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東アジア・ニュースレター ― 海外メディアからみた東アジアと日本 ― 第99回
2019/01/22
連載 東アジア・ニュースレター
― 海外メディアからみた東アジアと日本 ―
第99回
バベル翻訳大学院プロフェッサー
中国の一帯一路構想には「ドルの制約」という資金調達面での問題があると指摘された。インフラ建設代金の支払いはドル建てが圧倒的に多く、中国は外貨準備を取り崩していく他はないために「ドルの制約」を受けるからである。人民元が国際通貨として定着していれば、中国政府は元を印刷して支払いに充てられるが、元は依然として国際通貨としては成長していない。しかも中国の経常黒字は減少傾向にあり、中国は遠からぬ将来に「ドルの制約」を痛感することになり、野心的な構想を見直さざるを得なくなるだろうとメディアは報じる。
台北市長の柯文哲氏(59)が訪米を計画し、次期総統に立候補するのではないかとの期待が高まっている。蔡英文現総統も就任前に訪米しており、総統候補に対する米国の後押しが重要な意味を持つことが、こうした観測を生んでいる。ただし次期総統候補としては国民党の呉敦義主席(70)や民進党の頼清徳行政院長(首相)(59)なども取りざたされている。
韓国経済の現状についてメディアは、第3四半期のGDPは前期比0.6%増となり、韓国銀行の事前予想と合致し、11月の消費者物価指数もエコノミストの予想どおり前年比2%の上昇となったと伝える。ただし、経済が先行き悪化するのではないかとの懸念は払拭しきれていないと報じ、米中貿易戦争の動向、原油価格の下落、輸出の伸びの鈍化、国内投資の低迷などの要因を挙げる。
北朝鮮が経済制裁に耐える一助として、豊富な石炭資源を利用して合成ガスを生産し、石油輸入への依存を減らしているとみられている。北朝鮮は近年石炭ガス化技術の利用を拡大し、以前は動力や原料を輸入石油に依存していた一部の大型肥料工場、製鉄所、セメント工場に石炭ガス化設備を導入。専門家は、北朝鮮は石炭ガス化により輸入燃料を軍用などの用途に回すことが可能かもしれないと指摘している。
東南アジア関係では、タイ中央銀行が2011年以来となる政策金利の引き上げを決定し、政策金利の翌日物レポ金利は0.25%引き上げられ、年1.75%となった。利上げの背景についてメディアは、中央銀行は経済が順調に成長しインフレも終息しているなか、長期の低金利がもたらすリスクを警戒したと伝える。
インドが2019年に経済規模で英国を抜き世界第5位となると報じられた。プライスウォーターハウスクーパース(PwC)のエコノミストは、インドは高い成長率と巨大な人口、恵まれた人口構成によって大規模経済として世界最高の経済成長を遂げ、グローバルなGDP競争で上昇を続けると指摘する。またIMFのGDP推計によれば、英国は2018年には経済規模で世界第5位だったが、来年にはインドと仏に抜かれ第7位となるとみられる。
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中 国
☆ 一帯一路構想と人民元
一帯一路構想(BRI)が2013年に65カ国を現代のシルクロードで結ぶ計画として発表された際、熱烈なファンファーレで迎えられた。当初中華人民共和国の建国以来、最も野心的な経済と外交の計画としてもてはやされ中国を高所得の大国に変貌させ、また通貨、人民元をグローバルな通貨に押上げるだろうと中国政府は宣伝した。
12月18日付フィナンシャル・タイムズ(FT)は以上のように述べ、さらにBRIと人民元の関係について概略次のように論じる。5年を経た現在、元は国際通貨として必要な決済や交換あるいは準備通貨として余り進展を見せていない。実際、BRI向けの資金も大半が元以外の通貨で調達されている。他のグローバル取引と同様、ドルが支配し、革新的とされたBRIに限界が生じている。確かに近年中国政府は元が国際的に使用されるよう傾注してきた。例えば、09年以来30カ国以上と2国間スワップ協定を結び、今年に入り外国銀行に対し本土での営業に関する規制を緩和、さらに顕著な成功例として、16年に元がIMF特別引出権の通貨バスケットに含まれることが認められ、グローバル通貨の仲間入りをしている。
