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第46回 カナダ書籍レポート-クリーバー海老原 章子

2022/04/22

世界の出版事情― 各国のバベル出版リサーチャーより
第46回 


カナダ書籍レポート

カナダでも人気
ラグビーに関連する書籍


クリーバー海老原 章子
(翻訳者、バベル翻訳専門職大学院修了)


 
 
 以前にも触れましたが、カナダの国技はアイスホッケーとラクロスです。恐らくカナダでダントツ人気はアイスホッケーでしょうか。小学校からクラブに入りプレーを始める子供たちはたくさんいます。意外に思われるかもしれませんが、アイスホッケーのほかにサッカーやバスケットボールと肩を並べて人気があるのがラグビーです。

 2019年に日本でワールドカップが開催され、日本でのラグビー人気も一気に高まりました。当時、台風19号が接近し、開催が危ぶまれた日本とスコットランド戦。最終的に決行となった試合で、日本が28対21でスコットランドを制し、史上初の8強入りを果たし、国内外で大きな話題となりました。また、池井戸潤の小説をドラマ化した「ノーサイド・ゲーム」というテレビドラマも高い視聴率を記録し、ラグビー人気を後押しすることになったのかもしれません。日本代表選手の1人(田中史朗選手)がFacebookで管理人を務める「ラグビーファミリー」という、ラグビーファンが集まるグループの会員は、2万8千人に達しています。

 カナダ代表チームもワールドカップに参加しましたが、1次リーグ敗退となりました。しかし、敗退が決まった後も釜石市に残り、台風19号で被害にあった町でボランティア活動をするという、なんともカナダらしい行動が話題を呼びました。カナダは、10の州と3つの準州でから成り、これらの州出身のラグビー選手たちが活躍しています。ちなみに私が住むバンクーバー島には、ラグビーに力を入れる高校、大学やクラブがいくつかあり、カナダ代表選手を数多く輩出しています。7人制のキャプテンを務めたネイサン・ヒラヤマ選手もその一人で、日系の父を持つ彼は、東京オリンピック2020でカナダの旗手を務めたことでも知られています。

 今回は、このラグビーに関連する書籍をご紹介します。カナダに絞ったものではありませんが、ラグビーの「ノーサイド」や「One for All, All for One」の精神を感じてもらえる書籍を選びました。

   Sevens Heaven:
 The Beautiful Chaos of Fiji's Olympic Dream(2019年)
 著:ベン・ライアン
 出版社:‎  Weidenfeld & Nicolson


(原書画像)




作品について
 突如としてフィジー・セブンズ代表コーチに就任し、大都会ロンドンを離れて南太平洋の島国に赴任したイギリス人ラグビーコーチ、ベン・ライアン。すべてが想定外、規格外のフィジーに戸惑いながら、美しき混沌と称されるこの国のラグビーの背後にある真実と出会っていく。人生で本当に大切なこと、真の友情、ラグビーへの愛。忘れかけていたものを取り戻すための、熱い戦いが始まった。2016年リオオリンピック。問題だらけのチームを金メダルに導いたイギリス人コーチと選手たちの挑戦の物語。

著者について
《ベン・ライアン》
フィジー・セブンズ代表を2016年リオオリンピック優勝に導いた経歴を誇るラグビーコーチ。2006年から2013年にかけてはイングランド・セブンズ代表のヘッドコーチを務め、フィジー・セブンズ代表としてはワールドラグビーのセブンズシリーズで二度の年間チャンピオンを手に入れている。現在はコンサルタントとして、世界各地のさまざまな競技のスポーツクラブや企業にアドバイスを提供している。
 
    Playing the Enemy:
 Nelson Mandela and the Game That Made a Nation(2009年)
 著:ジョン・カーリン

 出版社‏ : ‎ Penguin Books


作品について
 反アパルトヘイト活動を行ったことで27年間投獄されていたネルソン・マンデラ。大統領になったマンデラは、自国の南アフリカで開催される「ラグビー・ワールドカップ」を通じて不安定な国家、国民を団結させようとする。奇跡の優勝の陰には、ネルソン・マンデラがいた。マンデラに抜擢されたキャプテン・フランソワが率いる南ア代表選手たちの快進撃は、国民たちに人種を越えた感動をもたらす。

