に少しずつ増えていく電化製品に、戸惑いながらも喜びを分かち合う夫婦の会話はどれもほほえましいですね。
年代ごとの章立てになっているので、社会的な出来事との対比もしやすいと思います。2人の目を通した、戦前戦後の激動を感じることができます。
作者である愛息子、レイモンドとの関係の変化もとても面白いですね。レイモンドは成長するにつれて両親とは異なる価値観を持ち、自分の生き方を探ってゆきます。反発したこともあるでしょうが、両親の晩年には素直に愛情を表しています。


冷蔵庫や電話、テレビ、自動車などに戸惑い喜ぶ

――この本は、子どもたちにも薦めたいそうですね。

戦争中の生活がかなりのページを占めていますから、60代以上の戦争が身近だった世代にも響く作品だろうと思います。ただ、戦時下の厳しい内容ではなく、家庭を大切に生きた、どこにでもいそうな父と母の物語が本書の主題だと思います。だれにとっても、自分の父と母を思い出す要素があると思いますので、さまざまな年代の方に読んでいただきたいです。

――翻訳中に、きたがわさんにはプライベートでも大きな出来事がありました。

私の一番の協力者であり同士であり心の支えだった夫が、令和元年を迎えることができず4月に旅立ちました。私たちもエセルとアーネストのように、40年余りを寄り添って大切に生きてきました。夫にありがとうという言葉と共に、この本の完成を捧げます。 



きたがわ・しずえ
武蔵野音楽大学卒業後35年間音楽講師を務める。
バベル翻訳専門職大学院(USA)で学び、「28DAYS- 運命をかえた黒人たち すべては夢のために-」、「スタンとメイベル音楽隊」「3人の王子」などを翻訳。 

 
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