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第27回 アメリカ書籍レポート - 柴田きえ美

2020/10/07

世界の出版事情 ― 各国のバベル出版リサーチャーより
第27回 

 
アメリカ書籍レポート
秋の到来、季節を感じるハロウィン関連書籍

柴田きえ美
(バベル翻訳専門職大学院生)


 

 いよいよ10月に入り、秋らしい気候になってきたのではないでしょうか。こちらでは毎年この時期になると、臨時のパンプキン販売所や仮装グッズの販売店が町のそこかしこに設置されます。都市近郊の農場ではトウモロコシ畑で迷路を作ったり、空いた土地にお化け屋敷を設置したりして、秋限定のアトラクションが楽しめます。そうした秋の風物詩を見掛けると「ああ、秋が来たのだな」と感じるのです。

 しかしながら今年は、COVID-19や山火事の影響で、外に出る機会がほぼなく、季節の変化を感じにくいです。学校のハロウィン行事はなくなり、おそらくハロウィンの日にご近所を歩いて「トリック・オア・トリーティング」することもないでしょう。それでも、デパートなどにはハロウィングッズが並び始めています。例年の秋とは異なる状況ではありますが、工夫を凝らして自宅で楽しめるハロウィンのアイディアを求め、いくつか書籍を見繕ってみました。子供と読めるハロウィンの本や、自宅ハロウィン・パーティーの参考になる本など、興味深い本をご紹介いたします。

  Big Pumpkin(1995)
 著:エリカ・シルバーマン
 絵:S.D.シンドラー 
 邦訳:『おおきなかぼちゃ』
 訳:おびかゆうこ
 出版社:主婦の友社(2011)


作品について:
著者が子供の頃に読んだロシア民話「おおきなかぶ」を下地にしたハロウィン用の絵本。大好物のパンプキンパイを作るために 、魔女がかぼちゃを育てた。ところが、かぼちゃが大きくなりすぎて、一人ではとても収穫できない。おばけや吸血鬼、ミイラといったハロウィンの定番モンスターたちが手伝おうとするが、それでもなかなか動かない。最後にやって来た小さなコウモリの知恵で、物語はハッピーエンドへ。

著者:
エリカ・シルバーマンは、幼いころから読書好きで、夢であった絵本作家となったあと大学院へ進み、図書館司書となった。本書を始め、小学校低学年向けの『Cowgirl Kate and Cocoa』シリーズや『Lana’s World』シリーズなど、多数出版している。ロサンゼルス在住。

S.D.シンドラーは、フィラデルフィア在住の人気イラストレーター。これまでに100冊以上の絵本イラストを手掛けている。エリカ・シルバーマンとは本書の他にも『うごいちゃだめ!』(訳:せなあいこ、アスラン書房 1996)でも共著している。

  The Girl Who Drank the Moon (2016)
  著:ケリー・バーンヒル
  邦訳:『月の光を飲んだ少女』
  訳:佐藤見果夢
  出版社:評論社 (2019)

 




作品について:
2017年にニューベリー賞を受賞した児童文学作品。ある町では毎年、森に住む魔女への捧げものとして赤子を差し出していた。だが本当は、森に住む魔女ザンは、沼の魔物や小さなドラゴンと暮らす心の優しい魔女だった。ザンは赤子に星の光を与え、森の反対側の町で子供を欲している家族に引き渡していた。ところがある時、手違いで赤子に月の光を与えてしまった。この子には魔法の力が備わってしまう、ならば自分で育てなくては。そう決意し、ルナと名付けたその子供は、13歳の誕生日が近づくにつれて不思議な力が現れるようになった。一方その頃、町では勇敢な若者が、魔女を倒そうと立ち上がるのだった。小学校高学年向けの作品。

著者:
ケリー・バーンヒルは、子供向けのファンタジーやSFを得意とする児童文学作家。かつてはバーテンダーやパークレンジャー、学校の先生を経験し、第二子出産の頃から短編小説を書き始めた。2016年に『The Unlicensed Magician』が長編ファンタジー部門で世界幻想文学大賞を受賞し、翌年に本作品がニューベリー賞を受賞した。

   Trick or Treat: A History of Halloween (2013)
 
  著:リサ・モートン
  邦訳:『ハロウィーンの文化誌』
  訳:大久保 庸子
  出版社:原書房 (2014)



作品について:
現在では世界中で知られているハロウィンの歴史や文化背景を広く解説した、大人向けのノンフィクション。ケルトのお祭りサウィン祭とカトリックの死者の日が融合して今日のハロウィンへと形を変え、アメリカの新文化の一つとなった。しかし、メキシコの死者の日などのように別個の休日も存在しているが、何らかの関連があるのだろうか。書籍や映画、テレビドラマといったポップカルチャーにも取り入れられているハロウィン。商業化の影響によりどのようにして現在のような祝日となったのだろうか。

著者:
リサ・モートンはシナリオ作家としても活躍するロサンゼルス在住の作家。また、ハロウィン研究の第一人者として世界的にも知られている。これまでに小説を4作品、150本のショート・ストーリー、ノンフィクションでは『Ghosts: A Haunted History』、『A Hallowe'en Anthology』、『The Halloween Encyclopedia』といったハロウィン関連書籍を出版し、米ホラー作家協会が主催するブラム・ストーカー賞を複数回受賞している。

     A Halloween How-To (2001)
    著:レズリー・バナタイン
     邦訳なし:『ハロウィンのハウツー: コスチューム、
  パーティー、装飾、行っておきたいところ(仮)』

 作品について:
 ハロウィンを楽しむためのハウツー本。ハロウィン専門家による豊富なアイディアが多岐にわたって掲載されている。料理のレシピ、コスチューム、家の装飾、パーティーなど、インスピレーションが盛りだくさん。ありきたりなハロウィンではなく、毎年工夫できる個性豊かなアイディアを提案する。

著者:
著者はアメリカを代表するハロウィン専門家。これまでに5冊のハロウィン関連書籍を出版し、ヒストリー・チャンネルやCNNのハロウィン特集を含む複数のテレビ番組にも出演している。ラジオにも数多く出演し、ハロウィンの歴史や文化について解説している。マサチューセッツ州在住。


柴田きえ美
カリフォルニア在住。2017年1月からバベル翻訳大学院生としてリーガル翻訳を勉強中。これまでに4冊の翻訳出版に参加。JTA 公認リーガル翻訳能力検定試験2級を取得し、フリーランスで翻訳をしながら課題にも取り組む。

 

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