翻訳書籍を出版! 翻訳者・浅野義輝さんインタビュー!!
2017/11/07
翻訳書籍を出版!
翻訳者・浅野義輝さんインタビュー!!
このコーナーでは、これまでたくさんの翻訳者にスポットを当て、
インタビューによって翻訳出版の動機や、その背景も探ってきました。
連載186回目(11月7日号)では、
今月、日本実業出版社から発売される『年をとるほど賢くなる「脳」の習慣』の翻訳を手がけた
バベル翻訳大学院卒業生の浅野義輝さんにインタビューを行いました。
自ら翻訳者としての新しい道を切り開いた浅野さんのインタビューをお楽しみ下さい!
編集部:
浅野さん、この度は『年をとるほど賢くなる「脳」の習慣』(日本実業出版社)の翻訳出版おめでとうございます!!
本日はよろしくお願いいたします。
浅野義輝さん(以下、浅野さん):
はい、よろしくお願いいたします。
編集部:
はじめに、浅野さんの簡単なプロフィールやご職業などについてお聞かせくださいますか?
浅野さん:
わたしは中学生のころから英語が好きでしたが、大学を卒業してからは小さな翻訳会社で取扱説明書などの制作をしていました。そのうち、大学で専攻していた言語学をもっと勉強したいと思い、アメリカの大学院の博士課程に入りました。
でも、学費稼ぎにと始めたテレコム関係の会社のローカリゼーションが楽しくなって、大学院を中退して正社員としてしばらく働きました。今は別の会社でローカリゼーションの仕事をしています。思うに、大学を卒業してからはずっと学校や仕事で英語や言語にかかわってきていますね。
編集部:
中学生のころからの英語好きが今につながっているんですね!
翻訳が好きになったり、興味を持ったきっかけはありますか?
浅野さん:
翻訳会社の制作部にいたとき、ゲーム機の取扱説明書の和文英訳をトライアルとしてやってみろと社長に言われました。うまく訳せてると認められ、それからは会社が請け負った仕事をアルバイトとして回してもらい、技術翻訳に興味を持つようになりました。
編集部:
力を認めてもらったことがきっかけになっているんですね。お仕事として任せてもらえるなんて、なかなかないチャンスだと思います。
今回この『年をとるほど賢くなる「脳」の習慣』を翻訳しようと思ったのはどうしてですか?
浅野さん:
古本や売れ残った新刊を扱うお店でたまたま見つけました。脳科学には大学院の時から興味がありましたが、著者が脳科学者ではなくサイエンスライターということで、専門用語をあまり使わずわかりやすく書いてあるところが気に入りました。
それと、出版翻訳は初めてでしたので、この本のような200ページぐらいの本がちょうどいいとも思いました。
編集部:
運命の出会いといった感じですね。希望にピッタリと合う作品が見つかったと。
ぜひ、そんな本書の翻訳・出版に込めた想いをお聞かせください。
浅野さん:
これまでずっと技術翻訳の仕事をしてきて、いつかは自分の名前が残る仕事がしたいと思っていました。本1冊をまるまる訳すことなど無理だと尻込みしていましたが、バベルで修了作品というチャンスをいただき、完成させることができました。
出版に際しては数社から見送りのお返事があったあと、今回の出版社からOKが出てとてもラッキーだったと思います。
編集部:
長年の願いが叶ったんですね!それは喜びもひとしおですね!
どんな内容になるのですか?簡単にご紹介いただければと思います。
浅野さん:
中年になるとなにかと物忘れをする回数が増えてきて脳が衰えたと感じることがありますが、著者は最新の脳科学研究を紹介しながら、それまでに積み重ねた経験や知恵によって、中年の脳は若いときの脳とは違った能力を持つようになるんだからと、中年を応援しています。
編集部:
衰えるのではなく変化しているということでしょうか。興味深いですね。
浅野さんが思う本書のテーマは何ですか?
浅野さん:
一言でいうと「Viva!中年!」でしょうか。
編集部:
おお(笑)!
浅野さん:
中年のうちに脳をうまくケアしておけば、高齢になってもしっかりと生きて行けるというメッセージがあります。
特に「エピローグ」で高齢化社会に対する著者の思いが感じられます。わたし自身、この章に大いに同感しました。
編集部:
高齢化社会といえば、日本はまさに世界でも突出した高齢化社会を迎えますから、学ぶべきことが多そうです。
本書をどんな人に勧めたいですか?
