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第14回 オーストラリア絵本レポート[4]- テイラー佳子
2019/11/07
世界の出版事情 ― 各国のバベル出版リサーチャーより
第14回
オーストラリア絵本レポート[4]
-読み聞かせと読書の効果
テイラー佳子(翻訳者、バベル翻訳専門職大学院修了)
オーストラリアの図書館では、子どもたちが図書館に通いたくなるような楽しいイベントが毎週開催されています。中でも「Story and Rhyme Time」と言う、歌と言葉遊びを交えた読み聞かせの会は、赤ちゃんから参加することができる大人気のイベントです。
まだ言葉を発することのできない赤ちゃんですが、読み聞かせをすると、脳がたくさんの刺激を受けます。継続的に読み聞かせをすることでインプットの量が増え、早い時期から言語能力の基礎を養うことができます。
また、物心つく前から本に親しんでいる子どもは、自分で本を読むことができる年齢になると、ますます、読書を楽しむようになります。そして、自ずと読書の習慣がつくのです。読書をすることで、語彙力が増え、読み書きやコミュニケーション能力が高まるだけでなく、想像力や知的好奇心が育まれます。
今回は、子どもたちの想像力と知的好奇心を育むのに役立つ、オーストラリアの絵本をご紹介します。
ブリスベン市内の図書館。子どもたちが足を運びたくなるような工夫が施されています。
出典:https://www.brisbanekids.com.au/brisbane-square-library/
Possum Magic
邦訳無し
ポッサムの魔法(仮)
作:メム・フォックス
絵:ジュリー・ヴィヴァス
出版:スカラスティック社
あらすじ
ポッサムのポスおばあちゃんは、魔法をかけるのが得意。魔法を使って、ウォンバットを青色にしたり、ワライカワセミをピンク色にしたり、ディンゴを笑顔にしたり、エミューを小さくしたりできます。
おばあちゃんは、とっておきの魔法を使って、孫のハシュを透明にします。透明になったハシュは、カンガルーの背中の上で、すべり台のように滑って遊びます。天敵のヘビの傍に行ってもヘッチャラ。襲われることはありません。
ある日、自分の姿を見たくなったハシュは、おばあちゃんに元の姿に戻してほしいとお願いします。ところが、おばあちゃんはハシュを元に戻す魔法を思い出せません。魔法の本を読み返しながら一晩中考えて、ようやく、ある食べ物を食べれば元に戻すことができるのを思い出します。ただ、その食べ物が何だったのか思い出すことができません。
そこで、おばあちゃんとハシュは、魔法を解くことができる食べ物を探してオーストラリア中を旅します。はたして、その食べ物とは何なのでしょうか? そして、おばあちゃんとハシュはその食べ物を見つけて、ハシュは元の姿に戻ることができるのでしょうか?
作者および作品について
本書は、大人気の絵本作家であるメム・フォックスの作品です。オーストラリアで長年愛され続けている絵本で、誰もが一度は読んだことのある一冊です。1983年に初版されてから、35年以上が経った今日でもベストセラーの絵本として挙げられ、図書館では複数のコピーが所蔵されているにもかかわらず、常に貸し出し中というほどの人気作品です。
この物語には、ウォンバットやエミューなどのオーストラリアに生息する動物、メルボルンやシドニー、パースと言ったオーストラリアの主要都市、そして、アンザックビスケットやベジマイトサンドイッチなど、オーストラリアならではの食べ物が出て来ます。まさに、オーストラリアがぎゅっと詰まった一冊です。「魔法と冒険」というわくわくするテーマと可愛らしいイラストで、子どもたちの心を惹きつけ、想像力を豊かにしてくれます。
ちなみに、アンザックビスケットは、戦時中に兵士の母や妻が戦地に向かう兵士のために作った、栄養価が高く、日持ちのするビスケットです。また、ベジマイトは、トーストやクラッカーなどにつけて食べるペースト状の発酵食品で、オーストラリアのどの家庭にも、必ずと言ってよいほど常備されています。
Lizard in a blizzard
邦訳なし
アオジタトカゲの南極旅(仮)
作:ニッキー・ボイントン‐ブリックネル
絵:ジェシカ・アイトケン他
出版:ザ・ラムズスカルプレス
あらすじ
