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私はだあれ?からの明るい未来
2020/08/07
【特別特集】反人種差別、暴動に想う~人種差別をどう考える
第1回
私はだあれ?からの明るい未来
本多真奈美
(バベル翻訳専門職大学院生)
きっと世界は良い方に向かっています。
結論から言えば、そもそも「中国人」とか「日本人」とかと区別をつけたがる私たち人類全体の問題、かつ過去の産物ではないでしょうか。私たちは常に他者と比較することで自分を知りますが、逆に言えば比較の中でしか己を知ることができない、人類のサガのようなものを持っています。それがネガティブに現れた結果だったとは取れないでしょうか。また、差を利用することで良くも悪くも「助け合う」、言葉を変えると「搾取」して生きてきた人間の知恵から派生する、おまけのようなものではないかと、私は思いたいのです。しかし、オープンソースでシェアすることを学んだこれからの私たちは、きっと乗り越えて行けるはずですし、そうしなくてはいけない局面に立たされています。
今回のアメリカ、ミネアポリスでの事件では、アメリカの短い歴史の中で虐げられてきた黒人に焦点が当たりました。なぜここでそのような「水面下ではいつも行われていた」人種差別が、何千マイルも離れた、日本の田舎の私の両親のような、人種差別とは全く無関係のような人にまでその詳細が知れてしまうほど話題になったのでしょうか。
1、COVID-19 パンデミック最中でストレスが溜まっていた
2、映像技術が庶民にも動的に扱えるものになったと同時に、
繰り返し再生できるYoutubeなどのプラットフォームが身近なものになった
3、青年を巻き込むことができた
これらは私の黒人の友人(60代)が語ってくれたことをまとめたものです。ここではアンクルとお呼びしましょう。アンクルによると、これまでも、ロサンゼルス暴動や、オバマ前総理大臣就任(これは暴動ではないけれど)や、歴史を紐解けば、『風と共に去りぬ』の時代以前から、人種に関しては何かと事件はありました。1と2は文字通りのご想像の通り、タイミングよく揃いました。ここで焦点を当てたいのは、3です。彼も私も青年の持つ「ピースフルな」ポテンシャルを軽くは見ておりません。
私たちは未来へ向かって確実に歩を進めております。国や民族のボーダーはなくなりつつあります。もう既に、間違いなくアメリカでは、違う肌の色の誰かと関わることは、至って普通のことです。私のような移民ですら、違っていることに違和感をもたなくなってしまったのですから、産まれた時からその環境にいる方々は、何を大人は揉めているのだろうかと思うのも無理もない話なのです。つまり「もういいやんか」です。
良い事例に、私の両親の悪い例(*これも賛否両論ありますが)を出したいと思います。私が産まれた広島の小さな町にも、第2次世界大戦時の朝鮮からの残留孤児がありました。彼は3世、彼こそ、見た目や喋り方は私となんら変わりはありません。ある日の食卓で、学校行事や、習い事のお教室で一緒だった彼のことが話題に上がり、父親がすかさず「〇〇の家はチョンだから」と言ったのに、好奇心いっぱいの私はすかさず「チョンってなあに?」と聞き返しました。父親は朝鮮の方への偏見を持っておりましたので、事実とそれに伴った彼の意見とを聞くことになりました。その後、学校では「チョン」に関して学んだ記憶はなく、父親から聞かされなければ世間知らずの大人になった可能性もあります。しかし、もしもそれを知らなければ、その方々の過去に囚われることなく、今目の前に現れた〇〇さんに集中することができたのではないかと思います。
もう一つの観点は、AIが搭載された世界では、「あなた」という人物をカテゴライズしなくては、「あなた」とは言うものの、自らがやって来ない限り、「あなた」にアプローチすることができないという側面があります。あなたはどこに住んでいるか、お使いのOSは何かと言ったわかりやすい質問から、男か女か、ある一定の方々には答えたくない、またはなかなか答えられない質問もあります。母がアフリカとロシアのハーフで父がタヒチと中国のハーフなら、あなたは一体誰?というようなこともあります。
*話は逸れますが、タヒチと言えば、私の友人はで父がタヒチ人(フランス語、タヒチ語、英語を喋ります)、母がデンマーク人(デンマーク語とドイツ語と英語)でハワイ生まれの方がいます。彼女は上記の言葉に加え、ハワイ語も得意ですが、彼女の子供が一番最初に魚を見て話した言葉は、「i’a」のタヒチ語であったという面白い話があります。
これから大切にすべきはやはり個人の情報です。パスポートを絶対なくしてはいけないのと同じくらい、「私が誰であるか」というのは大切な問題です。私は日本を離れて暫く経ちますが、一旦忘れ去られようとした私の中にあった三つ子の魂も、ここ最近はムクムクと目を醒ましてきました。原点に戻り、今を把握し、これからもより良い個人と世界の両方の幸せを願って、精進していきたい所存です。
【プロフィール】
本多真奈美
バベル翻訳専門職大学院、金融・IR科在籍。情報処理技術者。1999年より国内外のITプロジェクトにシステムエンジニアとして携わる。2008年LAでITを使ったプロモーショナル会社Virtual Properties, LLC を同士三人で立ち上げる。リーマンショックの影響を受け失敗。趣味はお茶とカヤック。最近バケットリストからカウアイ島のナパリ・コーストをカヤックすることが消えた。ハワイ在住。
