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第22回 カナダ書籍レポート ー クリーバー海老原 章子

2020/04/22

世界の出版事情 ― 各国のバベル出版リサーチャーより
第22回
 

 
カナダ書籍レポート
義足の英雄 Terry Fox

クリーバー海老原 章子
(翻訳者、バベル翻訳専門職大学院修了)

 

 カナダの英雄のひとり、Terry Foxはご存じですか?日本ではあまり馴染みがないかもしれませんが、カナダでは「The Marathon of Hope(希望のマラソン)」、義足の英雄として誰もが知る人物です。今回は、このTerryについてご紹介したいと思います。

 1958年にカナダのウィニペグに生まれ、ブリティッシュコロンビア州のポートコキットラムで育ったTerryは、幼少時代からスポーツ万能で、大学時代はバスケットボール部で活躍していました。1977年、骨肉腫と宣告され、右足の膝から下を切断しなければならないという悲劇に見舞われます。当時、彼はまだ18歳でした。入院中、彼は自分よりも若い、幼い子供たちがガンと戦う姿を目にし、何かしなければと考えます。1980年、「The Marathon of Hope(希望のマラソン)」と名付けたガン研究資金を集めるカナダ横断マラソンをスタートしました。義足をつけたTerryは、1日に42キロの距離を走り続けました。フルマラソンの距離です。スタートしてから143日目、5373km地点。肺へのガン転移が見つかり、夢半ばにして断念。23歳の誕生日を迎える1ヵ月前にTerryは天国へと旅立ちました。彼が亡くなった翌年からガン研究資金のためのチャリティーマラソン「Terry Fox Run」が世界中でスタートし、現在でも彼の意思は引き継がれています。

 わたしがアラブ首長国連邦に居住していたとき、7年間に渡りボランティアとして「Terry Fox Run」(UAE)に携わってきました。マラソンコース設置から当日参加者に配られる水やスナックなどの手配まで、すべてボランティアまたは善意によるドネーションでまかなわれ、集まった寄付金はTerry Fox Foundationへと送られます。貯めたお小遣いをプラスチックバッグに入れて持ってきてくれる子供たちや、高額の小切手を切ってくださる方、実際の装備を身に着け参加してくださる消防隊の方々(涼しい時期とはいえ気温は25度を超えます)など、さまざまな出会いがあり、我が家にとっては毎年待ち遠しいイベントのひとつでした。遠いイスラムの国にこの募金活動が広がるなど、Terryは想像もしていなかったかもしれませんね。

 今年で40年目を迎える「Terry Fox Run」。Terry Fox Foundation は今もTerry の実の兄弟妹が支えています。日本では北海道で「Terry Fox Run」が開催されているようです。これからも世界各地でTerryの名の下、活動が広がっていくことでしょう。Terry Foxに関する書籍は多数出版されていますが、今回は大人も子供も楽しめるものを一冊ご紹介します。

     Terry Fox: A Story of Hope (2010年)
     著:マキシーン・トロティエ
     邦訳なし:
    『テリー・フォックス:希望のストーリー(仮)』








作品について
Terry Fox Foundationとテリーの家族の協力を得て出来上がったTerry Foxのバイオグラフィー。ラグビー、バスケットボールなどスポーツを楽しみ、勉強もよくできたテリー。やり始めたら最後までやり遂げる精神をいかに培ったのか。ガン宣告、右足の切断、カナダ横断マラソンを思い立ったきっかけ、トレーニングの様子など、義足の英雄テリーの人生とレガシーに触れる。大人だけでなく、子供たちをもインスパイアする一冊。心に残る画像も多数含まれている。

著者について
作家であり教育者でもあるマキシーン・トロティエ。ヤング・リーダー向けに歴史に残る人々のバイオグラフィー、絵本や小説を手がけている。彼女の代表作には絵本『Claire's Gift』『The Paint Box』や『Prairie Willow』などがある。米国ミシガン州生まれのマキシーンは、カナダと米国の二重国籍をもつ 。

 


【プロフィール】
クリーバー海老原 章子
バベル翻訳大学院法律翻訳修了。結婚後は夫の仕事の関係でマレーシア、トロント、アラブ首長国連邦に居住。現在は、カナダBC州のナナイモに一家5人暮らし。これまでに担当した書籍翻訳は3冊。フリーランスとして翻訳のお仕事をしています。


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