【監訳者インタビュー・小池堯子さん】『山下財宝地図の謎』
2019/06/22
連載225回目の6月22日号では、『山下財宝地図の謎』の監訳者、小池堯子さんのインタビューをご紹介いたします。お楽しみ下さい。

編集部:はじめにプロフィールついてお聞かせください。
小池:
言葉による表現が好きで、言葉に関わる仕事をしたかったので、大学を卒業してからずっと編集の仕事をしていました。その後1980年代の半ばに日本を離れ、最初はカナダ、そしてアメリカに住むようになりました。アメリカでは日本語の教師をしたり、小さなレストランをやったりしていました。2010年に日本に再移住して、現在は岡山の山中でアメリカ人の夫と犬猫との共同生活中です。
編集部:現在のご活動状況についてお話し下さい。
小池:
帰国後は翻訳の仕事をしたかったので、日本に戻る前からバベル翻訳大学院で勉強を始めました。単に英語と日本語が理解できるというだけではなく、本格的に翻訳の技を学びたかったのです。大学院を修了後は『Cosmic Bible』4部作の英訳・編集をはじめとして、主に監訳のお仕事をさせていただいています。フィクション系では『マルタの鷹』の監訳、ノンフィクション系では『究極の身体』『イート・ダート』『サバイバル・マニュアル』や現在進行形では『7日間脳活プラン(仮題)』などの出版にも関わらせていただいています。
編集部:『山下財宝地図の謎』の監訳に関わられた経緯をお聞かせください。
小池:
バベルプレス社さんからのご依頼で、板谷いさ子さんが翻訳を担当された本著の監訳をさせていただくことになりました。ちょうどその直前にハードボイルド系の『マルタの鷹』の監訳をさせていただいていたので、フィクション系はこの『山下財宝地図の謎』で2冊目になり、大いに興味をそそられて、二つ返事でお受けしました。
編集部:『山下財宝地図の謎』の特色、読者へのアピール点などをお聞かせください。
小池:
山下財宝はいまだに人々のロマンをかきたてる存在で、ちょうど本著の翻訳作業中にも、日本人の数人が山下財宝の不法発掘作業でフィリピン当局に逮捕されたというニュースが流れていました。本当に財宝が存在するのかどうか、あるとすればどこに、など、いまだにその存在は「謎」とされていて、だからこそさまざまな空想の世界に遊べる素材であることは間違いありません。翻訳を担当された板谷さんは、原著作家の方がシナリオライターでその映像的な物語の展開にもとても興味がある、と話されていましたので、ある意味、映画「インデイアナ・ジョーンズ」的な冒険物語的イメージも加味出来れば、とお話しさせていただいたことがあります。読者の方にそうしたワクワク感、え!という驚き感も感じていただければと思っています。
編集部:そうですか。出版の運びとなった今回の『山下財宝地図の謎』には、実際の史実との整合性に加えて夢や幻想の世界の描写など様々な要素が含まれているのですね。『山下財宝地図の謎』は、現在キンドル版とペーパーバック版でも発売されていますので、是非手に取っていただき、感想をお寄せいただければと思います。
ところで、今回の監訳作業でご苦労された点などございましたらお聞かせください。
小池:
まず、監訳者の役割についてちょっとお話しさせてください。監訳者は当然ですが翻訳者ではありません。原著を翻訳する場合は、原著者の意図をくみ取ってできるだけ忠実に原文を訳していくわけですが、監訳作業ではそうした翻訳者の意図に沿って、さらに読みやすい文章にするにはどうすればいいのか、あるいは原著との齟齬はないか、などをチェックしていくわけで、ある意味、編集作業的な要素があります。したがって一番大切なのは原翻訳者、本著の場合は板谷さんとの意思の疎通でした。今回は月に一度、6回にわたって板谷さんとのミーティングを行ない、細かい表現に至るまでお話しさせていただきました。物語のある部分は史実ですので、年代の考証にも配慮しました。また香港の地名などにも気を使いました。そして最大の考慮点である読者対象に関しても、板谷さんと何回も話し合わせていただいて、エンターテイメント性を視野においたスピーディなストーリー作りを心がけました。
編集部:最後にこれからの抱負や翻訳してみたい作品のことなどをお聞かせください。
小池:
人の心に届くメッセージを込めた作品、フィクション、ノンフィクションを問わず、というのが目標ですね。私の原点とも言えるのは、アメリカ時代に乱読していて出会ったスティーブン・キングの『Salem`s Lot(呪われた町)』という小説です。もともとミステリーが好きで日本語英語を問わずにいろいろ読んでいたのですが、この小説に流れる暗さと対極にある暖かい人間の心に魅かれました。読者の心に響く「優しさ」をテーマにした本を紹介したい、そう思い続けています。
編集部:ありがとうございました。何気なく手にする一冊の翻訳本にも、大変な時間と作業が必要なのですね。心して読んでみたいと思います。読者の方々の反応も楽しみですね。これからも素敵な翻訳本をご紹介いただければと思います。

