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第38回 アメリカ書籍レポート - 柴田きえ美

2021/08/07

世界の出版事情 ― 各国のバベル出版リサーチャーより
第38回 

 
アメリカ書籍レポート
書店で注目のノンフィクション書籍をご紹介

柴田きえ美
(バベル翻訳専門職大学院生)


 
 
 今年の祝日は、オリンピックに合わせて移動したとのことで、8月9日が山の日の振替休日となりました。夏休み真っ最中ですので、山へキャンプやハイキングに行くのも楽しそうですが、今年もレジャーには慎重にならざるを得ませんね。
 アメリカで8月9日といえば、ここ最近では「読書家の日」(Book Lovers Day)として知られるようになってきました。さらになんと、その翌日は「怠ける日」(Lazy Day)です。これらの祝日について調べてみますと、“国民の祝日”(National Holiday)とされているようです。しかしながら、公式な休日ではないですし、誰が提唱したのかもわからない、ごく新しい祝日です。できれば、本好きの方々はこの祝日をぜひ大義名分として活用し、8月7日土曜日から10日火曜日まで、ダラダラと本を読んで過ごして……みるのは、実際には難しいでしょうか。
     
 そんな「読書家の日」に先駆け、先日、大型書店で買い物をしていました。すると、自己啓発系書籍の棚に日本語の「生きがい」や「改善」に関する書籍がいくつも並んでいるのが目にとまりました。なるほど、先日読んでいた書籍の中でも日本語の「生きがい」と「改善」という言葉が紹介されていたのですが、外来語として定着しつつあるようです。

そこで今回は、若者向けの「生きがい」に関する本と、ユーモアたっぷりで笑えるノンフィクションをご紹介します。


     Ikigai for Teens(2021)
     著:エクトル・ガルシア
        &フランセスク・ミラージェス
    邦訳なし
    対象年齢:13~18歳



作品について:
日本人は誰もが「生きがい」という言葉を口にする。共著者の二人は、世界一の長寿として知られる沖縄を訪れ、100人余りのお年寄りに、幸せに長生きする秘訣の聞き取り調査を行った。その中でわかった、長寿の秘密。沖縄に暮らす人々の健康的な食習慣はもちろん、最も大事なものは、「生きがい」だった。それが、健全な精神と幸せな人生へのカギとなる。日本人の哲学、「生きる目的」の意味するもの、考え方を考察する。2016年に著者がスペイン語で出版した『外国人が見つけた長寿ニッポン幸せの秘密』(訳:齋藤慎子、エクスナレッジ)では、一般向けに「生きがい」について解説し、世界中で翻訳出版された。本書は、その内容を10代の若者向けに読みやすく再構成したものである。日本の中にいると気づきにくいことを、外国人という第三者視点で観察、考察している。

著者:
エクトル・ガルシア:スペイン出身で日本在住。IT企業に勤めるかたわら、これまでに7冊の本を出版している。著書『外国人が見つけた長寿ニッポン幸せの秘密』(訳:齋藤慎子、エクスナレッジ)は57か国語に翻訳出版されている。スペイン語と英語のブログを持ち、Twitterなど複数のSNSで情報を発信している。

フランセスク・ミラージェス:スペイン出身のジャーナリスト。健康やスピリチュアルに関する自己啓発本を出版している。


 Things My Son Needs to Know about the World
 (2019)
 著:フレドリック・バックマン
 邦題なし




作品について:
著者が父親になったときに体験した様々なこと、感じたこと、思ったことをユーモアたっぷりに語りかけるエッセイ。子育ての“あるある”を父親ならではの愉快な視点で綴っている。ようやく1歳になる息子に、父親として伝えたい、世界に関するあらゆること。まずは、親になると常にオムツに支配されることになる。何をするにもオムツ、オムツ、オムツ。オムツに始まりオムツに終わる毎日だ。それから、君のお気に入りだった音のなるキリンさんは、今とても“良いところ”にいるのさ。午前3時40分にようやく君を寝かしつけたあと、寝不足の父が彼を踏んづけた結果、大きな音で再び大泣きする君。……そんなこともあったかもしれないが、とにかく、今キリンさんは広い牧場で優雅に暮らしているはずだ。
さらに、男の子だからってサッカーを好きにならなくても良い、男らしい・女らしい趣味なんてくくりはないのだから自分の好きなものを楽しみなさい、という現代人らしい著者の考えも垣間見ることができる。あるいは宗教と空港について、ともすれば重くなりがちなトピックも軽妙に書いており、声を上げて笑ってしまう内容ばかりだ。しかし、最後の章では著者が体験した九死に一生を得たエピソードが語られている。救ってくれた妻への感謝と愛とともに、今生きているからこそ、君に会えた、と締めくくられて……いや、やっぱり最後もオムツで終わる。

著者:
スウェーデンのストックホルム在住。New York Times選出のベストセラー作家。スウェーデンでは著名なブロガーとして活躍していたが、2012年に『幸せなひとりぼっち』(訳:坂本あおい、早川書房)で小説家デビューを果たす。同書はその後映画化された。本書は著者唯一のノンフィクションで、彼のユーモアたっぷりな作風が味わえるエッセイ。

 
柴田きえ美
カリフォルニア在住。2017年1月からバベル翻訳大学院生としてリーガル翻訳を勉強中。これまでに4冊の翻訳出版に参加。JTA 公認リーガル翻訳能力検定試験2級を取得し、フリーランスで翻訳をしながら課題にも取り組む。

 

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