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「翻訳のすすめ-Aurification」 ― 佐々木理恵子

2014/07/10

特別寄稿 「翻訳のすすめ-Aurification」

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佐々木理恵子: 翻訳者、MST(翻訳専門書職修士)


これまで翻訳では多種多様な仕事とのご縁を頂いてきたのですが、ここでは、少しプライベートな部分での私と翻訳の関わりについてお話してみたいと思います。


今から5年ほど前になります。私はその頃、某プロジェクトの最中にいたのですが、ある日の明け方、とても不思議な夢を見ました。仕事を依頼してくださった翻訳会社の方から私のもとに1通のEメールが届いたのですが、その件名には「and Aurofication」と書かれていました。当時の私には見たことも聞いたこともない英単語でしたので、「はて、何だろう?何の用件だろう?」と思いながら、夢の中でメールを開こうと件名をクリックしたところで目が覚めてしまい、残念ながら、そのメールの内容を読むことはできませんでした。
 
私はベッドから飛び起きて、すぐにコンピュータに向かい、インターネットでその言葉を探しました。しかし、何もでてきません。やはりただの夢かと思いながら、でももう一度検索してみますと、「Aurofication」ではなく、一字違いで「Aurification」という言葉が出てきました。これにしても、私にとっては、見たことも、聞いたことも、使ったこともない言葉。辞書を引きましたら、そこには「黄金化」という意味が書かれていました。
 
一体その夢に何の意味があったのかは今でもよくわからないままでいます。実際には自覚できていなかった記憶が単に脳内妄想となって私にそんな夢を見せたのかもしれません。しかし、そうは言いましても、自分が見たことも、聞いたことも、使ったこともないと、少なくとも自分では感じていた、決して簡単で短い単語とは言えない文字列が、一字違いとはいえ、はっきりと夢のなかに現れたことをずっと不思議に感じていました。実は、この夢を真に不思議に思ったのは、この話には後になりもっともっと深い続きがあったことを知ったからなのですが、長くなりますので、またいつか機会がありました時にということにして、ここでは控えておきたいと思います。
 
さて、このAurificationですが、5年経った今、私はこれを自分自身のプライベート翻訳プロジェクトにしようと思っています。私には娘がいるのですが、この秋から親元を離れ大学に進学します。あっという間に子育てが終わり、もう遠くから見守るだけとなってしまいました。思えば、毎日が生きることに精一杯で、親らしいことなど何もしてあげられなかったように思います。もっと美味しいご飯をたくさん作ってあげればよかった。もっといろんなところに連れて行ってあげればよかった。もっとたくさんの本を読み聞かせてあげればよかった。もっともっといろいろな話をしたかった。本当にこれでもかというほど悔やまれることが多いです。しかし、日々の忙しさと共に、ただただ時間だけが瞬く間に過ぎていってしまいました。
 
これから巣立ちゆく娘に向けて、毎年、9月の誕生日には、英語で書かれた癒しの言葉や励ましの言葉を探し、それを和訳してバースデーカードとしてデザインし、遠く離れた娘に贈ろうと思っています。娘は英語が第一言語で日本語の読み書きは今ひとつなのですが、和訳をつけることで日本語にも今以上に興味を抱いてくれればと思います。そのカードを、娘が100歳の誕生日を迎える日までの83枚分、これからせっせと準備していこうと思っています。それが私にとってのAurificationプロジェクトです。
 
これまで、仕事としての翻訳ではいろいろな制約のなかで作業をしてきました。非力ながらも、未熟ながらも、言葉を発した方々の心に寄り添い、その方々の状況を確実に再現して伝える翻訳を目指してきました。しかし、このプライベートプロジェクトでは、すべての制約を取り払い、どのような背景で原文の言葉が発せられたのかという部分はさておき、ひとつひとつ原文の言葉だけを見て、そこから自分が直感的に感じ取ったエッセンスを自分の言葉に置き換えて伝えるという、まったくもって自由気ままな作品づくりでいきたいと思っています。
 
このプロジェクト、実は、昨年より少しばかり準備を進めていまして、すでに少数の近しい方にはいくつか作品をご覧頂いているのですが、娘にはまだ一度も見せたことがありません。娘に向けたAurificationプロジェクトは、今秋から本格スタートです。カードを受け取った娘が何を感じるかは想像もつきません。娘が心の中にキラキラとした輝きを少しでも見つけられるようにと、娘へのAurificationを願って贈っても、それはまったくもって親のエゴでしかないのかもしれません。彼女にとって長い人生の中では、こんなカードなど何の役にも立たない、このような言葉を見ても癒しどころか苛立ちさえ覚える日もきっとあることでしょう。
 
しかし、それでも、歳を重ねる毎に、その歳毎に、彼女の経験や体験に応じた状況のなかで、何かをふと感じてくれればいいなと思っています。そして、私自身も、歳を重ねる毎に、その歳毎に、自分の経験や体験に応じた状況のなかで、何かをふと感じながら、気負いなく、気ままに、訳し続けていくことができればいいなと思っています。

 

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秋、娘に贈るに先んじて、誠に恥ずかしいのですが、数枚のカードの中から少しばかりTPT読者の皆様にもご紹介させて頂きます。皆様が日々それぞれの道を歩まれる中で、より一層にその輝きや魅力を増していかれますように、心からの祈りを込めまして。
 
 
                       To forgive is to set a prisoner free
                      and discover that the prisoner was you.
                            (Lewis B. Smedes)
 
                              ゆるしとは
                      囚われている誰かを 解き放つことであり
                  囚われている誰かとは 自分にほかならなかったことに
                           気づくことでもある
 
                           When you forgive,
                       you in no way change the past –
                     but you sure do change the future.
                           (Bernard Meltzer)
 
                       ゆるしで 過去は変えられない
                       しかし 未来は必ず変えられる
 
                       We are shaped by our thoughts;
                        we become what we think.
                         When the mind is pure,
                   joy follows like a shadow that never leaves.
                             (Buddha)
 
                     我らの姿かたちは 我らの思考の現れ
                       自らの思い そのままの人となる
                        清澄たる心には 喜びが宿る
                     それは 影のごとく 片時も離れずに
 
                     You never know how strong you are...
                 until being strong is the only choice you have.
                            (Cayla Mills)
 
                自分がどれほど強いかなど 到底知り得ることはない…
                       強くなるしか 生きる道がない
                      心に決めた その一瞬までは
 
            You can be strong and true to yourself without being rude or loud.
                          (Paula Radcliffe)
 
                          強くあれ 誠であれ
                    それには 心も声も 荒げる必要などない


<プロフィール>
佐々木 理恵子: バベル翻訳大学院、翻訳専門職修士号 (MST.) 取得。
米国カリフォルニア州在住。ビジネスおよび出版翻訳者。

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