編集部:はじめにプロフィールついてお聞かせください。
小池:
言葉による表現が好きで、言葉に関わる仕事をしたかったので、大学を卒業してからずっと編集の仕事をしていました。その後1980年代の半ばに日本を離れ、最初はカナダ、そしてアメリカに住むようになりました。アメリカでは日本語の教師をしたり、小さなレストランをやったりしていました。2010年に日本に再移住して、現在は岡山の山中でアメリカ人の夫と犬猫との共同生活中です。
編集部:現在のご活動状況についてお話し下さい。
小池:
帰国後は翻訳の仕事をしたかったので、日本に戻る前からバベル翻訳大学院で勉強を始めました。単に英語と日本語が理解できるというだけではなく、本格的に翻訳の技を学びたかったのです。大学院を修了後は『Cosmic Bible』4部作の英訳・編集をはじめとして、主に監訳のお仕事をさせていただいています。フィクション系では『マルタの鷹』の監訳、ノンフィクション系では『究極の身体』『イート・ダート』『サバイバル・マニュアル』や現在進行形では『7日間脳活プラン(仮題)』などの出版にも関わらせていただいています。
編集部:『山下財宝地図の謎』の監訳に関わられた経緯をお聞かせください。
小池:
バベルプレス社さんからのご依頼で、板谷いさ子さんが翻訳を担当された本著の監訳をさせていただくことになりました。ちょうどその直前にハードボイルド系の『マルタの鷹』の監訳をさせていただいていたので、フィクション系はこの『山下財宝地図の謎』で2冊目になり、大いに興味をそそられて、二つ返事でお受けしました。
編集部:『山下財宝地図の謎』の特色、読者へのアピール点などをお聞かせください。
小池:
山下財宝はいまだに人々のロマンをかきたてる存在で、ちょうど本著の翻訳作業中にも、日本人の数人が山下財宝の不法発掘作業でフィリピン当局に逮捕されたというニュースが流れていました。本当に財宝が存在するのかどうか、あるとすればどこに、など、いまだにその存在は「謎」とされていて、だからこそさまざまな空想の世界に遊べる素材であることは間違いありません。翻訳を担当された板谷さんは、原著作家の方がシナリオライターでその映像的な物語の展開にもとても興味がある、と話されていましたので、ある意味、映画「インデイアナ・ジョーンズ」的な冒険物語的イメージも加味出来れば、とお話しさせていただいたことがあります。読者の方にそうしたワクワク感、え!という驚き感も感じていただければと思っています。
編集部:そうですか。出版の運びとなった今回の『山下財宝地図の謎』には、実際の史実との整合性に加えて夢や幻想の世界の描写など様々な要素が含まれているのですね。『山下財宝地図の謎』は、現在キンドル版とペーパーバック版でも発売されていますので、是非手に取っていただき、感想をお寄せいただければと思います。
ところで、今回の監訳作業でご苦労された点などございましたらお聞かせください。
小池:
まず、監訳者の役割についてちょっとお話しさせてください。監訳者は当然ですが翻訳者ではありません。原著を翻訳する場合は、原著者の意図をくみ取ってできるだけ忠実に原文を訳していくわけですが、監訳作業ではそうした翻訳者の意図に沿って、さらに読みやすい文章にするにはどうすればいいのか、あるいは原著との齟齬はないか、などをチェックしていくわけで、ある意味、編集作業的な要素があります。したがって一番大切なのは原翻訳者、本著の場合は板谷さんとの意思の疎通でした。今回は月に一度、6回にわたって板谷さんとのミーティングを行ない、細かい表現に至るまでお話しさせていただきました。物語のある部分は史実ですので、年代の考証にも配慮しました。また香港の地名などにも気を使いました。そして最大の考慮点である読者対象に関しても、板谷さんと何回も話し合わせていただいて、エンターテイメント性を視野においたスピーディなストーリー作りを心がけました。
編集部:最後にこれからの抱負や翻訳してみたい作品のことなどをお聞かせください。
小池:
人の心に届くメッセージを込めた作品、フィクション、ノンフィクションを問わず、というのが目標ですね。私の原点とも言えるのは、アメリカ時代に乱読していて出会ったスティーブン・キングの『Salem`s Lot(呪われた町)』という小説です。もともとミステリーが好きで日本語英語を問わずにいろいろ読んでいたのですが、この小説に流れる暗さと対極にある暖かい人間の心に魅かれました。読者の心に響く「優しさ」をテーマにした本を紹介したい、そう思い続けています。
編集部:ありがとうございました。何気なく手にする一冊の翻訳本にも、大変な時間と作業が必要なのですね。心して読んでみたいと思います。読者の方々の反応も楽しみですね。これからも素敵な翻訳本をご紹介いただければと思います。
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