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『にげだしたドラゴン』 の翻訳者、ひお さなえ さん

2014/07/25

7月25日号に登場の新人翻訳家は ―  ひおさなえ さん。



毎月多くの翻訳書が出版され、新人翻訳家も多数誕生しています、これまでの出版経験を持つプロ翻訳家ばかりでなく、多様なチャンスを積極的に活用すること で、自己表現できる機会がひろがってきていることを感じます。編集部では、これらの新人翻訳家にスポットをあて、どんな方がデビューしているのかをご紹介 し、インタビューによって翻訳出版の動機や、その背景も探っていきます。

連載107回目の7月25日号では、『にげだしたドラゴン』の翻訳者、ひおさなえ さんをご紹介します。



編集:
はじめにプロフィールと最近の活動についてお聞かせください。
 

ひお:
高校生の長男と中学生の長女がおります。自宅前で英語教室、書道教室を経営し、その講師を務め、今年で十五年目となりますが、二歳から大人の方が毎日大勢いらしてくださっています。自治体の民生主任児童委員、小学校の学校評議員、読み聞かせボランティア、書道団体の事務局員としての活動もさせていただいていて、年に一、二回は書道展にも出品しています。たくさんの顔を持っているほど充実していると聞いたことがありますが、毎日をとても楽しく過ごしています。
 

編集:
ひおさんは、バイタリティの塊ですね! うらやましい!(笑) 様々な「顔」をお持ちということは、それぞれの役割に責任感が伴い、大変なこともおありでしょう。それでも毎日充実した日々を送ってらっしゃるなんて、素晴らしいことですね。
さて、そんな ひおさんが、翻訳を学び、翻訳家を目指そうと思ったきっかけはどんなことですか。
 

ひお:
子どものころから本が好きで、日本と外国の純文学、ミステリーといったフィクションを好んで読んでいましたので、いつか海外の小説を翻訳してみたいなと思っていました(特にアガサ・クリスティの大ファンです)。大学でも言語文化学科の英日翻訳ゼミに所属し、北條文緒先生から英語のニュアンスを日本語に反映させることの難しさと同時に面白さを学びました。卒業時にイギリス現代作家の短篇小説を一篇ずつ、ゼミのメンバー全員で翻訳し、一冊の本に仕上げたことは貴重な体験となりました。卒業後は国際法律事務所の弁護士秘書として、英文、和文の書類作成、翻訳に携わっていました。
 

編集:
小さい頃から海外の本に親しんで、翻訳のための英語というものを意識していらっしゃったように感じます。人生の長い期間、英語が身近にあったことは大きいでしょうね。
 

ひお:
結婚を機に辞めた後、長男が二歳のときに現在の英語、書道教室を始めたので、積極的に翻訳に携わる時間はありませんでした。ですが三年前、英字新聞“The Daily Yomiuri”の英日翻訳を批評してくださるコーナー『Translate This』に初めて応募したところ、思いがけず最優秀賞を戴き、紙面に掲載されました。これをきっかけとして出版翻訳を具体的に考え始めたような気がします。実は、大好きなアメリカのドラマ『刑事コロンボ』でお馴染みのピーター・フォーク氏逝去の記事だったので挑戦する気になったのですが(笑)。その後インターネットで出版翻訳のことを調べているうちにバベルプレス出版の共訳出版(Co-Pub)のホームページに巡り合ったのです。自分の子どもや生徒たちに読んでもらえる本を翻訳したいという気持ちも湧きあがってきて、この共訳オーディションに挑戦することにしました。
 

編集:
お好きな分野の英日訳コンテストを見つけて応募されたのも、何かのご縁だったと思います。受賞されたことで、もともとお持ちだったけれど少し離れていた「翻訳への想い」が、ひおさんを導いてくれたのかもしれませんね。その、弊社のホームページで巡り合ったという『にげだしたドラゴン』を出版されたのは、ひおさんにとって、どんな理由や思いがあったのでしょうか。
 

ひお:
そのバベルプレス出版のホームページには共訳できる本がたくさん紹介されていましたが、中でもこの『にげだしたドラゴン』は昔ながらのファンタジーのキャラクターたちが登場するにもかかわらず、内容はまったく違うところ、そして原作の表紙の赤いドラゴンの絵に惹かれ、ぜひ翻訳してみたい!と思い、オーディションに挑戦しました。まさか合格できると思っていませんでしたが、チャンスをいただけることになり本当に感激しました。
 

