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今回は秋に向けてのアーカイブ特集! 『夏の終わりに』の翻訳者・野崎詩織さんインタビュー

2017/08/23

今回は秋に向けてのアーカイブ特集!

『夏の終わりに』の翻訳者・野崎詩織さんインタビュー


 このコーナーでは、これまでたくさんの翻訳者にスポットを当て、 インタビューによって翻訳出版の動機や、その背景も探ってきました。

 連載181回目(8月23日号)では、アーカイブとして秋の夜長に読みたいタイトルをセレクト。
『夏の終わりに』の野崎詩織さんのインタビューをご紹介します。

8月3日には野崎さんの翻訳第2作目となる『眠れる虎』も発売開始!
こちらのインタビューも近く掲載予定です。
お楽しみに!!

それでは、2015年6月10日掲載の野崎詩織さんのインタビューをお読みください!

 

編集部
『夏の終わりに』の翻訳出版おめでとうございます!
 
野崎
ありがとうございます。
 
編集部
現在はどのような翻訳活動をなさっているのでしょうか?
 
野崎
日中はインターナショナルプリスクールに勤務し、子供たちの英語教育に力を注ぎながら、夜は少しずつですが、翻訳の活動を続けています。
 
編集部
子供たちの英語教育はバベルとしても関心の高い分野です。
ぜひお互いに学び会えたらと思います!
 
野崎
よろしくお願いします。
 
編集部
今回はどのような理由や思いがあって本書を出版なさったのですか?
 
野崎
この作品に出会ったのは、今からおよそ20年前になります。主人の赴任先のドイツ、デュッセルドルフで暮らしていた時のことです。
第二ドイツテレビ(ZDF)が、ロザムンド・ピルチャーのThe End of Summer(夏の終わりに)の小説をもとに作ったテレビドラマが最初でした。
 
編集部
テレビ作品として見て、作品の世界に触れたのですね。
 
野崎
はい。とてもエレガントでハートフルな作品として紹介されていて、いっぺんで心をとらえられました。
この作品だけでなく、毎週のようにピルチャーの小説をドラマ化したものが放映され、その魅力の虜になって行きました。
 
編集部
素敵な番組ですね。
 
野崎
その中でロザムンド・ピルチャーの特集が組まれていて、彼女に対するインタビューでその人となりを知るにつれ、いつしか憧れを抱くようになっていました。
ドイツ人の目を通したピルチャーの世界、彼らが抱くイギリスの人々の暮らしや文化に対する憧れが ほの見えることもさることながら、女性として生きる悩みや失敗、そして幸せなどに大いに共感しました。
 
編集部
著者、ピルチャーへの共感が大きかったのですね。
そこから翻訳への思いも強まっていったのでしょうか?
 
野崎
その当時は何とかこのテレビドラマを日本に紹介したいと漠然と思っていましたが、帰国してからは子育てや、仕事に追われ、いつしか、夢をあきらめるようになっていました。
 
編集部
そうでしたか。。。
 
野崎
ところが、人生も後半にさしかかる頃になって、子育てもひと段落したこともあり、「私の人生、本当にこれでいいの?」という思いが込み上げて来て、、、
作品として取り上げてもらえるかどうかは別として「自分で納得のいく仕事をしてみたら?」と思うようになり、The End of Summer(Ende eines Sommers)のDVDを見ながら、字幕のようなものを作ることに取りかかってみました。
 
編集部
自分にできることから、まずは始められたのですね。
ポジティブな姿勢が素晴らしいです!
 
野崎
ところが登場人物が早口でしゃべっている数か所がどうしても理解できず、誰かドイツ人でセリフを紙に書き取ってくれないものかと、あちこち問い合わせてみたのですが、誰も協力者がいなかったり、とても高い料金がかかるやらで。。。
 
編集部
野崎さんの本気度が伝わって来るエピソードだと感じます。熱意だけではどうにもならないこともある、というのもまた現実ですね。
 
野崎
そうやって壁にぶつかって困っていました。あと残された道は、ドイツ語に翻訳された本を取り寄せて読んでいけば、何を話しているのかつかめると思い、読み始めました。
読みながら忘れないようにと、訳出していくうちに、だんだんその作業自体がおもしろくなっていき、ドラマには無いおもしろさ、文学的な深さが感じられ、翻訳書として出してみたらどうかと思い、原作に当たりました。
 
