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『平安への道』の翻訳者、ティアナン 祐子さん

2015/03/10

3月10日号に登場の新人翻訳家は ―  ティアナン 祐子 (てぃあなん ゆうこ)さん。

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毎月多くの翻訳書が出版され、新人翻訳家も多数誕生しています、これまでの出版経験を持つプロ翻訳家ばかりでなく、多様なチャンスを積極的に活用すること で、自己表現できる機会がひろがってきていることを感じます。編集部では、これらの新人翻訳家にスポットをあて、どんな方がデビューしているのかをご紹介し、インタビューによって翻訳出版の動機や、その背景も探っていきます。

連載122回目の3月10日号では、『平安への道』の翻訳者、ティアナン祐子さんをご紹介します。
 
 

編集部:

こんにちは、ティアナンさん。今日はどうぞよろしくお願い致します。はじめに、プロフィールと最近の活動についてお聞かせください。
 
 

ティアナン:
 結婚を期にカリフォルニア州のシリコンバレーに移り住んで、もうかれこれ30年ちかくなります。地元の州立大学大学院で言語学修士課程を卒業し、日系IT企業で当時のOSやCランゲージコンパイラー等のマニュアルの技術翻訳をしていました。より正確に翻訳しようと、自分もプログラム言語の勉強し張り切っていたにもかかわらず、これが本当に報われない仕事で……。(笑) 毎日ひたすらコンピューターを相手に分厚い本と格闘していましたが、テクノロジーの方は翻訳の完成を待たずに進歩してしまうんです。さらに、社内翻訳扱いなので訳者名のクレジットもなかった!(笑)IT技術は日進月歩なので、今となってはこれらの翻訳も化石の存在となりました。
 
 

編集部:
 ティアナンさんは技術翻訳者としてご活躍されていたのですね。技術や医療、ビジネス関連などの翻訳は、各分野の日々の進歩が速いので、翻訳のスピードが追い付かないときがあると聞いたことがあります。大変なご苦労なのでしょうね。また、おっしゃるように、実務翻訳の場合は「出版翻訳よりは稼げるが、名前が載らない」ということもよく聞きます……。
 
 

ティアナン:
その後、子育ての長いブランクを経て(自分自身が化石になる前に)また翻訳を再開できたらいいなと思っていた時、バベルの共訳出版について知りました。そして、ジェームズ・アレンの“The Way of Peace”(邦題『平安への道』)を監訳の福井先生、翻訳者の野﨑さん、水戸さんとご一緒に出版させていただく機会を得ました。
 
 

編集部:
実務ではありませんが、翻訳がお好きだからこそ、長いブランクを経ても語学に携わる世界に戻っていらしたのだと思います! では、そのティアナンさんが、翻訳を学び、翻訳家を目指そうと思ったきっかけはどんなことでしょうか。
 
 

ティアナン:
きっかけというのではないですが、言語学が専門だったので、やはりもともと言語に興味がありました。私は英語・日本語の両方を使って生活していますが、どちらの言語に訳してみても、訳しきれない言葉のニュアンスがあるなあ、といつも思っています。文化固有のニュアンスで、その文化に実際身を置いてみて初めてわかるようなもの、というのでしょうか……。その訳しきれない部分というのを、どのようにしたら伝えられるのかということに興味があります。まあ、永遠にできないかもしれませんが。笑
 
 

編集部: 
なるほど~。やはりもともとお持ちだった「言語」への興味から、「訳す」ことへも興味が出てきたのですね。たしかに、どの言語にもその国/地域特有の文化背景がありますから、細かなニュアンスまでも汲み取って、100%訳すことは難しいですし、正直無理だと思うんです。ですから、おっしゃるように、「いかに起点言語の意味に近づけた訳にするか」が大事になってきますから、そういった意味で翻訳は奥が深いですし、やりがいがありますね。永遠にたどり着けない場所に、どれくらいまで近づくことができるのかを試す、挑戦者のような感じでしょうか……。
 
 
え~それでは、ティアナンさんが『平安への道』を出版されたのは、どのような理由や思いがあったのでしょうか。
 
 

ティアナン:
この共訳プロジェクトでジェームズ・アレンの『平安への道』に初めて出会い、とても感動しました。一読してわかるのですが、この本は著者が『キリスト教義的』な意味での『真理』をめざし、同時に瞑想を通じて自分を高めていく仏教的修行に大きな価値を置いています。言ってみれば、仏教的な瞑想を通じてキリスト教的な『真理』(または愛)に到達するという『平安への道』を読者に説いているんだと思います。宗教の垣根を超えて『平安への道』を訴える著者の立場に共感を覚えました!
 