しかし元の国際的地位は近年低下してきている。国内外の決済に使用されている割合はSWIFT(国際銀行間通信協会)によれば、2015年8月には2.8%のシェアで第5位だったが、16年には1.67%、今年8月現在で1.7%と第6位に落ち込んでいる。これに対してドルは大体40%を占める。中国国内でも元の貿易決済の使用率は現在僅か13%に低下している。3年前はその倍のシェアだった。国際債券市場では、さらに存在感が低下している。現在元建て起債額は四半期ベースで80億ドル弱であり、年間では300億ドル程度である。
上記のように述べた記事は、こうした状況がBRIの実現にあたり問題となると指摘する。コントラクターらは一般的に道路や橋梁、港湾などのBRI関連インフラ施設の建設代金はドル建てでの支払いを希望するからである。このため中国は3兆ドル余りの外貨準備を取り崩して支払いに充当している。この潤沢な外貨準備は国有の政策銀行が多様なBRIプロジェクトをファイナンスするのに役立っている。しかし、シティバンクで新興国市場を統括するルービンは、資金が無限でない限り(BRIの)目標を達成する能力にも限界が生じると警告していると報じる。記事は、つまり中国がBRIを達成していくうえで自ずと限界があると述べ、もし元がグローバル通貨であれば、中国政府は元を単純に印刷することで、資金調達が可能になると指摘する。
さらに記事は、この「ドルの制約」は中国の経常収支が黒字から赤字に転換すると問題はさらに大きくなると警告。中国の経常収支が以前と異なり、観光収支の赤字増大を主因として急速に均衡点に近づいているとの専門家の見解を紹介する。従って中国は遠からぬ将来に「ドルの制約」を痛感することになり、野心的なBRI構想を見直さざるを得なくなるだろうと付言する。
記事は最後に、BRIを受け入れていた新興諸国の中に導入を見合わせる動きが出始めたと述べ、これに対し中国の習近平国家主席がBRIは経済協力計画であって地政学的あるいは軍事的同盟ではなく、開かれた包摂的プロセスであり、排他的サークル、すなわち中国クラブのようなものを意図してはいないと語ったと伝える。
以上のように、一帯一路構想には「ドルの制約」という資金調達面での問題があることが指摘された。人民元が国際通貨として定着していない限り、「ドルの制約」を受けるからである。一帯一路構想にとって意外な伏兵があったというべきであろう。加えて新興国の一部から、この計画の導入を見直す動きが出ている。習政権の対応に注目していきたい。
台 湾
☆ 台北市長、次期総統選に立候補か
台湾の中国寄り姿勢が強まるのが懸念されるなか、親中派と目される台北市長の柯文哲氏(59)が訪米を計画しており、同氏が次期総統に立候補するのではないかとの期待が高まっていると12月18日付FTが報じる。記事は、柯市長は年明けの訪米を計画しており、2020年1月の総統選で蔡英文現総統に挑戦するのではないかとの観測を煽っているが、この訪米計画が同氏の中国寄りの見解に疑念を提起してもいると伝える。
記事によれば、柯市長は総統選に立候補すると宣言はしていないが、米国の受け止め方が大きな意味を持っている。ノッティンガム大学の台湾政治専門家ジョナサン・サリバン氏は、総統候補に対する米国の後押しは重要な意味があり、米国の見解は台湾にとって中国と米国という最も重要な2国間関係を管理する能力を認知するうえで有権者にシグナルを送るとコメントしている。
次いで記事は、台湾高官の訪米には中国が神経をとがらせているが、蔡総統も総統選に立候補した2011年と15年にホワイトハウス高官と会談するために訪米した先例があると述べ、柯市長の訪米は、米台と中台という台湾の安全保障上で重要な関係への対応力を観察するよい機会になるだろうと指摘する。
他方、トランプ政権は中国が攻勢を強めるなか、台湾への支持を強化しており、元西側外交官は、柯市長が台湾を中国に近づける姿勢を示した場合、米政府は好意的に受け止めないだろうとみていると伝える。
なお記事は柯市長について、反政府感情が高まった2014年に市長に就任し、先月与党の民進党が統一地方選挙で大敗するなか再選されたと述べる。記事は再選の背景として、外科医だった同氏は当初政治とは無縁と思われていたが、中国寄りの国民党と独立派の民進党に代わる候補を求めていた有権者を惹き付けたと解説する。
