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第17回 自費出版に関するレポート(カナダ編) - クリーバー海老原章子

2019/12/23

世界の出版事情 ― 各国のバベル出版リサーチャーより
第17回 

自費出版に関するレポート(カナダ編)


       
               
クリーバー海老原 章子(翻訳者、バベル翻訳専門職大学院修了)

 

 
 

 自分で考えたストーリーを形にしたい、絵本や小説にしたい、そんなふうに考えたことはありませんか?このほどカナダの友人がSelf-Publishing、いわゆる自費出版という形態で絵本を出版することになりました。「自費出版」と聞くと、自分でお金を出すんだから誰でも出版できるのでは? そんな印象もありますが、そんなに簡単ではなさそうです。例えば、ストーリーはあるけれど、絵本にするならイラストはどうしたらいいのか? イラストレータはどうやって探すのか? 自分のアイデアを第三者に盗作されないように保護するにはどうしたらいいのか? 著作権は? 

  彼女に話を聞くと、どうやらマニュアルがあるそうなのですが、まずは信頼できる出版社を探すことが一番難しかったそうです。マニュアル通りに行ったとしても、次につながる成果が出せるかどうかは、自分のアイデアと出版社の力量にかかっているのかもしれません。

 無事に出版までこぎつけたら、さらにマーケティングや書店でのサイン会などの手はずは自分で調整することになります。最近の彼女は随分忙しそうでした。なんとかクリスマスまでに出版が間に合ったようで、年末までに書店でのサイン会をいくつか取り付けたようです。「やると決めたら行動あるのみ」そんなバイタリティーあふれる彼女、ミッシェル・ディオンの処女作も含め、今回はわたしが現在居住する小さな町、ナナイモで活躍する絵本作家をご紹介します。

 一生に一冊、自分の絵本を出版してみたい、そんな目標ができるかもしれませんね。



 Alex’s Adventure:On the Westcoast of Canada
(2019)

 作・イラスト・写真:ミッシェル・ディオン
 邦訳無し『アレックスの冒険(仮)』









作品について
カナダ、ブリティッシュコロンビア州のバンクーバー島を舞台に、主人公のアレックスが鷲とフクロウをお供に、カナダのウェストコーストを紹介する全
10シリーズの第1巻。美しい写真とシンプルなイラストを融合させたユニークな絵本。

著者について
ジュエリーデザイナーであり写真家でもあり、そしてギターも奏でるという多彩な顔を持つミッシェル。本書に使われている写真はもちろん、イラストも自分で手掛けています。バンクーバー島の美しさに魅せられ、長年かけて構想を描いたストーリーをついに絵本にしました。この後同じ出版社からシリーズ
9編の出版がすでに決まっているそうです。



 Tommy Tutu(2018)
  作・イラスト:リンジー・フォード
  邦題無し『チュチュをはいたトミー(仮)』

 




作品について
ある日、ママの心配もよそに、学校にチュチュをはいて出かけていったトミー。冷やかされたり、いじめられたりも困ったけれど、もっと困ったのはトイレ。女子?男子?どっちのトイレに入ればいい?
実際にあった出来事をベースにした絵本。トミーが直面するさまざまな問題、例えば、ママの心配、いじめ、学校の規則などに触れ、自分らしく生きる重要性を語ります。「ちょっと変わっててもいいんじゃない?」カナダらしいスタンスが印象的です。子供だけでなく大人もインスパイアされる一冊。

著者について
バンクーバー島ナナイモをベースに活躍するリンジー。この『
Tommy Tutu』は自費出版されましたが、その後Awkward + Awesome という絵本シリーズを考案し、Mental Healthをテーマにした絵本を出版しています。「ちょっと他の人と違っていてユニークであることは素晴らしいことである」というメッセージを配信し続けています。今後の活躍も楽しみです。



 


【プロフィール】
クリーバー海老原 章子
バベル翻訳大学院法律翻訳修了。結婚後は夫の仕事の関係でマレーシア、トロント、アラブ首長国連邦に居住。現在は、カナダBC州のナナイモに一家5人暮らし。これまでに担当した書籍翻訳は3冊。フリーランスとして翻訳のお仕事をしています。



 

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