大きくする 標準 小さくする

アメリカ発、男性作家によるロマンス小説レポート 

2020/02/07

世界の出版事情 ― 各国のバベル出版リサーチャーより
第18回 

 
アメリカ発、男性作家によるロマンス小説レポート

柴田きえ美
(バベル翻訳専門職大学院生)

 
 2月に入り、もうすぐバレンタインですね。日本のバレンタインは女性から男性へ、チョコレートなどの甘いものを贈るのが主流なのではないでしょうか。一方、アメリカでは基本的には男性から女性へ、バラの花やぬいぐるみなどを贈ります。また、子供達の間では「フレンドシップ・デー」と呼ぶこともあり、男女関係なくクラスメイト同士でお菓子やシールのような小物と一緒にバレンタインカードを交換します。

 今回はバレンタインにちなんで、ロマンス小説を、中でも特に男性作家による作品を4つご紹介します。男性ならではの視点で色彩豊かに描かれる主人公たちの心理描写をお楽しみください。

  Memoirs of a Geisha(1997)
  著:アーサー・ゴールデン
  邦訳:『さゆり』
  出版社:文藝春秋(2004)
  訳:小川高義

 


作品について:
2005年に映画化もされ、世界的ベストセラーとなった作品。貧しい漁村で生まれ育ったさゆりは、9歳で身売りされ京都の祇園で舞妓として修業を積むこととなる。歌や芸事の厳しい稽古や、先輩芸妓たちからのいじめに耐えつつ、舞妓「さゆり」の名は徐々に多くの客に知られるようになり、人気を集めて行く。そして、15歳で史上最高額で水揚げされ、一流芸者の地位に上り詰めたさゆり。しかし一方、さゆりの心には秘めた淡い恋心があった…。第二次世界大戦直前の日本を舞台に、さゆりの波乱万丈な半生を艶やかに描いた小説です。

著者:
テネシー州出身のアーサー・ゴールデンは、ハーバード大学にて日本美術史を専攻。その後コロンビア大学で日本史の修士号取得。東京で仕事をしていたが、作家を目指すためアメリカに帰国し、ボストン大学で再び英語で修士号を取得した。実際に芸妓をしていた日本人女性にインタビューし、10年かけて完成させた本作品で作家デビューを果たす。


   The Princess Bride(1973)
  著:ウィリアム・ゴールドマン
  邦訳:『プリンセス・ブライド』
  出版社:早川書房(1986)
  訳:佐藤高子




作品について:
著者であるウィリアム・ゴールドマンが幼い頃、S・モーゲンスターンによる歴史小説『プリンセス・ブライド』を父親が何度も読んでくれた。大のお気に入りだったこの本を、大人になったゴールドマンも息子に贈ろうとして気がつく。実は、父は子供向けに良いところだけを回摘んで読みきかせてくれていたのだ。そこで改めて面白いところだけを抽出し、コメントを添え編集して本書を書き上げた…という流れのメタフィクション小説。お約束のように悪者に拐われるヒロインと謎の黒騎士が登場する。もちろん、黒騎士の正体は悲劇的な別れをした運命の恋人であった。という、王道少女漫画のようなピュアで美しい恋物語にハラハラするような冒険譚を織り交ぜ、劇作家らしく読者を魅了するユーモアも備えた名作。1987年に映画化されました。

著者:
2018年に87歳で亡くなった、イリノイ州出身のドイツ系ユダヤ人。劇作家、脚本家、かつ小説家。コロンビア大学で修士号取得。アカデミー賞を2回、エドガー賞も2回受賞している。自身が小説として出版した作品を後に脚本し劇や映画へと昇華させた。80年代には、ブロードウェイやハリウッドで活躍した自分の半生を綴った自伝シリーズを書いている。 

 
    Scarred - An American Warrior's Tale(2014)
 著:マックス・カミングス
 邦訳なし:『スカード -アメリカ人戦士の物語(仮)』
 
 



作品について:
アマゾン・ベストセラーで一位を獲得したこの作品は、戦争で傷ついた二人の兵士の物語。アフガニスタンで傷を負ったチャッドとジョシ―が、心身ともに辛いリハビリを通じて心を通わせる。ジョシ―は、中西部の農家で生まれ育ち、決して諦めない逞しい女性だ。アーミー・レンジャーとして初めて直接戦うことを許された彼女は、他の男性兵士にも一目置かれる存在となる。しかし、負傷兵となり手当を受けている今は、一兵士にしか過ぎない。同じく負傷したチャッドと激しくぶつかり合いながらも交流を深めていく。鍛え抜かれた兵士たちが心身ともに傷つき、回復への道を共に歩む際の様々な心模様を描く。

著者:
テキサス州出身。元アメリカ海軍特殊部隊隊員でイラクやアフガニスタンにも参加している。カミングスのほとんどの作品で実際の出来事や人物がモデルとなっている。自身の経験に基づく生々しい兵士たちの心理描写が伺える。現在はフロリダに住んでおり、執筆の傍らに魚釣りやハンティングといったアウトドア趣味を楽しんでいる。

  
    Every Breath(2018)
 著:ニコラス・スパークス
 邦訳なし:『エブリー・ブレス(仮)』

 



作品について:
ホープ・アンダーソンは36歳。6年間連れ添った恋人との未来が暗礁に乗り上げていた。そのうえ父親がALSと診断された。そんなある週末、友人の結婚式に参列するため、ノースカロライナのサンセットビーチを訪れることになる。もう一人の主人公、トゥルー・ウォールズは、生まれも育ちもジンバブエで、現地でサファリ案内人をしている。ある日彼のもとに、父親を名乗るアメリカ人から手紙が届く。母親が亡くなった今、自分の家族の秘密を知るために、単身でノースカロライナのサンセットビーチに降り立つ。そんな二人が出会ったとき、切なくて甘い恋物語が始まる。

著者:
ニコラス・スパークスは、アメリカが誇る世界中的に人気の高い恋愛小説家。全作品がニューヨークタイムズ・ベストセラー本に名を連ね、アメリカ国内だけでも7500万冊売り上げています。彼の作品は日本語を含む50ヵ国語以上に翻訳され、全世界で1億500万冊以上販売されました。代表作は『君に読む物語(原題:The Notebook)』で、28歳の時に半年余りで書き上げました。映画化もされ、日本でも大ヒットとなりました。
 
柴田きえ美
カリフォルニア在住。2017年1月からバベル翻訳大学院生としてリーガル翻訳を勉強中。これまでに4冊の翻訳出版に参加。JTA 公認リーガル翻訳能力検定試験2級を取得し、フリーランスで翻訳をしながら課題にも取り組む。

 
【記事で紹介された作品(容易に入手可能な作品)】

記事一覧