ある日、アオジタトカゲのネイサンはペンギンの絵を目にして、ペンギンに会いたくなります。そして、南極大陸へ出かけます。ネイサンは、寒い場所が苦手です。ムートンブーツにマフラー、ケイトの帽子や小麦カイロをリュックサックに詰めて、防寒対策は万全です。南極へ向かう船の中で、ネイサンは科学者のスーザンと出会います。
南極に到着すると、ネイサンはスーザンのポケット中にもぐりこみ、スーザンと一緒にペンギンに会いに行きます。念願のペンギンの一行を目にすることができ、喜んでいたネイサンですが、スーザンのポケットから落ちてしまい、雪の中に取り残されてしまいます。
その時、一羽の皇帝ペンギン、チャックルがネイサンの前に現われます。チャックルは、赤ちゃんペンギンを寒さから守るときと同じように、ネイサンを自分の足元に潜り込みませます。その夜は、猛吹雪なりましたが、チャックルとチャックルの仲間のペンギンたちが体を張ってネイソンを寒さから守ります。
作者および作品について
著者のニッキーは、時折、自宅の庭に現われるアオジタトカゲからインスピレーションを受け、この物語を作成しました。イラストには、読者層である6歳から12歳までの子どもたちが描いた絵が採用されています。同世代の子どもたちが描いたイラストで、読者の子どもたちは本書をより身近に感じることができるでしょう。
巻末では、アオジタトカゲと皇帝ペンギンの生態が紹介されています。この物語を読むと「アオジタトカゲと皇帝ペンギンってどんな動物だろう?」と好奇心が刺激され、学習意欲が湧いてきます。
【プロフィール】
テイラー佳子
オーストラリア在住。バベル大学院文芸翻訳専攻 修士課程修了。オーストラリアの優れた児童文学作品を日本の子どもたちに届けることを目標に、フリーランスの翻訳者として活動を行う。
第14回
オーストラリア絵本レポート[4]
-読み聞かせと読書の効果
テイラー佳子(翻訳者、バベル翻訳専門職大学院修了)
オーストラリアの図書館では、子どもたちが図書館に通いたくなるような楽しいイベントが毎週開催されています。中でも「Story and Rhyme Time」と言う、歌と言葉遊びを交えた読み聞かせの会は、赤ちゃんから参加することができる大人気のイベントです。
まだ言葉を発することのできない赤ちゃんですが、読み聞かせをすると、脳がたくさんの刺激を受けます。継続的に読み聞かせをすることでインプットの量が増え、早い時期から言語能力の基礎を養うことができます。
また、物心つく前から本に親しんでいる子どもは、自分で本を読むことができる年齢になると、ますます、読書を楽しむようになります。そして、自ずと読書の習慣がつくのです。読書をすることで、語彙力が増え、読み書きやコミュニケーション能力が高まるだけでなく、想像力や知的好奇心が育まれます。
今回は、子どもたちの想像力と知的好奇心を育むのに役立つ、オーストラリアの絵本をご紹介します。

ブリスベン市内の図書館。子どもたちが足を運びたくなるような工夫が施されています。
出典:https://www.brisbanekids.com.au/brisbane-square-library/

邦訳無し
ポッサムの魔法(仮)
作:メム・フォックス
絵:ジュリー・ヴィヴァス
出版:スカラスティック社
あらすじ
ポッサムのポスおばあちゃんは、魔法をかけるのが得意。魔法を使って、ウォンバットを青色にしたり、ワライカワセミをピンク色にしたり、ディンゴを笑顔にしたり、エミューを小さくしたりできます。
おばあちゃんは、とっておきの魔法を使って、孫のハシュを透明にします。透明になったハシュは、カンガルーの背中の上で、すべり台のように滑って遊びます。天敵のヘビの傍に行ってもヘッチャラ。襲われることはありません。
ある日、自分の姿を見たくなったハシュは、おばあちゃんに元の姿に戻してほしいとお願いします。ところが、おばあちゃんはハシュを元に戻す魔法を思い出せません。魔法の本を読み返しながら一晩中考えて、ようやく、ある食べ物を食べれば元に戻すことができるのを思い出します。ただ、その食べ物が何だったのか思い出すことができません。
そこで、おばあちゃんとハシュは、魔法を解くことができる食べ物を探してオーストラリア中を旅します。はたして、その食べ物とは何なのでしょうか? そして、おばあちゃんとハシュはその食べ物を見つけて、ハシュは元の姿に戻ることができるのでしょうか?
