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第32回 アメリカ書籍レポート - 柴田きえ美
2021/02/08
世界の出版事情 ― 各国のバベル出版リサーチャーより
第32回
日本では寒さが厳しくなる時期かと思いますが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。日本のニュースをみていると、感染者数の増加、病床使用率の急上昇と、緊迫した状況が伺えます。私の住む地域では、空病床数一桁台が続いており、当面の間自宅待機命令が解除される気配はありません。子供達も引き続きオンライン学習です。昨年3月の閉鎖以降、10ヵ月が経ち、手探りで試行錯誤しながら徐々に学習環境が整ってきました。
昨年は様々なイベントが延期や中止となりましたが、中でも東京オリンピックは4年に一度の世界規模のイベントです。今回、新たな競技として追加されたスポーツクライミングに、ニューヨーク生まれの白石阿島選手が出場予定でした。6歳からクライミングを始め、世界記録を樹立してきた白石選手。彼女は昨年春に児童書籍を出版しており、各出版関連情報誌で注目を集めていました。今回は彼女の作品をはじめとして、昨年下半期にベストセラーとなった作品をご紹介したいと思います。

How to Solve a Problem(2020)
邦訳なし
著:白石阿島
絵:ヤオ・シャオ
対象年齢:4~8歳
作品について:
ロッククライミングの世界では、立ちはだかる岩壁のことを「問題」と呼ぶ。頂上まで登って、「問題」を解くのだ。一筋縄ではいかない難問に立ち向かうとき、失敗して落ちることもあるし、けがをすることもある。でも大丈夫、失敗から学ぶこともたくさんあるのだ。諦めずに別のやり方を試すうちに、絶対に登れない障壁に見えたものも、気が付けば自分の足元に、頭上には高く伸びる空がある。人生に置ける「問題」も同じだ。子供にも伝わりやすいシンプルな文面に、ヤオ・シャオによる美しいイラストが映える。困難を乗り越える勇気を与えてくれる作品。
著者:
白石阿島:日本人の両親を持つ日系アメリカ人、ロッククライマー。ニューヨークで生まれ育ち、6歳からボルダリングに興味を持つ。舞踏家である父の指導を受けながらクライミングを続け、14歳のとき、2番目に難易度が高いとされるV15レベルを女性初、世界最年少記録で完登した。東京オリンピックへの出場が注目されている。
ヤオ・シャオ:中国出身、ニューヨーク在住のイラストレーター、漫画家。タイム誌やニューズウィーク、ウォールストリートジャーナルなどでイラストを掲載している。2020年に初めてグラフィック・ノベル “Everything Is Beautiful, And I’m Not Afraid” を出版した。

If You Come to Earth (2020)
著:ソフィー・ブラッコール
邦題:『地球のことをおしえてあげる』
訳: 横山 和江
出版社: 鈴木出版(2021)
対象年齢:5~8歳
作品について:
宇宙から地球に遊びにくるキミへ。ぼくが地球のことを教えてあげるよ。地球には様々な生き物がいて、色々なところに住んでいる。みんな個性があって、誰もが大切な地球の仲間なんだ。著者はユニセフとセーブ・ザ・チルドレンの活動を支援するために世界中を旅してきた。ルワンダ、インド、ブータンなどなど様々な国で暮らす子供達、それとブルックリンにある学校の2年生の子供達。そんな子供達に出合って、みんなが暮らす美しい地球を題材にしたのがこの絵本だ。タイム誌やニューヨークタイムズでも昨年のベスト絵本上位に選出されている。
著者:
オーストリア出身の絵本作家で、ニューヨーク在住。挿絵の他に新聞や雑誌のイラストや、アニメ調CMのデザインも手掛けている。2016年に『プーさんとであった日』、2019年に『おーい、こちら灯台』(両作品ともに訳:山口文生、評論社)で2回コールデコット賞を受賞した。

