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【翻訳者インタビュー・河野志保さん】バイリンガル絵本『いのちはかぜのように』

2018/11/07

連載210回目の117日号では、バイリンガル絵本『いのちはかぜのように』の翻訳者、河野志保さんの翻訳者インタビューをご紹介いたします。お楽しみ下さい。



編集:
 はじめにプロフィールと最近の活動についてお聞かせください。

河野さん:
 福岡県生まれ。幼いころ、船員だった父が外国から持って帰るお土産や片言の英語で話すお話を聞いて育ってきたせいか、子どもの頃から海外の翻訳書や語学に興味をもち、いつか翻訳家になり、日本と海外の架け橋になりたいと、胸を膨らませるような子どもでした。

 父は後に船員を辞め、猛勉強をして司法書士となり、70代まで活躍してきたのですが、そんな父の後ろ姿を見てきたせいか、私も20代後半で企業を退職し、カリフォルニア大学バークレー校と同エクステンションに留学して、パラリーガル・サティフィケイトを取得しました。その後、留学中に知り合った夫と結婚、帰国。そして、長女出産後間もなくバベル翻訳大学院が開校したことを知り、奨学生として入学させて頂きました。

 仕事に関しては、幼子たちを抱えながらでもできるようにと、自宅や公民館で子供英語教室を開いて教え、非常勤では幼稚園やインターナショナルスクールの講師を勤めさせて頂きましました。現在は、子ども達に英語を教えながら、再び翻訳書の出版に携わらせて頂いています。
 
編集:
 なるほどですね。河野さんの翻訳の原点は船員だったお父様だったんですね。外国から持って帰るお土産や片言の英語は格別なものということが伝わってきました。私までワクワクします。


 早速ですが、河野さんが翻訳を学び、翻訳家を目指そうと思ったきっかけなどありましたら、お聞かせください。

河野さん:
 近所の図書館に入り浸って、片っ端から本を読み漁っているような小学生でした。子どもにとっての本の世界は、行ったことのない外国や違う時代、そして違う生物にだってなれてしまう特別な空間なのです。独特な表現の仕方や挿絵の美しさ、また英語やフランス語の響きにも魅かれていました。成長するにつれ、作者の方が本当に伝えたいことは何なのか、作者の方の背景や気持ちになって訳していき、まだ知られていない特別な本を訳して多くの方に読んでもらえる翻訳家になりたいと考えるようになりました。


 バベル翻訳大学院や共訳出版で学びチャレンジすることは、夢を叶える大きな一歩だと確信したのです。

編集:
 翻訳家になりたいから、翻訳家になる夢を叶えて現実にする。すごいパワーですね。その言葉は私達にとってのモチベーションにもなります。ありがとうございます。

 さて、河野さんの過去の翻訳作品として『聖書の時代の人々と暮らし』『聖書人名事典』『リン~森の娘~樹と心をかよわせる少女の物語』がありますが、今回【バイリンガル絵本】『いのちは かぜ のように』を翻訳出版されたのは、はどんな理由や思いがあったのでしょうか。


河野さん:
 携わらせて頂いたどの本もそうですが、根底に、人の歩みがあり、いのちの尊さや切なさがひしひしと感じられるものです。

 『いのちは かぜのように』の原著、”Life is like the wind”を初めて読んだとき、ハッと息を飲んで、とっさに何度も読み返したのを覚えています。中学生になった次女と夫に、即席の訳をつけてバイリンガルで聞いてもらいました。読み聞かせさせて頂いている本人が涙ぐむことは避けようと思いましたが、自然と涙が溢れてしまいました。

 そして驚いたことに、「ママ、この本絶対に訳して!」と二人からも懇願され、直ぐに翻訳をさせて頂く決心をしました。

編集:
 翻訳する決め手は、家族からの「ママ、この本絶対に訳して!」だったんですね。こちらまで熱い気持ちになってしまいますね。そんな素敵な言葉で生まれた【バイリンガル絵本】『いのちは かぜ のように』の内容の紹介と、翻訳された感想、楽しかったこと、苦労したことをお聞かせくださいますか。


