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第35回 カナダ書籍レポート ー クリーバー海老原 章子

2021/04/22

世界の出版事情 ― 各国のバベル出版リサーチャーより
第35回
 

 
カナダ書籍レポート
ノンフィクション

 

クリーバー海老原 章子
(翻訳者、バベル翻訳専門職大学院修了)

 

 カナダは、イースターも終わり、桜の花が咲き始めました。日本のお花見のような習慣はありませんが、美しい桜の木が並ぶコースを散歩する人たちの姿を見かけます。4月とは言っても、カナダはまだ肌寒く、あっと言う間に桜のシーズンは終わってしまいますので、その前に鮮やかな景色を楽しみたいと思います。
 さて話は変わりますが、最近、友人に「是非読んでみて」と一冊の本を紹介してもらいました。『Infidel』というタイトルの本です。これは、ソマリア出身の著者 Ayaan Hirsi Ali氏のバイオグラフィーで、ノンフィクションのジャンルに入ります。私には、たまたまイスラム教の国に居住していた経験があるため、「興味があるのでは? 」と貸してくれたわけなのですが、確かにグイグイ引き込まれる感じで面白かったです。ノンフィクションと言えば、歴史や事件を取り扱ったものから、感動の実話、社会問題にビジネス関係まで多岐に渡りますが、いずれも「実際にあったこと」がベースになっているのが魅力のひとつかもしれません。
 今回は、この『Infdel』を含むノンフィクションのベストセラー書籍をご紹介したいと思います。


  Infidel(2008年)
  著者:アヤーン・ヒルシ・アリ
  邦題:もう、服従しない
                 ―イスラムに背いて、私は人生を自分の手に取り戻した
       翻訳:矢羽野薫 
       出版社 : エクスナレッジ (2008/9/30)



作品について
 ソマリアに生まれ厳格なイスラム教徒の家庭で育ち、のちにオランダに移住し下院議員を務めた著者アヤーン・ヒルシ・アリの伝記。2004年に映画『サブミッション』の監督が殺害され、同作の脚本を手掛けた彼女も監督と同様に命を奪われる危険にさらされているというストーリーから始まる。幼少期の話から、父親が決めた結婚を拒み難民としてオランダに渡り、そこで政治学の学位を取得し、イスラム教の女性の権利を主張する下院議員となるまで、実話に基づくストーリー。また、Audible版も出版されており、著者本人がナレーションを担当しているのも興味深い一冊。

 著者について
 ソマリアのモガディシュに生まれ、イスラム教の一家で育ったアヤーン・ヒルシ・アリは、幼少時代をアフリカとサウジアラビアで過ごす。1992年に難民としてオランダに渡り、2003年、オランダの下院議員に当選。2005年にはタイム誌の「世界で最も影響力のある100人」に選ばれる。他に著書として
Heretic: Why Islam Needs a Reformation Now』『Nomad』など多数出版している。



   Seven Fallen Feathers:
 Racism, Death, and Hard Truths in a Northern City
 
(2017年)
   著者:ターニャ・タラガ
   邦題:なし






作品について
 2000年から2011年までの11年の間に、オンタリオ州サンバーベイの高校に通うカナダ先住民(First Nations)の高校生7人が謎の死をとげた。ある調査ジャーナリストが、亡くなった学生の家族やコミュニティーから話を聞き、警察や検視の報告書を調査しながら、失踪や死亡した状況をそれぞれ探っていく。この7人に何が起こったのかだけではなく、先住民に対するカナダ社会についても疑問を投げかける。カナダのバイオグラフィー部門のベストセラー。

著者について
 調査ジャーナリストとして広く知られるターニャ・タラガは、ポーランドと先住民の家系に生まれる。彼女の祖父母の祖母は、カナダ先住民族の「レジデンシャル・スクール(寄宿学校)」のサバイバー。RBCテイラー賞、ショーネシーコーエンの政治執筆賞を含む数々の受賞歴を誇るターニャは、現在、オンタリオ州トロント在住。

 
【プロフィール】
クリーバー海老原 章子
バベル翻訳大学院法律翻訳修了。結婚後は夫の仕事の関係でマレーシア、トロント、
アラブ首長国連邦に居住。現在は、カナダBC州のナナイモに一家5人暮らし。これまでに担当した書籍翻訳は4冊。
アラブの奥さんは今日も命がけ: 恋愛、結婚、育児、そして……』が出版されました。

 


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