編集部
徐々に道が見えてきたのですね。
 
野崎
そこで初めてピルチャーのオリジナルの作品に触れたのです。紆余曲折を経て出会った原書はとても美しく、風景描写もさることながら、登場人物たちの心象風景も素晴らしく感動しました。
日常のありふれた風景を描写するにも、何て自分と同じ感性を持った方なんだろう、これほどまでに感性が一致する作家って今までいただろうか?彼女の世界を是非自分が日本語で表現してみたい、と強く思うようになりました。
 
編集部
そんな風に思える作家と出会えたなんて、本当に貴重ですよね。羨ましいです。
 
野崎
中央大学の独文の学生時代から、翻訳の仕事に憧れて、卒業後も仕事帰りに、当時まだ御茶ノ水にあったBABEL翻訳学院に通って勉強していた夢が、忘れたころになって叶ったような、なんとも不思議な気持ちです。
 
編集部
点と点がつながっていく感じでしょうか。
 
野崎
十代の頃から読書が好きで、小説を書いたり、いつも本を手放すことなく、数々の世界文学に読みふけってきたことも、何かの肥やしとなって、この翻訳書に現れていたとしたら、嬉しい限りです。
 
編集部
野崎さんの思いが、翻訳出版という未来を引き寄せたのかもしれませんね。
単なる出版にとどまらない魅力がある、特別な作品と感じています。
 
どんな内容か、簡単にご紹介いただけますか?
 
野崎
アメリカで父と暮らす若きジェインのもとに、ある日、故郷のスコットランドから、おばあ様から帰郷して欲しい、というメッセージを携えた使者が現れます。
日常から非日常へ。7年ぶりに訪れたスコットランドで、ジェインを待っていたものとは、裕福なお屋敷に住むおばあ様と、年上で魅力的な従兄のシンクレアでした。
一見華やかで優雅な暮らし。スコットランドの美しい風景や格調あるお屋敷の描写を通して描かれる登場人物たちの心模様。
そして次第に解き明かされていく真実……そこには人生のはかなさや、本当に大切なもの…ぬくもり、などが描き出されています。
 
欧米で絶大なる人気を誇り、第二次世界大戦を生き抜いてきた著者、ロザムンド・ピルチャーからのメッセージが託されているように思います。
 
編集部
大切なメッセージが込められた作品なのですね。
翻訳作業はどのように進めらえたのですか?
 
野崎
翻訳に際しては、最初に数ページ、意味を調べて何が書かれているか調べていく作業と、その後、自分の言葉に訳していく作業に分けて行っていきました。
どちらも楽しくて、意味を調べていくときは、この次何が書かれているのか、知りたい知りたい、という好奇心が満たされ、その後の翻訳作業は、クリエイティブな感性が試されるので、多少の緊張はありましたが、言葉を紡ぎ出す、創造の喜びにひたることができ、まさに翻訳の醍醐味を味わうことができました。
 
編集部
やりきった満足感が伺えます。
 
野崎
また、私の場合はドイツ語の方が得意っだたこともあり、つまずいた箇所はドイツ語に訳されたものを参照していきました。そして必ず英語のネイティブに当たり、目の前にその情景が描き出せるまで追求していくことを心がけました。
あとは、日本語の流れるようなリズムを念頭に置いて訳しました。訳出しているときは、本当に楽しくて、大げさかもしれませんが「生きている」という喜びに満たされました。
 
編集部
 すごい!!本当に翻訳がお好きなんですね。生きていることの喜びを感じるなんて...
 
生きる喜びを与えてくれた本を手に取った時のお気持ちは、いかがでしたか?
 
野崎
とても待ちどうしくて、一日千秋の思いで待っていました。
私の場合は、POD出版だったので、本が届く前に、もしや?と思い、アマゾンで自分の本を検索してみたら、パッと、その待ち焦がれた本の映像が目に飛び込んできて、幸せな気分に満たされました。
それから数週間後に実際の本が届くと、すぐに全て読み通し、誤植やミスプリ等が無いことを確かめると、とにかくホッとしたことを覚えています。
 
編集部
 どんなお気持ちなのか、私たちには想像もつきませんね。
 
野崎
もう私の手から離れてしまったという、一抹の寂しさと、まるで一人前に育てた子供を世に送り出すように、デビューした本の行く末を心配しながらも、希望を込めて見守っていく、親のような心境になりました。
 
編集部
 とってもあたたかい想いに満たされたんですね。それも苦労して作り上げた、育て上げたからこそですよね。
 
最後にこれからの抱負や翻訳してみたい作品のことなどをお聞かせください。
 
野崎
やはりいつかは、ZDFの制作したロザムンド・ピルチャーのドラマシリーズを日本語に訳して、紹介してみたいですね。
あとは、女性向けの小説や、ドイツの児童文学、絵本等も訳してみたいですね。
 
編集部
 こども向けの作品にもご興味がおありなんですね。
 
野崎
小さい頃から日本とは違った発想や考え方に触れることは、とても大切だと思いますので。
私自身の人生を振り返ってみても、行き詰まった時に、ドイツ人だったら、どう考えるだろう、どう切り抜けるだろう?と思いめぐらし、発想の転換ができたとき、大きく一歩踏み出せた経験があります。
是非これからのお子さんや、若い方たちにも、欧米の文化に親しんで欲しいと思います。
 
編集部
真のグローバル意識を育てられるよう、バベルも取り組んでまいります。
野崎さん、本日はありがとうございました!



