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『いっしょなら』の翻訳者、松尾早苗さん

2014/08/25

8月25日号に登場の新人翻訳家は ―  松尾 早苗 (まつお さなえ) さん。

  毎月多くの翻訳書が出版され、新人翻訳家も多数誕生しています、これまでの出版経験を持つプロ翻訳家ばかりでなく、多様なチャンスを積極的に活用すること で、自己表現できる機会がひろがってきていることを感じます。編集部では、これらの新人翻訳家にスポットをあて、どんな方がデビューしているのかをご紹介 し、インタビューによって翻訳出版の動機や、その背景も探っていきます。

連載109回目の8月25日号では、絵本『いっしょなら』の翻訳者、松尾早苗さんをご紹介します。
 
 

編集:
はじめにプロフィールと最近の活動についてお聞かせください。
 
 
松尾:
2016年大河ドラマの主人公に決まった真田幸村ゆかりの地、長野県上田市に生まれました。オーストラリアで英語を学んだあとは、海外ホテル勤務や外資系航空会社キャビンアテンダントなどを経験し、常に生きた英語に触れていました。海外ホテル時代は、パンフレットやレストランのメニュー、お役様へのご案内などを翻訳する機会もあり、実践を積むことができて良かったと思います。現在はエンジニアリング翻訳をしながら、絵本の執筆も行っています。
 

編集:
長い間、語学力が重要視されるお仕事に携わってこられたのですね。ホテルや航空会社といった、特にリスニングやスピーキングに重きを置いている職場の中で、実務的な翻訳をする機会もおありだったことは今に繋がっているような気がします。そのようなバックグラウンドをお持ちの松尾さんが、本格的に翻訳を学び、翻訳家を目指そうと思ったきっかけを教えてくださいますか?
 
 

松尾:
子どもの頃から大好きで興味があったもの、それは、本、海外の国々、英語、この3つでした。そして、その全てが詰まっているのが絵本翻訳なので、とても自然な流れで絵本翻訳に挑戦することになったと思います。高校生の時は海外映画が大好きで、実際のセリフと字幕を見比べて、生意気にも「私ならこう訳す」なんて考えていました(笑)。
 

編集:
では、もともとの英語好きに加え、読み物にもご興味がおありだったということは、松尾さんが出版翻訳を手がけることになるのは当然の成り行きだったのかもしれませんね! それにしても、高校生の頃から大物の片鱗が垣間見えますね~(笑)。
さて、それでは、絵本『いっしょなら』を出版されたのは、どんな理由や思いがあったのでしょうか。
 

松尾:
常に犬と一緒に生活をしていたので、かわいいムースとナットの絵を見た途端、心を奪われました! ワンちゃんが“いっしょなら”、私たち人間の生活も明るく楽しくなりますね。もう天国に旅立ってしまいましたが、私の相棒だった3匹のワンちゃんにこの物語をささげたい、という気持ちもありました。
 

編集:
家族の一員だったワンちゃん達への、松尾さんの感謝の想いが伝わってきます。
 

松尾:
また、この物語のテーマでもある“自分とはまったく異なるもの”をリスペクトし、受け入れ、調和することの大切さは、7歳の息子を持つ親として、ぜひこども達に伝えたいメッセージです。詩人の金子みすずさんが詩った、“みんなちがって みんないい”につながりますね。 いま、この時も世界では戦争や争い事が起こっています。それぞれの国が異なる文化や習慣、考え方を“受け入れる”ことが、平和の第一歩なのではないか、と思います。
 

編集:
まさに、「(違いを)受け入れる」は、人と係わって生きていくうえで大切なことですよね。まずは自分の身近な人を理解しようと努めることが大事だと思います。私事ですが、最近、友人関係で「お互いに『違いを受け入れよう』と言っていたのに、できていなかった」と分かりました。「受け入れられない」のに「受け入れよう」と頑張り、知らないうちに自分を抑圧していて、それがストレスになっていたようです。ムースとナットのように、素直な気持ちで調和にたどり着くまでには、まだまだ時間がかかりそうです~(苦笑)。……すみません、タイムリーな話題でしたので、つい個人的なことを……。気を取り直して次の質問に移ります~(笑)。
え~、それでは『いっしょなら』の内容を紹介していただき、翻訳された感想、楽しかったこと、苦労したことをお聞かせください。
 

 
松尾:
この物語は、何もかもちがう2匹のワンちゃんが主人公です。出会ったとたん意気投合し、毎日楽しく遊んでいましたが、そのうちケンカばかりするようになります。さあ、この2匹、また元のように仲良しに戻れるかな・・・? 小さなお子さんに、ぜひ読んでほしい1冊です。また、ジェーン・シモンズさんの描くムースとナットがなんともかわいくて、ワンちゃん好きな方にもたまらない1冊です。
 

