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『こえだのとうさん』の翻訳者  いとう さゆり さん

2015/11/25

新刊続々! 
『こえだのとうさん』の翻訳者 いとう さゆり さん

 
このコーナーでは、これまでたくさんの新人翻訳家にスポットをあて、
どんな方がバベルの翻訳ワークショップからデビューしているのかをご紹介し、
インタビューによって翻訳出版の動機や、その背景も探ってきました。


連載139回目の11月25日号では、

新刊『こえだのとうさん』の発売を記念いたしまして、
翻訳者・いとうさゆりさんのインタビューをお届けいたします!

 
編集部
この度は『こえだのとうさん』の翻訳出版おめでとうございます!
まずは、いとうさんのプロフィールを簡単にお聞かせください。
 
いとう
上智短期大学英語学科を卒業後、ハワイ大学に留学し、ホノルルの会計事務所で約5年間、翻訳・リサーチ業務を担当しておりました。それから結婚して13年、3年置きの転勤をくり返し、世界中各地を転々とする生活を送っております。
翻訳家に憧れて、ずっとその夢を抱いていましたが、転勤や出産・育児などで長い間その夢を後回しにしていました。今は、やっと下の子どもが小学生になったので、バベル翻訳大学院で勉強を始めることができました。
そんな中、入学直後に応募した『こえだのとうさん』の出版翻訳オーディションに合格し、以来、翻訳出版の準備をしつつ、スローながら自分のペースで大学院の勉強をしています。今は、お陰様で12月1日に発売となる『こえだのとうさん』のプロモーションのため大忙しの日々を送っています。
 
編集部:大学院で学びながらの翻訳出版となったのですね。
今回『こえだのとうさん』を選ばれた経緯や、翻訳・出版に込めた思いをお聞かせください。
 
いとう
原書スティックマン(“Stick Man”)『こえだのとうさん』との出会いは、バベルプレスの出版翻訳オーディションでした。入学後すぐに、絵本翻訳家の富田麗子先生による絵本翻訳に参加したのを機に、すぐさま絵本翻訳の虜になりました。
将来、数十年後には「絶対絵本翻訳家になるぞ!」と決意していた時でした。
 
入学直後で意気揚々と勉強を始めた頃だったので、「何でも挑戦だ!」と思ったんです。
早速、原書を図書館でチェックしたときは、味わいのある独特なイラスト、リズム感のある英語と心温まる家族のお話しに魅了され、まるで眠っていた宝物を見つけたかのような感覚を味わったのを覚えています。
 
編集部:
ご自分の気持ちに素直に従ったんですね。とてもエネルギッシュで、素晴らしいと思います!
 
いとう
レベルチェックのつもりで応募したオーディションの合格を受けたときは、嬉しさと同時に果たして自分で務まるのかという不安もありました。大学院に入学したばかりでしたから、出版翻訳とは、卒業後経験を積んでからやっと参加できるもので、自分にはまだ手の届かぬ世界だと思っていました。
でも、『こえだのとうさん』を紹介したいという強い気持ちだけはありました。『こえだのとうさん』でなかったら、私をここまで強く突き動かすことはなかったですし、このような「今」はなかったと確信しています。
 
編集部
行動によってチャンスを掴んだわけですね。本の魅力に後押しされたというお話も、とても興味深いです。
 
いとう
今回の経験により、出版翻訳イコール翻訳したら終わりではないことも学びました。一つの作品の翻訳が完了すれば、校了の作業があり、どの字体を使ったら良いか、表紙はどんな風にしたら良いかという細部にまで責任を持つことも分かりました。
 
そして、いざ出版の段階になっても、今度はその絵本を一人でも多くの人々に知ってもらうにはどうしたら良いかを考えたり、絵本の読み聞かせイベントをしたりと、絵本の訳者として、絵本にまつわるすべてのことに責任を負うのですね。今回は、出版翻訳のプロセスを一から学ぶことができ、本当に勉強になり、私の視野も世界も一気に広がりました。
 
編集部
その学ぶ姿勢が、いとうさんの道を切り開いていくのでしょうね。
いとうさんを突き動かした『こえだのとうさん』は、どんな内容なのか、少しご紹介いただけますか?
 