 

編集部: 
 いつの世も、争いの元の多くが宗教から派生しています。『平安への道』のような、宗教の垣根を越えた精神世界の本が世界中に広がり、お互いを受け入れるよう努力するところに私たち一人ひとりがたどり着ければ素晴らしいですね。
 
 

ティアナン: 
 私自身はクリスチャンですが、仏教や宗教哲学にとても興味を持っています。近年、ここシリコンバレーでは仏教、瞑想、マインドフル等に興味を持つ人々が増え、(必ずしも宗教性を伴わない)瞑想の心身へのポジティブな効果に関して、スタンフォード大学等で科学的に研究されています。(これはグーグルやインテルでマインドフル瞑想を社員に奨励している事実にも表れているのではないでしょうか。)私も様々なクラスやワークショップなどを通して、その良さを実感しつつあり、これを日本に発信する方法はないかなあ……と思っていたのです。そこで『平安への道』に出会ったとき、是非これを日本語に翻訳したい!と思いました。考えてみると、今アメリカで起こっているマインドフルな現象は、19世紀ジェームズ・アレンの時代の考え方(ニューソート)の21世紀版リバイバルなのかもしれないと思うとなおさらワクワクしました!
 
 

編集部:
好きな本を訳す目標が達成されて良かったですね! アメリカではストレス対処法やうつ病、不安障害に効くとしてマインドフル(またはマインドフルネス)を実践していると聞いたことがあります。瞑想をすることで自己の「気づき」を得る心理療法のようですね。まだ日本では馴染みがありませんが、一昔前は敬遠されがちだったスピリチュアルな考えも現在では幅広く受け入れられるようになりましたから、今後はメンタルヘルスケアとして病院などの施設で行われる日も来るかもしれません! ティアナンさんには、現地にお住まいの強みを生かして、様々な本をご紹介いただきたく思います。
 
それでは『平安への道』の内容を紹介していただき、翻訳された感想、楽しかったこと、苦労したことをお聞かせください。
 
 

ティアナン:
『平安への道』は今から一世紀以上前の1907年、イギリスで出版されました。邦訳では100ページほどの短い本です。この中でジェームズ・アレンは、人は瞑想の努力を続けるうちに利己的な自我が徐々に消えて行き、心が安らいで、永遠なる存在とひとつになっていくという『平安』へ至る『道のり』を説いています。正直に言えば、安易な平安を望みがちな現代の私たちには、耳が痛い言葉の連続です……。「ムリ、ムリ、できっこない……」と。(笑) しかし、自分の外の物に喜びを求めず、自力で心の平安を勝ち取るという終始一貫した著者の態度は、毅然としてかっこよく、清々しい生き方へのあこがれさえ感じさせます。そして読み続けて行くうちに、ストイックな聖人というよりも、謙虚な貧しさの中にあって人類愛にあふれたジェームズ・アレンという人物の姿が浮かび上がってきます。『平安への道』は究極の癒しの本なのです。
 
 

編集部:
 私たちは普段から「幸せ」は外(パートナー、家族、友人、同僚などの人や物、状況など)にあると思い(信じ)、それを求めてあくせくしたり悩んだりしていますが、実は「自分の内にある」ことに気づいていないだけだ、というのと似ていますね。“癒しの本”とは意外です。ぜひ通しで読んでみます!
 
 

ティアナン:
翻訳の上で苦労したことといえば、なにしろ古典なので、英語の単語や言い回しが現代と違う点と、引用の出典は聖書、ヒンズー教の教典、その他の古典などを含み、探すのに難しい箇所があったことです。また、私自身は聖書には日頃から親しんでいますが、この本の読者は聖書に接点のない日本人が大多数であるという前提なので、聖書に関連のある部分は訳注をこまめにつけるように努力しました。その他苦労したのは、文末の処理でしょうか……。この手の堅い内容の訳文は「……だ」、「……である」などと単調な文末になりがちです。なるべく画一的な終わり方にならないように気をつけました。
 
 

編集者:
古典のうえ宗教関連の出典が多い作品ですと調べ物の量もぐっと増えるでしょうから、大変ですね。また訳注の分量を決めるのも一苦労かと思います。多すぎると読みにくいですし、訳文に含めると文章量が増えてすっきりしませんし……ご苦労されたと思います。また、以前ある翻訳の先生が「単一になりがちな文末の訳が手ごわい」とおっしゃっていました。「……だ」「……である」も、按配が難しいですね。そのほか、気を使って訳された個所などはありましたか。
 
 

