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第10回 カナダのティーン向け書籍レポート - クリーバー海老原章子

2019/08/22


世界の出版事情 ー 各国のバベル出版リサーチャーより

第10回 カナダのティーン向け書籍レポート





       
                      
クリーバー海老原 章子(翻訳者、バベル翻訳専門職大学院修了

 
  

 カナダの学校のシステムは日本と異なり、
6月に終業式があります。そして9月になると新しい学年がスタートします。7月、8月は夏休みで、子供たちには2か月間のお休みがあるわけですが、その過ごし方はさまざまです。スポーツ、アートやテック関係のキャンプに申し込んだり、家族や友達と山や海へキャンプにでかけたり、アルバイトができる年齢になればアルバイトをしたり。

 我が家の末っ子は、読書が好きなのですが、ご近所のガレージセールで見つけたビンテージ本に読みふけっています。
80歳ぐらいのおばあちゃんが、娘と同じくらいの年齢のときに集めたコレクションです。昔は購読システムになっていて、毎月一冊ずつ本が郵送されてきたそうです(1冊200ページはある長編)。趣のあるかわいらしい表紙はレトロ感満点です。70歳ほどの年齢差のある二人の会話を聞いて、なんだかほっこり。世代は違っても、よい本はいつの時代も読者を楽しませてくれるのかなと思ったりしました。

 これまで
2回のレポートでは子供向けの絵本を中心にご紹介しましたが、今回は少し年齢層をあげて、こちらで言う「Young Adult」または「Teen」向けの書籍とカナダ人作家をご紹介したいと思います。

 2か月ほど前ですが、13歳になる末っ子が「明後日、学校にキットピアソンが来る!」と、少々興奮気味に学校から帰ってきました。キットピアソンといえば、カナダを代表する作家のひとりで、世界的にもよく知られています。こういった作家の学校訪問は珍しくないようです。どこの国でも読書離れ、活字離れは囁かれていますが、こういった作家たちの取り組みが本を楽しむきっかけになったらいいですね。わたし自身「読書が楽しい!」と思えるようになったのは、実はだいぶ大人になってからです。勉強のための読書ではなく、読んでみたい本が見つかって、読んでみたら楽しかったからでしょうか。各国のバベル出版リサーチャーたちのレポートがなにかのきっかけになったらいいと思っています。

    
The Breadwinner (2000)
   作:デボラ・エリス

   邦題:『生きのびるために』
   
2002年 さえら書房   
   訳:もりうち すみこ
   






あらすじ

舞台はタリバン政権下に置かれたアフガニスタン。女性は男性同伴でなければ、一歩も外へ出られない。父をタリバン兵に連れ去られ、食糧もつきたパヴァーナの家族が生きのびる唯一の道は?…家族を飢えから救うため、十一歳の少女パヴァーナは髪を切り、少年となってカブールの町で働きはじめる。


作家・作品について
カナダのオンタリオ州で育ったデボラエリスは、
17歳のころから非暴力、平和運動、女性解放、反戦等の政治活動に参加。現在は、トロントの精神障害者の施設でカウンセラーとして働くほか、作家活動、アフガン難民を支援するNGOの中心人物として活躍中。難民キャンプで取材したアフガン女性の話を元に、タリバンに支配されたカブールの様子と人びとの暮らしを克明に描いたこの作品は、アフガンで生きる人々の声が世界中に届くことを願った作品とも言われています。「一家の大黒柱」を意味するBreadwinner。そのシリーズとして、他に『The Breadwinner Trilogy』『My Name Is Parvana』『Parvana's Journey』など多数出版しています。『Xをさがして』(さ・え・ら書房)で、2000年度カナダ総督文学賞(児童書部門)を受賞。 



        A Handful of Time (1987)
     作:キット・ピアソン
     
     邦題『床下の古い時計』
     
1991年 金の星社   
     訳:足沢 良子
    
        










あらすじ
両親とはなれ、
12歳の夏休みを、叔母さんの家族といっしょに、湖のコテージで過ごすことになったパトリシア。ある日、床下にかくされていた、古い懐中時計を見つけた。時計のねじを巻くと、そこには12歳のお母さんがいた。不思議なことがつぎつぎと起こる。

作家・作品について
カナダのアルバータ州エドモントン生まれで、エドモントンとバンクーバーで育ったキットピアソンは、カナダを代表する人気作家のひとり。ブリティッシュコロンビア大学で図書館司書の資格を取得し、長年にわたり司書として勤務した後、
1986年に処女作となる『The Daring Game』を出版。推薦図書としても名高い『The Sky Is Falling』は彼女の代表作のひとつ。また、『A Handful of Time 本作品も1988年にカナダ図書館協会賞を受賞しています。




 
【プロフィール】
クリーバー海老原 章子
バベル翻訳大学院法律翻訳修了。結婚後は夫の仕事の関係でマレーシア、トロント、アラブ首長国連邦に居住。現在は、カナダBC州のナナイモに一家5人暮らし。これまでに担当した書籍翻訳は3冊。フリーランスとして翻訳のお仕事をしています。