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第21回 ハワイ絵本レポート[7] ー マリ・ピンダー

2020/04/07

世界の出版事情 ― 各国のバベル出版リサーチャーより
第21回
 

 
ハワイ絵本レポート[7]
ハワイで感じる日本の文化

マリ・ピンダー
(バベル翻訳専門職大学院在学中)

 
アジア人の数が白人を上回るハワイでは、アジア圏の文化が生活に深く浸透しています。オアフ島ホノルルはハワイ州最大の都市ですが、アメリカの他の大都市に比べると規模は小さく田舎です。チャイナタウンこそあるものの、リトルトーキョーやコリアンタウンはありません。しかしアジア圏の文化、特に日本文化については人々の生活に馴染んでいるものが多いと感じます。そんな日本の文化について書かれ、ハワイで出版されている絵本の紹介をします。日本の国外で、こんなにも日本の文化が愛されている場所が他にあるでしょうか。日本人としてとても嬉しく思います。

Okinawan Princess Da Legend of Hajichi Tattoos
「沖縄のお姫様のハジチの伝説」(2019)

作:リー・A・殿内
絵:ローラ・喜納
日本語・沖縄語訳:崎原正志


あらすじ
テレビに映るスーパーモデルに憧れる主人公の女の子に、おばあちゃんが語りかけます。「おっきいおばあちゃんのハジチ覚えてる?」おっきいおばあちゃんがハワイに来た頃、周りには誰もハジチをしている人がいなかったので、おっきいおばあちゃんはとても恥ずかしい思いをしていました。おばあちゃんは女の子に、ハジチにまつわる昔話を教えてくれます。


作品および作者について
あとがきより抜粋「ハジチの文様は沖縄の女性にとって自分のシマを示してくれるものであり、あの世では、ご先祖様に自分が誰であるかを示すパスポートのような役割も果たしました。(中略)『沖縄のお姫様のハジチの伝説』は、このような大切な沖縄の文化や歴史を語り継ぎながら、若い世代に沖縄の文化に誇りを持ってもらいたいという思いで製作しました」
この作品の特徴は、なんと言ってもピジン英語(ハワイクレオール語)・日本語・沖縄語の3言語で書かれていることです。ハワイや沖縄にルーツを持つ作者の、アイデンティティーに対する強い思いが込められています。日本では販売されていませんが、多くの人に興味を持ってもらえる絵本ではないでしょうか。

リー・A・殿内は、ハワイ生まれハワイ育ちの沖縄系4世です。ハワイピジン英語(ハワイクレオール語)を一言語として法的に認めることを提唱した『Da Pidgin Guerrilla』という著書で知られています。ローラ・喜納はシカゴ在住のハパ(白人とアジア人のミックス)・沖縄系4世・ウチナーンチュのアーティストかつ教育者です。この作品では、イラストだけでなく、ハジチやウチナーグチについてのあとがきも書いています。

Girl’s Day in Hawaii with Yuki-chan (2007)
作:トキエ・イケダ・チン
絵:セツ・アライ

 


あらすじ
日本生まれのゆきちゃんは、ハワイの家族に養子として引き取られました。お兄さんのグラントと一緒に庭で遊んでいると、お父さんが長い板を持ってきて何かを作り始めました。お母さんが、雛祭りについて説明をしながら雛人形を飾っていきます。人形の美しさと、その数の多さに驚いたゆきちゃん。ゆきちゃんは雛祭りの日に友だちを招待することにしました。浴衣を着て集まった皆は、雛祭りの伝統を楽しみます。


作品および作者について
ハワイでは”Girl’s Day”と言って、桃の節句は多くの人に認識されています。日系スーパーでは雛人形が販売され、ひなあられや桜餅も買うことができます。この作品は雛祭りについて、細かくその伝統について説明しています。私自身初めて知ることがいくつもあって、とても勉強になりました。日本から養子として引き取られたゆきちゃんが初めて雛祭りをお祝いする、というなかなか珍しい設定も興味深い点です。

トキエ・イケダ・チンはハワイ島ヒロ生まれの日系3世です。ゆきちゃんが日本から養子であるという設定は、トキエ自身が日本から養女を迎えている経験を生かしたものです。セツ・アライは大阪で生まれ育ち、1963年にハワイに移住しました。銀行員として働き、退職後にアートクラスを取り始めました。

Boy’s Day in Hawaii with Yuki-chan and Grant (2008)
作:トキエ・イケダ・チン
絵:セツ・アライ

 


あらすじ
ある日、ゆきちゃんとグラントのお父さんが長い竹の棒を持って帰ってきました。「釣りに行くの?」と聞くゆきちゃんに、お父さんがこいのぼりについて教えてくれます。そして家に入ると、武者人形を取り出して飾り、それぞれの人形にまつわる逸話を話してくれました。ゆきちゃんもグラントも興味津々です。5月5日の朝、2人は菖蒲湯に入りました。その後、グラントの従兄弟や親戚が続々と集まってきました。新聞紙でかぶとを作ったり綱引きをしたり、集まった男の子たちは皆とても楽しい時間を過ごしました。


作品について
上で紹介した絵本の姉妹作品です。端午の節句も、ハワイでは一つの恒例行事として祝われていて、こいのぼりを飾る家も多く見られます。端午の節句が元々は中国のドラゴンボート祭りが始まる日だったと解説されていますが、様々な国の文化が入り混じるハワイだからこその作品だと思います。菖蒲を家のひさしにくくりつけるなど、”Girl’s Day”の作品と同様知らないことが多く勉強になります。

Celebrating Holidays in Hawaii (2009)
作:レスリー・アン・ハヤシ
絵:キャスリーン・ウォン・ビショップ

 


作品について
日本、中国、ベトナムのお正月から始まり、ポルトガルのマラサダ・デイ、ハワイのプリンス・クヒオ・デイなど、様々な国の祝日について見開きで解説されています。各祝日にまつわる食べ物や工作の作り方も載っているので、読むだけでなく実際に楽しむことのできる絵本です。


作者について
レスリーとキャシーは小学校1年生からの友だちで、9歳の時に一緒に4Hクラブ(日本で言う青少年クラブ)に入りました。この作品の他にも4つの絵本を一緒に出版しています。レスリーはアーティストとして作品を手がけるのはもちろん、裁判官としての顔も持っています。



【プロフィール】
マリ・ピンダー
バベル翻訳専門職大学院在学中。ホノルル在住8年目で1児の母。ハワイで制作されているバイリンガル雑誌Trimの翻訳をしています。日本にいた頃は、幼児向け英語教材の編集をしていました。

 
【記事で紹介された作品(容易に入手可能な作品)】

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