第20回 ハワイ絵本レポート[6] ー マリ・ピンダー
2020/03/23
世界の出版事情 ― 各国のバベル出版リサーチャーより
第20回
【プロフィール】
マリ・ピンダー
バベル翻訳専門職大学院在学中。ホノルル在住8年目で1児の母。ハワイで制作されているバイリンガル雑誌Trimの翻訳をしています。日本にいた頃は、幼児向け英語教材の編集をしていました。
【記事で紹介された作品(容易に入手可能な作品)】
第20回
ハワイ絵本レポート[6]
番外編
番外編
第1回目のハワイ絵本レポートでhttp://e-trans.d2.r-cms.jp/topics_detail134/id=3670
サーフィンにまつわる絵本を取りあげました。
私は今その絵本の翻訳本出版企画を進めています。今回、再びこの絵本を紹介する機会を頂きましたので、改めてその魅力をお伝えできればと思います。
サーフィンは、大昔(諸説ありますが、絵本の中では3000から4000年前となっています)にカヌーに乗ってハワイにやってきたポリネシア人(ハワイ人の祖先となる人々)が持ち込んだと言われています。ハワイ発祥のサーフィンは今では世界中に広がり、もはやサーフィンの起源がどこにあるかを意識する人は少ないでしょう。カリフォルニアだと思う人もいれば、サーフィン人口の多いオーストラリアだと思う人もいます。それだけ世界各地で文化として人々の生活に定着しているサーフィンが、東京オリンピックで初めて競技種目として採用されました。日本では、サーフィンが実際にどんなスポーツなのかを見たことのない人が多いと思います。そして、元は王族のスポーツであり、禁止された時代もあったことをどれだけの人が知っているでしょうか。そのユニークな成り立ちはもちろん、同じ波は二度とこない、そんな自然を相手にしたとても奥の深いサーフィンのことを、オリンピックをきっかけにたくさんの人に知って欲しいと思っています。そして、この絵本がサーフィンへの理解を深める役に立てたらと願っています。
A Story of Surfing (2006)
作・絵:カーラ・ゴレンビ[Carla Golembe ]

あらすじ
海に関することならなんでも好きな女の子、ケアナ。叔父さんにサーフィンを教えて欲しいと頼みますが、大きくなったらね、と断られてしまいます。8歳になったある日、ついに叔父さんが教えてくれると約束してくれました。その前日、ケアナは夢の中で波にさらわれてしまいます。
波に運ばれて到着したところは、野生の木が生い茂り、街灯も家も見当たらない場所。そこでケアナは、王族の子どもに出会い、サーフィンに対する心構えを教えてもらいました。
再び波にさらわれると、次は20世紀前半のワイキキビーチにたどり着きました。デュークと名乗るサーファーの一人が、ケアナに古代ハワイから今までの間にサーフィンにどんなことが起きたのかを教えてくれました。
次にケアナが到着したのは、1957年のオアフ島ノースショアにあるワイメアビーチ。カリフォルニアから来たサーファーたちが、ワイメアは世界で一番大きな波が立つこと、ケアナはまず穏やかな場所でサーフィンを覚えるといいことを教えてくれました。
また波にさらわれたケアナが次に出会ったのは、3人の女性サーファーでした。レラ・サンは、ケアナにサーフィンが男性だけのものではないことを覚えておいてね、とアドバイスします。
夢から目覚めたケアナ。ついにサーフィンを教えてもらう日がやってきました。なかなか立ち上がれないケアナでしたが、諦めずに何度も挑戦して、ついにボードの上に立つことができました。
作品および作者について
「古代」「近代」「現代」とサーフィン史のターニングポイントになった時代を切り取り、説明しています。主人公を夢の中でタイムスリップさせることで、説明的になりすぎずにわかりやすい紹介となっています。近代サーフィンの父と呼ばれるデューク・カハナモクなど、サーフィンの歴史を語る上で外せない人物ももちろん登場。サーフィン用語やハワイ語が頻繁に使われていますが、巻頭の用語集が丁寧に説明してくれているので、サーフィンやハワイに馴染みのない人にも優しい作りになっています。
フロリダ在住のカーラ・ゴレンビは画家でありイラストレーターであり、絵本作家でもあります。2004年7月に出版された、本書の姉妹書でもある”The Story of Hula”は、同年Publishers Marketing Association(現Independent Book Publishers Association)によるベンジャミン・フランクリン賞を受賞し、現在第5版が販売されています。カーラはアーティスト・イン・レジデンス・プログラムでジョージア、ハワイ、ドミニカ共和国に住み、現在はフロリダのデルレイビーチにあるカルチャーセンターと美術館のアートスクールで絵画を教えています。アメリカ国内の数々のギャラリーで作品が展示されている他、本書を含む絵本も創作。そのうち”Zippy and Zoe”シリーズは台湾で出版されています。