いとう
『こえだのとうさん』は、家族を思う気持ちや、希望、勇気を描いた作品です。
主人公は小枝なんです。面白いですよね。
 
小枝を主人公にした作家の発想力と創造力が本当にユニークだし、凄いと思います。
実は、作家のジュリア・ドナルドソン女史は、前作の『グラファロのおじょうちゃん』の中で、主人公が肌身離さず持っていた小枝の人形からインスピレーションを受けて、この物語を作り上げたそうです。
アクセル・シェフラー氏の見事なイラストがこの作品に繋がったんですね。
 
このお話しの中で、“こえだのとうさん”はただの小枝ではないんです。私たちと同じように、愛する妻と三人の子どもがいるお父さんです。
そして、ある春の朝、ジョギングに出かけたこえだのとうさんは犬に追いかけられ、白鳥の巣にされ、海へと流されたりと散々な目に逢い、お家へ帰りたいのに、帰れなくなってしまう冒険ストーリーです。
 
また、何といっても、シェフラー氏のイラストが物語をより魅力的にしていると思います。こえだのとうさんや登場する動物たちが表情豊かに描かれていて、眺めているだけでも楽しい絵本です。何度読んでも新しい発見があると思いますよ。
物語の最後の方にクリスマスを迎えるので、ホリデイシーズンにはぴったりの絵本なのですが、物語は春から夏、秋、冬と展開していくので、四季を通してお楽しみ頂ける絵本になっています。
 
編集部
たった一本の小枝にも、家族があり、家族を思う心があり、家族と一緒の幸せがある。今の時代に必要なメッセージのようにも感じます。
 
念願の翻訳作業はいかがでしたか?
 
いとう
原書は物語全体に、英語独特の韻がふんだんに使われ、英語特有の歌のような音・リズムを楽しむことができます。それを同じ雰囲気のまま日本語にするという作業は、ひたすら練り直しを繰り返す毎日でしたが、決して苦労したとは思っていません。長い時間をかけて、最もふさわしい言葉や表現を捻り出し、見つける作業が喜びであり、楽しみでした。
 
しかし、もちろん楽しいだけではありませんでした。主人とバイリンガル読み聞かせの練習をしていた時に、まさかの訳抜けを発見し、頭が真っ白になりました。今回は事なきを得ましたが、はじめて責任感の重さを身を持って経験し、身の引き締まる思いをしました。
 
編集部
チェックの大切さは、私たちにとっても重要な問題です。最高の形で作品を送り出すために、私たちも尽力して参ります。
 
本の話に戻りますが、『こえだのとうさん』は本国では人気のキャラクターだそうですね。
 
いとう
そうなんです!こえだのとうさんは、本国イギリスでは大人も子どもも大好きな大人気キャラクターなんです。
実は、私も絵本を翻訳した後にこの事実を知って驚いています。私が一目惚れした『こえだのとうさん』は、絵本の世界を飛び出して、色々なところで活躍していることがわかったんです。
 
まず、“スティックマン”は出版後すぐに、劇場でお芝居として楽しまれました。その活躍は、アジアにも広まり、シンガポールや香港などで海外公演も果たしているんです。それに、イギリスの多くの学校で、学校教材としても利用されています。最近では、こうした人気の高まりから、“スティックマン”は日本の林野庁に相当する林業委員会の応援キャラクターとして起用されました。森で遊ぶ機会の少なくなった子どもたちに、もっと自然の中で遊んで欲しいとの願いから、英国の各地で、スティックマントレイルが作られました。“スティックマン”がきっかけとなって、森で楽しい時間を過ごす親子がぐんと増えたそうです。“スティックマン”が出版され、約7年、本国での人気はますます高まっているようです。
 