ティアナン:
個人的に大変心を砕いたのは私が訳した15ページから始まる長い詩(『叡智の星』)の部分です。今は使われていない古い英語はそれにふさわしい文語調の響きのある言葉を使ったり、なるべく古典の格調ある雰囲気を消さないように自分なりに頑張りました。また、この『星』というのは聖書で語られるキリスト誕生の時に表れたという星の隠喩であるのは明らかなのですが、著者はひとつの宗教に限定した視点で書いているのではないので、他宗教の聖者達をむ含めた象徴の『光』として扱っています。こういうクロスオーバー的な部分は訳注の中で『キリスト教』の聖書の一部分を参照と記すべきかどうか随分迷いました。で結局は、これは詩だということもあり、あえてつけませんでしたが……。
 
 

編集部:
 詩の訳出だけでも一筋縄ではいきにくいのに、どの宗教の方が読んでもどの「星」のことか判るように単語一つひとつを丁寧に訳出していく作業、大変でしたでしょうね。出版までの長い道のりは、「平安の道」とは違ったご苦労が多々あったとお察しします。どうもお疲れ様でした!
 
このように様々なご苦労を経て、時間をかけて完成した本を手に取った時のお気持ちはいかがでしたか。
 
 

ティアナン: 
 2014年のクリスマスイブにバベルプレスから本が届き、素晴らしいクリスマスプレゼントとなりました! 他の翻訳者さんたちとも話し合い、原書のカバーの色と同じ重厚なグリーンのイメージが良いということで、色合いも雰囲気も原書によく似た感じに仕上がりました。文字の大きさや背景の色など、最終段階に至るまでバベルプレスの方々には何度もご協力いただき、とてもよい本ができたと思っています。その節は本当にお世話になりました。
 

編集部:
お気に召していただけて、大変うれしです~。こちらこそ、最後まで翻訳者の皆様と監訳者の福井先生に本文の見直しや表紙の色合い、フォントに至るまでご意見をいただき、ご協力に感謝しております。共訳にご参加の皆様が主体となって本作りをしていただきたいと思っておりますので、活発な掲示板へお書き込みは非常にありがたかったです~。また、校正作業から出版までお待たせをしておりましたこと、申し訳ありませんでした。
 
それでは最後の質問となりますが、これからの抱負や翻訳してみたい作品のことなどをお聞かせください。
 
 

ティアナン:
 ジェームズ・アレンの未邦訳の著作を発掘して、是非翻訳してみたいです!『平安への道』の翻訳に関わり、ジェームズ・アレンの叡智に満ちた(そして時に耳に痛い)言葉を読み解きながら、私を含めおそらく他の共訳者の方々も単なる翻訳の勉強以上のものを学んだ数ヶ月間ではなかったかと思っています。
 
 

編集部:
 ジェームズ・アレンの未邦訳本は、まだまだあると思いますよ。おそらく著作権は切れているでしょうから、近い将来翻訳出版が叶うといいですね! 今回お話を伺い、私もジェームズ・アレンを読んでみたくなりました。個人的にもスピリチュアルな考えが好きなのですが、最近は忙しさにかまけて読書もご無沙汰していますので(苦笑)、これを機会に「心の平安」を見出したいと思います!  
 
 

ティアナン:
また、監訳の福井先生には、一つひとつの言葉の意味を深く追求し、吟味しながら丁寧に翻訳していくという真摯な翻訳者の態度を学びました。また二人の共訳者の方々の格調高い訳文にも刺激を受け、私にとって有意義な8ヶ月間でした。また機会があれば是非ご一緒にさせていただきたいと思っています。
 
編集部:
共訳メンバーと、中身の濃い、有意義なお時間を過ごしていただけたようで、こちらもうれしい限りです。今後もご興味がある本と出会い、翻訳出版が果たせますことを心より願っております。ティアナンさんのこれからのご活躍を期待いたしております。
 
本日はどうもありがとうございました。
 
 

 
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著 者   ジェームズ・アレン

訳 者   ティアナン祐子 野﨑七菜子 水戸洋子

監訳者  福井あや子

 

『平和への道』は、人に感銘を与える最高傑作である。悟りの心に近づきたい方は見逃してはいけない。ジェームズ・アレン(『「原因」と「結果」の法則』の著者)が、この本で詳しく述べているのは、自己のために生きていると生じる痛みからどうやって脱却するのかである。アレンは、人生でよく見られる精神的な罠を確認した後、どうやってこれらの障害を乗り越えて、痛みや憎悪、恐怖のない世界へ到達できるのかを教えてくれる。大いに考えさせられる『平和への道』は、知恵の宝庫であり、真実という声が教えてくれるだろう。

 

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