サーフィンにまつわる絵本を取りあげました。
私は今その絵本の翻訳本出版企画を進めています。今回、再びこの絵本を紹介する機会を頂きましたので、改めてその魅力をお伝えできればと思います。
サーフィンは、大昔(諸説ありますが、絵本の中では3000から4000年前となっています)にカヌーに乗ってハワイにやってきたポリネシア人(ハワイ人の祖先となる人々)が持ち込んだと言われています。ハワイ発祥のサーフィンは今では世界中に広がり、もはやサーフィンの起源がどこにあるかを意識する人は少ないでしょう。カリフォルニアだと思う人もいれば、サーフィン人口の多いオーストラリアだと思う人もいます。それだけ世界各地で文化として人々の生活に定着しているサーフィンが、東京オリンピックで初めて競技種目として採用されました。日本では、サーフィンが実際にどんなスポーツなのかを見たことのない人が多いと思います。そして、元は王族のスポーツであり、禁止された時代もあったことをどれだけの人が知っているでしょうか。そのユニークな成り立ちはもちろん、同じ波は二度とこない、そんな自然を相手にしたとても奥の深いサーフィンのことを、オリンピックをきっかけにたくさんの人に知って欲しいと思っています。そして、この絵本がサーフィンへの理解を深める役に立てたらと願っています。
A Story of Surfing (2006)
作・絵:カーラ・ゴレンビ[Carla Golembe ]

あらすじ
海に関することならなんでも好きな女の子、ケアナ。叔父さんにサーフィンを教えて欲しいと頼みますが、大きくなったらね、と断られてしまいます。8歳になったある日、ついに叔父さんが教えてくれると約束してくれました。その前日、ケアナは夢の中で波にさらわれてしまいます。
波に運ばれて到着したところは、野生の木が生い茂り、街灯も家も見当たらない場所。そこでケアナは、王族の子どもに出会い、サーフィンに対する心構えを教えてもらいました。
再び波にさらわれると、次は20世紀前半のワイキキビーチにたどり着きました。デュークと名乗るサーファーの一人が、ケアナに古代ハワイから今までの間にサーフィンにどんなことが起きたのかを教えてくれました。
次にケアナが到着したのは、1957年のオアフ島ノースショアにあるワイメアビーチ。カリフォルニアから来たサーファーたちが、ワイメアは世界で一番大きな波が立つこと、ケアナはまず穏やかな場所でサーフィンを覚えるといいことを教えてくれました。
また波にさらわれたケアナが次に出会ったのは、3人の女性サーファーでした。レラ・サンは、ケアナにサーフィンが男性だけのものではないことを覚えておいてね、とアドバイスします。
夢から目覚めたケアナ。ついにサーフィンを教えてもらう日がやってきました。なかなか立ち上がれないケアナでしたが、諦めずに何度も挑戦して、ついにボードの上に立つことができました。
作品および作者について
「古代」「近代」「現代」とサーフィン史のターニングポイントになった時代を切り取り、説明しています。主人公を夢の中でタイムスリップさせることで、説明的になりすぎずにわかりやすい紹介となっています。近代サーフィンの父と呼ばれるデューク・カハナモクなど、サーフィンの歴史を語る上で外せない人物ももちろん登場。サーフィン用語やハワイ語が頻繁に使われていますが、巻頭の用語集が丁寧に説明してくれているので、サーフィンやハワイに馴染みのない人にも優しい作りになっています。
フロリダ在住のカーラ・ゴレンビは画家でありイラストレーターであり、絵本作家でもあります。2004年7月に出版された、本書の姉妹書でもある”The Story of Hula”は、同年Publishers Marketing Association(現Independent Book Publishers Association)によるベンジャミン・フランクリン賞を受賞し、現在第5版が販売されています。カーラはアーティスト・イン・レジデンス・プログラムでジョージア、ハワイ、ドミニカ共和国に住み、現在はフロリダのデルレイビーチにあるカルチャーセンターと美術館のアートスクールで絵画を教えています。アメリカ国内の数々のギャラリーで作品が展示されている他、本書を含む絵本も創作。そのうち”Zippy and Zoe”シリーズは台湾で出版されています。
【プロフィール】
マリ・ピンダー
バベル翻訳専門職大学院在学中。ホノルル在住8年目で1児の母。ハワイで制作されているバイリンガル雑誌Trimの翻訳をしています。日本にいた頃は、幼児向け英語教材の編集をしていました。
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