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第18回 ハワイ絵本レポート[5] ー マリ・ピンダー

2020/02/07

世界の出版事情 ― 各国のバベル出版リサーチャーより
第18回
 

 
ハワイ絵本レポート[5]
環境保護を啓蒙する絵本、他

マリ・ピンダー
(バベル翻訳専門職大学院在学中)

 
 海に囲まれたハワイでは、海洋生物がプラスチックを飲み込んで死亡するケースが後を絶たず深刻な状況です。ハワイ州は2018年7月1日から、小売店で商品を買った際に使われる袋(プラスチック製だけでなく紙製も含む)が有料化されました。そして今年の1月1日からはさらに、再生利用できるプラスチックの袋であっても配布や販売が禁止されました。また、2022年までに、使い捨てのプラスチック製品(スプーンやフォーク、持ち帰り用の容器など)を禁止する法案が可決されています。アメリカ他州や他の国でも同様の動きは広がっていますが、今回はハワイで出版されている啓蒙絵本を2冊紹介します。

それ以外の3冊は、ハワイらしさの詰まったかわいらしい絵本です。

Surf Gecko to the Rescue! (1991)
作:ブルース・ヘイル

 
あらすじ
サーフィンが大好きなヤモリのモキは、毎日ムクドリのルディと一緒に秘密のビーチでサーフィンをします。サーフィン後はカメじいの話を聞くのがお決まり。カメじいの話はいつだって面白いのですが、じいは2人に「人間には注意するように」とも言いました。ある日、モキとルディがビーチを訪れるとそこはゴミだらけになっていました。カメじいに何があったのか聞きに行くと、カメじいはプラスチックのゴミが首とヒレに絡まって、苦しんでいました。人間にゴミを捨てないようにしてもらうにはどうすればいいか話し合った結果、モキとルディはサーフィンのコンテストに出場することになりました。

作品および作者について
動物たちが海を守るために声を上げる、というこの絵本が出版されたのは1991年。約30年経って、ようやく法律が追いついてきました。日々、環境保護のために自分に何ができるかを考えさせられます。

LA生まれのブルースは、東京に住んでいる頃に作家としての活動を開始しました。ハワイに移住した後も創作活動を続け、”Clark the Shark”や”The Monstertown Mysteries”は賞を取っています。
ヤモリのMokiが出てくるシリーズは全5冊。ハワイで愛されている作品です。

The Adventure of Gary & Harry (2000)
作:リサ・マツモト
絵:マイケル・フルヤ

 
あらすじ
アオウミガメのギャリーとタイマイのハリーは海での生活が大好き。ある日とてもお腹が空いた2人は、お昼ご飯を食べることにしました。けれど、海藻が好きなギャリーとクラゲが好きなハリー。食べ物の好みが全く違うので、何を食べるかを決めるのがいつも大変です。突然現れたクラゲの大群に、ハリーは大興奮で食いつきました。ところがハリーが食べたのはプラスチックの袋。たくさんのウミガメが、プラスチックの袋で喉を詰まらせて死んでいることをハリーは知っていたのに、まさか自分がそんな目に遭うとは思ってもいませんでした。危機一髪のところでギャリーに助けられたハリーは、「人間はちゃんとゴミを持ち帰ってくれないと」と大怒り。

作品および作者について
先に紹介した”Surf Gecko to the Rescue!”と同じく、環境保護を啓蒙する絵本です。海の中でプラスチックが生き物にどのような影響を与えるか、子どもたちにとても分かりやすく描かれています。

絵本作家、脚本家のリサ・マツモトと、イラストレーターのマイケル・フルヤは従兄弟同士です。小さい頃から文章を書くのが好きだったリサと、絵を描くのが好きだったマイケルは、大きくなったら一緒に絵本を作ろうと夢を語り合い、その夢を実現させました。”The Christmas Gift of Aloha”や”How the B-52 cockroach Learned to Fly”など、とてもハワイらしい作品を共に手がけています。 

Hide and Seek in Hawaii(2019)
作:ジェーン&イアン・ギレスピー
写真:レイ・ウォン
邦訳:『さがして絵本 ハワイでみっけ!』 二見書房(2005年)



作品および作者について
1999年に初版が発売され、昨年20周年記念版が出版されたさがし絵絵本です。どのページもハワイらしさで溢れていて、眺めているだけでハワイにいる気分が味わえます。さがし絵のレベルはそれほど高くないので、未就学児のお子さまでも十分楽しめます。ただ、「ゴキブリを探して」というハワイらしいお題もありますので、ゴキブリが好きでない人は要注意。

3冊の”hide and seek in Hawaii”シリーズの他にも、ジェーンはハワイの海の中を題材にして色や形が学べる絵本を手がけています。

Whose Slippers Are Those? (2005)
作:マリリン・カハレヴァイ
絵:ギャビン・コバヤシ
 

作品および作者について
「スリッパ」と聞くと室内履きのスリッパを思い浮かべるかもしれませんが、ハワイではビーチサンダルのことをスリッパと呼びます。この作品では、赤いスリッパ、青いスリッパ、新しいスリッパ、古いスリッパ、などたくさんの形容詞が出てきます。

マリリンはこの絵本の他にも、自身でイラストも描いた”Maui Mouse’s Supper”を出版しています。イラストレーターのギャビンは、ハワイの他の作家と共に”There’s a Monster in My Opu”を出版しています。

No Slippers! (2005)
作:メアリー・ブラフェット
絵:ホリー・マッキントッシュ


あらすじ
ローズはしょっちゅうスリッパを失くしてしまいます。学校に行って友だちと遊ぶたびに脱いでは、スリッパのことを忘れてしまうのです。探してみましたが、見つかったのは左右バラバラのスリッパ。お母さんはついに怒ります。「今週2足も新しいのを買ったばかりでしょう。失くしたのを見つけるまで、そのバラバラのを履いていなさい」ローズは学校の教室を一つ一つまわって、スリッパを探し歩きました。そして、これまでに失くしたと思っていたスリッパを全部見つけたのでした。

作品および作者について
ハワイでは、芝生の上でスリッパを脱ぎ捨てて遊ぶ子どもたちをよく見かけます。大人でさえ、特にサーファーは裸足を好む人が少数ですが存在します。そしてスリッパがなくなるのも日常茶飯事。誰もが経験したことがあるであろうなくし物をテーマにしたこの作品は、子どもたちが感情移入して楽しめること間違いなし。

メアリーはオアフ島北東部にある小学校の先生です。この作品は、司書になるために勉強しているメアリーの最初の絵本です。イラストを描いたホリーはメアリーの娘で、同じく司書になるための勉強をしています。

 

【プロフィール】
マリ・ピンダー
バベル翻訳専門職大学院在学中。ホノルル在住8年目で1児の母。ハワイで制作されているバイリンガル雑誌Trimの翻訳をしています。日本にいた頃は、幼児向け英語教材の編集をしていました。

 
【記事で紹介された作品(容易に入手可能な作品)】

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