ローシーの扉シリーズ第2作、『時の扉』発売!翻訳者・泉愛子さんインタビュー!!
2017/07/07
ローシーの扉シリーズ第2作、『時の扉』発売!
翻訳者・泉愛子さんインタビュー

このコーナーでは、これまでたくさんの翻訳者にスポットを当て、
インタビューによって翻訳出版の動機や、その背景も探ってきました。
連載178回目(7月7日号)では、先日発売開始となったPOD作品の新刊『時の扉』の翻訳者・泉愛子さんをご紹介します!
前作『亡霊の島』に続く「ローシーの扉」シリーズの第二弾です。
ご自身の希望通りの作品にめぐり合った泉さん。どんな想いで『時の扉』という作品を翻訳されたのでしょうか?
また、この作品の持つ壮大なストーリーに秘められたテーマとは?
常に新しい発見をし、新しい挑戦を続ける泉さんのインタビューをお楽しみください!!
編集部:
本日はよろしくお願いいたします。
はじめに、簡単なプロフィールやご職業、最近の活動などについてお聞かせください。
泉愛子さん(以下、泉さん):
アイルランド・ダブリン在住で、普段は電子部品を取り扱っている会社でセールスアドミニストレーターとして勤めています。
2017年は娘が生まれ、初めての育児に追われていますが、おかげで赤ちゃんや小さな子供向けの英語表現に触れる機会ができたので、日々新しい発見と出会いを楽しんでいます。
編集部:
お子さんが生まれたんですね。おめでとうございます!
ご自身の成長にもつながっていて素晴らしいですね。子育ては英語力のアップにもつながるなんて!
泉さんがいつも語学や翻訳に意識を向けているということでもありますよね。翻訳に興味を持ったきっかけは何かありましたか?
泉さん:
翻訳に興味を持ったきっかけは、小学生の時に読んだ「ナルニア国」シリーズでしょうか。
本を読むのはもともと好きだったのですが、ナルニアを読んだときに最初、違和感を覚えたんです。同じファンタジーでも当時読んでいた「クレヨン王国」シリーズでは感じなかった違和感です。日本語で読んでいるのに、馴染めないというか、おかしな仕種や行動が目についたんです。
そしてある日、ナルニアの表紙をながめていて、作者が外国人だと気づいたんです。「そうか、外国の人だからそもそも発想も仕種も違うのか」って理解したら、海外の文化に興味がわきました。
また、外国の本を日本語にしている人がいるのだということにも気がつき、わたしもこんな仕事がしたいなと思うようになりました。「本を違う言語から日本語にするなんてすごい!」って思ったので。それ以来、翻訳された書籍を前よりも好んで読むようになり、今もその気持ちは変わりません。
編集部:
自分が感じた違和感を大事にされて、そして発見があったんですね。
挙げてくださった二冊と本作とは、また違った魅力だと思うのですが、なぜこの本を選んだのですか?
泉さん:
戦う女の子の話が好きなんです。それも女の子らしいけど、強い女の子が時に。それで”Rosi’s Time”(『時の扉』)も気に入りました。ローシーには悪いのですが、彼女は主人公なのに一番怪我しているし、常に満身創痍なんですよね。主人公だからって甘やかされていないところが少し現実的で、気に入っています。そういう子が主人公だとついつい、応援したくなりますよね。
編集部:
確かに!まさにご希望のピッタリの作品ですね。
そんなローシーの物語、思い入れも強かったのではないでしょうか。読者に対してはどんな思いを持って翻訳されましたか?
泉さん:
『時の扉』はフィクションですけど、実際の歴史上のできごとにも触れています。読んだ人が、本書のストーリーを楽しむことはもちろんですが、実際の歴史はどうだったのだろうとか、舞台となった場所は地理的にどこなのだろうとか、もとになった出来事にも興味をもつきっかけになったらいいと思います。
編集部:
現実とのつながりもあるんですね。興味深いです。
内容も少し紹介していただけますか?
泉さん:
自分の家系が「時」の番人という「時」を超える力を持つ一族だと最近知り、叔父のリチャードのもとで見習い訓練を受けているローシーは、まだ力をうまく操ることができませんでした。それなのに、ローシーの一族の富と名声を手に入れたいと企むカークという同級生とのいさかいの中、友だちのアンジーと共にアメリカ独立戦争真っ只中に時を渡ってしまいます。
共に時を越えてしまったカークがイギリス軍に味方したことで歴史を変えてしまいかねないなか、大けがをしながらもローシーは農民たちを率いて部隊を作り、後世に伝わっている歴史のあるべき姿が変わらぬように奮闘します。本書ではまだローシーが、独立に成功しアメリカ合衆国が誕生するか否かの責任重大なミッションに成功するのかわかりません。続く3巻でどのようなことが起きるのか、楽しみですね。
編集部:
それは先が気になりますね~。待ち遠しいです!