著者について
《ジョン・カーリン》
ジャーナリスト。専門は社会問題、政治、スポーツなど幅広い分野を専門とするジャーナリスト。1989年から1995年まで、英「インディペンデント」紙の特派員として南アフリカに駐在していたことがある。その他、邦訳に『白の軍団~ベッカムとレアル・マドリードの真実』がある。

     エディー・ジョーンズ わが人生とラグビー(2021年)
  著:エディー・ジョーンズ

     出版社‏ : ダイヤモンド社




作品について
 ヘッドコーチとしてオーストラリア、日本、イングランドの3か国を率いたエディー・ジョーンズのワールドカップ3大会での戦績は、14勝1分け3敗。日本のヘッドコーチとして臨んだ2015年のワールドカップでも、それまで7大会に参加、1勝2分け21敗であった日本代表を、1大会で3勝1敗の結果に導いている。この「ブライトンの奇跡」といわれた日本と南アフリカ戦から2019ワールドカップでのイングランド準優勝にいたるまで、彼はどんなことを考え、どんな行動をしたのか。エディー・ジョーンズの超一流の組織論を垣間見ることができる。

著者について
《エディー・ジョーンズ》
ラグビー・イングランド代表ヘッドコーチ、前ラグビー日本代表ヘッドコーチ。オーストラリア人の父と日本人の母を持つ。ラグビー選手として現役時代はオーストラリア・ニューサウスウェールズ州代表として活躍し、シドニー大学を卒業後は、1996年プロコーチとしてのキャリアを日本でスタートさせる。2001年オーストラリア代表ヘッドコーチに就任し、同代表を率い自国開催のラグビーワールドカップ2003で準優勝。2007年には南アフリカ代表のテクニカルアドバイザーに就任し、ラグビーワールドカップ2007優勝に貢献。2012年に日本代表ヘッドコーチに就任し、ラグビーワールドカップ2015では優勝候補の南アフリカ代表との初戦で、世紀の番狂わせを演じてみせ、3勝をもたらす。2015年11月 にラグビーの母国・イングランド代表のヘッドコーチに外国人として初めて就任。就任後世界記録タイとなるテストマッチ18連勝を達成。日本で開催されたラグビーワールドカップ2019では準優勝を果たし、2020年第1回オータム・ネーションズカップでは優勝へと導いた。 

     Derek and Nigel: Two Heads, One Tale(2019年)

     著:デレック・ビーヴァン
  ナイジェル・オーウェンズ

 出版社‏ : Ylolfa


作品について
 世界トップのラグビー・レフリーとして知られるウェールズ出身のデレックとナイジェル。二人とも名誉あるワールドカップ決勝戦で主審を務めた経験を持つ。過去数十年にわたり、愛すべきラグビーの試合で笛を吹くというだけでなく、ラグビーの発展に大きな貢献をしてきた。現役を引退したデレックは、ナイジェルのコーチになり、テレビ判定員として陰で支えてきた。彼らの視点から見たさまざまなストーリーがユーモアたっぷりに描かれている。

著者について
《デレック・ビーヴァン》
1947年生まれ。ラグビーワールドカップを含む数々の国際試合で主審を務め、世界トップレフリーの一人として知られる。引退試合は2000年のシックスネーションズ。2013年にナイジェルが記録を更新するまで、主審を務めた国際試合数で世界記録を保持していた。

《ナイジェル・オーウェンズ》
1971年生まれ。1987年からラグビーのレフリーを始めたナイジェルは、2001年から欧州ラグビーチャレンジカップの国際レフリーを務め、ラグビーワールドカップでは2007年から4回連続でレフリーを担当。ワールドカップ2015年大会の決勝で主審を務めたことなどが評価され、2015年の世界最優秀レフリーに選出されている。2020年12月、国際試合からの引退を発表。私生活では、同性愛者であることを公表し話題を呼んだ。フィールド内外で語られるユーモア溢れるコメントやパーソナリティーで多くのファンを持つ。