河野さん:
 『いのちは かぜのように』、”Life is like the wind”の著者、ショーナ・イネスさんは、オーストラリア在住の臨床心理学者であり、深刻な悩みを抱える子どもや若者の支援に力を入れています。この絵本は、心の問題と向き合い、乗り越えるきっかけを子どもたちに知ってもらう為に書かれました。

 可愛い動物たちの体験を通して、生と死について考えます。「いのち」はいったいどこへいくの?残された人々はどうやれば?素朴な疑問に、何パターンもの解決の糸口を見いだして歩んでいくのです。

 落ち着いた場所で、日・英・バイリンガルお好みに応じて、お子様と一緒に読んで意見を出し合ってみたり、ただ絵を眺めたり、お子様ご自身で、或いは大人の方ご自身で読まれるのもお薦めです。子どもに対してどう接したらよいか分からない大人の方や、日々ストレスの中に身を置いている方々にも、是非手に取って頂きたい絵本です。

 ハンガリー在住のイリス・アゴーチさんの可愛らしい挿絵は、見ているだけで癒されます。

編集:
 翻訳をされていると、色々な訳文が浮かんでくると思います。使いたい言葉や文があっても、どこかで区切りを着けなければいけない難しさがありますね。

今回は初めてのバイリンガル絵本の翻訳になりましたが、
出来上がった本を手にしたときのお気持ちはいかがでしたか。

河野さん:
 翻訳における言葉選びは、本当に奥が深いと実感しています。初めて訳した訳と、話し合いを重ねて2回目、3回目、4回目、5回目と訳し直していった訳は随分変化しています。その過程で、新たな気付きや感動が得られ、何度も考えを整理して再考しました。
 作者の方の思いに最も寄り添える訳をすることと、日本人の読者の方、この絵本では小さな子どもさんにも分かり易い訳をすることが、大変重要だったと思います。更に、絵本の主軸である”life”という単語を、日本人の概念に当てはめ分かり易いように、「いのち」と「たましい」という二つの言葉を用いて表現させて頂き、大きな流れができたように感じます。

 私は、これまでは聖書のお話や、若者向けのファンタジーの翻訳をさせて頂いたのですが、この度が初の絵本翻訳となり、それぞれの年代に応じて、訳し方もつかう言葉も変わってくるのだと大変勉強になりました。絵本ならではの「分かち書き」、そして絵を見ながら訳していくことの大切さ等も学び、翻訳の世界が大きく広がりました。

 また、折しも実家の父が二度の緊急入院をした時期と重なり、新幹線で往復しながら病院で夜を明かしました。変わりゆく父との日々の中で、「いのち」の輝きや切なさ、強さなどを痛いほど感じました。監訳者の久保秋先生、共訳者の小峯さま、そしてバベルの薮下さまには大変ご心配をお掛けしたのではないかと思います。

 そんな中、変わらぬ優しいお心遣いを頂き、身に沁みました。お三方には本当に頭が上がりません。『いのちは かぜのように』は、そんな大切な方々の思いが詰まった特別な絵本です。この絵本を手に取って下さった方々の人生が、健やかで豊かなものとなりますように!

編集:
 最後にこれからの抱負や翻訳してみたい作品のことなどをお聞かせくだい。

河野さん:
 イネスさんは勿論のこと、これまでに携わらせて頂いた書籍の作者の方々の活動や訳書以外の作品にも大変興味がありますので、機会があれば実際にお会いしたいですし、特別な本の翻訳をさせて頂けたなら尚更素晴らしいと思っています。同時に、まだ訳されていない海外の特別な本を発掘して、翻訳することも考えています。

 また、子ども達との英語や絵本を通した関わりも継続していきたいです。
アラフィフ世代になってしまいましたが、まだまだやりたいことが沢山あります!

編集:
 河野さん、これからも夢の実現を叶え続けてください。本日はありがとうございました。

 

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