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今年は「さる年」!『あのね…』と翻訳家・長井芳子さん特集!!

2016/01/12

今年は「さる年」!
 おさるさん絵本『あのね…』と翻訳家・長井芳子さん特集!!

このコーナーでは、これまでたくさんの新人翻訳家にスポットをあて、
どんな方がバベルの翻訳ワークショップからデビューしているのかをご紹介し、
インタビューによって翻訳出版の動機や、その背景も探ってきました。

新年最初の連載142回目(1月12日号)では、2016年の干支・申にちなんで、
おさるさん絵本の『あのね…』の翻訳者である長井芳子さんをご紹介します。

『あのね…』出版時のインタビューをお楽しみください。

バベルは長井さんと30年の長きに渡って共に歩んでまいりました。

今年3月の一周忌に合わせて、バベルでは長井さんの功績を称え、受け継いでいくための
取り組みをスタートさせる予定です。

“翻訳家・長井芳子”は翻訳の中に永遠に生き続けます。


 
2014年6月10日号
 『あのね…』出版時インタビュー


編集
長井さんは、すでに翻訳書、監訳書など多数手がけていらっしゃるベテラン翻訳家ですが、今年に入って、ご自身初めての絵本翻訳を手がけられましたので、ぜひお話を伺いたいと思い、ご登場いただきました。よろしくお願いいたします。
はじめにプロフィールと最近のご活動についてお聞かせください。


長井: 
三十代で翻訳を始めて、現在まで細々と翻訳に携わってきました。最近、初めての絵本となる『あのね…』を翻訳、出版したところです。


編集
何十年も翻訳のご経験がおありの長井さんが、絵本翻訳が初めてとは意外ですね! 
ノンフィクション分野をはじめ数々の本を翻訳されている翻訳者として、また、バベル翻訳大学院(USA)で講師としてもご活躍されていらっしゃるわけですが、はじめに翻訳家を目指そうと思われたきっかけはどんなことだったのでしょうか。


長井:
やはり、翻訳という作業が好きだったからでしょうか。翻訳するときほど綿密にテキストを読むことってめったにないでしょう。
普通に読んでいたら見落としていたに違いない、書き手が仕掛けた伏線やキーワードの存在に、翻訳していると気づくことがよくありますが、そういう時、それまで読んでいた世界が急に膨らみ、彩りを増して迫ってくるんですね。
あぁ、この書き手はこんな風に、こんなことを言いたかったのかと、書き手と作品にシンパシーを感じる度合いが深まります。そうした発見や出会いを経験する面白さにはまったのだと思います。 


編集:
じっくり読むからこそ、普段は気づかないようなところまで感じ取り、より作品に近づける、という点に魅力を感じていらっしゃるのですね。作者の意図するところを深く読み取って、それをいかに読者に伝えるか、それはまさに翻訳の醍醐味ですね!
さて、今回 絵本『あのね…』を翻訳されたのは、はどんな理由や思いがあったのでしょうか。


長井:
この絵本は、初めて見たときに一目惚れして、是非、訳したいという気持ちに駆られました。絵も可愛くてすてきだし、単純な文のなかに、とても大切な意味が込められているところも気に入りました。
 

編集:
英国人作家エマ・ドッドさんの作品で、原書のタイトルは“You…”でしたね。弊社では『あのね…』の前に3冊、エマさんのシリーズを出版しておりますが、絵の可愛らしさとシンプルなメッセージが好評で、おかげ様でいずれの作品も好調な売れ行きです!(笑)
では、本の内容を紹介していただき、翻訳されたご感想、楽しかったこと、苦心されたことなどお聞かせください。


長井: 
全ページが“I love you.”のメッセージで満たされている、素直で単純な内容ですが、無条件に相手のすべてを認め、受け入れるという「愛」の原型が見事に表わされています。
翻訳に際して一番考えたのは、作品中に使われているたった二つの代名詞“I”と “You”をどのように訳すかという点でした。“I”と “You”は親子に限らず、お祖父さんと孫でも、年上のお姉さんと小さな弟でも、あるいはもっと広げて、優しいおばさんと子供でも、何でもいいのだと思います。ですから母と子のような狭い関係のみに縛られない表現にしたいと思いました。で、結局、“I”は訳出しないことにしたのです。そうすることで、“I”がいろいろな広がりを持てるようになったと思っています。


編集:
なるほど。翻訳するうえで頭を悩ますことの一つに「代名詞の訳し方」がありますが、特に文章量が少ない絵本の世界では、そこをどう訳出するかが翻訳者の腕の見せ所かもしれませんね。

長井:
一方“You”のほうは、子供に呼び掛けている言葉ですが、内容から判断して、上から目線の語にはしたくなかったので、「きみ」と訳して対等の関係を示そうとしました。
あと、考えたことといえば、どのページにもでてくる“I love you.”をいかに訳し分けるかですね。特に最後のページの“I love you more and more! ”はそれまでのページとは違う表現にしたいと思い、私自身が子育てしていたときの気持ちを思い返して、「だいじになる」にしました。


編集:
「頻繁に出てくる語の訳し分け」ですが、これも「あんばい」がなかなか難しいですね。同じ語を繰り返すのか、所々に違う語でメリハリをつけたらいいのか、作品や訳者によっても違うでしょうし。ただ、この絵本に関して言えば、母である長井さんご自身の経験に基づいた言葉が、最後にピタッと当てはまったわけですね。翻訳は「人生経験を積んだ分だけ、語彙が広がる」と聞いたことがありますが、まさにその通りだなと思います。
そのようなご苦心を経て、絵本を手に取った時のお気持ちはいかがでしたか。


長井:
それはもちろん、とても嬉しかったです。金箔のことなどで編集の方にはいろいろご苦労をお掛けしましたが、原作と変わらぬ美しい仕上がりになっていて感謝しています。

編集:表紙と本文の所々に金箔が施されていますね。ポイントポイントで入れているからか、全体にメリハリがついていて、とても素敵に仕上がりました。

長井:
また、3歳になる男の子にお母さんが読み聞かせてあげたら、その子が「ママってぼくにこんなきもちなんだね!」と言って目に涙を浮かべているのを見て、そのお母さんも一緒に泣いてしまったという話を聞いた時は、訳してよかったとしみじみ思いました。小さな読者がこの絵本をどう受け取ってくれるか、とても気になりますね。

編集:
それは素敵なお話ですね~! 読者の方から寄せられる「生の声」、特に絵本の場合はお子さんの反応がストレートですから、そのようなエピソードを伺うのは嬉しいです。私が嬉しいのですから、翻訳者としての長井さんにとっては、より胸にぐっとくるものがおありだったのでしょう。
それでは、最後に、これからの抱負や翻訳してみたい作品のことなどをお聞かせくだい。


長井:絵本を訳す楽しさに目覚めてしまったみたいです。これからも気に入った絵本に出会えたら訳してみたいと念願しています。

編集:
絵本翻訳と出会って、将来への楽しみがまた一つ膨らみましたね! 
では、また近いうちに長井さん翻訳の絵本を拝見させていただきたいと思います。これまで以上に、文芸翻訳家としての益々のご活躍に加えて、大学院での後進の育成、翻訳のご指導もますます冴えわたることでしょう。

本日は、ありがとうございました。





○長井さんのその他の作品○

『シャロットの姫』(翻訳)

☆『シャロットの姫』 出版時インタビュー

『シェイクスピアの顔』(監訳)




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