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第25回 アメリカ書籍レポート - 柴田きえ美

2020/08/07

世界の出版事情 ― 各国のバベル出版リサーチャーより
第25回 

 
アメリカ書籍レポート
本の世界へようこそ、小学校低学年向けシリーズ書籍

柴田きえ美
(バベル翻訳専門職大学院生)


 

暑くなりましたが、皆様はどのような夏をお過ごしでしょうか。例年と異なり、夏休みが短縮されたり、在宅勤務が継続している方も多いのではないでしょうか。アメリカでは、旅行やレジャーに制限があり、外に出る機会がめっきり少なくなりました。

さて、我が家では毎年夏になると、図書館が行う夏の読書キャンペーンに参加しています。読書時間やページ数を記録して、目標達成すると無料本が贈呈され、さらにiPadなど豪華景品の抽選に参加できるのです。夏休みは宿題もなく、子供達には涼しい室内で本を読んで欲しいところですが、今年は必然的に子供達の読書量が増えそうです。

そこで今回は、子供達に人気のシリーズ書籍をご紹介します。これらは絵本から本への移行期におすすめしたい、低学年向けのチャプターブックです。チャプターブックとは、ヤングアダルトや大人向けの本のように章に分かれていて、文字が大きめで挿絵が多く入っている本です。読書を楽しむ入り口として、是非手に取ってみてはいかがでしょうか。

Miss Daisy is Crazy!(2004)
     シリーズ名(原題):My Weird School (Vol.1)
     著:ダン・ガットマン
     邦訳:『ヘンダ先生、算数できないの?』
    シリーズ名(邦訳):
    きょうもトンデモ小学校シリーズ(1巻)
    訳:宮坂宏美
    出版社:ポプラ社(2007年)


作品について:
My Weird School』シリーズは、スピンオフも含めると70作以上も出版され、現在も続いている。本書はその第1巻。主人公のA.J.は、学校が大嫌い。一方、幼馴染のアンドレアはA.J.とは正反対で学校大好き、習い事もたくさんしている優等生。そんな二人が通うのは、先生も生徒も個性の強い風変わりな小学校。なにしろ2年生になったA.J.の担任のデイジー先生ときたら、「私も学校嫌いなの」やら「算数なんて、まるで分らないわ」やら「実は私読み書きできないの」というものだから、生徒たちが先生に教えてあげなくちゃならない。デイジー先生は一体どうやって先生になったのだろう。こんな秘密が校長先生に知られたら、クビになっちゃうよ。ひょっとしたら、デイジー先生は偽物かもしれない


著者:
ダン・ガットマンはアメリカの児童文学作家。大の野球好きで、児童文学作家としてデビューする以前には雑誌のコラム記事や大人向けに野球を題材にした作品(『It Ain’t Cheatin’ If You Don’t Get Caught』)を出版していた。児童文学に転向後も当初はノンフィクションを手掛けていたが、1994年からユーモアに富んだフィクションを書き始め、現在に至る。著者のウェブサイトには「頑張らないでも楽しめる。読んだ後にまるで映画を見たかのように感じる作品を子供達に届けたい」とコメントしている。

Stick Dog(2013)
     シリーズ名(原題):Stick Dog(Vol.1)
     著:トム・ワトソン
     邦訳なし:『スティック・ドッグ(仮)』

 作品について:
 小学生の「ぼく」が描く、棒人間ならぬ棒イヌの物語。読む前に、二つの事を了承してほしい。一つは、「ぼく」はあまり絵が得意ではないこと。もう一つは「ぼく」の作文は、国語の先生にはため息つかれてしまうものだということ。それでも良ければ、線で描かれた主「犬」公とゆかいな4匹の仲間たちの奮闘記をお楽しみあれ。5匹の犬たちは、ハンバーガーのおいしそうな匂いにつられ、ピカソパークにやって来た。個性の強い犬たちが繰り出すトンチンカンな作戦をじっくり吟味し、上手にまとめ上げる頭脳派のスティックドッグ。強敵(だと思われる)、人間4人をけむに巻いて、ハンバーガーを食べることはできるのだろうか
。本の造りにも工夫がされていて、まるでノートに子供が手書きしたようなデザインになっている。

著者:
トム・ワトソンはシカゴ在住の児童文学作家。本書のスティックドッグをデザインした。大学卒業後は政治の世界に入り、アメリカ上院議員の手伝いをしていた。他にもマーケティングや広告の仕事を経験している。一方で、スピーチなどの大人向けに何かを書くよりも、子供向け作品を書くことに情熱を傾けており、実は子供の方が大人よりも賢いのだ、という持論を持っている。妻、娘、息子、それからシャドウという名前の犬と暮らしている。『Stick Dog』シリーズは未発売も含めて11作品、スピンオフ作品の『Stick Cat』シリーズ(2016~)は5作発売されている。


  Amelia Bedelia & Friends:Beat the Clock (2019)
 シリーズ名(原題):Amelia Bedelia & Friends (#1)
 著:ハーマン・パリッシュ
 絵:リニー・アヴリル
 邦訳なし:
 『アメリア・ベデリアと仲間たち、時計をやっつけろ(仮)』

 作品について:
 元々、アメリア・ベデリアというキャラクターは、米作家ペギー・パリッシュが1963年に出版した児童書『Amelia Bedelia(アメリア・ベデリア)』から生まれた。オリジナル作品では、アメリア・ベデリアはお屋敷で働くメイドさんだった。アメリアは、英語の慣用句や同音異義語を文字通りに受取ってしまい、物語が思わぬ方向に、面白おかしく進んでしまう。ペギー・パリッシュは同シリーズを12作品出版したが、1988年に亡くなった。その後、甥のハーマン・パリッシュがアメリア・ベデリアというキャラクターを受け継ぎ、子供のアメリアを主人公にした絵本を複数出版している。そして、2019年からは、絵本よりももっと長く楽しめる、低学年向けのチャプターブックの出版を開始した。来年3月に5巻の発売が決まっている。第1巻である本書のタイトル「Beat the Clock」は、「時間内に仕事を終える」という意味のイディオムだが、文字通りに受け取ると「時計をたたく」となってしまう。アメリアの通う小学校がもうすぐ100周年を迎え、その為の準備をするアメリアとクラスメイト達。果たしてどんな愉快なパーティーとなるのだろうか。

著者:
ハーマン・パリッシュはニュージャージーに住むアメリカの児童文学作家。毎年夏休みになると、叔母のペギー・パリッシュがハーマン・パリッシュの家族を訪れていた。ハーマンは、叔母の執筆活動を間近で眺め、アメリア・ベデリアの物語を大いに堪能した。そして、ペギーの死後、彼女の生み出したアメリアを受け継ぐことを決意。叔母と同じ編集者とイラストレーターに協力を仰ぎ、アメリアを蘇らせた。2014年に脳卒中で倒れたが、医師たちの尽力により執筆活動に復帰することができた。

 
柴田きえ美
カリフォルニア在住。2017年1月からバベル翻訳大学院生としてリーガル翻訳を勉強中。これまでに4冊の翻訳出版に参加。JTA 公認リーガル翻訳能力検定試験2級を取得し、フリーランスで翻訳をしながら課題にも取り組む。

 

【記事で紹介された主な作品】


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