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ポートランドBLM抗議デモ

2020/08/22

【特別特集】反人種差別、暴動に想う~人種差別をどう考える    
第2回 


ポートランドBLM抗議デモ


シュマース 千恵子
(バベル翻訳専門職大学院生 法律翻訳専攻)

 

                                
 米国抗議デモの歴史上で「最大」の記録を塗り替えたジョージ・フロイド抗議デモが開始されてから、2か月も経つというのに、ポートランドBLM(黒人の命は大切だ)抗議デモは、連日70日以上も続き、抗議デモを恐れたトランプ政権の指示で、連邦政府の治安部隊を派遣したことにより、ますます情勢が激化している。BLM抗議デモの参加者はポートランド及び郊外の居住者の人種別構成に比例して、ほとんどが白人です。

 炎や煙が蔓延して、戦場化しているのは、ダウンタウン・ポートランドの一部の狭い地域で、マーク・O・ハットフィールド連邦裁判所周りの2-3 区画(半径300m程度)のみだったのですが、住宅地近辺へ移動し始めています。
 ポートランドのテッド・ウィラー市長は、抗議デモに参加をし、「抗議デモのような群衆を取り締まる訓練を受けていない連邦政府部隊が、所属名を明らかにしないまま、デモ参加者を拘束をして、所属不明の黒いワンボックスカーで連れ去るというような事実が、暴力や破壊行為を増加させている」と連邦政府派遣に異議を表明した後に、デモに参加をしていた市民達と共に、連邦政府によるティアガス攻撃を受けました。ガス攻撃を受けた直後のCNNニュースインタビューで 「刺すように痛い。息が苦しい。このような扱いを受けなければならない行動は、何もなかった。攻撃を受けることを恐れてはいないが、怒りが鎮まらない」と語りました。
 地元のニュースや、SNSで、”NAVY” のロゴ入りのトレーナーを着用した、大柄の白人男性が路上で話をしようとしていただけなのに、連邦政府部隊に取り囲まれ、警棒で何度も殴打された上に、ペッパーガスで攻撃をうけている映像が流されました。この男性は、元海軍軍人で、軍人病院の研究室の科学者のクリストファー・デイビット氏(35歳)で、abc 7 ニュースのインタビューの中で「連邦政府部隊が、BLMデモに参加者を、ティアガスを使って、攻撃をしているのをメディアで見て、連邦政府部隊にその行動が憲法上の権利違反であることを伝える為に、デモに参加をした。海軍のロゴを見て、部隊が話合いに応じてくれると思ったのは大きな間違いだった」と語りました。

 「両手を挙げて告ぐ、打たないでください」と高いトーンで繰り返し歌うようにデモで訴えているのは、ウォール・オブ・マムと称する母親の集団で、連邦裁判所の前で腕を組んで、人間の壁を作って、抗議デモ参加者の安全確保を訴えます。その後、勇敢な母親達の行動を支える為に、落葉を吹き集めるためのブロワーを持った父親の集団のウォール・オブ・ダッドが、連邦政府部隊のガス攻撃を吹き戻す作戦で連邦裁判所の前に立ちはだかります。
 四季の美しい、あふれる自然の中で、環境に優しい街、安全な街、一番住みたい街といわれてきたポートランド。何故ポートランドが抗議デモや暴動の中心となっているのでしょうか?

 ポートランドの人種別構成は、80%が白人で6%が黒人でちなみにアジア人は8%で黒人を上回ります。ポートランド市のあるオレゴン州では、その人種別構成にも反映されているように、最も残忍な人種差別の歴史を背景があるだけに、人種差別は、とても複雑なテーマです。1844年の鞭打法によると「黒人は奴隷でも解放された自由人でも 領土にいる限り年に2回鞭打ちの刑に処す」と記載されており、1920年代オレゴン州議会は、日本人移民者が土地を所有又は貸出すことを禁止していた。2000年代初頭まで、居住地から黒人を除外する言葉が含まれていた。初期の残忍なオレゴンの法律は、政治的過激派が移住し戦いを選択することができる不安定な政治的風土を造り上げ、法を改正し、平等、自由を実現する道を切り開いてきました。

 1960年代後半にマーティン・ルーサー・キング・ジュニア牧師が暗殺されてから、全米各地で差別意識に対する教育がされてきました。
 それでも、これまでのポートランド居住者の黒人家族の平均所得水準は、白人家族の半分で、黒人居住者が警察官に虐待される事件は後を絶たちませんでした。

 私は、今回の黒人の命を守ろうとするポートランドの白人による抗議デモを、「レボルーション」だと捉えています。ポートランドのほぼ単一民族ともいえる白人が、黒人を守ろうとしているのは、過去の残忍な歴史を鑑みると、画期的で進歩的な事実だと思います。

 「大昔、人は皆、赤道付近に居住をしている黒人だった。暑さを避ける為に赤道から離れて移住し、遠い地に移ったものは肌の色素が少なくなり、白人となった。人自身がそのエゴから人種差別を造り上げた」というのは、ブルー・アイズ、ブラウン・アイズの人種差別意識教育改革先駆者のジェーン・エリオット先生の名言です。それは、堀田都茂樹副学長が第250号に執筆された「翻訳的ものの考え方で、世界が変わる- 世界が一つの言葉をとり戻すとき」のバベルの塔の神話等に共通のテーマを読むことができます。

 BLM抗議デモが、肌の色、性別、宗教、趣向、思考等の違いをすべて受け止めて理解をして、違いがあることに感謝して、その違いの価値に気付き、その良さを認め合い、協力して、個々の違いに関わらず、それぞれが人として心豊かな良い生涯をおくられる世界を築く為の「レボルーション」であると信じ、新しい時代の幕開けが近いことを感じています。

参照
テッド・ウィラー市長 CNN インタビュー
www.youtube.com/watch?v=ul0atbzT7DI

クリストファー・デービッド氏のインタビュー
https://www.youtube.com/watch?v=HQ_moOtDqvk

ウォール・オブ・マム
https://www.youtube.com/watch?v=3VSKnYiaPXA

ジェーン・エリオット
https://janeelliott.com/  

https://www.youtube.com/watch?v=c18oEXqDg1k       

堀田都茂樹副学長 第250号 Alumni編集室から
「翻訳的ものの考え方で、世界が変わる- 世界が一つの言葉をとり戻すとき」
 
New York Times, “Why One of America’s Whitest Cities Become the Center pf B.L.M. Protests”
By Thomas Fuller
https://www.nytimes.com/2020/07/24/us/portland-oregon-protests-white-race.html

New York Times, “Portland Killings Dredge Up Legacy of Racist Laws in Oregon”
By Kirk Johnson
https://www.nytimes.com/2017/06/04/us/portland-killings-racist-laws-oregon.html

 

【プロフィール】
シュマース 千恵子
バベル翻訳専門職大学院生・法律翻訳専攻、愛知県立大学英米学科学士, 2020年よりバベル翻訳専門職大学院生として本格的に翻訳を学び、プロの翻訳家を目指す。