ただし、記事は最後に同市長は2017年に上海で中国と台湾は「一つの家族」などと発言し台湾内で批判を招いたと付言。こうした発言は中国の台湾政策に呼応するもので、台湾が中国の主張に反対しないとのメッセージを国際社会に発信するリスクがあるとの反政府運動家のコメントを伝える。
以上のように台北の柯市長が米国訪問を発表し、次期総統候補として注目されるに至った。蔡英文現総統も就任前に訪米していることから、柯氏も総統選への立候補を睨んで訪米するのではないかとの観測を生んだと言えよう。ただし次期総統候補としては、4年ぶりに政権に返り咲く機会が到来した国民党の呉敦義主席(70)や与党民進党の頼清徳行政院長(首相)(59)なども取りざたされており、予断は許さないと言えよう。
韓 国
☆ 経済の現状と来年の見通し
経済の現状について、消費者物価指数は2ヶ月間目標に達していたが、原油価格がリスク要因だと12月4日付ブルームバーグが報じる。記事によれば、最近の経済成長やインフレと中央銀行の物価目標は期待どおりだったが、経済が先行き悪化するのではないかとの懸念は払拭しきれていない。統計局によれば、第3四半期のGDPは前期比0.6%増となり、韓国銀行の事前予想と合致し、11月の消費者物価指数もエコノミストの予想どおり前年比2%の上昇となった。
米中両国は貿易戦争を一次的に休戦させたが、輸出依存の韓国経済は、米中が見解の相違を埋められるかどうかに左右される状態にあることに変わりはない。中国は韓国の最大の貿易相手国であり、中国向け輸出品の大半は中国が世界向けて販売する製品の基礎となる中間財である。
韓国銀行は11月に政策金利を1.5%から1.75%へと0.25%引き上げており、こうした成長率やインフレ率の統計数字が来年1月に開かれる金融政策委員会で何らかの政策変更をもたらす可能性は低いとみられる。ただし李柱烈総裁は、政策金利は依然として自然利子率を下回っていると語り、引き締め姿勢を示している。また企画財政部長官(財政相)に指名された洪南基氏も公聴会で、経済は投資や雇用が低迷し「難しい状況」にあると語っている。さらに原油価格のグローバルな下落と韓国における燃料税の引き下げがインフレの下押し要因としてのしかかり混迷が深まっている。また需要面からのインフレ圧力も弱い。
上記のように報じた記事は、ブルームバーグのエコノミストの見解として、インフレは目標どおりだが下落傾向にあり、輸出は伸びが鈍化、投資は勢いを失うなか、年末に向かっていると分析していると伝え、経済は弱体であり、金融政策による幅広い支えを必要としているようだと述べ、韓国銀行は緩和姿勢を維持するだろうと語っていると報じる。
以上のように韓国経済は年末に向けて内外の両要因から難しい局面にあり、金融政策は景気刺激的な姿勢を保つとみられている。なお今年と来年の経済成長率について17日付韓国聯合ニュースは、政府は18年の経済成長率を2.6~2.7%と予測し、7月に発表した見通し(2.9%)から0.2~0.3ポイント引き下げ、来年については今年と同程度の成長が続くとみていると報じ、低い方の2.6%という数値は、韓国銀行(中央銀行)の予測(2.7%)を下回るとコメントしている。また企画財政部は、成長の原動力である輸出の伸びについて、19年は前年(6.1%)のほぼ半分の3.1%に落ち込むと予想し、主力輸出品である半導体の価格下落と石油製品の成長の鈍化、世界貿易の鈍化、米中貿易摩擦激化の可能性などを要因として挙げている。こうした影響で19年の経常黒字は18年(740億ドル=約8兆3,900億円)を下回り、640億ドルにとどまると分析していると報じる。
北 朝 鮮
☆ 石炭ガス化で制裁をかわす政府
北朝鮮が経済制裁に耐える一助として、豊富な石炭資源を利用して合成ガスを生産し、石油輸入への依存を減らしていると12月18日付ウォール・ストリート・ジャーナルが伝える。記事は、外国の当局者や専門家によれば、北朝鮮は近年石炭ガス化技術の利用を拡大し、以前は動力や原料を輸入石油に依存していた一部の大型肥料工場、製鉄所、セメント工場に石炭ガス化設備を導入しており、専門家らは、石炭ガス化により、北朝鮮は輸入燃料を軍用などの用途に回すことが可能かもしれないと指摘していると報じる。
