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第14回 イギリス書籍レポート[2] - 大橋佑美

2019/11/07


世界の出版事情 ― 各国のバベル出版リサーチャーより

第14回 イギリス書籍レポート
-イギリスという国






       
             大橋佑美 
(翻訳者、バベル翻訳専門職大学院修了)


 ラグビーワールドカップ20199月20日~112日)の期間中、開催国である日本は大変盛り上がっていたことと思います。ラグビーと言えば、イギリス生まれ。イングランド中部の町、ラグビーが発祥の地です。ワールドカップにもイングランド、スコットランド、ウェールズと、イギリスを構成する4地域のうち3地域が出場しており、イングランドとウェールズは4強入りしました。イギリスでは人気、実力ともに高いスポーツです。小さい子供にとってもラグビーは身近なスポーツであり、なんと1歳半から始められるラグビー教室もあるほどです。
 
 さて、そんな「イギリス」という国に対して、わたしたち日本人はどのようなイメージを持っているでしょうか。年齢などにより差があるかもしれませんが、概して好意的な印象を持っている人が多いように感じます。最近でこそ
Brexit関連の先行不透明なニュースも多いものの、英国王室の話題は他国の王室よりも頻繁に話題に上りますし、私の地元・大阪にある阪急うめだ本店で開催される英国フェアは毎年盛り上がっているようです。UKロック、ピーターラビット、ユニオンジャックなどなど……イギリス発祥のもので日本人にとってもお馴染みのものを挙げれば、枚挙にいとまがありません。

 そこで今回は、そんな愛すべき(?)イギリスを、もっと深く知るために役立つ本を
冊紹介させていただきます。

① イギリスの「生活」を知る

   
    Sorry, I’m British!
   失敬!イギリス人なもので!(仮)

   <邦訳無し>
   
   ベン・クリスタル、アダム・ラス著





 
 本書はイギリスの人、モノ、コトからイギリス英語までを、幅広く、コミカルなイラストとともに、時には皮肉を交えつつ解説しています。
A-Zの順番にそれぞれの項目が並んでいるため、辞書のような使い方もできるようになっており、各項目は半ページほどで簡潔に解説されているので、飽きることなくサクサクと読み進められる構成です。

 内容を少しご紹介しますと、例えば
NのところにはNEWSPAPERSという項目があります。ここではイギリスで主に読まれている新聞各紙について、見た目(紙の色)、読者層のイメージ、右派・左派など、さまざまな角度からコメントされていて興味深いです。他にも、例えばSのところのSCHOOL SYSTEMという項目では、イギリスの学校の区分(プライベートスクール、パブリックスクール、公立校など)の違いが解説されています。いずれの項目も非常に簡潔にまとめられているので、それ以上に深く知るには自身での調査が必要ですが、イギリスについて広く浅く知るには最適な一冊と思われます。なお余談ですが、KのところにはKARAOKEという項目もあります。

 出版されて
10年が経とうとしている本書ですので、紹介されているデータなどは少し陳腐化してきている部分もありますが、まだまだ十分に楽しめる内容となっています。日本にいると、観光地としてのイギリスの姿ばかりに目が向きがちかもしれませんが、イギリスにおける日常を垣間見ることのできる貴重な一冊です。


② イギリスの「ジョーク」を知る
   
  
  English Humour for Beginners
  初心者のためのイギリス・ユーモア(仮)

  <邦訳無し>

  ジョージ・マイクス著




 

 
 ジョークと言えば「アメリカン・ジョーク」という言葉をよく耳にしますが、イギリスにもブリティッシュ・ジョーク、またはブリティッシュ・ユーモアというものが存在します。
Wikipediaのブリティッシュ・ジョークのページでは、次のようにその特徴が解説されています。「権力や権威に反抗的で機知に富み、強い皮肉や自虐的であり、多くの場合は真顔で発せられることが特徴とされる。イギリスのジョークにはダジャレなど言葉を題材にしたネタが多く、コメディアンが大袈裟に転んだりするどたばた喜劇の要素が比較的少ない。更には、言葉を題材としていても、直接的には表現せずにほのめかして表現される傾向があるため、イギリス英語やイギリス文化への理解が少ない場合には、その笑いの要素が理解しがたいことも多い。」(引用:
https://ja.wikipedia.org/wiki/ブリティッシュ・ジョーク
 

 そんな少し分かりにくいブリティッシュ・ジョークについて書かれた本書ですが、実は著者はハンガリー出身です。著者は、ハンガリー人という外国人の立場から、ジョークの具体例を数多く引き合いに出しながら、ときには他国のジョークと比較しつつ、ブリティッシュ・ジョークを丁寧に解説しています。本書を読めばブリティッシュ・ジョークに精通できるのはもちろんのこと、もっと根本的な、「ジョーク/ユーモアとは」というところから勉強できる一冊となっています。


③ イギリスの「食」を知る


    Classic
   クラシック(仮)
      
<邦訳無し>

   メアリー・ベリー著







 
 「食の最貧国」と揶揄されることもあるほど、食に関しては悪名高いイギリス。私の住むロンドンに限って言えば、ミシュランの星が付いているようなお店では一流の料理を楽しむことができますし、ここ
5年ほどは一般的なお店のレベルも少しずつ上がってきているように感じます。が、まだまだ改善の余地はある、というのが個人的な感想です。ベーコンはカリカリに焼きすぎて硬くて噛み切れない、ブロッコリーはくたくたに茹ですぎてフォークで刺せばバラバラに崩れてしまう……などは日常茶飯事ですが、そんなイギリスにもレシピ本は数多く存在しています。

 なかでも高い人気を誇るのが、フードライター、メアリー・ベリーのレシピ本。なんと現在
84歳の彼女は、BBC制作、お菓子作りの腕を競うリアリティ番組The Great British Bake Offの審査員を75歳から6年間務め、一躍有名人となりました。メアリー・ベリーはこれまで、BBCの番組の審査員を務める前から、多数のレシピ本を出版していますが、なかでもこちらのClassicsでは、イギリスの家庭料理、デザートの定番の品の数々が、シンプルな工程で紹介されています。レシピの中には工程写真つきのものもありますし、そもそもあまり凝った作業を必要としないレシピが多く、料理が得意でなくても楽しめる内容となっています。なかでも私の一押しレシピは、スコーンです。珍しくこのレシピは、一般的なレシピよりも工程数が多く、所要時間も長いですが、そのかわりとびきりおいしいスコーンが出来上がること間違いなしです。

 なお、メアリー・ベリーのレシピ本の一つ、
Mary Berry's Desserts and Confectionsは、主婦の友社から「お菓子とデザート―おいしく、楽しく、美しくできる」(1993年)という邦題で出版されています。イギリスでは現在も彼女の新刊が続々と出版されており、日本の読者の皆さんに、彼女の魅力的なレシピを紹介していければ、と思います。




 

【プロフィール】
大橋 佑美(おおはし ゆみ)
英国在住、二児の母。2018年にバベル翻訳大学院の金融・IR専攻を卒業。今後はプロの翻訳者として活躍するべく、修行に励んでいる。しかしまだまだ手のかかる二人の育児に追われ、なかなか翻訳に十分な時間を割けていないことが悩みの種。





 

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