編集:
翻訳スイッチが入ったわけですね!(笑) それでは、『にげだしたドラゴン』の内容を紹介していただき、翻訳された感想、楽しかったこと、苦労したことなどお聞かせください。
 

ひお:
先程も申し上げたように、この本はいわゆるファンタジーですが、昔話のファンタジーの内容とは正反対といっていいものです。多くの方は、王女さまというものはおしとやかで王子さまを待っているだけ、魔女やドラゴンは悪役、といった固定観念を持っているかと思いますが、そういったものを打ち砕いてくれる作品です。
 
現代の子どもたち、そして大人でも共感できる部分が多くあるように思います。また、冒険を通して登場人物たちが大きく成長するところ、おとぎ話のパロディーのような場面が随所に散りばめられているところも大きな魅力です。主人公の王女メグとドラゴンのラディがテレパシーで会話するところが気に入っているのですが、今回、その場面を含んだ最後の何章かを担当させていただくことができました。
 

編集:
仰る通り、本書はこれまでのいわゆる「お姫さまもの」とは違うテイストで描かれていますね。ファンタジーにつきものの甘さや痛快さもありますが、何よりも「自立」をテーマにした良作だと思います。私も面白さにはまって、前作の『にげだした王女さま』も何度か読み返したくらいです~(笑)。
 

ひお:
この本は小学三年生以上の児童向けですので、四年生から習う漢字すべてにルビを振らなければならなかったのですが、この作業がかなり大変でした。そして何より難しかったのは、児童向けに比較的平易な文で書かれているので、何通りにも意味が取れてしまうところでした。
 
最も適切な意味を文脈から見分けなければいけないのですが、その際、監訳者の西沢先生よりたくさんのアドヴァイスをいただくことができ、大変勉強になりました。句点が多過ぎるという自分の癖もご指摘していただけたことも有り難かったです。
 
ワークショップやインターネットを通して監訳者の先生、共訳者のみなさん、パベルプレスの編集者の方と意見交換をしたり、ペアの方の翻訳をチェックさせていただけたりしたことはとても楽しく、貴重な体験となりました。『にげだしたドラゴン』のキャラクターたちのようにかなり成長できたのでは!? と思っています。
 

編集:
ルビ振りは簡単そうに見えて、実はかなり時間がかかる作業ですね。「各章の初出だけ」とか、「何年生以上が習う漢字」とか、「常用漢字外は全て振る」とか、本によって様々ですから、大変だったとお察しします。また、文の意味を見分けることも非常に難しいですね。「優しそうな文ほど、はまる()と何時間も何日もかかってしまう」と、仰っていた先生もいるくらいです。
 
ですが、バベルのワークショップでは、監訳者をはじめ共訳者の皆さんなど、客観的に意見を言ってくださる方々が何人もいらっしゃるので、煮詰まった時は心強いですね。そこは共訳の良い点だと思います。単独訳でも共訳でも一つの作品を仕上げる努力は、間違いなく力が付きますよ!
さて、そのように様々なご苦労を経て、出来上がった本を手にされた時のお気持ちはいかがでしたか。
 

ひお:
イラストを担当された石井冬樹さんのカラフルで素敵な絵の表紙に自分の名前が印刷されているのを見て、まさに夢のようでした。オーディションに応募してから三年経っていましたので、喜びもひとしおでした。そして早く自分の子ども、生徒たちに読んでもらいたいと思い、プレゼントしたところ、何人かの生徒たちは自分から読んだ感想を話して聞かせてくれました。この翻訳に携わることができて心からよかったと思っています。                      
 

編集:
ひおさんにとって初めての翻訳作品、しかも三年掛りの完成となると、言葉にし難い喜びや安堵感で一杯になるのでしょうね。そのうえ、お子さんや生徒さんたちが、ひおさんたちの想いや苦労が込められた本を読み、感想を聞かせてくれることは、翻訳者冥利につきるのかもしれません。皆さんに喜んでいただけて、こちらも嬉しい限りです!
それでは最後に、これからの抱負や翻訳してみたい作品のことなどをお聞かせくだい。
 

