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第36回 アメリカ書籍レポート - 柴田きえ美

2021/06/07

世界の出版事情 ― 各国のバベル出版リサーチャーより
第36回 

 
アメリカ書籍レポート
米国大手書店Barnes & Noble本屋大賞の注目書籍をご紹介

柴田きえ美
(バベル翻訳専門職大学院生)


 

 6月になり、日差しが強くなってきました。夏休みはもう目前です。アメリカでは夏休み明けに学年が切り替わるので、宿題はありません。その分、約2か月もの期間をどう過ごすのか、各家庭で様々な計画が立てられます。保護者もお休みを取って、家族旅行に行くご家庭もあるでしょう。私のご近所では夏休みに向けて、トレーラーやRVを見かけるようになりました。友人家族も、ハワイ旅行や山キャンプの計画があると聞いています。昨年は移動制限があった分、今年はみんな積極的に旅行をするようで、徐々に活気が戻ってきています。
 夏休みの定番は、各所で行われるサマー・キャンプです。保護者が仕事などに行く間、つまり通常の学校がある時間帯に、子供たちはサマー・キャンプに参加します。「キャンプ」といっても、アウトドアで過ごすレジャーではなく、日本でいうと「夏休みの体験教室」といった感じでしょうか。例えば絵画教室では、毎日異なるテーマで図画工作をするアート・キャンプをします。また、動物園では、動物に触れたり、世話をしたり、学びながら体験学習します。サッカーチームや空手道場などもサマー・キャンプを行うところもあり、短期間の体験レッスンを受けられるのです。そういったサマー・キャンプは、たいてい1週間単位で申し込むことができ、子供たちは充実した夏休みを過ごすことができます。
 公立図書館が提供する無料イベントも、夏休みの定番のひとつです。マジックショーや小動物ふれあい会、シャボン玉ショーなどがあります。持ち帰って作る工作セットも用意されており、一昨年は積極的に利用しました。また、読書時間を記録して、目標時間達成で本がもらえる「サマー・リーディング」プログラムが用意されています。「サマー・リーディング(夏読書)」とは、子供も大人も、長いお休み期間中にたくさん本を読みましょう、という読書啓蒙活動です。書店はもちろん、デパートなどでも広く「サマー・リーディング」商戦が展開されています。
 この「サマー・リーディング」に先立って、今年初めて、米国大手書店のBarnes & Nobleが児童書籍の本屋大賞を発表しています。絵本部門、児童書部門、YA書籍部門の3つに分かれ、それぞれ魅力的な本が選ばれました。そこで今回は受賞作品やノミネート作品の中から、ぜひ「サマー・リーディング」リストに加えたいタイトルをご紹介します。


 
 
 Mel Fell(2021)
 
著:コーレイ・R・テイバー
 邦訳なし
 対象年齢:4~8歳



作品について:
カワセミのメルは、巣立ちの準備をしています。ちょっと怖いけど、飛ぶ練習をしなくちゃ。ハラハラしながら周りで見守る動物たちは、メルを助けようとします。でも大丈夫、失敗を恐れずに何度も練習すれば、きっとうまく飛べるようになるはず。この本は、お話の流れに沿って、縦に持ちかえて読むと、よりいっそうお話に入り込むことができるでしょう。

著者:
シアトル在住の絵本作家・イラストレーター。未就学児~低学年向けに、やんちゃなキツネを主人公にした児童書シリーズを出版している。なかでも、『Fox the Tiger』では、すぐれた児童書に贈られる児童文学賞、セオドア・スース・ガイゼル賞(ドクター・スース賞)を受賞している。



 Amari and the Night Brothers (2021)
 著:B・B・アルストン
 邦題なし
 対象年齢:8~12歳




作品について:
主人公アマリ・ピーターズの兄クイントンが、行方不明になってしまいました。警察もいじめっ子も、クイントンは死んでしまったのだと言いいます。しかし、大好きな兄が死んだとはどうしても思えなかったアマリは、兄のクローゼットで不思議なブリーフケースを見つけます。そこには、「超自然事象捜査局」への入局試験実施通知が入っていました。クイントンは、超自然現象秘密捜査官だったのです。兄を見つけるには、魔法や妖精を心から信じて、試験に合格しなくてはなりません。生まれた時から魔法に触れてきたライバルたちや、魔法の世界を脅かす悪の魔導士と戦い、やがて目覚めるアマリの才能。その強すぎる魔力ゆえに、アマリは捜査局から危険視されてしまいます。数々の困難を乗り越え、アマリは兄を見つけることができるのでしょうか。

著者:
レキシントンに暮らしている。本作品がデビュー作。



 Firekeeper's Daughter (2021)
 著:アンジェリン・ボーリー
 邦題なし 
 対象年齢:14~18歳



作品について:
オジブワ族出身の18歳の少女ダーニスは、大学入学を機に心機一転、新生活を楽しもうとしていた。しかしその矢先に、家族に不幸がおき、病弱な母の世話をするために休学しなくてはならなかった。そんな中でも、兄が属するホッケーチームのチームメイト、ジェイミーと会うのを楽しみにしていた。しかし、彼には何やら秘密があるようだった。あるとき、ダーニスは殺人を目撃してしまう。FBIから潜入捜査協力要請を受けたダーニスは、事件の発端となった新種ドラッグの出所を探ることとなる。ホッケーチームとのかかわりは? そして、オジブワ族に代々伝わる秘薬とは? スリルとサスペンスに満ちた一冊です。

著者:
本作品でデビューしたアンジェリン・ボーリーは、チペワインディアン・スーセントマリー部族に在籍し、ミシガン州アッパー半島のオジブワ・コミュニティについて執筆している。以前は、米国教育省のインディアン教育局の所長を務めていた。

 
柴田きえ美
カリフォルニア在住。2017年1月からバベル翻訳大学院生としてリーガル翻訳を勉強中。これまでに4冊の翻訳出版に参加。JTA 公認リーガル翻訳能力検定試験2級を取得し、フリーランスで翻訳をしながら課題にも取り組む。

 

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