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カナダ絵本レポート[3]

2020/02/22

世界の出版事情 ― 各国のバベル出版リサーチャーより
第19回
 

 
カナダ絵本レポート[3]
カナダのファミリーデー

クリーバー海老原 章子
(翻訳者、バベル翻訳専門職大学院修了)

 
 カナダには2月の第3月曜日にFamily Dayという法定休日があるのをご存じですか?カナダは10つの州と3つのテリトリーで構成されていますが、そのうちの5つの州にこのファミリーデーがあります。カナダ全土ではなく、州によって休日があるところ、ないところがあるのは、不思議な感じがしますよね。アルバータ州で初めてファミリーデーに関する議決が可決されたのは1990年ですが、これに続いてオンタリオ州、ニューブランズウィック州、サスカチュワン州とブリティッシュコロンビア州でもファミリーデーが設けられるようになりました。

 ファミリーデーは、いわゆる家族と過ごす日、家族との時間を楽しむ日。今年のファミリーデーは2月17日でした。スキー場のリフト券が無料になったり、アイススケートや劇場の入場券が割引になったり、各地でさまざまなイベントが開催されました。現在では家族の形も多様化しています。母子家庭や父子家庭、兄弟姉妹がたくさんいる家族、祖父母のいる家族、お母さんが二人いる家族、お父さんが二人いる家族などなど、どんな形であれ、家族は特別なものですよね。今回は「ファミリー」にちなんだ書籍をご紹介します。

    The Family Book(2010)
     作・トッド・パール

     邦訳:『いろいろかぞく』
     訳:ほむら ひろし


作品について
 兄弟姉妹がたくさんいる家族・一人っ子家族、肌の色が同じ家族・違う家族、くっついて暮らす家族・離れて暮らす家族、パパママどちらかひとりの家族、パパふたり・ママふたりの家族。。。いろいろな形の家族があるけれど「自分の家族は最高だよ」という温かいメッセージに溢れる一冊。

 カラフルで1ページの文字数も少ないシンプルな絵本。同じスレーズが繰り返されるテンポあるストーリーラインは、読み聞かせにもぴったりだと思います。

著者について
 米国人絵本作家として著名なトッド・パール。カラフルでわかりやすいトッドの作品は、この『The Family Book』の他にも『ピース・ブック』『それでもへっちゃら』など、邦訳として多数出版されています。さまざまな作品の中でグローバルな視点でのメッセージが多いのは、作家になる前は客室乗務員だったというトッドならではのものかもしれません。


   Town Is By the Sea(2018)
    作・ジョアン・シュウォーツ 
   イラスト:シドニー・スミス  

   邦訳:『うみべのまちで
   訳: いわじょう よしひと 


作品について
 舞台は1950年代頃のカナダの海底炭鉱の町、ケープ・プレトン島。祖父から父へ、父から息子へ引き継がれていく時間を少年の目線で描いた絵本。

 少年のうちからは美しい海が見えます。その海底ではお父さんが働いています。煤で作業着や顔を真っ黒にした父が無事に帰ってくることを待つ少年。母親は夕食を作ります。家族3人で食べる食事とおしゃべりは、かけがえのない大切な時間。美しい風景と家族の幸せなひととき、そして厳しい生活を巧みに表現したこの絵本は、読み終えた後、ちょっぴりほろ苦くもやさしい気持ちにさせてくれるでしょう。 シドニーの柔和なイラストも魅力です。

著者について
 カナダのノヴァ・スコシア州ケープ・ブレトン島出身のジョアン・シュウォーツ。彼女の処女作『Our Corner Grocery Store』はカナダの児童書に贈られるマリリン・ベイリー賞の候補となりました。執筆活動の他に25年以上に渡りトロント図書館で図書館員としても活躍しています。トロント在住。



            The Liszts(2018)
            
作・キョウ・マクレア
   イラスト・ジュリア・サルダ

    邦訳無し『リスト家の一族(仮)』




作品について
 リスト家は、パパ、ママ、おじいちゃん、3人のこどもと猫が一緒に暮らす一家です。ちょっと変わったマンションに住んでいます。一家の名前は「リスト」ですが、全員がなにかのリストを延々と作ります。猫にもリストがあります。ママは歴代の名サッカー選手のリスト、パパは昆虫のリスト。。。日曜日以外の毎日、リストを書き続けます。ある日、見知らぬ人がリスト家のドアを叩きました。ところがこの来客は誰のリストにもない。さあどうする?

 エドワード・ゴーリーの世界を彷彿するようなちょっとエキセントリックな絵本。ジュリアが描くイラストは、家族がそれぞれが作るリストのひとつひとつの細かなところまでついつい見入ってしまうような、とても美しく繊細なのが特徴です。キョウ・マクレアは、スプーンとフォークが合体した『スポーク』という作品でも有名ですが、彼女ならではのクリエイティビティ―が光るストーリーです。不思議感溢れるこの『The Liszts』は大人も子供も何度でも読み返して楽しめる一冊です。

著者について
 英国人の父と日本人の母をもち、4歳でカナダに移住したキョウ・マクレア。現在はトロント在住。この作品の他にも多数、『きょうは、おおかみ』『スポーク』『ショッキングピンク・ショック!』などユニークな作品を手がけています。

 

【プロフィール】
クリーバー海老原 章子
バベル翻訳大学院法律翻訳修了。結婚後は夫の仕事の関係でマレーシア、トロント、アラブ首長国連邦に居住。現在は、カナダBC州のナナイモに一家5人暮らし。これまでに担当した書籍翻訳は3冊。フリーランスとして翻訳のお仕事をしています。

 
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