編集:
作品を拝見しました。ほのぼのとした2匹のワンちゃんが、なんともかわいらしいです! 「さようなら」をした後の、しょんぼりしている姿は、思わず声をかけたくなるくらい愛らしい! 作家のジェーン・シモンズさんが描くキャラクターは、ほんわかした雰囲気が魅力ですよね。出身地である英国では、彼女の作品がアニメにもなっているという人気ぶり。是非、日本でも見てみたいですね。
 
松尾:
ムースとナットの日々を翻訳しながら、自分もワンちゃんと暮らした頃のことを思い出して、ちょっとほろっとしました。また、仲直りの場面では、大人もこんな風に素直にならなきゃ……なんて思いました。ムースとナットが大事なことを教えてくれた気がします。苦労した点は、原文がシンプルな表現だからこそ、原文の持つニュアンスをそのままに表現できる日本語を選ぶのが難しかったです。また、おっとりムースとせっかちナットの性格が明確にわかるように工夫をしました。
 
 

編集:
はい。「素直にならなきゃ」……ですね!(苦笑) ワンちゃんがいらした生活を送ってこられた松尾さんだからこそ、登場人物の感情をうまく掴めたのかもしれませんよ。シンプルな文章の絵本ほど、表現力が問われるような気がします。おっとりなムースと、せっかちなナット、それぞれのキャラクターの持つ役割が、短い言葉の中でとても判りやすく表現されていて、読みやすい作品になっていると感じました。
さて、このように様々な想いやご苦労を経て、本を手に取った時のお気持ちはいかがでしたか。
 
 

松尾:
“大感激!”の一言です。思わず神棚に手を合わせてしまいました。校正の方にご指導いただき、文字のサイズや行間など最後まで手直しを行った成果が如実に表れていて、すごい!と思いました。絵本翻訳とは文章を訳すだけでなく、レイアウトなど出来上がった時の印象までも熟考しなければならない仕事なのだ、実感しました。
                  
 

編集:
神棚ですか! わぁ~、それほど喜んで頂けて、こちらもうれしいです! この度の件で、松尾さんは校正にも携わったのでしたね。仰る通り、絵本は「絵」と「文章」が主役なので、両方のバランスをとるために、空間の使い方がとても大事になってきます。文字の位置が1~2ミリ違っただけで、出来上がった印象が変わる場合があるので、絵本の校正時に気を使う点の一つです。私は、ある程度のところで訳文はもう翻訳者の方にお任せしてしまって(苦笑)、絵に対しての文字の位置を重点的に見るようにしています。
それでは、最後になりますが、松尾さんのこれからの抱負や翻訳してみたい作品のことなどをお聞かせくだい。
 

 
松尾:
自分が住んでいたことがある国(オーストラリア、アメリカ、インドネシア、タイ、フランス)のライフスタイルがよくわかるような現地の絵本を翻訳して、日本のこどもたちに読んでもらいたいです。日本から1歩外にでれば、そこは言葉も食べ物も気候も全く異なる世界があるんだ、ということも知ってほしいですね。本を通じて、子ども達にいろんな世界を見てほしいし、いろんなことに興味を持ってほしいです。
 

編集:
小さい頃から日本とは全く異なる世界があると解れば、早い段階で「違いを受け入れる=他社を理解する」土台を形成できるかもしれませんね。そう考えると、異国の空気感が漂う良質な絵本を翻訳して子どもたちに伝えることは、大きな意味があると思います。また、松尾さんはご自身でも絵本の創作をされていると伺いました。言葉も文化も異なる国々で生活されてこられた松尾さんならではの感性で、素晴らしい絵本を作り、翻訳も続けて、子どもたちに伝えていってくださることを願っております。今後とも、松尾さんのご活躍を期待しております。
本日はどうもありがとうございました。
 

 
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 『いっしょなら』 ジェーン・シモンズ 作・絵  まつお さなえ 訳

 

雨の日に出会った、大型犬のムースと小型犬のナット。
すぐに仲良しになったのはいいけれど、泳ぐのが得意なムースと苦手なナット。
 
暑がりのムースに寒がりのナット。のんびり屋のムースにせっかちなナット・・・
二人は、いつしか言い合いばかりするようになります。
 
やっぱり親友じゃないや! もういっしょに遊ばない、と決めた二人。
だって、何もかもちがうんだから。なのに、一人だとなんだかさみしい。
なんだかつまらない。とっても会いたい。
 
大事なことがわかった気がする二人は、 雨の中、お互いを探しに行きます。
「もういちど、ともだちになろう!」
 
それから二人はいつもいっしょ。 別々のことをしていても、いっしょにいる、
ただそれだけで、なんだか楽しいから。
 
動物が主人公の絵本を多数世に送り出しているジェーン・シモンズがおとどけする、
心温まるワンちゃんの友情ものがたりです。


 

 

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