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顧客に近い英日翻訳者の道へ - 小早 裕子

2020/09/23

【連載】VOICES from Alumni Overseas
第4回 
 
顧客に近い英日翻訳者の道へ


 小早  裕子
(翻訳者、バベル翻訳専門職大学院修了)
 
 
皆さんはなぜ翻訳者になろうと思われましたか。

翻訳した言葉に心を揺さぶられたことはないでしょうか?


突然ですが、私は洋裁や陶芸、料理が得意です。洋裁にいたってはお客様にカスタムメイドの服を作っていましたからプロ並み。どれも私にとっては創造する過程が面白くてたまらないという共通点があります。しかし、時間がかかることは大嫌いなので要領よく上手くできる方法を考えてやってみるのが私の定石。

なぜ、私は翻訳者をやっているか。翻訳は創造意欲を掻き立ててくれるから。もちろん、知識欲を満たしてくれるし素晴らしい文章に巡り会えた時の感動を待つ楽しさがあるから、という説明もあたっているかもしれません。

もともと文章を書くのは下手で、英語も何となくわかる程度のずぶの素人からのスタートでした。翻訳者になろうと思い立ってからは、翻訳スクールにも通わず自分で勉強方法を考えては、やってみるの繰返しです。効果があったものからなかったものまで、まぁ、よくしつこくやったと思います。

翻訳者として転機が訪れたのは、夫の転勤でシリコンバレーに渡米してからです。米国の翻訳会社を通して現地のIT企業の日本語リード翻訳者に指名されました。しばらくすると、品質管理という名目で翻訳チェック後のファイルが送られてきました。評価は衝撃の「不満足」これを見て血の気が引いたのを今でも鮮明に覚えています。どのように翻訳したらいいか直接聞いてみるしか打つ手はないと思い、日本オフィスの担当者を紹介してもらいました。冷たい態度をされるのを覚悟で恐る恐る聞いてみると「上手な訳をしてくれるので助かってます」と予想外の反応が返ってきたのです。お客さんから指摘されたと思い込んでいたチェックシートは翻訳会社が用意したものらしかったのです。翻訳者志望のチェッカーが品質チェックをしていたことが後から判明しましたが、それを日本語を解さない翻訳コーディネーターに英語で説明する大変な作業が待ち受けていました。お客さんから翻訳会社へ評価を伝えてくれたこともありチェックが入らなくなり、どれだけお客さんの評価が重要か身に染みて感じる機会となりました。

それからはもっとお客さんに近いところで仕事ができるよう地道に活動をしています。直接依頼してもらえる会社があれば積極的に受けて、しっかり仕事をするだけでなく信頼してもらえるよう円滑なコミュニケーションを取るよう心がけています。

海外での翻訳はひと手間かかる案件もありますが、信頼を勝ち取れば楽しい翻訳案件も入ってきます。直接翻訳を依頼いただくお客さんで説得力のある文章を書かれる方がいらっしゃいます。その方が書く文章は論理的にもかかわらず印象的な表現で綴られいつの間にか彼の世界に引き込まれてしまいます。その方が翻訳に出す理由は極めて現実的で、自分の思いを伝えて相手を説得し目的を達成するためです。それを聞かされて張り切らないわけにはいきません。日本語でも同じ熱量で表現されているか、できる限り近い日本人にとって理解しやすい表現にできているか腕が試されますので遣り甲斐のある仕事です。

<中略、勉強中のエピソードやシリコンバレーの翻訳で得た気づきについて詳しくセミナーでお話ししますので、是非ご参加ください!>

最近は機械翻訳が日々進歩してきており、翻訳者の仕事が奪われていくと心配されている方も多いのではないでしょうか。ポストエディット案件では間違い探しに工数がかかり大変なうえに創造の余地はありません。翻訳コストばかりが目の敵にされてしまいがちですが、私が知る世界においては、人手翻訳しかお客様の目的を達成することができないと感じています。
お客様に近い翻訳者でいたい、機械翻訳に活躍の場を奪われたくない、という思いから、この夏に翻訳会社を設立し新たなスタートを切りました。翻訳者とはまた違ったさまざまなチャレンジが待ち受けているでしょう。しかし、ずぶの素人精神で挑戦してみようと思います!

<プロフィール>
 ・自動車会社、広告・出版会社に勤務
 ・社内翻訳者、チェッカーの下積みを経て独学で英日産業翻訳者になる
 ・2014年 米国シリコンバレーに渡米
 ・2016年 バベル翻訳大学院入学
 ・2020年 翻訳会社 JPリングイストを設立
 ・ウェブサイト:
https://www.jplinguist.com/


 

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