Dear Girl, (2017)
著:エイミー・クラウス・ローゼンタール、
パリス・ローゼンタール
絵:ホリー・ハタム
邦題:『ディアガール : おんなのこたちへ』
訳:高橋久美子
出版社:主婦の友社(2019)
対象年齢:4~8歳
作品について:
賢くて、元気で、可愛らしいあなたへ。ピンクできらきらした気持ちのときもあれば、泥んこになりたいときもある。泣きたいときもあるよね。いつでも自分らしくいて良いんだよ。たくさんの優しいメッセージで、女の子の自己肯定感を育む一冊。米国で20万部以上販売され、世界9カ国で翻訳された、ニューヨークタイムズのベストセラー選出作品。母エイミーと娘パリスの共作。パリスは他に『Dear Baby,』と父との共作『Dear Boy,』もシリーズで出版している。
著者:
エイミー・クラウス・ローゼンタール:作家であり映像作家。2017年に癌で亡くなった。絵本『スプーンくん』(訳:いしづちひろ、BL出版 2010年)、『おかあさんはね』(訳:高橋久美子、マイクロマガジン社 2017年)は米国内でベストセラーとなり、日本でも翻訳出版された。パリスを含め3人の子供がいる。
パリス・ローゼンタール:エイミーの娘。シカゴ出身でカナダのクエスト大学を卒業後、現在はニューヨーク在住。
ホリー・ハタム:カナダのオンタリオ州在住の絵本画家、グラフィックデザイナー。デフォルメされた可愛らしいイラストが特徴。
柴田きえ美
カリフォルニア在住。2017年1月からバベル翻訳大学院生としてリーガル翻訳を勉強中。これまでに4冊の翻訳出版に参加。JTA 公認リーガル翻訳能力検定試験2級を取得し、フリーランスで翻訳をしながら課題にも取り組む。
【記事で紹介された主な作品】
第32回
アメリカ書籍レポート
2020年下半期注目ベストセラーをご紹介
2020年下半期注目ベストセラーをご紹介
日本では寒さが厳しくなる時期かと思いますが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。日本のニュースをみていると、感染者数の増加、病床使用率の急上昇と、緊迫した状況が伺えます。私の住む地域では、空病床数一桁台が続いており、当面の間自宅待機命令が解除される気配はありません。子供達も引き続きオンライン学習です。昨年3月の閉鎖以降、10ヵ月が経ち、手探りで試行錯誤しながら徐々に学習環境が整ってきました。
昨年は様々なイベントが延期や中止となりましたが、中でも東京オリンピックは4年に一度の世界規模のイベントです。今回、新たな競技として追加されたスポーツクライミングに、ニューヨーク生まれの白石阿島選手が出場予定でした。6歳からクライミングを始め、世界記録を樹立してきた白石選手。彼女は昨年春に児童書籍を出版しており、各出版関連情報誌で注目を集めていました。今回は彼女の作品をはじめとして、昨年下半期にベストセラーとなった作品をご紹介したいと思います。
邦訳なし
著:白石阿島
絵:ヤオ・シャオ
対象年齢:4~8歳
作品について:
ロッククライミングの世界では、立ちはだかる岩壁のことを「問題」と呼ぶ。頂上まで登って、「問題」を解くのだ。一筋縄ではいかない難問に立ち向かうとき、失敗して落ちることもあるし、けがをすることもある。でも大丈夫、失敗から学ぶこともたくさんあるのだ。諦めずに別のやり方を試すうちに、絶対に登れない障壁に見えたものも、気が付けば自分の足元に、頭上には高く伸びる空がある。人生に置ける「問題」も同じだ。子供にも伝わりやすいシンプルな文面に、ヤオ・シャオによる美しいイラストが映える。困難を乗り越える勇気を与えてくれる作品。
著者:
白石阿島:日本人の両親を持つ日系アメリカ人、ロッククライマー。ニューヨークで生まれ育ち、6歳からボルダリングに興味を持つ。舞踏家である父の指導を受けながらクライミングを続け、14歳のとき、2番目に難易度が高いとされるV15レベルを女性初、世界最年少記録で完登した。東京オリンピックへの出場が注目されている。
ヤオ・シャオ:中国出身、ニューヨーク在住のイラストレーター、漫画家。タイム誌やニューズウィーク、ウォールストリートジャーナルなどでイラストを掲載している。2020年に初めてグラフィック・ノベル “Everything Is Beautiful, And I’m Not Afraid” を出版した。
著:ソフィー・ブラッコール
邦題:『地球のことをおしえてあげる』
訳: 横山 和江
出版社: 鈴木出版(2021)
対象年齢:5~8歳
作品について:
宇宙から地球に遊びにくるキミへ。ぼくが地球のことを教えてあげるよ。地球には様々な生き物がいて、色々なところに住んでいる。みんな個性があって、誰もが大切な地球の仲間なんだ。著者はユニセフとセーブ・ザ・チルドレンの活動を支援するために世界中を旅してきた。ルワンダ、インド、ブータンなどなど様々な国で暮らす子供達、それとブルックリンにある学校の2年生の子供達。そんな子供達に出合って、みんなが暮らす美しい地球を題材にしたのがこの絵本だ。タイム誌やニューヨークタイムズでも昨年のベスト絵本上位に選出されている。
著者:
オーストリア出身の絵本作家で、ニューヨーク在住。挿絵の他に新聞や雑誌のイラストや、アニメ調CMのデザインも手掛けている。2016年に『プーさんとであった日』、2019年に『おーい、こちら灯台』(両作品ともに訳:山口文生、評論社)で2回コールデコット賞を受賞した。
著:エイミー・クラウス・ローゼンタール、
パリス・ローゼンタール
絵:ホリー・ハタム
邦題:『ディアガール : おんなのこたちへ』
訳:高橋久美子
出版社:主婦の友社(2019)
対象年齢:4~8歳
作品について:
賢くて、元気で、可愛らしいあなたへ。ピンクできらきらした気持ちのときもあれば、泥んこになりたいときもある。泣きたいときもあるよね。いつでも自分らしくいて良いんだよ。たくさんの優しいメッセージで、女の子の自己肯定感を育む一冊。米国で20万部以上販売され、世界9カ国で翻訳された、ニューヨークタイムズのベストセラー選出作品。母エイミーと娘パリスの共作。パリスは他に『Dear Baby,』と父との共作『Dear Boy,』もシリーズで出版している。
著者:
エイミー・クラウス・ローゼンタール:作家であり映像作家。2017年に癌で亡くなった。絵本『スプーンくん』(訳:いしづちひろ、BL出版 2010年)、『おかあさんはね』(訳:高橋久美子、マイクロマガジン社 2017年)は米国内でベストセラーとなり、日本でも翻訳出版された。パリスを含め3人の子供がいる。
パリス・ローゼンタール:エイミーの娘。シカゴ出身でカナダのクエスト大学を卒業後、現在はニューヨーク在住。
ホリー・ハタム:カナダのオンタリオ州在住の絵本画家、グラフィックデザイナー。デフォルメされた可愛らしいイラストが特徴。
カリフォルニア在住。2017年1月からバベル翻訳大学院生としてリーガル翻訳を勉強中。これまでに4冊の翻訳出版に参加。JTA 公認リーガル翻訳能力検定試験2級を取得し、フリーランスで翻訳をしながら課題にも取り組む。
【記事で紹介された主な作品】
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