そして、このほど、本国では“スティックマン”がアニメ化され、今年のクリスマスには、英国のBBC Oneで短編映画としてプレミア放映される予定になっています!これは、本当に楽しみです。
そして、同時期に『こえだのとうさん』が日本でも発売されるので、私自身もとても興奮しています。皆さんに愛されるキャラクターになることを願っています。『こえだのとうさん』をどうぞ宜しくお願いいたします。
 
編集部
まさにグローバルに愛されているキャラクターですね。日本でも広く親しまれる存在になっていくことと思います。
本当にいい流れが来ていますね!!こえだのとうさんが日本の子供たち一緒に遊んでいる様子を思い浮かべると、ワクワクしてきます。
 
最後に、これからの抱負や翻訳してみたい作品のことなどをお聞かせくだい。
 
いとう
この出版翻訳がきっかけで、絵本翻訳の世界への扉が開かれました。これからもライフワークとして絵本翻訳には携わっていきたいと思っています。
絵本の魅力は、短いストーリーの中に伝えたいメッセージのエッセンスが凝縮されていることだと思います。だからこそ、子どもの時に読んで味わった感覚が大人になっても残っていくのではないでしょうか?これからは、次の世代にもずっと伝え続けられるような作品を一冊でも多く翻訳し、一人でも多くの人が笑顔になるような作品を紹介していけたらと思います。
 
実は、もうすでに翻訳したい絵本が何冊もあるんです。毎日読んでも飽きない絵本なんです(笑)。ですから、ほんわか幸せな気持ちになれる絵本をたくさん皆さんにお届けできるよう、しっかりと勉強し、経験を積み重ねていきたいと思います。
また、絵本のPRのために、バイリンガル読み聞かせにも積極的に参加できたらと思っています。英語独特のリズム、一つ一つの言葉の面白さを伝えたりと絵本の良さを広めていきたいと思います。
 
また、バベル翻訳大学院に入学した動機は、自分が克服したある病でした。身体の病だけでなく、心の病に苦しんでいる人々に希望をもたらし、心身の健康に導く書籍を翻訳することが私のもう一つの目標です。本に書かれた一つのメッセージとの出会いがその人の人生を変えるパワーを持っていると信じています。そしてその希望・応援のメッセージを発信していきたいです。
そして、思いがけず、このインタビューの少し前に、アメリカ最新のグルテンフリーのレシピ本の翻訳チームにも参加させて頂くことが決定しましたので、これから、ますます忙しい日々になりそうです。
 
編集部
そうでしたか。まさに今、成長期といったところでしょうか。
ますますパワーアップするいとうさんの今後が楽しみですね!
 
 
いとう
出版翻訳という目標さえも抱いていなかった私が、まさか今回本当に絵本を出版できることになったのもひとえにバベル翻訳大学院とバベルプレスのオーディション制度のお陰です。
そして、翻訳のご指導を頂いた久保秋里香先生や出版に携わったすべての方々に、お礼と感謝の意を申し上げます。本当にありがとうございました!
こんな素晴らしい絵本に携わることができて光栄です。絵本の出版を機に、私自身も出会うことがなかったであろう素敵な方々に出会い、交流させて頂き、パワーを頂き、感謝する日々です。
 
これから、真の翻訳家になれるよう、勉強を続けながら謙虚な気持ちを忘れずに時には大胆に自分の夢と目標に向かって頑張っていきたいと思います。
 
 
編集部
応援しています。ぜひ頑張ってください!
本日は本当にありがとうございました。
 
いとう
ありがとうございました。





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      『こえだのとうさん』 

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 訳:いとうさゆり
 原書名:STICK MAN
 作:ジュリア・ドナルドソン
   絵: アクセル・シェフラ―



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