そんな歴史を飛び越える魅力的なストーリーの『時の扉』ですが、テーマは何だと思いますか?
泉さん:
本書のテーマは、歴史は有名人や権力者を中心に後世に伝えられるけれど、実際は当時を生きるすべての人、ひとりひとりの行動、判断によってつくられているということだと私は思います。現実に置きかえるならそれは、今を生きているわたしたちひとり一人にあてはまることですから、何事もきちんと考えて行動することが大切だということですね。
編集部:
なるほど。歴史を作るのは、歴史に名前が残る一部の人たちだけではないんですよね。ひとりひとりが本当に大事で、意味がある存在だとも言えそうです。
戦う女の子ローシーが繰り広げる、時を越え、現実とファンタジーも超えて展開するストーリー。ぜひ翻訳してみた感想をお聞かせください。
泉さん:
翻訳をしていて、楽しかったと同時に苦労したことは、キャラクターの口調を考えることでしょうか。台詞を訳しているときなどきちんとキャラクターの立場になる必要があります。気を抜くと口調や語彙がキャラクターと合わなくなってしまうんです。
難しいですが、いろんなキャラクターになって語るというのはとても面白かったです。ちょっとした役者気分です。もっとキャラクターをいきいきとさせることができるように、様々な口調を訳せるようになりたいです。
編集部:
キャラクターが多彩になればなるほど大変でしょうね。その分楽しみもひとしおというところでしょうか
これから翻訳をなさっていく上でのご自身のテーマはありますか?
泉さん:
海外の書籍を日本語で読めるようにすることで、読む人に書籍を通して何かに興味を持ったり、感じたり、考えるきっかけとチャンスを増やしたいです。海外書籍のおもしろいところは、日本と文化・発想・ものの見方が違ったりすることだと思います。そして、そういった違いに肩肘はらずに触れ、楽しんで、得た知識や感じたことが実社会で役に立ったら嬉しいと思います。
編集部:
人の変化や成長を願う泉さんの思いが表れていますね。
今後はどんな翻訳活動をしていきますか?また、将来翻訳してみたい作品がありましたら教えてください。
泉さん:
今後の抱負は、せっかく海外にいるので日本でまだ翻訳されていない本を発掘して紹介することと、翻訳ひとつを仕事にしていけるようになるために、英語は当然ですが、日本語も磨くことです。アイルランドで生活していると日本語を使う機会が減ってしまうので、とっさに日本語が出てこなかったり、度忘れしたりすることがあるので。
今後翻訳をして各キャラクターの口調や語彙などいろいろ増やすためにも、様々な分野の日本語にも触れるべきだなと思いました。
翻訳してみたい書籍は、”School for good and evil” というシリーズです。小学中学年くらいからの小説なのですが、続きが気になって、新刊を楽しみにしています。ユニバーサルスタジオから映画にもなる予定らしいので、ぜひ日本の子どもたちにも原作を読んでもらいたいですね。また、子どもが生まれたことで絵本を読む機会が増えたので、ぜひ絵本の翻訳にも挑戦したいです。
編集部:
ぜひ挑戦を続けてください。本日はありがとうございました!
『時の扉』
著者 エドワード・イートン
翻訳 泉 愛子, 富田 邦子, 萩尾 景子
監訳 西沢 友里
イラスト issa

2012年度ニューイングランド・ブック・フェスティバル、ヤングアダルト部門の準優秀賞作品!
両親を亡くしたローシー・キャロルは、ニューイングランド地方に住むリチャード叔父さんに引き取られて怪しげなお城に住むことになり、そこで家族代々に伝わる「ひみつのおくりもの」を受け継ぐことになる。
ローシーは「時」を越えて旅をするという不思議な能力を持っていたのだった。それはつまり、「時」の番人としての責任を背負うことでもある。
リチャード叔父さんに言わせれば「まだまだ見習い」ということなのだが。
ある日ローシーと友人たちは「時」の入り口に吸い込まれ、過去に迷い込んでしまう。
ローシーは自分の能力を駆使して、今どこに自分たちがいるのかを見極め、乱された「時」を修復する方法を探しださなければならない。
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