作者および作品について
本書は、大人気の絵本作家であるメム・フォックスの作品です。オーストラリアで長年愛され続けている絵本で、誰もが一度は読んだことのある一冊です。1983年に初版されてから、35年以上が経った今日でもベストセラーの絵本として挙げられ、図書館では複数のコピーが所蔵されているにもかかわらず、常に貸し出し中というほどの人気作品です。
この物語には、ウォンバットやエミューなどのオーストラリアに生息する動物、メルボルンやシドニー、パースと言ったオーストラリアの主要都市、そして、アンザックビスケットやベジマイトサンドイッチなど、オーストラリアならではの食べ物が出て来ます。まさに、オーストラリアがぎゅっと詰まった一冊です。「魔法と冒険」というわくわくするテーマと可愛らしいイラストで、子どもたちの心を惹きつけ、想像力を豊かにしてくれます。
ちなみに、アンザックビスケットは、戦時中に兵士の母や妻が戦地に向かう兵士のために作った、栄養価が高く、日持ちのするビスケットです。また、ベジマイトは、トーストやクラッカーなどにつけて食べるペースト状の発酵食品で、オーストラリアのどの家庭にも、必ずと言ってよいほど常備されています。

邦訳なし
アオジタトカゲの南極旅(仮)
作:ニッキー・ボイントン‐ブリックネル
絵:ジェシカ・アイトケン他
出版:ザ・ラムズスカルプレス
あらすじ
ある日、アオジタトカゲのネイサンはペンギンの絵を目にして、ペンギンに会いたくなります。そして、南極大陸へ出かけます。ネイサンは、寒い場所が苦手です。ムートンブーツにマフラー、ケイトの帽子や小麦カイロをリュックサックに詰めて、防寒対策は万全です。南極へ向かう船の中で、ネイサンは科学者のスーザンと出会います。
南極に到着すると、ネイサンはスーザンのポケット中にもぐりこみ、スーザンと一緒にペンギンに会いに行きます。念願のペンギンの一行を目にすることができ、喜んでいたネイサンですが、スーザンのポケットから落ちてしまい、雪の中に取り残されてしまいます。
その時、一羽の皇帝ペンギン、チャックルがネイサンの前に現われます。チャックルは、赤ちゃんペンギンを寒さから守るときと同じように、ネイサンを自分の足元に潜り込みませます。その夜は、猛吹雪なりましたが、チャックルとチャックルの仲間のペンギンたちが体を張ってネイソンを寒さから守ります。
作者および作品について
著者のニッキーは、時折、自宅の庭に現われるアオジタトカゲからインスピレーションを受け、この物語を作成しました。イラストには、読者層である6歳から12歳までの子どもたちが描いた絵が採用されています。同世代の子どもたちが描いたイラストで、読者の子どもたちは本書をより身近に感じることができるでしょう。
巻末では、アオジタトカゲと皇帝ペンギンの生態が紹介されています。この物語を読むと「アオジタトカゲと皇帝ペンギンってどんな動物だろう?」と好奇心が刺激され、学習意欲が湧いてきます。
【プロフィール】
テイラー佳子
オーストラリア在住。バベル大学院文芸翻訳専攻 修士課程修了。オーストラリアの優れた児童文学作品を日本の子どもたちに届けることを目標に、フリーランスの翻訳者として活動を行う。
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