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モラルを高める基盤

2020/08/07

【特別特集】反人種差別、暴動に想う~人種差別をどう考える    
第1回 


モラルを高める基盤


田所美穂
(バベル翻訳専門職大学院生)

 

  
 米国警官による黒人男性の殺害から、世界中で人種差別的な行動に対する抗議デモが広がっている。この抗議デモは、市民の正当な怒りであると言える。また、抗議デモ中に、警察官による差別的な取り締まりや暴力行為への批判が強まり、警察官の対応に厳しい目が向けられている。一体、この背景には何があり、人種差別の原因はどこにあるのか。これらの問題を防ぐ方法や取り組みを検討してみた。

 アメリカには奴隷制度と人種差別の歴史があった。1618年に北米大陸で奴隷競売が実施された。南北戦争後、1865年憲法修正で奴隷制度を廃止するが、黒人の権力を認めないジム・クロウ法が1876年~1964年まで各州で制定された。これらは、有色人種(黒人、ネイティブアメリカン、黄色人種すべて)に対する人権剥奪、差別的内容であった。その差別的内容とは、例えば、黒人と白人ではバス乗り場も座席も分かれており、学校も別であった。また、白人女性看護師のいる病院に黒人男性患者が入ることは禁止され、白人と黒人の結婚は認められなかった。アメリカは、このような負の歴史的背景から、その感情に駆られて差別をしたり、敵意を抱いたり、暴力をふるう結果を生んでいることは避けがたい事実であるといえる。しかし、人種差別は、アメリカに限ったことだけではなく、また時代がどんなに変わろうと、この世から差別が一切消え去ることはないだろう。なぜなら、人種差別の原因の一つに、無知からくる恐れがある。自分の知らない人種、文化、宗教などを区別し、ステレオタイプにとらわれてしまい差別用語や憎悪の言動が他の人々に伝達され、恣意的で誤った認識に基づいた感情をウイルスのように感染させてしまう。その結果、社会的格差を拡大させ、固定化が進む社会となってしまうのである。これらを事前に食い止めることが出来るとすれば、他者への理解や尊重が必然で、モラルを持った言動や行動に心がけが不可欠であろう。つまり、個人のモラルを向上させることである。

 我々は、人種、性別、社会的身分などの違いに関わりなく、個人相互の間において、人間としての価値に差異はないという平等の思想を理解し道徳性を養ってきた。個人の尊重は、価値あるもの、尊いものとして大切に扱わなければならないし、すべての個人が互いを人間として尊重しあうことである。その尊重から導かれる日本憲法に規定される基本的人権の平等権は、尊重されるべきものである。現代の日本における道徳教育は、「考え、議論する道徳」への転換に向けた教育の取り組みがなされている。学校教育において、児童にとって人格の基盤となる道徳性を養い、個人のモラルを向上するうえの大切な時期であるといえる。

 最後に、技術の進歩に伴いインターネットやSNSの利用で、人間関係やコミュニケーションに、さまざまな問題が生じている現代社会。グローバル化が進む現代社会では、多種多様な人々と相互に尊重しあいながら、理解し合うためのモラルの向上が必要不可欠である。日本の学校には道徳学科が備わっているが、道徳の学科がない国もある。フィンランドでは、道徳学科はなくとも宗教学科で道徳性を養う。それは、宗教そのものと不可分なところが大きいからという理由である。先の未来では、道徳性を養う教育が世界各国で拡充され、社会的変化を視野に入れつつ、新しい時代にふさわしい道徳教育を形成し、個人のモラルが向上されることを願う。

 

【プロフィール】
田所 美穂
日本の医療系の会社で店舗の立ち上げ業務に関わり、経理・総務職を経験した後、アメリカワシントン州に移住。子育てに専念した後、2016年よりホテルに勤務。スキルアップ向上のためバベル翻訳専門職大学院で修了を目指して学習中。今後のキャリアアップに繋げていきたい。