記事によれば、ソウル大学の北朝鮮経済研究者ピーター・ウォード氏は、2016年以降北朝鮮で石炭から化学品を生産する取り組みが新たに推進されていると述べ、これも必要なら恒久的に「制裁に立ち向かう態勢を整える」ことを目指したものだと語っている。また中国は石炭ガス化の技術と専門知識を北朝鮮に提供してきており、ある中国企業は、17年7月に平壌北部の工業地帯向けに毎時4万立方メートルの生産能力を持つ大規模なガス化設備を供給することを明らかにしている。ノーチラス研究所の北朝鮮エネルギー問題専門家は、この生産能力だけで北朝鮮の最近1年間の原油・石油製品輸入量の約10%に相当する合成燃料を十分供給できると語っている。
こう報じた記事は、石炭ガス化技術は18世紀末に開発され、これまでも経済的孤立を強いられた石炭資源が豊富で石油が乏しい他の国々を支えてきたと報じ、第2次大戦中、石炭ガス化によって戦車、航空機の燃料を十分供給できるだけの大量の合成燃料を生産したナチス・ドイツやアパルトヘイト政策時代の南アフリカ共和国の例を挙げ、専門家らは、密輸などの他の方策とともに石炭ガス化は北朝鮮政府がしばらく時間を稼ぐ上でも役に立つかもしれないと述べ、開発が不十分な北朝鮮経済では、需要の一部だけでもガス化した石炭でまかなうことが大きな影響をもたらし得るとし、現在の状況であと2~3年なんとかやっていくことができると思うとの専門家の見解を伝える。
さらに記事は、北朝鮮の石炭埋蔵量は147億トンと推定され、米ケンタッキー州のそれを上回るとみられており、その採掘された石炭の大半は輸出されてきたが昨年の輸出禁止措置により、国内使用向けの余剰が生じていると指摘。ボウディン大学の北朝鮮経済専門家ブラッドリー・バブソン氏は、2017年の新たな制裁が「北朝鮮の石炭ガス化の取り組み強化、加速につながっただろう」と語っていると伝える。また北朝鮮の国営メディアによると、同国が初の核実験を行った06年当時の指導者だった金正日総書記は同国の2大肥料工場に石炭ガス化施設を建設する5年間の取り組みに着手。11年に金正恩氏が指導者となり、経済開発に重点を置くようになるとこの取り組みを拡大し、同国最大級の製鉄所にガス化施設を完成させたと報じる。
さらに専門家らによれば、しばしば動画や写真を伴って報道される石炭のガス化事業に関しては偽物ではないと思われ、それらの一部は衛星写真からも裏付けられると述べ、専門家らによれば、重要な点は石炭ガス化は肥料、温室用のビニールシートの生産拡大に必要となる原料供給を促し食糧の増産につながったほか、他の産業分野では合金鋼、パイプなどの製品開発を可能にした。また11月に放映された北朝鮮国営テレビの映像によれば、石炭ガス化技術は現在電力供給拡大のための小規模発電所でも使用されている。
上記のように報じた記事は、中国との関係について概略次のように伝える。
中国の河北凱躍化工集団公司のウェブサイトによれば、北朝鮮科学アカデミーのメンバー7人が昨年6月石炭をメタノール、アンモニア、ジメチルに転換する技術を学ぶため同社の施設の1つを訪問した。ジメチルはディーゼル燃料の代替燃料として使用することができる。また北部の工業地帯向けに計画された大型ガス化装置は、中国大手石炭会社の子会社である陽煤化工股?有限公司によって建設されたものだった。事業に関与する2人の人物によると設備は既に完成しているが、中国側は北朝鮮からの指示待ちの状態で北朝鮮側にまだ引き渡されていないという。
以上のように北朝鮮は、その豊富に産出する石炭をガス化する技術を利用して石油に代替するエネルギー源とするほか、様々な産業製品の製造や食料増産、電力供給拡大などに活用、さらには軍用への転用可能性もあると指摘されている。技術やノウハウで中国が支援しており、北朝鮮はエネルギー源の密輸なども活発に行いながら厳しい経済制裁に耐えているとみられる。米朝協議が停滞しているのもこうしたことが一因となっている可能性がある。
タ イ
☆ タイ中銀、政策金利を引き上げ
12月19日、タイ中央銀行は2011年以来となる政策金利の引き上げを決定し、インドネシアやフィリピンなど引き締めに動く地域の仲間入りをしたと同日付ブルームバーグが伝える。政策金利の翌日物レポ金利は0.25%引き上げられ、年1.75%となった。中銀声明によれば、7人からなる金融政策委員会で5人が賛成した。