第1回
私はだあれ?からの明るい未来
本多真奈美
(バベル翻訳専門職大学院生)
きっと世界は良い方に向かっています。
結論から言えば、そもそも「中国人」とか「日本人」とかと区別をつけたがる私たち人類全体の問題、かつ過去の産物ではないでしょうか。私たちは常に他者と比較することで自分を知りますが、逆に言えば比較の中でしか己を知ることができない、人類のサガのようなものを持っています。それがネガティブに現れた結果だったとは取れないでしょうか。また、差を利用することで良くも悪くも「助け合う」、言葉を変えると「搾取」して生きてきた人間の知恵から派生する、おまけのようなものではないかと、私は思いたいのです。しかし、オープンソースでシェアすることを学んだこれからの私たちは、きっと乗り越えて行けるはずですし、そうしなくてはいけない局面に立たされています。
今回のアメリカ、ミネアポリスでの事件では、アメリカの短い歴史の中で虐げられてきた黒人に焦点が当たりました。なぜここでそのような「水面下ではいつも行われていた」人種差別が、何千マイルも離れた、日本の田舎の私の両親のような、人種差別とは全く無関係のような人にまでその詳細が知れてしまうほど話題になったのでしょうか。
1、COVID-19 パンデミック最中でストレスが溜まっていた
2、映像技術が庶民にも動的に扱えるものになったと同時に、
繰り返し再生できるYoutubeなどのプラットフォームが身近なものになった
3、青年を巻き込むことができた
これらは私の黒人の友人(60代)が語ってくれたことをまとめたものです。ここではアンクルとお呼びしましょう。アンクルによると、これまでも、ロサンゼルス暴動や、オバマ前総理大臣就任(これは暴動ではないけれど)や、歴史を紐解けば、『風と共に去りぬ』の時代以前から、人種に関しては何かと事件はありました。1と2は文字通りのご想像の通り、タイミングよく揃いました。ここで焦点を当てたいのは、3です。彼も私も青年の持つ「ピースフルな」ポテンシャルを軽くは見ておりません。
私たちは未来へ向かって確実に歩を進めております。国や民族のボーダーはなくなりつつあります。もう既に、間違いなくアメリカでは、違う肌の色の誰かと関わることは、至って普通のことです。私のような移民ですら、違っていることに違和感をもたなくなってしまったのですから、産まれた時からその環境にいる方々は、何を大人は揉めているのだろうかと思うのも無理もない話なのです。つまり「もういいやんか」です。
良い事例に、私の両親の悪い例(*これも賛否両論ありますが)を出したいと思います。私が産まれた広島の小さな町にも、第2次世界大戦時の朝鮮からの残留孤児がありました。彼は3世、彼こそ、見た目や喋り方は私となんら変わりはありません。ある日の食卓で、学校行事や、習い事のお教室で一緒だった彼のことが話題に上がり、父親がすかさず「〇〇の家はチョンだから」と言ったのに、好奇心いっぱいの私はすかさず「チョンってなあに?」と聞き返しました。父親は朝鮮の方への偏見を持っておりましたので、事実とそれに伴った彼の意見とを聞くことになりました。その後、学校では「チョン」に関して学んだ記憶はなく、父親から聞かされなければ世間知らずの大人になった可能性もあります。しかし、もしもそれを知らなければ、その方々の過去に囚われることなく、今目の前に現れた〇〇さんに集中することができたのではないかと思います。
もう一つの観点は、AIが搭載された世界では、「あなた」という人物をカテゴライズしなくては、「あなた」とは言うものの、自らがやって来ない限り、「あなた」にアプローチすることができないという側面があります。あなたはどこに住んでいるか、お使いのOSは何かと言ったわかりやすい質問から、男か女か、ある一定の方々には答えたくない、またはなかなか答えられない質問もあります。母がアフリカとロシアのハーフで父がタヒチと中国のハーフなら、あなたは一体誰?というようなこともあります。
*話は逸れますが、タヒチと言えば、私の友人はで父がタヒチ人(フランス語、タヒチ語、英語を喋ります)、母がデンマーク人(デンマーク語とドイツ語と英語)でハワイ生まれの方がいます。彼女は上記の言葉に加え、ハワイ語も得意ですが、彼女の子供が一番最初に魚を見て話した言葉は、「i’a」のタヒチ語であったという面白い話があります。
これから大切にすべきはやはり個人の情報です。パスポートを絶対なくしてはいけないのと同じくらい、「私が誰であるか」というのは大切な問題です。私は日本を離れて暫く経ちますが、一旦忘れ去られようとした私の中にあった三つ子の魂も、ここ最近はムクムクと目を醒ましてきました。原点に戻り、今を把握し、これからもより良い個人と世界の両方の幸せを願って、精進していきたい所存です。
【プロフィール】
本多真奈美
バベル翻訳専門職大学院、金融・IR科在籍。情報処理技術者。1999年より国内外のITプロジェクトにシステムエンジニアとして携わる。2008年LAでITを使ったプロモーショナル会社Virtual Properties, LLC を同士三人で立ち上げる。リーマンショックの影響を受け失敗。趣味はお茶とカヤック。最近バケットリストからカウアイ島のナパリ・コーストをカヤックすることが消えた。ハワイ在住。
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