ひお:
実は『にげだしたドラゴン』と時期が少し重なっていたのですが、バベルプレス出版『聖なるスカラベの秘密』のアマゾンPODの翻訳オーディションにも応募していました。この本は南アフリカ出身のジャーナリストの方の作品で、イギリスやアメリカでたくさんの賞を受賞し、映画化も決定しているものです。『ハリー・ポッター』のようなシリーズもので、その記念すべき第一作となります。やはりバベルさんのホームページで出会ったのですが、その原作の男の子二人の絵が描かれた表紙とその二人がエジプトという歴史的ロマンのある地を冒険し、危険な目にもたくさん遭い、その黒幕が……と、ミステリー的な要素もあるプロットにすっかり魅了されてしまい、この作品は絶対に自分が翻訳するんだ! と意気込んで、オーディションに応募してしまったのです。
 

編集:
その意欲には脱帽です~。 また、翻訳スイッチが入ったのですね!(笑)
 

ひお:
ほかに四人の共訳者の方と監訳者の先生と作業を進めてまいりましたが、この九月に出版される運びとなりました。先が気になって一気に読んでしまうような物語ですので、大人の方も含め、一人でも多くの方に読んでいただきたいです。この『ストーン・クロニクル』シリーズの第二作も最近出版されたと聞きました。今度はスコットランドが舞台になります。この素晴らしいシリーズが出版され続ける限り、翻訳プロジェクトの一員として翻訳させていただきたいと思っております!!
 

編集:
翻訳の魅力にはまっちゃいましたね!

ひお:
また、今後は何より大好きなミステリーの翻訳、そして英訳にも挑戦したいと思っています。実は最近、バベルプレスさんが募集されていた日本のライトノベルの英訳に応募させていただいたところ、英訳の面白さにも気づき、その魅力にはまってしまいました。今後お仕事をいただけるように益々精進していかなければと思っております。
最後になりましたが、たくさんの貴重な機会を与えてくださったバベルプレスさんには心より感謝いたしております。本当にありがとうございました。そして今後とも宜しくお願い申し上げます!
 

編集:
こちらこそ、本当にありがとうございました。ひおさんのように、熱意や意欲を持っている皆さんのお気持ちに報いるよう、「出版してよかった」と少しでも思っていただけるよう、プレスのスタッフ一同、努力して参ります。現在携わっていらっしゃるプロジェクト以外にも、興味のある分野でのご活躍も期待しております。本日は、ありがとうございました。
 

 
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『にげだしたドラゴン』 

著者:ケイト・クームズ (Kate Coombs)

訳者:小峯真紀 玉利聖美 ひおさなえ 藤井稔子 細見真美 宮上ゆか

 

本書は、アメリカのヤングアダルト作家、ケイト・クームズのファンタジー“RUNAWAY DRAGON”の全訳です。バベルプレスから2012年5月に刊行されている『にげだした王女さま』の続編にあたります。前作では、塔に閉じこめられてしまった王女メグが仲間の協力で塔をにげだし、お城の仲間たち、よき魔女、山賊たちと協力して、悪い王子たちからグリーヴ王国を救います。

メグが救ったベビードラゴンのラディーも活躍し、その後はフックホルン農場ですくすくと育っていました。

ところが、成長したラディーがさわぎを起こしたあげく、どこかへ消えてしまいます。メグは仲間たちや衛兵とラディー探索の旅に出ますが、ラディーを見つけ出すまでには、様々な冒険が待ち構えていました。

メグと仲間たち、そして物語の鍵を握る新しいキャラクター、巨人の一家や魔女にも、生き生きとした存在感があり、時にユーモラスに、時には危機また危機と、ストーリーはテンポよく展開します。

その中で、友情、思いやり、心の交流など、生きるために大切なことは何か、自然に学べるようになっているのも本書の魅力でしょう。前作を読んでいなくても十分に楽しめますが、前作と併せ読めば、ますますメグたちの魅力のとりこになること請け合いです。

eガイア書店で、『にげだしたドラゴン』のご注文を承ります!

              ↓

http://www.egaiasyoten.com/shopdetail/000000000439/001/O/page1/order/

『にげだしたドラゴン』の前日談、『にげだした王女さま』や、

ほかにも、ファンタジーの翻訳読み物が目白押しです。

どうぞ書店をのぞいて見てください~♪

 

 

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