 
欧米で絶大なる人気を誇るロザムンド・ピルチャーの世界に、あなたも触れてみませんか?
登場人物たちの心模様が、美しい情景描写を通して描かれてゆく。
目の前に広がる詩情あふれるスコットランドの自然。
まるで旅に出るように、彼女の描く愛の世界に足を踏み入れてみて下さい。

『夏の終わりに』 
著 者  ロザムンド・ピルチャー
訳 者  野崎詩織

 作家であり、シナリオライターでもある父と、カリフォルニア近郊の小さな海岸沿いの別荘地に住む若きジェイン。父が原稿の締め切りに追われ、忙しくしているときはいつも、家に懐いたユーモラスな雑種の犬、ラステイーと海岸へ遊びに行き、海に一緒に入って泳いだり、夕暮れの砂浜に座って、金色に沈みゆく太陽のもと、サーファー達を眺めたりして過ごす。

 そんなジェインのもとにある日、故郷スコットランドから、おばあ様の弁護士が訪ねて くる。高齢のおばあ様が、ジェインに是非再びスコットランドへ帰郷してほしい、というメッセージを携えて来たのだった。次の日の朝、ジェインは弁護士とともに故郷へと旅立つ。      

 ロンドンから夜行列車に乗って一路スコットランドへ帰郷するジェインは、だんだんと懐かしい風景が車窓から見えてくるのを、窓に頬を押し当て、感動で胸がいっぱいになりながら眺める。フォース橋を列車が走ると、河がはるか下に横たわり、暗がりの中、小型船の明かりがところどころに浮き上がって見えてくる。
窓からは懐かしい泥炭(ピート)の匂いがただよっている。ふるさとへ帰ってきたジェインの前には、子供のころからの憧れだった年上の従兄、大人になったシンクレアが現れる。感動的な再会を果たしたジェインを待っていたものとは……。

雄大なスコットランドの美しい情景描写を背景に織りなす人間ドラマ……。
胸にせまりくる、愛の物語。 





『眠れる虎』
著 者  ロザムンド・ピルチャー
訳 者  野崎詩織


イギリスに住む二十歳のセリーナ・ブルースは、生まれる前に父を戦争で失くし、出生と同時に母を失くし、お金持ちのおばあ様と、乳母に育てられた。
おばあ様の死後、その全財産を管理していた弁護士のロドニーと結婚することになっていた。

結婚式を一か月後に控えたセリーナは、フィアンセのロドニーからある本をプレゼントされる。
それは、ジョージ・ダイヤーという作家が、スペインのある小さな島、
カラ・フェルテへ自ら操る船の旅でたどり着き、現地の人と親しくなり、ボートハウスを改造して住み、独自のライフスタイルについて綴ったものだった。

本の裏表紙に載ったその作家の顔写真に、セリーナは衝撃を受けた。
というのもその顔は、会ったこともない、写真で見るだけであった死んだ父(行方不明、推定戦死)の顔にそっくりだったのだから。

セリーナはその顔写真を頼りに、スペインへと赴いた。
第二次大戦後間もなく、ロンドンとスペインの小さな島を舞台に、心の傷を乗り越えて、不器用だが自分らしく生きようとする人々の姿が描かれている。

厳しいしきたりのもとにロンドンでおばあ様と暮らしてきた孤独な娘セリーナが、父を求めて出向いた、遠くスペインの小さな島で、明るい太陽の日差しのもと、色彩の豊かな暮らしを体験していく……。

読者も、まるで自分のことのように自由でおおらかなスペインでの暮らしを追体験できるような、ピルチャー独自の作風に、自然と、明るく開放的な太陽のもとへと誘われる。

恋あり、涙あり、笑いあり、ピルチャー43歳の時に書かれた作品が、長い時を経て、今ベールを脱ぐ、本邦初公開ピルチャー珠玉の一作です。




『ローシーの扉』シリーズや『聖なるスカラベの秘密』の他、
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