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ポストコロナを考える/新型コロナパンデミックに教えられたこと ― クローニン 真理

2020/06/08

【特別特集】新型コロナに教えられたこと
第1回
 

 
ポストコロナを考える/新型コロナパンデミックに教えられたこと

クローニン 真理
(バベル翻訳専門職大学院生)

 

 私が20年ほど暮らしているアメリカ合衆国ハワイ州では、2020年3月中旬から、新型コロナウィルスのパンデミックに対する州政府の緊急事態宣言の下、外出自粛生活が始まりました。州民に対しては、必要性の高い外出以外は控えること、社会の運営に必要不可欠な職業以外の人は自宅で仕事をすることが要求され、そして子供達の学校も自宅でのオンライン授業に変わりました。日常の様々な事が刻々と変化していき、これはこうしなければダメという硬い考え方ではストレスが溜まるので、どのような変化に対してもできる限り柔軟に対応するように努めました。
 ハワイ州を訪れる人々に対しては、到着日から14日間、滞在先から外出を禁止する規制が執行され、違反者には罰金も科せられるほど厳しく監視されていました。州外からの訪問者によるウィルスの感染拡大を防ぐための処置であったとはいえ、観光業で成り立っているハワイ州にとって、この規制による訪問者の激減は、全米で最も深刻な失業率を引き起こす要因となりました。
 アメリカ国内では、信じがたいほどあまりにも多くの人々が、このウィルスによって亡くなり、職を失い、無料の食糧供給場の列に並んでいます。さらに、今までふつふつとくすぶっていた多くの社会問題が、火山が連続して噴火するように激しく表面化しています。他の国から見ると、たかがウィルスで、アメリカは何を騒いでいるのかと思う方もいらっしゃると思いますが、実際に自分の周りの社会が、大量の死、人種差別問題、政治の対立、貧困、治安の劇的な悪化など、複数の問題が激しく燃え上がり、その熱風をじかに体感すると、事の深刻さに言葉を失います。
 ハワイ州だけを見ると、ウィルスの感染数は比較的少なく抑えられていますし、人種差別は確実に存在してはいるものの、アメリカ本土で経験する程度のものではありません。しかし、失業からの貧困、そこから広がる治安の悪化は深刻なものです。
 この社会の不安定な状況により不安な気持ちになるときは、私はいつも、ハワイで昔からある考え方を頭に置くようにしています。それは、火山の噴火で燃え尽きた土地には、新しい生命が生まれてくるというものです。戦争により多くを失った日本が、戦後、大きく成長していった歴史上の姿、さまざまな災害により深刻な被害を受けた地域が、その後、活気を取り戻していった姿を考えてみても、同じように将来に向けての希望を感じ、自分の不安を落ち着かせることができます。この新型コロナウィルスにより深刻な被害を受けた人々、そして今、この瞬間、このウィルスの被害と戦っている真っ最中の人々に、この先、復帰の力となるものが多く生まれ出てくることを心より願っています。

クローニン真理:バベル翻訳専門職大学院 インターナショナルパラリーガル・法律翻訳専攻