ブルームバーグによれば、長引く低金利によるリスクを指摘する金融委員からの発言から、19人のエコノミストを対象とした調査のうち14人が今回の引き上げを予想していた。経済成長率は直近四半期の3.3%と2年ぶりの低水準に落ち込んでいたが、中銀は今年の成長率は4%を超えると見込んでいる。インフレ率は11月に1%を下回り、中央銀行の目標圏以下に落ち着いていた。さらにフィリピンペソやインドネシアルピアが今年に入り対ドルで大きく下落するなか、タイバーツはほとんど動いておらず、アジアで最も安定した通貨となっている。なおタイでは4年以上軍事政権が続いているが、来年2月に総選挙を予定している。
以上のようにブルームバーグは、タイ中央銀行は経済が順調に成長しインフレも終息しているなか、長期の低金利がもたらすリスクを警戒して利上げに踏み切ったと伝える。なおタイ経済の現状と中央銀行の金融政策動向についてロイター通信は11月19日付記事で概略次のように報じていた。
タイ国家経済社会開発庁(NESDB)が発表した第3四半期のGDPは、季節調整済みで前期比横ばいとなり、プラスの予想に反して成長が停滞した。輸出や観光が軟調だった。ただし第3四半期のGDPは前年比では3.3%増で、市場予想は4.2%増、第2四半期は4.6%増だった。
また同庁は、2018年のGDPを4.2%増と予想。従来予想は4.2~4.7%増だった。2018年の輸出予想は7.2%増と従来予想の10.0%増から下方修正した。2019年のGDPの予想は3.5~4.5%増、輸出の予想は4.6%増。
ロイターがまとめたGDPの市場予想は、2018年が4.5%増、2019年が4.2%増。昨年のGDPは3.9%増と5年ぶりの高水準だった。キャピタル・エコノミクスは、タイの成長率が「向こう1年で大きく回復する可能性は低い」との見方を示し、19年の成長率は3.5%と予想した。
以上のように報じた記事は、タイ中銀は来月19日に理事会を開催するが、市場では経済成長の原動力である輸出と観光が低迷し、2011年以来初となる利上げが先送りされるのではないかとの見方が浮上していると述べ、さらに、(それでも)一部のエコノミストは利上げを予想していると付言していた。
イ ン ド
☆ 世界第5位の規模に浮上する経済
インドが2019年に経済規模で英国を抜き世界第5位となり、英国は世界第7位に転落すると12月19日付フィナンシャル・タイムズ(FT)が報じる。記事は、IMFの米ドルの市場レートを計算基礎とするGDP推計によれば、英国は2018年には経済規模で世界第5位だったが、来年にはインドと仏に抜かれ第7位となると報じる。
IMFの見方と合致する経済予測をしているPwCのエコノミストは、インドは高い成長率と巨大な人口、恵まれた人口構成によって大規模経済として世界最高の経済成長を遂げ、グローバルなGDP競争で上昇を続けるのは間違いないと指摘していると記事は紹介する。また購買力平価で計算すると、インドは国民1人当たりのGDPは遙かに低いものの既に欧州経済の2倍以上となっていると述べる。
なお上記FT報道とは別に7月18日付インドのPTI通信は、世界銀行によるとインドの名目GDPが昨年に2兆5,900億ドルとなり、2兆5,800億ドルのフランスを上回り世界第6位に浮上したと報じ、これに関連して政策立案機関であるインド変革国家機関委員会のクマール副委員長が「1人当たりの国民所得は依然として低く、道のりは長い」とコメントし、「(第6位となるのを)待ち望んでいた。18年には(英国を抜き)、米国や中国、日本、ドイツに次ぐ世界第5位となるだろう」と述べたと伝えていた。
以上のようにインド経済は高成長と巨大人口、恵まれた人口構成を背景に今後とも経済規模を拡大し、日独を追い越し中国に接近していくと考えられる。
なお記事は、英国のランキングについて英国は同じような人口規模と経済発展状況にある仏と屡々順位を交代し合っており、2019年は仏が市場レートの為替相場を基礎としてGDPを換算すると、ユーロがポンドとの対比で強くなると見込まれていることから、英国を抜くとみられていると補足し、今後の見通しについてはブレグジットの展開次第とみるPwCの見方を紹介する。
前田 高昭
金融翻訳ジャーナリスト、社団法人 日本翻訳協会 会員、翻訳家。
訳書に『チャイナCEO』他。
『東アジアニュースレター』配信中。
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