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パンデミックがもたらす感情的な問題 - 田所 美穂

2020/06/22

【特別特集】新型コロナに教えられたこと
第2回
 

 
パンデミックがもたらす感情的な問題

田所  美穂
(バベル翻訳専門職大学院生)


 

 2019年12月、中国の武漢市から原因不明の肺炎による死亡者が報告され、翌年1月に、世界保険機関がその病因を新型コロナウイルスと認定し発表しました。私はアメリカのワシントン州に在住しておりますが、この州の最新の動向では、社会活動レベル4段階のうち、段階的緩和の目安を2段階まで引き上げされ、仕事を再開する個人や企業が見受けられます。しかしながら、新型コロナウイルスは今なお、世界中で感染者や犠牲者を増やし蔓延っている。

 当初のニュースは、中国 (香港)と日本 (横浜)とを結ぶクルーズ船の影響で、新型コロナウイルスの感染拡大を招きアジア諸国(日本国内)で感染者が増えていると報道されるなか、アメリカでは、新型コロナウイルスは、毎年流行となるインフルエンザ(感染性呼吸器疾患)の症状と似ているため、新型コロナウイルスに感染した可能性を見過ごしてしまう危険があると注意していました。その間、アメリカではマスクの着用など義務付けられていませんでした。その後、アメリカで最初の犠牲者が現れた2月末頃、新型コロナウイルスの感染者が上昇するなか、トランプ大統領から緊急事態宣言が発令されました。それ以降、顔を覆うマスクなどの着用や殺菌・消毒などの対策を勧告されてから、マスクや殺菌効果のある殺菌剤や除菌剤などは販売店から一時的に消えたり、それらを通常価格より2倍3倍以上の売値で販売していました。また、1970年代に起こったオイルショックの影響と同じような現象が起こり、トイレットペーパーの買い占めで化学繊維の不足が見られました。緊急事態宣言が発令されてから、学校は閉鎖され、10人以上の人が集まる場所やレストランあるいは、旅行を避ける等の指標が出されました。瞬く間に、社会活動レベルは引き下げられて、生活に欠くことができない店や企業以外は閉鎖となり、病院やスーパーマーケット、犬の散歩や軽い運動のための外出以外は禁止で自宅に待機しなければなりませんでした。そして、仕事を失った人達も多い事だと思います。私もその内の一人で、現在は復帰に向けて待機中です。

 今回のCOVID-19の状況下で、ワシントン州の最大の都市シアトルでは、外出自粛でのストレスやコロナウイルスの恐怖心や不安心から、市内に住む移民や有色人種、また難民のコミュニティに対する反移民感情や人種差別が急増しています。シアトル市長は、シアトルでは偏見とヘイトは絶対に許されない「Seattle is No Place for Bias and Hate」の動画を公開しています。私たちがこの危機に一緒に立ち向かう状況に最も必要なものは、結束さと強さであると訴えています。また、シアトル市長は、「外国人排斥(xenophobia)と人種差別(racism)は、恐怖と怒りを被害の根本原因から人々に誤って向けることで、私たちのコミュニティの安全と回復力を破壊する。これは、隣人、企業、地域社会を標的にした偏見や憎悪の事件を引き起こす可能性がある」と述べています。この問題は、パンデミックが引き起こした一つの非常事態であり、根拠もなしに他人を悪く思う否定的な偏見を防止しなければ次第にエスカレートさせてしまいます。このようなことから、行政の真摯な対応だけではなく、私たち一人ひとりが、個人の尊厳は尊重しなければならないと改めて考えさせられます。 

 

【プロフィール】
田所  美穂
日本の医療系の会社で店舗の立ち上げ業務に関わり、経理・総務職を経験した後、アメリカワシントン州に移住。子育てに専念した後、2016年よりホテルに勤務。スキルアップ向上のためバベル翻訳大学で卒業目指して学習中。今後のキャリアアップに繋げていきたいです。