大きくする 標準 小さくする

第39回 カナダ書籍レポート - クリーバー海老原 章子

2021/08/23

世界の出版事情 ― 各国のバベル出版リサーチャーより
第39回
 


                                                カナダ書籍レポート
                        
 東京オリンピック2020を迎え
         カナダ人オリンピアンに関連する書籍 


クリーバー海老原 章子
(翻訳者、バベル翻訳専門職大学院修了)


 
 新型コロナウイルスの影響で、1年の延期を経て開催された東京オリンピック。アスリートたちにとって、この1年間という期間は、どんな意味があったのかな、どんな影響があったのかな、そんなことを思いながら観戦しましたが、皆さんはいかがでしたか?最終的に無観客で開催されたオリンピックですが、17日間にわたる大会の幕を下ろしました。日本代表選手たちは本当に大健闘されましたが、こちらでもカナダ代表のオリンピアンたちが大いに沸かせてくれました。

 女子サッカーでは、カナダがスウェーデンをペナルティーキックの末に破り、歴代初の金メダルを獲得し感動を呼びました。女子ボート(8人乗り)のチームは、29年ぶりとなる金メダルを獲得しました。また、最も過酷な競技のひとつと言われる10種目競技では、31歳のダミアン・ワーナーが金メダルに輝きましたが、ゴール後、ほとんどの選手たちが暑さで倒れこむ中、ひとり悠々と歩く彼の姿は、まさに世界最強の男を印象づけました。男子200メートルの決勝では、アンドレ・ドグラスが初の金メダルを獲得しました。小柄なドグラスですが、前回のリオデジャネイロ大会で、世界記録保持者のウサイン・ボルトと顔を見合わせながら、笑顔でゴールを切る姿が記憶に残っている方もいらっしゃるのではないでしょうか?

 今回のオリンピックでは、競技とは別に、カナダ選手団が閉会式で着用したデニムのジャケットも話題になりました。前例のない状況下で開催された東京オリンピック2020。世界中の多くの人の記憶に残るオリンピックになったことでしょう。パラリンピックのオリンピアンたちも応援したいですね。

 世界を舞台に活躍するアスリートには、それぞれのストーリーがあると思いますが、今回は、カナダ代表のオリンピアンたちに関連する書籍をいくつかご紹介します。


   Race with Me! (2021年) 
   著:アンドレ・ドグラス&ロバート・バッド
   出版社:‎ Scholastic Canada 






作品について
 シューズの紐を締めて、さあ一緒に走りに行こう!2019年度にはカナダの最優秀アスリートに選ばれたアンドレ。少年時代から野球やバスケットボールが好きだったアンドレが、いかにモチベーションをあげ、苦悩を克服し、オリンピアンになったかをわかりやすく語っている。写真やイラスト満載で、なによりもスポーツの楽しさを伝えてくれる一冊。さまざまな読者層をインスパイアするこの書籍は、すでにベストセラーになっている。

著者について
ロバート・バッド:カナダ人作家のロバートは、著名アーティストのロイ・ヘンリー・ヴィッカーズとのコラボで多数の書籍を出版している。他に『Peace Dancer』『One Eagle Soaring』などがある。現在は、ブリティッシュコロンビア州ビクトリア在住。


アンドレ・ドグラス:2016年のリオデジャネイロ大会では3種目で3つのメダルを獲得した初のカナダ人アスリートとなったアンドレ。大きな大会の直前に怪我に苦しめられた経験を何度か持つアンドレの、怪我を克服しさらに強くなって復活する姿は、多くのアスリートをインスパイアする。不屈の精神と人懐っこいい笑顔で高い人気を誇る。オンタリオ州出身。現在は専属コーチと共に米国フロリダ州在住。


     The 4 Year Olympian:
  From First Stroke to Olympic Medallist

 (2018年)
 著:ジェレミア・ブラウン

 出版社‏ : ‎ Dundurn Press 




作品について
 19歳で父親となったジェレミアは、良き父、良きパートナーとして、銀行に勤務しながら普通の生活をしていたものの、何か物足りないと感じていた。ある日、新しい目標を思い立つ。オリンピアンになったらどうだろう?オリンピアンになったら人生が大きく変わるのでは?

 厳しいコーチの指導の下、ジェレミアは8人乗りのボート競技でオリンピック出場を目指す。この『The 4 Year Olympian 』は、ジェレミアが初めてオールを漕いだときから、わずか4年足らずでオリンピック出場を果たしメダリストになるまでの道のりをユーモアを交えて紹介する。ジェレミアとチームメートの不屈の努力、苦境に直面し自信喪失したときの乗り越え方などは、読者に勇気と希望を与えてくれる。

著者について
 両親が教師をいう家庭環境で育ったジェレミアは、19歳で父親となる。2008年のオリンピックでカナダの男子エイトのチームが金メダルを獲得したレースを見たことがきっかけで、ボートを始めた。198㎝の長身でボート競技は初めての経験であったジェレミアは、漕ぎ方を習得するまでトレーニングに1700時間をかけたと言われている。

 2012年オリンピックでカナダの男子エイトのチームが銀メダルを獲得し、念願のメダリストとなる。オリンピック出場後は各地で講演も行っている。現在はオンタリオ州ピーターボロ在住。


     Christine Sinclair(2014年)
  著:チェルシー・ドナルドソン

  出版社:Capstone Canada 






作品について
 カナダを代表する女子サッカー選手のクリスティン・シンクレアについて、わかりやすいシンプルな文章とカラフルな写真で紹介している。

 東京オリンピック2020を含め4度のオリンピック出場経験を持つクリスティンは、2012年と2016年のオリンピックで銀メダルを獲得し、今回の東京オリンピックでは念願の金メダルを獲得し、カナダ女子サッカーチームにとっては、初の金メダルとなった。今年38歳となるクリスティンは、スポーツ界で数々の賞を誇るアスリートである。

著者について
 20年以上に渡り主に児童書を手がけるチェルシー・ドナルドソンは、著名なカナダ人のバイオグラフィーを多く出版している。また作家の育成も行うチェルシーだが、彼女のハンドブック『Gage  Canadian Student Writer's Guide』は、1万部を超えるベストセラーとなっている。現在は、夫と3人の子供と共にオンタリオ州ガルフ在住。


【プロフィール】
クリーバー海老原 章子
バベル翻訳大学院法律翻訳修了。結婚後は夫の仕事の関係でマレーシア、トロント、
アラブ首長国連邦に居住。現在は、カナダBC州のナナイモに一家5人暮らし。これまでに担当した書籍翻訳は4冊。
アラブの奥さんは今日も命がけ: 恋愛、結婚、育児、そして……』が出版されました。

 

【記事で紹介された主な作品】


記事一覧

編集部宛投稿メール

編集部宛の投稿は以下のフォームからお送りください。

みなさまの投稿をお待ちしております。

 

【編集部宛メールフォーム】