      Too Many Reasons to Live(2021年)

  著:ボブ・バロウ

  出版社‏ : Macmillan


作品について
 子どものころから小柄で、ラグビー選手としては体が小さすぎると言われてきたボブ。英国のラグビーリーグクラブのひとつ、リーズ・ライノズに入団しデビューを果たしても、大きな活躍はしないだろうと言われた。その評価は間違っていた。リーズ・ライノズで16年間プレーし、通算500以上の試合に出場した。スーパーリーグでは8度の優勝、英国代表としてラグビーワールドカップに2度出場している。
 2019年、運動ニューロン疾患(MND)と診断され、余命は数年と宣告されたのは、ボブが37歳のときであった。本書は、小さな子どもが3人いるボブが、このニュースを公表してから、妻のリンジーや家族だけでなく、チームメイト、多くのファンのサポートとともに苦難と戦っていく様子を描いた自叙伝となっている。ボブの勇気と心温まるストーリーは、多くの読者をインスパイアする。

著者について
《ボブ・バロウ》
英国出身。英国スーパーリーグのリーズ・ライノズで16年間プレーしたプロのラグビー選手。身長およそ167㎝のボブは「スーパーリーグ最小の選手」として人気を博した。ラグビー史上で最も活躍した選手のひとりと言われるボブだが、2019年に神経ニューロン疾患と診断される。ボブの軌跡を追ったBBCのドキュメンタリー『My Year with MND』は200万以上の人たちに視聴されている。今年4月、大英帝国勲章を授与。友人やチームメイトが主催する7日間のマラソンイベントなど、MND協会へのチャリティー活動を支援している。

     Sonny Bill Williams:
   You Can't Stop the Sun from Shining(2021年)

  著: ソニー・ビル・ウィリアムズ
 アラン・ダフ
 出版社‏ :  Hachette Australia

作品について
 ラグビー選手だけでなく、ヘビー級ボクサーという異色の経歴を持つ世界的スーパースター、ソニー・ビル・ウィリアムズ(SBW)。秀でた運動能力と高い判断力を持ち、100年に一人の逸材とも称されるソニー・ビル・ウィリアムズがニュージーランドのオールブラックスで活躍し、ワールドカップでチームを優勝に導き、オリンピック出場を果たし、引退表明するまでの彼の人生を追う。
 ソニー・ビル・ウィリアムズは、ユニセフ親善大使としての活動など、ラグビーフィールド以外での活動も高く評価されている。さらにファミリーマンとしても知られる彼。世界中の人から愛されるソニー・ビル・ウィリアムズの魅力を知ることができる。 

著者について
《ソニー・ビル・ウィリアムズ》
ニュージーランド、オークランド出身。ラグビー選手だった父親の影響で少年時代からラグビーを始める。194㎝の長身、秀でた運動能力とスピードを持ち、オールブラックスには史上最年少の19歳で選出された。家族を大切にするファミリーマンとしても知られる。2008年にイスラム教に改宗し、オールブラックス初のイスラム教徒としてプレーすることとなったのも話題となった。ニュージーランド代表として2度のワールドカップ、7人制に転向しオリンピック・リオ大会にも出場した彼は、2021年に現役引退を発表した。

《アラン・ダフ》
ニュージーランド出身の小説家、新聞コラムニスト。1994年に映画化された『ワンス・ウォリアーズ(Once Were Warriors)』の原作者としてよく知られている。ニュージーランド先住民であるマオリの文化や社会に詳しい。


【プロフィール】
クリーバー海老原 章子
バベル翻訳大学院法律翻訳修了。結婚後は夫の仕事の関係でマレーシア、トロント、
アラブ首長国連邦に居住。現在は、カナダBC州のナナイモに一家5人暮らし。これまでに担当した書籍翻訳は4冊。
アラブの奥さんは今日も命がけ: 恋愛、結婚、育児、そして……』が出版されました。

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