浅野さん:
わたしと同じ中年で、よく物忘れをするようになったとか、俳優の名前がすぐに出てこなくなったとか、そういう日常生活でよく起こる小さなことを気にし始めている方々にぜひ読んでいただきたいと思います。
編集部:
同年代の方へのエールが込められているんですね。
それはやりがいもありますね。
翻訳されていて楽しかったこと、苦労したことなど、ご感想をお聞かせください。
浅野さん:
楽しかったのは、自分で選んだ本を訳すということです。いいと思った本を人に薦めるだけでなく、訳してたくさんの人に読んでもらえれば、と思いながら訳しました。
苦労したのは、生活の中で翻訳の時間をいかに作るかです。
平日は朝と帰宅してからの3、4時間、週末や祝日は10時間ほどで約3か月かかりました。一つ工夫したのは翻訳支援ツールを使ったことです。出版翻訳ではあまり使い道がないと思われがちですが、訳抜けを防げますし、この本のような科学関連だと用語の統一などに役立つことがわかりました。
編集部:
限られた時間の中で創意工夫を重ねられたんですね。その分、翻訳者としての力量も上がったことと思います。
浅野さんはバベル翻訳大学院の修了生でもありますね。バベル翻訳大学院で学んだ経験についてもお聞きしたいのですが、バベルで学んで最も力が付いたと思うことは何ですか?
浅野さん:
バベルには翻訳の技術だけでなく翻訳に関係した法律や会社設立のこと、コンピューターなど幅広い分野のコースがあって、それが魅力だと思います。特に、必須科目の「翻訳英文法」はとても役立ちました。
あと、技術翻訳を目指している方には翻訳メモリなどのコースもお勧めです。
編集部:
中学生からの英語への興味を、バベル翻訳大学院で学ぶ機会を経て、今では翻訳のお仕事をされるかたちで結実されているというのは素晴らしい実績だと思います。
浅野さんが翻訳の道を志す中でテーマとしていることはありますか?
浅野さん:
翻訳には「文化の橋渡し」という要素があると思います。技術翻訳では特にローカリゼーションに文化的要素が現れますが、出版翻訳はその要素が必須です。海外生活の経験を活かして、「文化の橋渡し」という面を念頭に置きながら、日本にはない視点を持つ本を翻訳して行ければと考えています。
編集部:
異文化間の相互の理解や、自分たちの価値観をより深めるためにも、翻訳の役割は大きなものがありますよね。
最後にこれからの抱負や翻訳してみたい作品のことなどをお聞かせくだい。
浅野さん:
これからも技術翻訳と出版翻訳のバランスを取りながら、面白い、役に立つと思った本を年に1冊でも訳していきたいと思っています。分野はいちばん得意な英語や言語のこと、今回のような脳科学や心理学、生命科学などがいいですね。
すでに2冊目、3冊目の企画をもって出版社に声をかけていますが、よい返事がなかなかもらえません。でも、気長にがんばりたいと思います。
編集部:
我々も応援しています。ぜひチャレンジを続けてください。
本日はありがとうございました!
浅野さん:
ありがとうございました。
☆☆☆
『年をとるほど賢くなる「脳」の習慣』
著者 バーバラ・ストローチ
翻訳 浅野 義輝
「人の名前が思い出せない」「何をしに行ったのか忘れる」
中年になると、こうした些細なことから「脳は衰える一方である」と感じがちです。
しかし脳科学をはじめとする最近の研究で、若い脳にはない「中年脳」だけに備わっている能力があることがわかってきました。
「問題の大枠をつかみ効率よく処理する」
「物事のつながりを見つけ早期の解決に導く」
「経験をもとにストレスに対応できる」
この本では、上記のような最新のさまざまな研究結果を探究しながら、中年以降に武器となる、脳が活性化していくエクササイズ、食習慣、脳トレなど、中年期から老年期をより良く過ごすための習慣を紹介します。
◎最新の脳科学研究でわかったのは「人生の満足度は65歳で頂点に達する」こと
本書は次のような脳にまつわる噂や迷信を、サイエンスライターである著者が1つひとつ解明していきます。
・なぜ、中年になると人の名前を“ド忘れ"するのか?
・“他人を気遣える人"は脳が育つ
・“運動"によって新しい脳細胞が生み出される
・“アルツハイマー"の症状が出てこない人に共通するもの
・“教育"が認知症を遅らせる
・“1日にコップ1杯のブルーベリー"で記憶を強化する
・“1日1杯のワイン"が修復物質をつくり出す
・“脳トレゲーム"で注意力と集中力がアップする
・“2言語を操る年長者"は衰えが少ない
紹介する「中年脳」の力を意識して行動していくことで、人生の問題をうまく処理し、楽しい生活を送ることができるようになります。
本書は、ベストセラー『海馬』『進化しすぎた脳』やテレビのコメンテーターでも知られる脳研究者、池谷裕二氏が監修・解説しています。
イギリスの作家ロザムンド・ピルチャーの『眠れる虎』、
『ローシーの扉』シリーズや『聖なるスカラベの秘密』の他、児童書や絵本もたくさん♪
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