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第16回 アメリカ発、多様な年末行事に関する書籍レポート - 柴田きえ美

2019/12/07

世界の出版事情 ― 各国のバベル出版リサーチャーより
第16回 

アメリカ発、多様な年末行事に関する書籍レポート


       
                 
柴田きえ美(バベル翻訳専門職大学院生)

 

 
 
 本格的に気温が下がり、いよいよ歳の瀬が近づいて参りました。
10月のハロウィンから始まり、11月末の感謝祭へ、駆け足でホリデーシーズンがやって来たような気がします。ご近所さんの前庭の装飾が、巨大なパンプキンから丸々太った七面鳥を経て、サンタクロース御一行に変わりました。
 日本の
12月はクリスマスや大晦日、除夜の鐘に年越しそば、といった一年を締めくくる行事が目白押しですね。元来はキリスト教のイベントであるクリスマスも、日本では宗教的な色合いは薄く、子供も大人も楽しめる年末行事として定着しています。街はきらびやかなクリスマスの装飾にあふれ、いつもと違う非日常的な風景にワクワクします。
 いくつもの民族や文化が混在するアメリカでは、クリスマスの他にも様々な年末行事が行われています。今回は、アメリカの多様な年末行事について、明るい絵と共にその由来や慣習を紹介する書籍です。日本ではあまり馴染みのないお祭りもありますが、分かりやすい子供向けの本ですので、ご興味ありましたら、ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。


 
 
Christmas in America(2011)
 著:ピーター・ガットマン
 邦訳なし:『アメリカのクリスマス(仮)』






作品について:
全米各地の冬景色やクリスマス行事の様子などを収めた美しい写真集です。東はエルフの行列パレード、中部では勇ましい犬ぞりの様子、西では雪に覆われたグランドキャニオンや蒸気機関車などを見ることができます。雪で遊ぶ子供達やクリスマスのミサに集う人々など、寒いけれど心が温まるような冬の日常風景はもちろん、壮大な氷のかまくらや豪華なクリスマスツリーの装飾も魅力的です。写真には著者の解説が添えられており、アメリカ各地のホリデーシーズンの様子、冬の過ごし方が良く分かります。

著者:
ピーター・ガットマンは、写真家、作家、テレビ解説者。これまでに七大陸すべてを訪れ、
190ヵ国以上を旅してきました。アメリカ紀行作家協会による賞を受賞。ナショナル・ジオグラフィックやトラベラー、ニューヨークタイムズといった主要な雑誌でも活躍しています。


 
 The Story of Hanukkah(2012)

 作:デイビッド・A・アドラー
 絵:ジル・ウィーバー
 邦訳なし:『ハヌカ物語(仮)』

 


作品について:
シンプルで分かりやすい文と鮮やかなイラストで描かれた、小学校低学年向けの絵本です。
別名「光の祭り」とも呼ばれるユダヤ教のお祭り「ハヌカ」の由来や楽しみ方を学べる本です。英雄マカビーの活躍により、ギリシアに弾圧されていたユダヤ教徒たちは解放され、エルサレム神殿を奪還しました。その際に、わずか
1日分しかなかった油が8日間も燃え続けるという奇蹟が起きたのです。ハヌカは、現代では、どちらかと言えば子供向けの行事になっており、ご馳走を食べてゲームをし、家族みんなでにぎやかに過ごします。伝統的なラトケス(じゃがいものパンケーキのようなもの)のレシピやドレイドルというコマの遊び方も載っています。

著者:
ディビッド・
A・アドラーはニューヨーク出身の絵本作家。シドニー・テイラー・ブック賞など数々の賞を受賞し、既に200冊以上出版しています。代表作は、映像記憶を持つ少女が主人公の「名たんていカメラちゃん(Cam Jansen)」シリーズ。
ジル・ウェーバーは、ニューハンプシャー在住の絵本イラストレーター。『クリスマスの木』(ジュリー・サラモン著、中野恵津子訳 新潮社 
1996年)でもイラストを手掛けています。エリック・A・キメルの『Even Higher!』でのイラストは、オッペンハイム・トイ・ポートフォリオ金賞を受賞しました。 


 
 
The Story of Kwanzaa(1997)
 作:ドナ・
L・ワシントン
 絵:ステファン・テイラー
 邦訳なし:『クワンザ物語(仮)』

 



作品について:
クワンザは、
1966年に初めて制定された、アフリカ系アメリカ人のお祭り。毎年1226日から11日に行われます。本書では、クワンザの成り立ちや「ヌグゾ・サバ(Nguzo Saba)」と呼ばれる「つの基本原則」について、子供向けに分かりやすく解説しています。アフリカ系民族の織物に見られる鮮やかな模様がアクセントです。本の後ろには、牛のしっぽスイッチの工作や伝統的なお菓子のレシピなどが付いています。

著者:
ドナ・
L・ワシントンは、女優であり、世界朗読賞などいくつもの賞を受賞したプロの朗読家でもあります。各地の図書館や学校行事、講演イベントに赴き、読み聞かせをしています。彼女自身もまた、アフリカ系のルーツです。
ステファン・テイラーにとって、本書は
3冊目の絵本。トロント在住。


 
 
The Gift: The Hmong New Year(1996)
 作:イア・ジョン
 絵:ゴウ・ルン―リン
 邦訳なし:『贈り物:モン民族の新年(仮)』

 




作品について:
モン(
Hmong)民族は、元々は中国・ベトナム・タイ・ラオスの山岳地域で暮らしていた少数派民族でした。ベトナム戦争の後、祖国を失ったモン族の多くが難民としてアメリカに移り住むようになりました。モン族の伝統的な新年祝いは、収穫を終えた晩秋から行われます。3日間に亘り特別な儀式を行い、先祖への感謝や、収穫が無事に終わったことへの労い、そして新年の家族の健康などを祈ります。その後一週間、皆で外でスポーツやゲームをしたり、音楽やダンス、ご馳走を楽しみます。しかし、アメリカ育ちの若い世代には学校や仕事があるため、現代ではこの伝統も形が変わってきているのです。そんなモン系アメリカ人少女のダオが、彼女のおばあちゃんの世代にはどのように新年のお祝いをしていたのかを知る物語です。次世代に民族の誇りと伝統を伝えるための一冊です。



【プロフィール】
柴田きえ美
カリフォルニア在住。2017年1月からバベル翻訳大学院生としてリーガル翻訳を勉強中。これまでに4冊の翻訳出版に参加。JTA 公認リーガル翻訳能力検定試験2級を取得し、フリーランスで翻訳をしながら課題にも取り組む


 

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